BLしたくない伯爵子息は今日も逃げる

七咲陸

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九年後②

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「ノエルー、帰ろー」

のんびりとした口調で話しかけてきたのはジナルマーだった。ライとテーヴは居らず、恐らく2人は先に帰宅したのだろう。

ライとテーヴは婚約関係が続いている。

そんなテーヴは、最近ライが居ない時に必ずため息をついている。
理由は聞きたくないが聞いてみた。聞いたのは興味ではなく、本気で友人として心配したからだ。

テーヴは聞かれたことに驚きすぎて目が飛び出そうになっていた。

『…天変地異でも起こすつもりか?』

失敬な。
俺だって相談くらい受けることが…あまり無かった。
そりゃそうだ。俺はこうは言ってはなんだが頼りない。相談なんて受けたことがないのは信用がないという訳では無い。ただ単に頼りないのだ。

自分で言っててとっても虚しい!

どうやら『結婚の話をするとはぐらかされるようになった』らしい。
ライはてっきりすぐにでも結婚したいのかと思ってたので俺もさすがに驚いた。
理由は本人に怖くて聞けないらしい。テーヴでも怖いものがあるんだな、なんて更に驚いた。

それで俺はその事をヴィオレットに言ってみた。もちろんテーヴの許可を得てだ。

するとヴィオレットは、『ノエルが聞けば、ライも教えてくれるだろう』と直接本人に聞けとアドバイスされた。
そんなことして平気なのだろうか?とヴィオレットへ半信半疑でライに聞いてみた。

どうして結婚をはぐらかしてるんだ?と単刀直入に聞いた。遠回しに聞くなんて、そんな高等技術俺には到底出来ない。

『……テーヴに言われたの?』
『俺がテーヴに無理やり聞いた』

そういうとテーヴと同じ反応をライにされた。

『明日世界が滅びるの?』だと。ほんとこいつらは失敬だ。

ライはポツリポツリと理由を話し始めた。理由はどうやらまた姉貴だそうだ。姉はあれから婚活が上手くいっておらず、ライが先に結婚することを良しとしてないらしい。押し切って結婚しようとも思ったようだが、両親が『姉を立たせると思って』とストップをかけてきたらしい。

俺はあー……と何となく前世の姉の事を思い出した。友人に恋人が出来た。先を越された。別に仕方ないけど、女として負けた気がする!とか愚痴を零していた。姉はすぐにBLを読んで『現実なんかどうでもいいわ!』とヤケクソになってたのを思い出したのだ。

姉は、ライに先を越されるのが許せないようだ。

『どこまで行っても面倒臭い姉だな』と俺が言うと、『……でも、テーヴのこと奪ったのは僕だから』ライはそう言って、俯いた。

俺は瞬間的にライの頬を思い切り横に引っ張った。
もちもちして気持ちいい。よく伸びる。顔を横に伸ばしても可愛いのは反則だと思う。恐らくテーヴは小動物好きだ。

『いひゃい!』
『ばーか! ライが姉からテーヴを奪っただ? んなわけねーだろ』

引っ張りながら、ライは涙目で不思議そうな顔をする。

『俺なんか詐欺されても婚約してんだぞ! お前は相思相愛で婚約したんだ胸を張れ!』

そう叫んだら、ライは一瞬時を止めた後にドバーっと涙を流したのだった。

『姉はテーヴと縁が無かっただけだ! テーヴがお前を選んだんだよ!良いからテーヴに結婚しろって言ってこい!』
『……なに、それ…うん。そうだね、そうする』

波風立てない方がいいのかもしれない。けれど、2人が後悔するよりマシだと思った。

そんなこんなで、2人は学園を卒業と同時に結婚することを決めた。
テーヴの家は大賛成しているらしいし、変な風に拗れたらライが逃げ込めばいい。それでもダメなら、ヴィオレットが両家の間を取り持つと名乗り出た。
俺が『そこまでしなくても』と言うと、『そこまでして欲しいから俺に相談したんだろう』と簡単に言ってのけた。

ムカつくけどカッコイイと思ってしまったのは、内緒にしている。

「ノエル?」

はっ、トリップしていた。

いつの間にかジナルマーに心配されるように覗き込まれていた。

「なんでもない!」
「ちょっと顔赤いよ?」
「な、なんでもないって! 帰るぞ!」

ジナルマーは不思議そうな顔をしたままだが、メイナードはやれやれ、といった仕草をしている。
何もかもお見通しなのが悔しい。







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更新が途絶えてて申し訳ありません……!
モンハンサンブレイクが面白すぎて止まらなくて…ちょこちょこ合間で書いてはいます!

違う話も並行して書いているせいで更に遅筆になっております、すみません……!

七咲陸
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