39 / 54
九年後②
しおりを挟む
「ノエルー、帰ろー」
のんびりとした口調で話しかけてきたのはジナルマーだった。ライとテーヴは居らず、恐らく2人は先に帰宅したのだろう。
ライとテーヴは婚約関係が続いている。
そんなテーヴは、最近ライが居ない時に必ずため息をついている。
理由は聞きたくないが聞いてみた。聞いたのは興味ではなく、本気で友人として心配したからだ。
テーヴは聞かれたことに驚きすぎて目が飛び出そうになっていた。
『…天変地異でも起こすつもりか?』
失敬な。
俺だって相談くらい受けることが…あまり無かった。
そりゃそうだ。俺はこうは言ってはなんだが頼りない。相談なんて受けたことがないのは信用がないという訳では無い。ただ単に頼りないのだ。
自分で言っててとっても虚しい!
どうやら『結婚の話をするとはぐらかされるようになった』らしい。
ライはてっきりすぐにでも結婚したいのかと思ってたので俺もさすがに驚いた。
理由は本人に怖くて聞けないらしい。テーヴでも怖いものがあるんだな、なんて更に驚いた。
それで俺はその事をヴィオレットに言ってみた。もちろんテーヴの許可を得てだ。
するとヴィオレットは、『ノエルが聞けば、ライも教えてくれるだろう』と直接本人に聞けとアドバイスされた。
そんなことして平気なのだろうか?とヴィオレットへ半信半疑でライに聞いてみた。
どうして結婚をはぐらかしてるんだ?と単刀直入に聞いた。遠回しに聞くなんて、そんな高等技術俺には到底出来ない。
『……テーヴに言われたの?』
『俺がテーヴに無理やり聞いた』
そういうとテーヴと同じ反応をライにされた。
『明日世界が滅びるの?』だと。ほんとこいつらは失敬だ。
ライはポツリポツリと理由を話し始めた。理由はどうやらまた姉貴だそうだ。姉はあれから婚活が上手くいっておらず、ライが先に結婚することを良しとしてないらしい。押し切って結婚しようとも思ったようだが、両親が『姉を立たせると思って』とストップをかけてきたらしい。
俺はあー……と何となく前世の姉の事を思い出した。友人に恋人が出来た。先を越された。別に仕方ないけど、女として負けた気がする!とか愚痴を零していた。姉はすぐにBLを読んで『現実なんかどうでもいいわ!』とヤケクソになってたのを思い出したのだ。
姉は、ライに先を越されるのが許せないようだ。
『どこまで行っても面倒臭い姉だな』と俺が言うと、『……でも、テーヴのこと奪ったのは僕だから』ライはそう言って、俯いた。
俺は瞬間的にライの頬を思い切り横に引っ張った。
もちもちして気持ちいい。よく伸びる。顔を横に伸ばしても可愛いのは反則だと思う。恐らくテーヴは小動物好きだ。
『いひゃい!』
『ばーか! ライが姉からテーヴを奪っただ? んなわけねーだろ』
引っ張りながら、ライは涙目で不思議そうな顔をする。
『俺なんか詐欺されても婚約してんだぞ! お前は相思相愛で婚約したんだ胸を張れ!』
そう叫んだら、ライは一瞬時を止めた後にドバーっと涙を流したのだった。
『姉はテーヴと縁が無かっただけだ! テーヴがお前を選んだんだよ!良いからテーヴに結婚しろって言ってこい!』
『……なに、それ…うん。そうだね、そうする』
波風立てない方がいいのかもしれない。けれど、2人が後悔するよりマシだと思った。
そんなこんなで、2人は学園を卒業と同時に結婚することを決めた。
テーヴの家は大賛成しているらしいし、変な風に拗れたらライが逃げ込めばいい。それでもダメなら、ヴィオレットが両家の間を取り持つと名乗り出た。
俺が『そこまでしなくても』と言うと、『そこまでして欲しいから俺に相談したんだろう』と簡単に言ってのけた。
ムカつくけどカッコイイと思ってしまったのは、内緒にしている。
「ノエル?」
はっ、トリップしていた。
いつの間にかジナルマーに心配されるように覗き込まれていた。
「なんでもない!」
「ちょっと顔赤いよ?」
「な、なんでもないって! 帰るぞ!」
ジナルマーは不思議そうな顔をしたままだが、メイナードはやれやれ、といった仕草をしている。
何もかもお見通しなのが悔しい。
---------
更新が途絶えてて申し訳ありません……!
モンハンサンブレイクが面白すぎて止まらなくて…ちょこちょこ合間で書いてはいます!
違う話も並行して書いているせいで更に遅筆になっております、すみません……!
七咲陸
のんびりとした口調で話しかけてきたのはジナルマーだった。ライとテーヴは居らず、恐らく2人は先に帰宅したのだろう。
ライとテーヴは婚約関係が続いている。
そんなテーヴは、最近ライが居ない時に必ずため息をついている。
理由は聞きたくないが聞いてみた。聞いたのは興味ではなく、本気で友人として心配したからだ。
テーヴは聞かれたことに驚きすぎて目が飛び出そうになっていた。
『…天変地異でも起こすつもりか?』
失敬な。
俺だって相談くらい受けることが…あまり無かった。
そりゃそうだ。俺はこうは言ってはなんだが頼りない。相談なんて受けたことがないのは信用がないという訳では無い。ただ単に頼りないのだ。
自分で言っててとっても虚しい!
どうやら『結婚の話をするとはぐらかされるようになった』らしい。
ライはてっきりすぐにでも結婚したいのかと思ってたので俺もさすがに驚いた。
理由は本人に怖くて聞けないらしい。テーヴでも怖いものがあるんだな、なんて更に驚いた。
それで俺はその事をヴィオレットに言ってみた。もちろんテーヴの許可を得てだ。
するとヴィオレットは、『ノエルが聞けば、ライも教えてくれるだろう』と直接本人に聞けとアドバイスされた。
そんなことして平気なのだろうか?とヴィオレットへ半信半疑でライに聞いてみた。
どうして結婚をはぐらかしてるんだ?と単刀直入に聞いた。遠回しに聞くなんて、そんな高等技術俺には到底出来ない。
『……テーヴに言われたの?』
『俺がテーヴに無理やり聞いた』
そういうとテーヴと同じ反応をライにされた。
『明日世界が滅びるの?』だと。ほんとこいつらは失敬だ。
ライはポツリポツリと理由を話し始めた。理由はどうやらまた姉貴だそうだ。姉はあれから婚活が上手くいっておらず、ライが先に結婚することを良しとしてないらしい。押し切って結婚しようとも思ったようだが、両親が『姉を立たせると思って』とストップをかけてきたらしい。
俺はあー……と何となく前世の姉の事を思い出した。友人に恋人が出来た。先を越された。別に仕方ないけど、女として負けた気がする!とか愚痴を零していた。姉はすぐにBLを読んで『現実なんかどうでもいいわ!』とヤケクソになってたのを思い出したのだ。
姉は、ライに先を越されるのが許せないようだ。
『どこまで行っても面倒臭い姉だな』と俺が言うと、『……でも、テーヴのこと奪ったのは僕だから』ライはそう言って、俯いた。
俺は瞬間的にライの頬を思い切り横に引っ張った。
もちもちして気持ちいい。よく伸びる。顔を横に伸ばしても可愛いのは反則だと思う。恐らくテーヴは小動物好きだ。
『いひゃい!』
『ばーか! ライが姉からテーヴを奪っただ? んなわけねーだろ』
引っ張りながら、ライは涙目で不思議そうな顔をする。
『俺なんか詐欺されても婚約してんだぞ! お前は相思相愛で婚約したんだ胸を張れ!』
そう叫んだら、ライは一瞬時を止めた後にドバーっと涙を流したのだった。
『姉はテーヴと縁が無かっただけだ! テーヴがお前を選んだんだよ!良いからテーヴに結婚しろって言ってこい!』
『……なに、それ…うん。そうだね、そうする』
波風立てない方がいいのかもしれない。けれど、2人が後悔するよりマシだと思った。
そんなこんなで、2人は学園を卒業と同時に結婚することを決めた。
テーヴの家は大賛成しているらしいし、変な風に拗れたらライが逃げ込めばいい。それでもダメなら、ヴィオレットが両家の間を取り持つと名乗り出た。
俺が『そこまでしなくても』と言うと、『そこまでして欲しいから俺に相談したんだろう』と簡単に言ってのけた。
ムカつくけどカッコイイと思ってしまったのは、内緒にしている。
「ノエル?」
はっ、トリップしていた。
いつの間にかジナルマーに心配されるように覗き込まれていた。
「なんでもない!」
「ちょっと顔赤いよ?」
「な、なんでもないって! 帰るぞ!」
ジナルマーは不思議そうな顔をしたままだが、メイナードはやれやれ、といった仕草をしている。
何もかもお見通しなのが悔しい。
---------
更新が途絶えてて申し訳ありません……!
モンハンサンブレイクが面白すぎて止まらなくて…ちょこちょこ合間で書いてはいます!
違う話も並行して書いているせいで更に遅筆になっております、すみません……!
七咲陸
21
お気に入りに追加
1,872
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる