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助け

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そして俺は、次の日ヴィオレットに呼び出された。

「……ノエル。ジナルマーから聞いたぞ。なぜ無表情を崩した」
「うぐ」

呼び出された先は中等部生徒会室だった。ヴィオレットは生徒会長のようで執務机に肘を立て眼光暗く俺を見据えてくる。

俺は無表情のまま冷や汗をかきまくっていた。

「エルダーの効果はあまり無かったと聞いてる。本来ならそれ以上手を出さないのが暗黙のルールのはずなのだが」
「手を出すって何?! ほんとこの学園何?!」
「そんなことより、そのランディとやらはどうするつもりだ」

ヴィオレットの追求は俺を逃そうとはしてくれなかった。呼び出しに応じなければ良かった。

「…とにかく諦めて欲しいから、どうにか説得するしか」
「そんなので諦めるような奴を相手にしてるならもう済んでる話だ」
「じゃあどうすれば良いんだよ。それ以上のことなんて俺はできない!」

バンっと机を両手で叩くと、ヴィオレットは楽しそうに俺を見て笑う。嫌な予感しかしなくてたじろぐが、ヴィオレットは立ち上がり、俺の方へジリジリと距離を詰めてくる。

「…なんだよ、まて、それ以上近づくなよ…」
「明日から迎えにいく。放課後、待ってるように」
「な!迎え!?冗談じゃ」
「ノエルに拒否権はない。セドリック殿にも連絡しておく」

母親の方に連絡するとか卑怯だ!父親に連絡してくれ!

「なんで迎えにくるんだよ!別に要らない!」
「婚約者が仲睦まじく見えれば、ランディも流石に引くだろう」
「うぐ…」

すごく嫌だ。ヴィオレットと二人でなんて本当に嫌だ。何されるかわかったもんじゃない。手は出さなくてもやりようはいくらでもあると言いそうな男だ。

「だからって!」

しかし、学園生活は思ったよりも快適なのだ。ランディのことさえなければ!
その安住の地である学園までの登校から下校までヴィオレットに侵食されるのだけは頂けない。

「ノエル、想像しろ」
「…なんだよ」
「ランディがトチ狂って学園からの下校中馬車に乗るまでの間にノエルを誘拐し、連れ去られ、犯され」
「お迎え待ってます!本当によろしくお願いします!」

なんで七歳がそこまで考えるんだという話は置いといても、ランディだって良いとこの貴族の坊ちゃんだ。その護衛やら従者やらだっている。
それに誘拐って話も実はよくある話だったりする。貴族のような金持ちを恨んでる奴らってどの世界にもいるもんな。
考えただけでゾッとした。

一応家からの送り迎えはある。貴族だし。けどランディの方が俺より家格は上だ。だからそれを上回る家格であるヴィオレットならば俺を助けられると思った。

「今まで送り迎えしなかったこともおかしいことだったからな」
「え。どうして」
「…ライはテーヴに送ってもらっているぞ。俺の場合はそうやってノエルが嫌がることは分かりきっていたからしてなかっただけだ」

ヴィオレットはそんなことも知らないのかという表情でため息をつく。知らないのは興味がないからだ。

「え、何。無理矢理乗せられたんじゃねーの?」
「お前は…手を出さない約束を守ってるんだ、その証拠に指一本触れてない。馬車に乗せるということはエスコートしたりするだろう」
「ああー!!」

ようやっと思いついた。馬車の乗り降りで手を触れることがあるからヴィオレットはしなかった。

「え?てことはエスコートするの?」
「婚約者を乗せてエスコートしない方がおかしいだろう」
「…確かに」
「そこだけは我慢しろ。無表情のままでいいから拒否したりするなよ」

ヴィオレットは真剣な表情で俺に詰め寄ってくる。じり…とまたたじろぎながら俺は小さく頷いた。
俺の今後の平穏のためには言うことを聞くしかなかった。










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不定期ですが、更新再開致します。
とりあえずランディ編だけでも頑張って終わらせたいです……!
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