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灰色入学式
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いきなりだが。ほんといきなりだが。
入学式である。
久しぶりに入学式なんて味わった。
どこの世界にも、新入生代表挨拶なんてのがあるんだな。と呑気に見ていた。ちなみに無表情で。
学園に入る前からずっと無表情だった。少しでも本性を見せたり、笑顔を見せたりすれば、絶対にフラグが立つ気がして無表情に徹した。
「……以上。新入生代表、ランディ」
よく分からんが何故か黄色い声援が聞こえる。 ランディと言った男は、黒髪真面目そうなメガネを掛けたイケメンだった。女子共が色めき立つわけだ。
そして、最悪なことに、俺はランディが壇上から降りようとした時に目が合ってしまった。
バチッと音が鳴る勢いで目が合った。
直ぐにサッと目を逸らす。 よく分からないが、視線をずっと感じる。ヴィオレットの視線と同様のレベルを感じている。怖い。本当に怖い。
「ランディさん?降りてください」
先生らしい人が、一向に壇上から降りないランディを不審に思いながら指示する。ランディはハッと意識を取り戻すように気づき、壇上から降りた。
え。まさか、フラグだった訳じゃないよな。無表情だし。
隣にいるライを見ると、汗をかいている俺を見て心配してくれた。良い奴だ……テーヴと幸せにな…まだ7歳だけど。
ちなみにヴィオレットは居ない。
歳が離れすぎているせいで、ここではなく、中等学園の方にいる。
初等が7歳からで
中等は12歳から
高等は15歳から
一緒じゃなくて本当に良かった。
「ノエル、寂しいね。ヴィオレット様となかなか会えなくなるでしょ?」
「いやめちゃくちゃ清々しててめちゃくちゃ嬉しい。女の子と仲良くなるチャンスだと思って学園生活をエンジョイしまくる」
隣に居るライに言われ、俺は表情を変えずに一息で言い放った。
「…ノエルは無理だと思うが」
「はぁ? なんでだよ」
ライの隣にいるテーヴが言いにくそうにしながら俺を見る。「なんでって……ノエルって阿呆なのか?」と呆れたように言われた。
そんなテーヴをライが「言い過ぎだよ」と諌める。いつもと逆じゃないか?
「あはは、ノエルそれだよ」
「は?」
俺の逆隣にいるジナルマーが指さす先にはブレスレットがあった。
「あああ!」
マジで違和感なくて付けっぱなしで来てしまった。ブレスレットが細身で邪魔にならないように絶妙な長さになってるのが良くない。
……手首の周囲測られてないよな。
「恋人とかそれらしき人が居ますって言ってるようなものだよ……それにそもそもヴィオレット様の婚約者だってノエルのことは知れ渡ってると思った方がいいよ?」
「え、どういうこと。なに、まさか、俺は彼女のひとつも作れないのか?」
「婚約者が居るのに彼女作ろうとするな、クズすぎるぞ」
テーヴの発言にライが「こらっ」とまた諌める。
いや、そりゃ確かにクズすぎるかも知れないけど……女の子と会話くらいは許されるのだろうか。
さっきから女の子だけではなく男たちからも遠巻きに見られている気がするのはもしかして全然気の所為とかではなく、ガチで近づけないと思ってるやつ?
これ全部ヴィオレットのせい?
「ヴィオレット様はファンクラブがあるほどだからね。そういう発言は気をつけた方がいいよ」
「何を気をつけんだよ」
「……や、闇討ち?」
「物騒すぎるだろ!」
ジナルマーの発言に小声で叫ぶ。
ヴィオレット過激派が居ることに少し怯えるが、俺はそれでも前向きに捉える。
「……いじめが酷くなれば、婚約破棄する立派な理由になるんじゃないか?」
「ヴィオレット様がいじめを黙認してたりすればなるかもしれないけど…そもそもノエルが大人しくいじめを受けてられるの?」
「イライラが募ってキレそうだな」
「と言うより、兄様がいじめを許さないよ……直ぐに気づきそう」
俺は灰色の学園生活を歩むことになる気がした。
入学式である。
久しぶりに入学式なんて味わった。
どこの世界にも、新入生代表挨拶なんてのがあるんだな。と呑気に見ていた。ちなみに無表情で。
学園に入る前からずっと無表情だった。少しでも本性を見せたり、笑顔を見せたりすれば、絶対にフラグが立つ気がして無表情に徹した。
「……以上。新入生代表、ランディ」
よく分からんが何故か黄色い声援が聞こえる。 ランディと言った男は、黒髪真面目そうなメガネを掛けたイケメンだった。女子共が色めき立つわけだ。
そして、最悪なことに、俺はランディが壇上から降りようとした時に目が合ってしまった。
バチッと音が鳴る勢いで目が合った。
直ぐにサッと目を逸らす。 よく分からないが、視線をずっと感じる。ヴィオレットの視線と同様のレベルを感じている。怖い。本当に怖い。
「ランディさん?降りてください」
先生らしい人が、一向に壇上から降りないランディを不審に思いながら指示する。ランディはハッと意識を取り戻すように気づき、壇上から降りた。
え。まさか、フラグだった訳じゃないよな。無表情だし。
隣にいるライを見ると、汗をかいている俺を見て心配してくれた。良い奴だ……テーヴと幸せにな…まだ7歳だけど。
ちなみにヴィオレットは居ない。
歳が離れすぎているせいで、ここではなく、中等学園の方にいる。
初等が7歳からで
中等は12歳から
高等は15歳から
一緒じゃなくて本当に良かった。
「ノエル、寂しいね。ヴィオレット様となかなか会えなくなるでしょ?」
「いやめちゃくちゃ清々しててめちゃくちゃ嬉しい。女の子と仲良くなるチャンスだと思って学園生活をエンジョイしまくる」
隣に居るライに言われ、俺は表情を変えずに一息で言い放った。
「…ノエルは無理だと思うが」
「はぁ? なんでだよ」
ライの隣にいるテーヴが言いにくそうにしながら俺を見る。「なんでって……ノエルって阿呆なのか?」と呆れたように言われた。
そんなテーヴをライが「言い過ぎだよ」と諌める。いつもと逆じゃないか?
「あはは、ノエルそれだよ」
「は?」
俺の逆隣にいるジナルマーが指さす先にはブレスレットがあった。
「あああ!」
マジで違和感なくて付けっぱなしで来てしまった。ブレスレットが細身で邪魔にならないように絶妙な長さになってるのが良くない。
……手首の周囲測られてないよな。
「恋人とかそれらしき人が居ますって言ってるようなものだよ……それにそもそもヴィオレット様の婚約者だってノエルのことは知れ渡ってると思った方がいいよ?」
「え、どういうこと。なに、まさか、俺は彼女のひとつも作れないのか?」
「婚約者が居るのに彼女作ろうとするな、クズすぎるぞ」
テーヴの発言にライが「こらっ」とまた諌める。
いや、そりゃ確かにクズすぎるかも知れないけど……女の子と会話くらいは許されるのだろうか。
さっきから女の子だけではなく男たちからも遠巻きに見られている気がするのはもしかして全然気の所為とかではなく、ガチで近づけないと思ってるやつ?
これ全部ヴィオレットのせい?
「ヴィオレット様はファンクラブがあるほどだからね。そういう発言は気をつけた方がいいよ」
「何を気をつけんだよ」
「……や、闇討ち?」
「物騒すぎるだろ!」
ジナルマーの発言に小声で叫ぶ。
ヴィオレット過激派が居ることに少し怯えるが、俺はそれでも前向きに捉える。
「……いじめが酷くなれば、婚約破棄する立派な理由になるんじゃないか?」
「ヴィオレット様がいじめを黙認してたりすればなるかもしれないけど…そもそもノエルが大人しくいじめを受けてられるの?」
「イライラが募ってキレそうだな」
「と言うより、兄様がいじめを許さないよ……直ぐに気づきそう」
俺は灰色の学園生活を歩むことになる気がした。
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