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前準備は大切に
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「そろそろ学園に通う頃だから、必要なものを買い揃えないとね」
セドにそう言われ、俺は貴族街にて買い物をすることになった。
何故か、ヴィオレットと共に。
「……おい、なんでヴィオと一緒なんだよ」
「初めてまともに名前を呼んだと思ったら、それか?」
セドに聞かれたら、多分尻を叩かれるに違いない言葉遣いで悪態をつく。
ヴィオレットを見れば、全く気にしていないようだった。
「俺1人でも平気だよ」
まぁ厳密には1人じゃない。もちろんメイドはついてくるし、護衛もついてくる。
「じゃあどこに行けば良いのか分かっているのか?」
「……」
「メイドや護衛に聞こうとするな。 なぜ前情報なしに歩き出したんだ」
ヴィオレットに言われ、渋々後を着いていくことにした。
セドに、「ヴィオ様が一緒って言ってたから、あとは大丈夫だよね」と言われて何も教えて貰っていないとは言い出せなかった。
セドめ、楽しやがって……!いや、聞かなかった俺が悪いのか?
「まずは制服からだな。こっちだ」
ヴィオレットに色んなところに連れ回されることになった。
必要なものは多々あった。制服やらカバン、学校で使う分の筆記具、教科書などなど……貴族なら家に運んでくれって思うけど、実は家に運ぶことも出来たらしい。
「おい! ヴィオ! 家に運ぶことが出来たんじゃねーか! 通りで他の子に会わねーと思ったら!」
「デートみたいで良いだろう?」
くっそ! こういう奴だったよ!
セドも嫌にウキウキしてると思ったら、母親もグルじゃねーか!
やっぱり味方は父親のクリスしかいない!
どっちも男だけどな!
……言ってて恐ろしくなってきた。
外堀は徐々に埋められていくし、ヴィオレットに直ぐに騙されるし、俺の状況マズくないか?
「……っ! この! ばかやろー!」
そう捨て台詞を吐いて、走り出した。
俺は脚力だけは鍛え続けたから、逃げ足だけは速い。だから護衛もメイドも、ヴィオですら追ってこれなかったようだった。
走り続けると、いつの間にか路地裏に入り込んでしまったようだった。
キョロキョロと辺りを見回しても、ほとんど外に出ることがない俺は道なんか分かるはずもなく、迷子になったと思った頃にはもう遅かった。
「……迷子になった可愛い子に付き物なのは」
俺はやっぱり自覚ある可愛い方だと思うので、
「こんなとこで可愛い子が何してんだぁ?」
「おいおい、上玉かよ。売れば高値がつきそうだぜ?」
ああああ! ですよね! チンピラですよね!
しかもそのまま奴隷商人行きのフラグ立ってますね!
しかも見た目がいいとかで性奴隷になるやつですよね!
逃げ出したいのに、実は曲がった先は行き止まりで背中は壁だったりする。
叫べばいいのに、チンピラは最悪なことに刃物を持っていた。
チンピラ達はジリジリと近づいてくる。
テレビで刃渡り何センチとか良く言うけど、目の前にするとめちゃくちゃ長く見えんのな!この世界テレビないけど!
「やめ……!」
手が伸びてきて、やっとこ絞り出した声は、小さくて助けなんか呼べるものではなかった。
目を逸らしてギュッと思い切り目をつぶった。
いつまで経っても手は伸びてこない、と言うよりは、めちゃくちゃドカドカと殴る音が響いている。
そっと薄目で見ると、魔王のような様相の男がチンピラをのしていた。
「ひっ……!」
むしろその魔王の方が恐怖で引いた。
魔王は返り血を浴びていて、目に光はない。チンピラは完全に伸びていた。
「……大丈夫か、ノエル?」
「ひいいぃ」
ヴィオレットこと魔王は、にっこりと血のついた手を俺に差し出してくる。
本当に13歳なのかよ!お前!
「助けたのに、怯えられるのは心外だな」
「こええよ……そ、そいつら死んでるのか……?」
「いや、殺してない。 憲兵に差し出す。そろそろ護衛も到着するだろう」
ヴィオレットは頬についた血を拭いながら言う。
「……俺、なるべくお前のこと怒らせないように婚約破棄するな……」
「破棄さえしなければ怒りはしないんだがな?」
いや、婚約破棄は絶対するからな。
てか普通この状況、俺がヴィオレットに惚れるフラグなのに、恐怖でそれどころではなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
セドにそう言われ、俺は貴族街にて買い物をすることになった。
何故か、ヴィオレットと共に。
「……おい、なんでヴィオと一緒なんだよ」
「初めてまともに名前を呼んだと思ったら、それか?」
セドに聞かれたら、多分尻を叩かれるに違いない言葉遣いで悪態をつく。
ヴィオレットを見れば、全く気にしていないようだった。
「俺1人でも平気だよ」
まぁ厳密には1人じゃない。もちろんメイドはついてくるし、護衛もついてくる。
「じゃあどこに行けば良いのか分かっているのか?」
「……」
「メイドや護衛に聞こうとするな。 なぜ前情報なしに歩き出したんだ」
ヴィオレットに言われ、渋々後を着いていくことにした。
セドに、「ヴィオ様が一緒って言ってたから、あとは大丈夫だよね」と言われて何も教えて貰っていないとは言い出せなかった。
セドめ、楽しやがって……!いや、聞かなかった俺が悪いのか?
「まずは制服からだな。こっちだ」
ヴィオレットに色んなところに連れ回されることになった。
必要なものは多々あった。制服やらカバン、学校で使う分の筆記具、教科書などなど……貴族なら家に運んでくれって思うけど、実は家に運ぶことも出来たらしい。
「おい! ヴィオ! 家に運ぶことが出来たんじゃねーか! 通りで他の子に会わねーと思ったら!」
「デートみたいで良いだろう?」
くっそ! こういう奴だったよ!
セドも嫌にウキウキしてると思ったら、母親もグルじゃねーか!
やっぱり味方は父親のクリスしかいない!
どっちも男だけどな!
……言ってて恐ろしくなってきた。
外堀は徐々に埋められていくし、ヴィオレットに直ぐに騙されるし、俺の状況マズくないか?
「……っ! この! ばかやろー!」
そう捨て台詞を吐いて、走り出した。
俺は脚力だけは鍛え続けたから、逃げ足だけは速い。だから護衛もメイドも、ヴィオですら追ってこれなかったようだった。
走り続けると、いつの間にか路地裏に入り込んでしまったようだった。
キョロキョロと辺りを見回しても、ほとんど外に出ることがない俺は道なんか分かるはずもなく、迷子になったと思った頃にはもう遅かった。
「……迷子になった可愛い子に付き物なのは」
俺はやっぱり自覚ある可愛い方だと思うので、
「こんなとこで可愛い子が何してんだぁ?」
「おいおい、上玉かよ。売れば高値がつきそうだぜ?」
ああああ! ですよね! チンピラですよね!
しかもそのまま奴隷商人行きのフラグ立ってますね!
しかも見た目がいいとかで性奴隷になるやつですよね!
逃げ出したいのに、実は曲がった先は行き止まりで背中は壁だったりする。
叫べばいいのに、チンピラは最悪なことに刃物を持っていた。
チンピラ達はジリジリと近づいてくる。
テレビで刃渡り何センチとか良く言うけど、目の前にするとめちゃくちゃ長く見えんのな!この世界テレビないけど!
「やめ……!」
手が伸びてきて、やっとこ絞り出した声は、小さくて助けなんか呼べるものではなかった。
目を逸らしてギュッと思い切り目をつぶった。
いつまで経っても手は伸びてこない、と言うよりは、めちゃくちゃドカドカと殴る音が響いている。
そっと薄目で見ると、魔王のような様相の男がチンピラをのしていた。
「ひっ……!」
むしろその魔王の方が恐怖で引いた。
魔王は返り血を浴びていて、目に光はない。チンピラは完全に伸びていた。
「……大丈夫か、ノエル?」
「ひいいぃ」
ヴィオレットこと魔王は、にっこりと血のついた手を俺に差し出してくる。
本当に13歳なのかよ!お前!
「助けたのに、怯えられるのは心外だな」
「こええよ……そ、そいつら死んでるのか……?」
「いや、殺してない。 憲兵に差し出す。そろそろ護衛も到着するだろう」
ヴィオレットは頬についた血を拭いながら言う。
「……俺、なるべくお前のこと怒らせないように婚約破棄するな……」
「破棄さえしなければ怒りはしないんだがな?」
いや、婚約破棄は絶対するからな。
てか普通この状況、俺がヴィオレットに惚れるフラグなのに、恐怖でそれどころではなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
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