14 / 54
神秘の瞬間
しおりを挟む
先日、ついにセドが赤ちゃんを産んだ。
俺は必死にお祈りをした。
やはり赤ちゃんを産むのは、日本と一緒で命懸けらしい。
クリスもずっとソワソワしていた。これでもまだ落ち着いている方らしい。俺が生まれる時は、もっとソワソワしていてメイドや執事が困るほどだったとか。
そうして、何時間か経ち、俺も緊張疲れし始めた頃。
赤ん坊の声が部屋の外まで響き渡った。
クリスが駆け出して、部屋の中に入っていった。
「おめでとうございます、立派な男の子ですよ」
メイドが抱えている赤ん坊はまだ色んなところが濡れていて、目も開いていない。
日本にいた時は、猿っぽいとか思ったのに。
今目の前にいる赤ん坊は、超ド級の天使だった。
「か、かわ……!」
「セド! ありがとう! よくやった!」
「クリス……」
セドは疲れ切っていたが、メイドから赤ん坊を渡され抱き上げる。
まるで聖母マリア像のような空間が出来上がっていた。
セドは男なのに。
俺はここで冷静になる。
もし、俺とヴィオレットがこのまま婚姻関係を結んだとなれば、確実に俺が孕まされる。
命懸けで赤ん坊を産むことになる。
それだけは嫌だと、全力で思った。
「お、俺は嫌だ……」
「ノエル?」
「俺は絶対、女の子と結婚する……! 俺には無理だ、こんな」
「……またそんなこと言って…、ヴィオレット様だってノエルに無理強いしたりすることはないでしょ?」
いや、あいつは絶対俺を孕ませようとしてくる!
日本でも、なぜか男が孕む漫画が沢山あった!
姉に読まされた俺は知っている。
あの世の中には孕腹やらオメガバースやら男性妊娠の設定があることを。
そして孕ませる側のやつは、セックスしながら言うんだ!
「孕め!孕め!」って!
恐怖に血の気が引いていく感覚がする。
「なんでセドより具合が悪そうになるんだ。 ノエル、座って休みなさい」
クリスに促され、ソファに座る。
クリスはセドから赤ん坊を受け取り、慈しむような微笑みで見ていた。
こ、これが男同士でなければ、俺は安心して見ていられるのに……!
「絶対婚約破棄させてやる……」
俺はもう一度深く心に誓った。
◆
赤ん坊の名前は、エリクと名付けられた。
俺と近親相姦フラグが立ったかに思えたが、俺は既にヴィオレットと婚約中であるし、固定CP勢が絶許になるので有り得ないだろうと思った。
安心して赤ん坊を可愛がれるというものだ。
そして、いつものメンバーが俺の家に遊びに来た。
公爵やら侯爵家がくるから使用人たちは大慌てである。
遊びに来た理由は、言わずもがな、俺の弟を見に来た。
俺は座ってエリクを抱っこして、皆にお披露目をした。
「かっ……わ……! ええー!ノエルの時もこんな感じだったの?!」
「ライ、静かにしろ。起きちゃうだろう」
デーヴがライを諌めるが、ライは興奮していてあまり聞いていないように思える。
「……母上と父上が、俺もこんな感じだったって言ってた」
「うわー、やっぱりね。 ノエルは今でも天使みたいだから、この子もきっとそうなるんだろうなぁ」
ジナルマーが感心したように言う。
「抱っこするか?」
「えっ、いいの?」
なんとなく、ジナルマーがこっちを羨ましそうに見ていることに気づいて、尋ねる。
メイドが横からフォローをしつつ、ジナルマーへエリクを渡した。
すると、エリクは目を覚ました。
「わっ、可愛いー、あったかい!」
「……ジナルマーが抱っこした途端、服を掴んで離さんぞ」
ヴィオレットがエリクの様子が変わったことに気づいた。
エリクのつぶらな瞳が、ジナルマーを見て視線を外さない。そして、ヴィオレットの言う通り、ジナルマーの服を掴んで離さなかった。
まさか。こいつ、産まれた時から自分の獲物が分かってやがるのか。
「……ジナルマー、頑張れ」
「え? なに、ノエル。急に」
ジナルマーの王子のような顔が不思議そうに俺を見るが、俺はそれ以上何も言わんとした。
もはやジナルマーは、女の子と結婚するフラグが絶たれたのだ。
7歳差なんて貴族じゃ当たり前だし、なんとかなるだろ!
「……本当に可愛いな」
「ひっ」
ヴィオレットが不穏な言葉を発する。
俺はなんとなくヴィオレットが言いたいことが分かって、血の気が引いた。
「お、俺は絶対に嫌だ……! 嫌だ!」
「7歳で子供は産んだら大変なことになるからな」
「そういう問題じゃない!」
やっぱり孕ませようとしてた!
「俺は絶対に子供なんか産まない!」
「別に産まなくてもいいぞ」
「え?」
ヴィオレットはジリジリと何故か俺に近づいてくる。 ライとテーヴはなんだか不穏な空気を読み取って少しずつ俺から離れていく。
「結婚すると言うなら、産まなくてもいいぞ」
「ちがう!そこだけじゃない!俺は女の子と結婚するんだ!」
ブンブンと首を横に降って否定する。
ジリジリと近づくので、俺は徐々に壁に追い詰められていた。 いわゆる壁ドンをされると、俺は震えた。
「……女には絶対に渡さんからな」
「ひ、ひいぃ!」
耳元でドスの聞いた声で囁かれた。
こ、怖すぎる、目がマジなんだが!
俺は必死にお祈りをした。
やはり赤ちゃんを産むのは、日本と一緒で命懸けらしい。
クリスもずっとソワソワしていた。これでもまだ落ち着いている方らしい。俺が生まれる時は、もっとソワソワしていてメイドや執事が困るほどだったとか。
そうして、何時間か経ち、俺も緊張疲れし始めた頃。
赤ん坊の声が部屋の外まで響き渡った。
クリスが駆け出して、部屋の中に入っていった。
「おめでとうございます、立派な男の子ですよ」
メイドが抱えている赤ん坊はまだ色んなところが濡れていて、目も開いていない。
日本にいた時は、猿っぽいとか思ったのに。
今目の前にいる赤ん坊は、超ド級の天使だった。
「か、かわ……!」
「セド! ありがとう! よくやった!」
「クリス……」
セドは疲れ切っていたが、メイドから赤ん坊を渡され抱き上げる。
まるで聖母マリア像のような空間が出来上がっていた。
セドは男なのに。
俺はここで冷静になる。
もし、俺とヴィオレットがこのまま婚姻関係を結んだとなれば、確実に俺が孕まされる。
命懸けで赤ん坊を産むことになる。
それだけは嫌だと、全力で思った。
「お、俺は嫌だ……」
「ノエル?」
「俺は絶対、女の子と結婚する……! 俺には無理だ、こんな」
「……またそんなこと言って…、ヴィオレット様だってノエルに無理強いしたりすることはないでしょ?」
いや、あいつは絶対俺を孕ませようとしてくる!
日本でも、なぜか男が孕む漫画が沢山あった!
姉に読まされた俺は知っている。
あの世の中には孕腹やらオメガバースやら男性妊娠の設定があることを。
そして孕ませる側のやつは、セックスしながら言うんだ!
「孕め!孕め!」って!
恐怖に血の気が引いていく感覚がする。
「なんでセドより具合が悪そうになるんだ。 ノエル、座って休みなさい」
クリスに促され、ソファに座る。
クリスはセドから赤ん坊を受け取り、慈しむような微笑みで見ていた。
こ、これが男同士でなければ、俺は安心して見ていられるのに……!
「絶対婚約破棄させてやる……」
俺はもう一度深く心に誓った。
◆
赤ん坊の名前は、エリクと名付けられた。
俺と近親相姦フラグが立ったかに思えたが、俺は既にヴィオレットと婚約中であるし、固定CP勢が絶許になるので有り得ないだろうと思った。
安心して赤ん坊を可愛がれるというものだ。
そして、いつものメンバーが俺の家に遊びに来た。
公爵やら侯爵家がくるから使用人たちは大慌てである。
遊びに来た理由は、言わずもがな、俺の弟を見に来た。
俺は座ってエリクを抱っこして、皆にお披露目をした。
「かっ……わ……! ええー!ノエルの時もこんな感じだったの?!」
「ライ、静かにしろ。起きちゃうだろう」
デーヴがライを諌めるが、ライは興奮していてあまり聞いていないように思える。
「……母上と父上が、俺もこんな感じだったって言ってた」
「うわー、やっぱりね。 ノエルは今でも天使みたいだから、この子もきっとそうなるんだろうなぁ」
ジナルマーが感心したように言う。
「抱っこするか?」
「えっ、いいの?」
なんとなく、ジナルマーがこっちを羨ましそうに見ていることに気づいて、尋ねる。
メイドが横からフォローをしつつ、ジナルマーへエリクを渡した。
すると、エリクは目を覚ました。
「わっ、可愛いー、あったかい!」
「……ジナルマーが抱っこした途端、服を掴んで離さんぞ」
ヴィオレットがエリクの様子が変わったことに気づいた。
エリクのつぶらな瞳が、ジナルマーを見て視線を外さない。そして、ヴィオレットの言う通り、ジナルマーの服を掴んで離さなかった。
まさか。こいつ、産まれた時から自分の獲物が分かってやがるのか。
「……ジナルマー、頑張れ」
「え? なに、ノエル。急に」
ジナルマーの王子のような顔が不思議そうに俺を見るが、俺はそれ以上何も言わんとした。
もはやジナルマーは、女の子と結婚するフラグが絶たれたのだ。
7歳差なんて貴族じゃ当たり前だし、なんとかなるだろ!
「……本当に可愛いな」
「ひっ」
ヴィオレットが不穏な言葉を発する。
俺はなんとなくヴィオレットが言いたいことが分かって、血の気が引いた。
「お、俺は絶対に嫌だ……! 嫌だ!」
「7歳で子供は産んだら大変なことになるからな」
「そういう問題じゃない!」
やっぱり孕ませようとしてた!
「俺は絶対に子供なんか産まない!」
「別に産まなくてもいいぞ」
「え?」
ヴィオレットはジリジリと何故か俺に近づいてくる。 ライとテーヴはなんだか不穏な空気を読み取って少しずつ俺から離れていく。
「結婚すると言うなら、産まなくてもいいぞ」
「ちがう!そこだけじゃない!俺は女の子と結婚するんだ!」
ブンブンと首を横に降って否定する。
ジリジリと近づくので、俺は徐々に壁に追い詰められていた。 いわゆる壁ドンをされると、俺は震えた。
「……女には絶対に渡さんからな」
「ひ、ひいぃ!」
耳元でドスの聞いた声で囁かれた。
こ、怖すぎる、目がマジなんだが!
22
お気に入りに追加
1,873
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる