13 / 54
BLの話は見たくない
しおりを挟む
俺は目が覚めたら馬車に揺られていた。
「ん……?」
「目が覚めたか」
「ノエルー、大丈夫かー?」
俺は起きた瞬間、バッと身を起こした。
何故ならば目を開けた瞬間に目に入ってきたのがヴィオレットの顔だった。しかも下からのアングルで。
つまり、ヴィオレットに膝枕されていたようだった。
「…おい。手は出さないんじゃねーのか」
「手は一切出してない。 ノエルが寝てしまったから仕方なく」
「昏倒させたんじゃねーか! マジで死ぬかと思ったぞ!」
「おかげで寝顔が見れたな」
くっそ! コイツ、全然反省してねー!
俺はその場で地団駄を踏みたい衝動に駆られるが、必死に耐え、無表情に戻した。
「ノエルの寝顔、天使みたいだったなー!」
「忘れろ。今すぐだ」
セドのウトウトする姿を見たことある俺としては、あれが幼くなっただけだと思うと尋常ではない破壊力があることが分かっている。
「そろそろ着くぞ」
馬車が停止すると、最初にライが降りて、次にヴィオレットが降りた。ヴィオレットは降りた先で俺を待っていたらしく、エスコートされそうになる。
「……」
「婚約者をエスコートするのは当たり前だろう?」
黙って降りないで、ジッとヴィオレットを見ていたら思っていたことに気づかれたらしい。
婚約者って便利ワードすぎるだろ。
だんだんこれに慣れてきたら何でも婚約者だからで済まされそうな気がする。
渋々ヴィオレットの手を取って馬車を降りた。
そして、テーヴァルの家の中へ入っていった。ヴィオレットとジナルマーの家とは少し違い、豪奢とは言わないが、ところどころで意匠の繊細な細工が見受けられる。
使用人に案内されながら中を進むと、応接室のような場所に通された。
部屋の中には既にテーヴが待っていた。
「3人で来たのか? どうしたんだ?」
「……ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がっんぐ」
「テーヴ、婚約は誰が決めたんだい?」
また俺の口がヴィオレットによって塞がれる。
ライは俺の後ろに隠れるように見ている。おい、いつもはもっと騒がしいだろうが。キャラ変するな。
というかまた息が出来なくなるから離せ!
俺がバタバタしても、やはりヴィオレットは関係ないようだった。むしろ後ろから押さえつけようとしてきた。どさくさに紛れて抱きしめる形になってるんだが!
テーヴは憐れなものを見る目をしている。そんな目で俺を見るな!
「婚約自体は……親同士が」
「テーヴとしては、望んだ婚約なのか?」
「……どういう意味でしょうか」
テーヴの目がキツくなって、礼儀正しい奴にしては珍しくヴィオレットを睨んでいるように見える。
「テーヴ自身が望んだ婚約かどうか、気になってね」
「……その後ろで隠れてるやつがなんか言いましたね」
「テーヴ……」
「はぁ。大方、ライの姉が何か言ったんでしょう。お手数お掛けしましたヴィオレット様、後は俺が何とかします」
テーヴは全て理解したというような顔をして、俺の近くを通り過ぎ、ライの手を掴んでいた。
ちなみに俺の息は出来るように鼻のところは抑えないようにされていた。ヴィオレットが学んでいる。昏倒せずに済むのは嬉しいが、BL話を見たくも聞きたくもない俺としては嬉しくない!
「て、テーヴ…、俺…」
「ちゃんと説明するから。ヴィオレット様、申し訳ありませんが…」
「ふむ、ノエルと俺は帰るとしよう」
何か納得したヴィオレットは勝手に帰ろうとしてる。
ズルズルと引きづられ、俺はほぼテーヴと話すことなく馬車に乗らされた。
「っぷは! ……解決したんだろうな」
「しただろうな。 テーヴが婚約をライに変えたんだろう。テーヴとしては最初からライと婚約するつもりだったのかもしれないな」
「……なんで俺の口を塞いだんだよ!」
「あそこでノエルが『ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がってるのか?』とライの前でそんな聞き方をしたら、テーヴが違うと言っても、ライは言わされていると思うだろう」
「っぐ…」
俺の聞き方が悪くて拗れるかもしれないから、ヴィオレットが仲介したということらしい。
それで、仲介されていることに気づいたテーヴが、ライにちゃんと説明すると言ったらしい。
「というか、手は出さないやくそ」
「婚約者のフォローは当たり前だろう?」
「便利ワードにすんな!」
っていうか、今後ライとテーヴが現れる時はBLになるってことじゃん!
聞きたくない考えたくない見たくない!
「ん……?」
「目が覚めたか」
「ノエルー、大丈夫かー?」
俺は起きた瞬間、バッと身を起こした。
何故ならば目を開けた瞬間に目に入ってきたのがヴィオレットの顔だった。しかも下からのアングルで。
つまり、ヴィオレットに膝枕されていたようだった。
「…おい。手は出さないんじゃねーのか」
「手は一切出してない。 ノエルが寝てしまったから仕方なく」
「昏倒させたんじゃねーか! マジで死ぬかと思ったぞ!」
「おかげで寝顔が見れたな」
くっそ! コイツ、全然反省してねー!
俺はその場で地団駄を踏みたい衝動に駆られるが、必死に耐え、無表情に戻した。
「ノエルの寝顔、天使みたいだったなー!」
「忘れろ。今すぐだ」
セドのウトウトする姿を見たことある俺としては、あれが幼くなっただけだと思うと尋常ではない破壊力があることが分かっている。
「そろそろ着くぞ」
馬車が停止すると、最初にライが降りて、次にヴィオレットが降りた。ヴィオレットは降りた先で俺を待っていたらしく、エスコートされそうになる。
「……」
「婚約者をエスコートするのは当たり前だろう?」
黙って降りないで、ジッとヴィオレットを見ていたら思っていたことに気づかれたらしい。
婚約者って便利ワードすぎるだろ。
だんだんこれに慣れてきたら何でも婚約者だからで済まされそうな気がする。
渋々ヴィオレットの手を取って馬車を降りた。
そして、テーヴァルの家の中へ入っていった。ヴィオレットとジナルマーの家とは少し違い、豪奢とは言わないが、ところどころで意匠の繊細な細工が見受けられる。
使用人に案内されながら中を進むと、応接室のような場所に通された。
部屋の中には既にテーヴが待っていた。
「3人で来たのか? どうしたんだ?」
「……ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がっんぐ」
「テーヴ、婚約は誰が決めたんだい?」
また俺の口がヴィオレットによって塞がれる。
ライは俺の後ろに隠れるように見ている。おい、いつもはもっと騒がしいだろうが。キャラ変するな。
というかまた息が出来なくなるから離せ!
俺がバタバタしても、やはりヴィオレットは関係ないようだった。むしろ後ろから押さえつけようとしてきた。どさくさに紛れて抱きしめる形になってるんだが!
テーヴは憐れなものを見る目をしている。そんな目で俺を見るな!
「婚約自体は……親同士が」
「テーヴとしては、望んだ婚約なのか?」
「……どういう意味でしょうか」
テーヴの目がキツくなって、礼儀正しい奴にしては珍しくヴィオレットを睨んでいるように見える。
「テーヴ自身が望んだ婚約かどうか、気になってね」
「……その後ろで隠れてるやつがなんか言いましたね」
「テーヴ……」
「はぁ。大方、ライの姉が何か言ったんでしょう。お手数お掛けしましたヴィオレット様、後は俺が何とかします」
テーヴは全て理解したというような顔をして、俺の近くを通り過ぎ、ライの手を掴んでいた。
ちなみに俺の息は出来るように鼻のところは抑えないようにされていた。ヴィオレットが学んでいる。昏倒せずに済むのは嬉しいが、BL話を見たくも聞きたくもない俺としては嬉しくない!
「て、テーヴ…、俺…」
「ちゃんと説明するから。ヴィオレット様、申し訳ありませんが…」
「ふむ、ノエルと俺は帰るとしよう」
何か納得したヴィオレットは勝手に帰ろうとしてる。
ズルズルと引きづられ、俺はほぼテーヴと話すことなく馬車に乗らされた。
「っぷは! ……解決したんだろうな」
「しただろうな。 テーヴが婚約をライに変えたんだろう。テーヴとしては最初からライと婚約するつもりだったのかもしれないな」
「……なんで俺の口を塞いだんだよ!」
「あそこでノエルが『ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がってるのか?』とライの前でそんな聞き方をしたら、テーヴが違うと言っても、ライは言わされていると思うだろう」
「っぐ…」
俺の聞き方が悪くて拗れるかもしれないから、ヴィオレットが仲介したということらしい。
それで、仲介されていることに気づいたテーヴが、ライにちゃんと説明すると言ったらしい。
「というか、手は出さないやくそ」
「婚約者のフォローは当たり前だろう?」
「便利ワードにすんな!」
っていうか、今後ライとテーヴが現れる時はBLになるってことじゃん!
聞きたくない考えたくない見たくない!
22
お気に入りに追加
1,873
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる