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BLの話は見たくない

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俺は目が覚めたら馬車に揺られていた。

「ん……?」
「目が覚めたか」
「ノエルー、大丈夫かー?」

俺は起きた瞬間、バッと身を起こした。
何故ならば目を開けた瞬間に目に入ってきたのがヴィオレットの顔だった。しかも下からのアングルで。
つまり、ヴィオレットに膝枕されていたようだった。

「…おい。手は出さないんじゃねーのか」
「手は一切出してない。 ノエルが寝てしまったから仕方なく」
「昏倒させたんじゃねーか! マジで死ぬかと思ったぞ!」
「おかげで寝顔が見れたな」

くっそ! コイツ、全然反省してねー!
俺はその場で地団駄を踏みたい衝動に駆られるが、必死に耐え、無表情に戻した。

「ノエルの寝顔、天使みたいだったなー!」
「忘れろ。今すぐだ」

セドのウトウトする姿を見たことある俺としては、あれが幼くなっただけだと思うと尋常ではない破壊力があることが分かっている。

「そろそろ着くぞ」

馬車が停止すると、最初にライが降りて、次にヴィオレットが降りた。ヴィオレットは降りた先で俺を待っていたらしく、エスコートされそうになる。

「……」
「婚約者をエスコートするのは当たり前だろう?」

黙って降りないで、ジッとヴィオレットを見ていたら思っていたことに気づかれたらしい。
婚約者って便利ワードすぎるだろ。
だんだんこれに慣れてきたら何でも婚約者だからで済まされそうな気がする。

渋々ヴィオレットの手を取って馬車を降りた。

そして、テーヴァルの家の中へ入っていった。ヴィオレットとジナルマーの家とは少し違い、豪奢とは言わないが、ところどころで意匠の繊細な細工が見受けられる。
使用人に案内されながら中を進むと、応接室のような場所に通された。
部屋の中には既にテーヴが待っていた。

「3人で来たのか? どうしたんだ?」
「……ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がっんぐ」
「テーヴ、婚約は誰が決めたんだい?」

また俺の口がヴィオレットによって塞がれる。
ライは俺の後ろに隠れるように見ている。おい、いつもはもっと騒がしいだろうが。キャラ変するな。
というかまた息が出来なくなるから離せ!
俺がバタバタしても、やはりヴィオレットは関係ないようだった。むしろ後ろから押さえつけようとしてきた。どさくさに紛れて抱きしめる形になってるんだが!

テーヴは憐れなものを見る目をしている。そんな目で俺を見るな!

「婚約自体は……親同士が」
「テーヴとしては、望んだ婚約なのか?」
「……どういう意味でしょうか」

テーヴの目がキツくなって、礼儀正しい奴にしては珍しくヴィオレットを睨んでいるように見える。

「テーヴ自身が望んだ婚約かどうか、気になってね」
「……その後ろで隠れてるやつがなんか言いましたね」
「テーヴ……」
「はぁ。大方、ライの姉が何か言ったんでしょう。お手数お掛けしましたヴィオレット様、後は俺が何とかします」

テーヴは全て理解したというような顔をして、俺の近くを通り過ぎ、ライの手を掴んでいた。

ちなみに俺の息は出来るように鼻のところは抑えないようにされていた。ヴィオレットが学んでいる。昏倒せずに済むのは嬉しいが、BL話を見たくも聞きたくもない俺としては嬉しくない!

「て、テーヴ…、俺…」
「ちゃんと説明するから。ヴィオレット様、申し訳ありませんが…」
「ふむ、ノエルと俺は帰るとしよう」

何か納得したヴィオレットは勝手に帰ろうとしてる。

ズルズルと引きづられ、俺はほぼテーヴと話すことなく馬車に乗らされた。

「っぷは! ……解決したんだろうな」
「しただろうな。 テーヴが婚約をライに変えたんだろう。テーヴとしては最初からライと婚約するつもりだったのかもしれないな」
「……なんで俺の口を塞いだんだよ!」
「あそこでノエルが『ライとテーヴか婚約したことをテーヴは嫌がってるのか?』とライの前でそんな聞き方をしたら、テーヴが違うと言っても、ライは言わされていると思うだろう」
「っぐ…」

俺の聞き方が悪くて拗れるかもしれないから、ヴィオレットが仲介したということらしい。
それで、仲介されていることに気づいたテーヴが、ライにちゃんと説明すると言ったらしい。

「というか、手は出さないやくそ」
「婚約者のフォローは当たり前だろう?」
「便利ワードにすんな!」

っていうか、今後ライとテーヴが現れる時はBLになるってことじゃん!

聞きたくない考えたくない見たくない!
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