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BLの話は聞きたくない
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「聞いてくれよー!」
ライオドア…いつも明るい笑顔のライが眉尻を下げて俺の家まで来た。
メイド達は初めてのお友達訪問でニコニコしている。が、俺は無表情を通している。
テーブルを挟んでお互いソファに座った所でライが嘆くように叫んだ。
「……嫌だ」
「ええー、そんな事言わず! 婚約したノエルなら聞いてくれると思ってここに来たんだぞー!」
「ぐっ、それは手違いで」
なんつー痛いところを抉ってくるんだコイツは。いや、婚約してる限り抉られ続けるのか。やっぱあの契約書燃やすしかない。
そして伯爵家の自分より家格の上な侯爵家のライへの口調は砕けすぎていて、メイドも少しハラハラしているようだった。
「手違いじゃなくてちゃんと契約書読まなかったせいなんだろー? ノエルって抜けてるとこあんのな」
「……今すぐ帰ってくれていいんだぞ」
「ああー! やっぱ無し! 聞いてくれよー!」
俺はツーンとそっぽを向いた。しかしライは挫けず話を進める。
「実はテーヴと婚約するんだよ」
「……おめでとう」
「全然おめでたくないんだよ!!」
「は?」
お祝いしたくないのに友人だからしてやったんだぞ。
ライとテーヴは両思いだろ。
「テーヴは好きな子が居るらしいんだ」
「はい、解散」
「ええー! なんで!」
あれだろ、これ。好きな子が誰なのか探ってる内に、やっぱり俺じゃダメなんだって涙目になってるところを好きなのはお前だよってなるやつな。
分かってんだよ。展開が。
大体明らかにテーヴはライを意識してたし、この言い方するライもテーヴが好きなのは確定だし。
解散以外の選択肢は無い。
「友達だろー!」
「テーヴはライが好きでライもテーヴが好き。はい解散」
「え! テーヴが好きなのは俺じゃないぞ!」
何言ってんだこいつ。
あんな分かりやすいやつなかなか居ないぞ
テーヴがライを見る目は明らかに優しい目をしてた。
「テーヴが好きなのは俺よりも大人しい……ジナルマー様とかのような人で…」
「ジナルマー様は確かに穏やかな人だけど」
「俺は騒がしいし、ガサツだし、口もあんまり良くないしさ」
「明るくて元気で人懐っこいって言うんだよ」
「へ」
「ライがなんでそんなに自分を卑下するのか分からないけど、テーヴがそう言ったのか?」
俺がライに尋ねると、ライは首をブンブンと横に振った。
「ならテーヴに直接聞けよ。ジナルマー様のことが好きなの?ってな」
「えっ、やだよー! 」
「なんでだよ、ダメなら早く聞いて玉砕しろ」
ただでさえ聞きたくない、友人のBL話を聞いてやっているのに。
ライはぷく、とほっぺたをふくらませたと思えば俺の事を羨ましげに見てくる。
「良いなー…ノエルは上手くいってるみたいだし」
「……何を根拠に上手くいってると思っているのか説明してくれ」
「え? 何って……そのブレスレットだよ」
先日の誕生日でヴィオレットから貰ったブレスレットだった。金色のチェーンにエメラルドの宝石のそれは、明らかに婚約者が居ますと示していた。
「……っ!」
外すのを失念していた。
最初は不自然な気がしてつけたり外したりしていた。しかし今やシャワーに当たっても大丈夫な金属を使っていることを知ってからは、外す手間を惜しむようになり、徐々に付けている抵抗は無くなったのだ。
決して! 俺が! 望んで付けているわけではない!
「赤くなってかわいいなー、ノエルは」
「んな! 俺のことはどうでもいいだろ!」
「ヴィオレット様がそんな執着見せてくるなんて信じられないよ。ジナルマー様以外にね」
「早く飽きてくれ!」
俺は女の子と結婚したい!
あんな13歳の割に、頭もよく回り、人を破滅に追い込み、背も体格も顔も恵まれてるようなやつ、地獄に落ちてくれ!
「…ヴィオレット様のことを狙ってる人沢山いたんだよ?」
「俺は狙ってない」
「そうかもだけど、こう……自慢じゃないけどそういう風に思わないの?ノエルって」
「なんの自慢だ、俺は女にモテたい!」
「ノエルの顔じゃ、女の子にモテるのは無理があるよー」
ライの言葉であからさまに落ちこむ。
「そんなことより!テーヴの話だろ!」
「はー……でもどうしようもないだろー? テーヴが好きなのは俺じゃないだろうし」
「はぁ? さっきも言ったけど…」
「何の話だ?」
「ひっ」
俺の背後から耳元で囁くように言うのは、振り向かなくてももう分かる。ゾッとした。
耳を手で押えて、振り返るとそこに立っていたのはヴィオレットだった。
なんで俺の家なのに来たことを誰も教えてくれないんだよ!
「ヴィオレット様! ノエルに会いに来たんですか?」
「ああ、婚約者殿の様子を見に来た」
「来なくていい見なくていい帰れ!」
ニヤニヤと見てくるヴィオレットに俺が帰れと言うと、メイドはライの時以上にハラハラしていた。
そりゃ公爵家だしな。 当たり前よな。
「こら! ヴィオレット様になんて口の利き方をしているの!ノエル!」
「は、母上……っ、これは……!」
気づかなかったがセドがその後ろに居たらしく、叱られてしまった。
俺は滅多に叱られないのに、ヴィオレットのせいで怒られてしまった。奴はニヤニヤし続けている。本気でムカつく。
「言い訳は無用! 謝りなさい!」
「ぐっ…」
セドには逆らえない俺は、ヴィオに謝るしかない。
「ああ、謝らなくてもいいぞ? 謝罪1回につきハグ1回はどうだ?」
「申し訳ありませんでした、以後口調に関しては最大限気をつけさせていただきます」
「は、早口だなー…」
「全くもう!」
ヴィオレットのやつがめちゃくちゃ楽しんでやがる! くっそ!
ライオドア…いつも明るい笑顔のライが眉尻を下げて俺の家まで来た。
メイド達は初めてのお友達訪問でニコニコしている。が、俺は無表情を通している。
テーブルを挟んでお互いソファに座った所でライが嘆くように叫んだ。
「……嫌だ」
「ええー、そんな事言わず! 婚約したノエルなら聞いてくれると思ってここに来たんだぞー!」
「ぐっ、それは手違いで」
なんつー痛いところを抉ってくるんだコイツは。いや、婚約してる限り抉られ続けるのか。やっぱあの契約書燃やすしかない。
そして伯爵家の自分より家格の上な侯爵家のライへの口調は砕けすぎていて、メイドも少しハラハラしているようだった。
「手違いじゃなくてちゃんと契約書読まなかったせいなんだろー? ノエルって抜けてるとこあんのな」
「……今すぐ帰ってくれていいんだぞ」
「ああー! やっぱ無し! 聞いてくれよー!」
俺はツーンとそっぽを向いた。しかしライは挫けず話を進める。
「実はテーヴと婚約するんだよ」
「……おめでとう」
「全然おめでたくないんだよ!!」
「は?」
お祝いしたくないのに友人だからしてやったんだぞ。
ライとテーヴは両思いだろ。
「テーヴは好きな子が居るらしいんだ」
「はい、解散」
「ええー! なんで!」
あれだろ、これ。好きな子が誰なのか探ってる内に、やっぱり俺じゃダメなんだって涙目になってるところを好きなのはお前だよってなるやつな。
分かってんだよ。展開が。
大体明らかにテーヴはライを意識してたし、この言い方するライもテーヴが好きなのは確定だし。
解散以外の選択肢は無い。
「友達だろー!」
「テーヴはライが好きでライもテーヴが好き。はい解散」
「え! テーヴが好きなのは俺じゃないぞ!」
何言ってんだこいつ。
あんな分かりやすいやつなかなか居ないぞ
テーヴがライを見る目は明らかに優しい目をしてた。
「テーヴが好きなのは俺よりも大人しい……ジナルマー様とかのような人で…」
「ジナルマー様は確かに穏やかな人だけど」
「俺は騒がしいし、ガサツだし、口もあんまり良くないしさ」
「明るくて元気で人懐っこいって言うんだよ」
「へ」
「ライがなんでそんなに自分を卑下するのか分からないけど、テーヴがそう言ったのか?」
俺がライに尋ねると、ライは首をブンブンと横に振った。
「ならテーヴに直接聞けよ。ジナルマー様のことが好きなの?ってな」
「えっ、やだよー! 」
「なんでだよ、ダメなら早く聞いて玉砕しろ」
ただでさえ聞きたくない、友人のBL話を聞いてやっているのに。
ライはぷく、とほっぺたをふくらませたと思えば俺の事を羨ましげに見てくる。
「良いなー…ノエルは上手くいってるみたいだし」
「……何を根拠に上手くいってると思っているのか説明してくれ」
「え? 何って……そのブレスレットだよ」
先日の誕生日でヴィオレットから貰ったブレスレットだった。金色のチェーンにエメラルドの宝石のそれは、明らかに婚約者が居ますと示していた。
「……っ!」
外すのを失念していた。
最初は不自然な気がしてつけたり外したりしていた。しかし今やシャワーに当たっても大丈夫な金属を使っていることを知ってからは、外す手間を惜しむようになり、徐々に付けている抵抗は無くなったのだ。
決して! 俺が! 望んで付けているわけではない!
「赤くなってかわいいなー、ノエルは」
「んな! 俺のことはどうでもいいだろ!」
「ヴィオレット様がそんな執着見せてくるなんて信じられないよ。ジナルマー様以外にね」
「早く飽きてくれ!」
俺は女の子と結婚したい!
あんな13歳の割に、頭もよく回り、人を破滅に追い込み、背も体格も顔も恵まれてるようなやつ、地獄に落ちてくれ!
「…ヴィオレット様のことを狙ってる人沢山いたんだよ?」
「俺は狙ってない」
「そうかもだけど、こう……自慢じゃないけどそういう風に思わないの?ノエルって」
「なんの自慢だ、俺は女にモテたい!」
「ノエルの顔じゃ、女の子にモテるのは無理があるよー」
ライの言葉であからさまに落ちこむ。
「そんなことより!テーヴの話だろ!」
「はー……でもどうしようもないだろー? テーヴが好きなのは俺じゃないだろうし」
「はぁ? さっきも言ったけど…」
「何の話だ?」
「ひっ」
俺の背後から耳元で囁くように言うのは、振り向かなくてももう分かる。ゾッとした。
耳を手で押えて、振り返るとそこに立っていたのはヴィオレットだった。
なんで俺の家なのに来たことを誰も教えてくれないんだよ!
「ヴィオレット様! ノエルに会いに来たんですか?」
「ああ、婚約者殿の様子を見に来た」
「来なくていい見なくていい帰れ!」
ニヤニヤと見てくるヴィオレットに俺が帰れと言うと、メイドはライの時以上にハラハラしていた。
そりゃ公爵家だしな。 当たり前よな。
「こら! ヴィオレット様になんて口の利き方をしているの!ノエル!」
「は、母上……っ、これは……!」
気づかなかったがセドがその後ろに居たらしく、叱られてしまった。
俺は滅多に叱られないのに、ヴィオレットのせいで怒られてしまった。奴はニヤニヤし続けている。本気でムカつく。
「言い訳は無用! 謝りなさい!」
「ぐっ…」
セドには逆らえない俺は、ヴィオに謝るしかない。
「ああ、謝らなくてもいいぞ? 謝罪1回につきハグ1回はどうだ?」
「申し訳ありませんでした、以後口調に関しては最大限気をつけさせていただきます」
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