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チョロいって前世でも言われた気がする

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お茶会ぶりの公爵家に到着し、俺はヴィオレットの目の前で紅茶を優雅に含み、ソーサーにカップを置いた。

ヴィオレットはテーブルに肘をつき、手に顎を載せて微笑みながらこちらを見ていた。

こないだの敵意の眼光はどうした。

ジナルマー過激勢、同担拒否のあの威圧は一体どこに消えたんだ。

「それで? ここに来てくれたということは、縁談を引き受けてくれるということか?」

ヴィオレットが微笑みを絶やさず、俺の顔をじっと見ている。
俺は若干の居心地の悪さを感じながらも、どう返事をすべきか考えていた。

俺の家は伯爵家。
ヴィオレットの家は公爵家。
俺が「女の子と結婚したいので縁談をなかったことにして下さい」といえば、格上の公爵家を断ったとして伯爵家であるうちの悪評が立って、益々縁談が来なくなるだろう。
それは本気で困る。俺は意地でも女の子と結婚したい。

つまり、ヴィオレット自身に諦めてもらい、ヴィオレットに婚約破棄させる方法が1番理想的だということだ。

つまり、ここでのベストな返事はこれだ。

「……まだ、考えさせて頂きたいです」

保留だ。
おれが保留し続ければ、ヴィオレットも日が経つにつれ、だんだん諦めてくれるだろう。
後は俺に激甘なクリスに、保留の返事を出し続けさせればいい。

しかし、そんな俺の内心を分かっていたかのように微笑みを崩さないヴィオレットだった。

「そうか。 では保留で構わない」
「あ、ありがとうございま」
「しかし、君のその容姿で保留にするということはどういうことか分かるか?」
「え?」

ヴィオレットの真意が図れず、聞き返す。

「君はこれからどんどん社交を行っていくだろう。その度に縁談がくると思う」
「ぐ」

俺はセドに似ている自覚が大いにある。

セドも俺と同じくらいの頃は色んなところからアプローチがあったらしい。
しかし、セドの場合は生まれた時からクリスの婚約者だったおかげでアプローチもほとんどなかったようだ。

つまり、まだ婚約者が居ない俺は、縁談がバンバン舞い込んでくるというわけだ。

「これは私からの提案だが」

やはり微笑みは崩さない。
むしろ、逃がさないと言わんばかりの圧すら感じてきて、背中に恐怖を背負う。

「君はこの縁談を引き受けて、他の縁談を来なくする。そして、君が結婚可能な16歳になった時に君が私を好きになっていなかったら縁談を無かったことにしよう」

天啓だった。
俺が好きにならないだけで、他の縁談を断り続けることが出来る。
素晴らしい提案で、思わず席を立って拍手をしたいくらいだった。

「引き受けてくれるか?」
「引き受けましょう」

こうして縁談は成立した。
もちろん、結婚するまで一切手は出さないことを約束させた。
キスやらそれ以上されるのはゴメンだ。

「今すぐ縁談成立の証明書を書こう」

そう言うと、近くにいたメイドに契約書のような物を持ってこさせて、それをテーブルに置いた。

契約書には、
俺が縁談を引き受けること。
引き受けても、俺が16までにヴィオレットを好きでなければ結婚はしない。
16歳までは手を出さない。
ということが書かれていた。

俺はメイドに渡されたペンで自分のサインを書いた。

「では、契約成立だ」

契約書をヴィオレットが奪うように手に取り、すぐさまメイドに渡していた。

「これからよろしく頼むよ、婚約者殿」
「よ、よろしく…」
「婚約者らしく、名前で呼び合おうか。私はノエルと呼ぶけれど…私のことはヴィオで良い」
「は、はぁ」

生返事をしたが、目の前の男にとったらその返事ではなかったようで、微笑みながら俺を見るばかりだった。

「ヴィオ様……?」

これが答えかどうか分からず呼んだ。
しかし、どうやら合っていたようで、うんうんと頷いていた。

あれ。俺は縁談破棄するためにここに来たはずでは?





そして、婚約成立して、家に帰ってセドに言われた言葉に俺は絶望した。

「え?! 婚約してきちゃったの?! それじゃ女の子の縁談も来なくなるよ?!」

ようやく、ヴィオレットに嵌められたことに気づいたのだった。
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