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フラグは自分で折る
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「え……? 俺に、縁談?」
茶会が終わり、1週間が経った。
朝食が終わって、家族で食後のお茶を飲んでいた時だった。
母はニコニコと嬉しそうに、父はギリギリと悔しそうにしていた。
歯が削れるから止めた方が…なんて現実逃避もしたくなるほどの寝耳に水な話だった。
「そうだよ。これがお相手の絵だよ」
釣書を渡される。
俺はこの世にいるだろう神に祈りながらゆっくりと釣書を開けた。
まだチラ見程度にしか開けていないが、見覚えのある顔が見えた気がしてバンッ!と勢いよく閉じた。
「え……?」
「やだ、ノエル見るの恥ずかしがってるの?」
セドの言葉なんか気にしてられなかった。
「ノエルにはまだ早い!」
クリスの声がうるさい。
「は、母上…この釣書に間違いは……」
「もー、そんなに恥ずかしがって。 間違いなく、君宛の縁談だよ?」
茶化すような言い方に、セドとクリスがイチャつき始めた時よりもイラッとしてしまいそうだった。
俺の顔から血の気は完全に引いていた。
「う、嘘だろ……」
「そんなに嬉しいの?」
「嘘…こんなの、絶対、ありえない、嘘だ……!」
俺は内心パニックだった。
あれだけフラグを立てないように無表情を徹していたのに。
あれか。あのアーモンドチョコのせいか!
あのチョコはめちゃくちゃ美味しくて、つい口元が緩んだのだ。
え、まさか本当にそれだけ……?それだけでまさかあの
ジナルマー過激勢、同担拒否男が……!
「どうした?ノエル? やっぱり嫌だよな?」
「……い、いやだ……! 嫌だ!」
俺は女の子と結婚したい!
こんなの望んでいない!
セドは俺がまだ恥ずかしがっていると思っている。頼みの綱はクリスだけだ。
助けてくれクリス!目の前でイチャイチャしても俺はもう呪ったりしない!
「そうだよな! やっぱりお断り……」
「クリス。出来るわけないでしょう? 格上の公爵家からの縁談だよ? 」
クリスがガックリと項垂れて、反抗を辞めてしまった。
え。
いやいやいや!! 諦めないでくれ!
俺にはもうクリスしか居ないんだ!
「ち、父上! 俺は本当に嫌です! 俺はまだ父上と母上と一緒に居たいです!」
「やだなぁ、そんなすぐに嫁ぐわけないよ。ノエルがもっと大きくなってからだから、まだまだ私たちと一緒に暮らせるよ?」
「ちが……っ、お、俺は女の子と……!」
「女の子?」
項垂れたままのクリスに縋り付きながら、セドに涙目で切実に訴えた。
「え?ノエル、女の子と結婚したかったの?」
伝わったようだった。
俺は全力で首をブンブンと上下に振って、この縁談をなかったことにしてほしいと願った。
「ノエルの顔だと、女の子の縁談は見込めないよ? 無理だと思う」
ハッキリ、キッパリ、実の息子にも容赦なく言い放たれた言葉に、俺はクリスの隣で一緒に項垂れた。
項垂れた俺を見て、セドが焦ったように付け加える。
「よっぽどボーイッシュな子なら分からなくもないけど、貴族の女の子でそんな子見たことないから……! の、ノエル! 泣いてるの?!」
ようやく俺が縁談を嫌がっていた事が伝わったらしい。
セドが勘違いしたままじゃなくて良かったと思いつつ、なんとかしてくれと言いたい。
ポロポロと床に零れる水滴が、じわりと絨毯に染み込む。
「う、うーん……でも悪い話じゃないんだよ? 公爵家に嫁げるなんてなかなかない縁談だし、将来は約束されたようなものだよ?ほらクリスみたいにハンサムだし、ね?」
ね?じゃない。セド、そこじゃない。
俺はあのお茶会でやらかしたのだ。たった1回の茶会で、あんなに気をつけていたフラグを立ててしまったのだ。
あの、ヴィオレットに。
「しかもこれ、ヴィオレット様本人の希望みたいだよ? 貴族同士の結婚で、親の決めた婚約者じゃないんだよ?わ、わー……!凄い!」
取り繕った笑顔で励まそうとするセド。
俺の落ち込み加減に困ってしまったようで、提案をしてくる。
「それなら一度、本人に会ってみたらどうかな? ね? ノエルが説得出来たら、向こうも諦めてくれるだろうし…」
俺はバッと顔を床から上げてセドを見た。 セドはビクッとして咳払いをした。
「ヴィ、ヴィオレット様が諦めたらだからね?こっちからのお断りはダメだよ?」
「……わかった! 会う! 絶対に破棄させる!」
俺のフラグは俺の手で折る!
茶会が終わり、1週間が経った。
朝食が終わって、家族で食後のお茶を飲んでいた時だった。
母はニコニコと嬉しそうに、父はギリギリと悔しそうにしていた。
歯が削れるから止めた方が…なんて現実逃避もしたくなるほどの寝耳に水な話だった。
「そうだよ。これがお相手の絵だよ」
釣書を渡される。
俺はこの世にいるだろう神に祈りながらゆっくりと釣書を開けた。
まだチラ見程度にしか開けていないが、見覚えのある顔が見えた気がしてバンッ!と勢いよく閉じた。
「え……?」
「やだ、ノエル見るの恥ずかしがってるの?」
セドの言葉なんか気にしてられなかった。
「ノエルにはまだ早い!」
クリスの声がうるさい。
「は、母上…この釣書に間違いは……」
「もー、そんなに恥ずかしがって。 間違いなく、君宛の縁談だよ?」
茶化すような言い方に、セドとクリスがイチャつき始めた時よりもイラッとしてしまいそうだった。
俺の顔から血の気は完全に引いていた。
「う、嘘だろ……」
「そんなに嬉しいの?」
「嘘…こんなの、絶対、ありえない、嘘だ……!」
俺は内心パニックだった。
あれだけフラグを立てないように無表情を徹していたのに。
あれか。あのアーモンドチョコのせいか!
あのチョコはめちゃくちゃ美味しくて、つい口元が緩んだのだ。
え、まさか本当にそれだけ……?それだけでまさかあの
ジナルマー過激勢、同担拒否男が……!
「どうした?ノエル? やっぱり嫌だよな?」
「……い、いやだ……! 嫌だ!」
俺は女の子と結婚したい!
こんなの望んでいない!
セドは俺がまだ恥ずかしがっていると思っている。頼みの綱はクリスだけだ。
助けてくれクリス!目の前でイチャイチャしても俺はもう呪ったりしない!
「そうだよな! やっぱりお断り……」
「クリス。出来るわけないでしょう? 格上の公爵家からの縁談だよ? 」
クリスがガックリと項垂れて、反抗を辞めてしまった。
え。
いやいやいや!! 諦めないでくれ!
俺にはもうクリスしか居ないんだ!
「ち、父上! 俺は本当に嫌です! 俺はまだ父上と母上と一緒に居たいです!」
「やだなぁ、そんなすぐに嫁ぐわけないよ。ノエルがもっと大きくなってからだから、まだまだ私たちと一緒に暮らせるよ?」
「ちが……っ、お、俺は女の子と……!」
「女の子?」
項垂れたままのクリスに縋り付きながら、セドに涙目で切実に訴えた。
「え?ノエル、女の子と結婚したかったの?」
伝わったようだった。
俺は全力で首をブンブンと上下に振って、この縁談をなかったことにしてほしいと願った。
「ノエルの顔だと、女の子の縁談は見込めないよ? 無理だと思う」
ハッキリ、キッパリ、実の息子にも容赦なく言い放たれた言葉に、俺はクリスの隣で一緒に項垂れた。
項垂れた俺を見て、セドが焦ったように付け加える。
「よっぽどボーイッシュな子なら分からなくもないけど、貴族の女の子でそんな子見たことないから……! の、ノエル! 泣いてるの?!」
ようやく俺が縁談を嫌がっていた事が伝わったらしい。
セドが勘違いしたままじゃなくて良かったと思いつつ、なんとかしてくれと言いたい。
ポロポロと床に零れる水滴が、じわりと絨毯に染み込む。
「う、うーん……でも悪い話じゃないんだよ? 公爵家に嫁げるなんてなかなかない縁談だし、将来は約束されたようなものだよ?ほらクリスみたいにハンサムだし、ね?」
ね?じゃない。セド、そこじゃない。
俺はあのお茶会でやらかしたのだ。たった1回の茶会で、あんなに気をつけていたフラグを立ててしまったのだ。
あの、ヴィオレットに。
「しかもこれ、ヴィオレット様本人の希望みたいだよ? 貴族同士の結婚で、親の決めた婚約者じゃないんだよ?わ、わー……!凄い!」
取り繕った笑顔で励まそうとするセド。
俺の落ち込み加減に困ってしまったようで、提案をしてくる。
「それなら一度、本人に会ってみたらどうかな? ね? ノエルが説得出来たら、向こうも諦めてくれるだろうし…」
俺はバッと顔を床から上げてセドを見た。 セドはビクッとして咳払いをした。
「ヴィ、ヴィオレット様が諦めたらだからね?こっちからのお断りはダメだよ?」
「……わかった! 会う! 絶対に破棄させる!」
俺のフラグは俺の手で折る!
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