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気がついたら友達
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「兄様、もう私も6歳なので、もう付き添いは要りませんよ…」
ジナルマーは苦笑して兄のヴィオレットを見ていた。そんな視線も気にせずヴィオレットは紅茶を優雅に口にしていた。
「まぁまぁ、ジナルマー様が心配なんじゃん?」
「おい、ライ。口調に気をつけろ」
ライオドアが公爵家のジナルマーへの口調が崩れすぎているとテーヴァルが注意する。
ライオドアとテーヴァルは距離感が近い気がする。
「ライとテーヴァルは元々知り合い?」
「僕とテーヴは小さい頃からの幼なじみなんだ。ほぼ生まれた時からね」
あ。これはライとテーヴは安全圏に入ったと俺のゲーム脳が言っている。
「ライがそそっかしいから俺がいつもフォローしなくちゃならない」
「あんだとーっ、テーヴだって誤解されやすいから俺がカバーしてるだろー?」
良いコンビのようだった。幼なじみか…
俺も女の子の幼なじみがいれば今すぐにでもフラグを立てにいくのに。くそ。
しかしまだこの2人は6歳。恋心は芽生えていないようだ。
つまりあまり親しくするのは安全圏であっても危険だということだ。
「ノエルは下の子ができるんだってね?」
「はい。まだ性別は分かりませんが」
ジナルマーに聞かれ、淡々と答えた。隣にいるヴィオレットがピクと眉根を上げたのを見逃さなかった。
え、もしかしてジナルマー過激勢…? 過保護というか同担拒否レベル?
話しかけんなとかそういう? でも無視してもヤバいしな。
「えー!楽しみだねぇ! いいなー!」
「ライ、静かにしろ」
「ノエルはセド伯爵夫人にそっくりだから、次はクリス伯爵様に似た子だと良いね」
「……父上は、母上に似てくれとお祈りしてました」
クリスは毎日セドの大きくなったお腹に向かって手を組んでお祈りを捧げている。
セドは「ノエルがいるじゃないか」と苦笑するも、クリスは「もう1人いたら可愛いが3倍だ。3倍だぞ?!」と訳の分からないことを言っていた。その後イチャつき始めた両親。いたたまれない俺。
イチャつくなら他でやってほしい。
この世界、恐ろしいことに男性妊娠が可能である。
それってもはや男性なのかと問いたくなるが、ついてるものはついてるので男性らしい。
といっても最初から女性のように子宮がある訳でなく、男性による精液により体を徐々に作り替えていくようだった。
文字を覚えて読んだ本の一発目がこの内容だった時の俺の心情を察して欲しい。
すぐに鏡を見て呪った俺の気持ちが分かるか。
「ノエルはどっちがいいんだー?」
ライに問われ、俺はすぐに答えた。
「母上に似た女の子が良いですね」
「女の子かー、女の子も可愛いよね」
すぐに同意を得られたのはジナルマーだった。
俺は男でクリスに似てない事を祈っていた。近親相姦のフラグも折っておきたいのだ。
「妹は可愛いぞ」
「テーヴの妹は本当に可愛いよなー、大人しくてお淑やかなんだ!」
「騒がしいのはお前だけで充分だ」
「なんだとー!」
まるで兄弟のように言い合うライとテーヴ。テーヴの眼がなんとなく優しいのは気のせいだと思いたい。
「ノエルっていつもそんな感じなのかい?」
「……そんな感じとは?」
「なんというか…こう、あんまり笑ったりしないなぁと。セド伯爵夫人がにこやかな方だから、なんとなくお人形みたいだなぁって」
ジナルマーは言葉を一つ一つ選ぶように話す。恐らく直訳すると、無愛想だと言いたいのかもしれない。
自分で笑顔の価値が理解出来ている。
母上と父上、メイド、他の使用人達に笑顔を見せた時に全員惚けたのだ。セドで見慣れているクリスですらだ。
だから俺はこのお茶会中は無表情に徹していた。
自意識過剰? 知らん! フラグが立たなきゃ良いだけだ!
「普段からこんな感じです。機嫌が悪いとかではないので、すみません」
「ああっ、責めてる訳じゃないんだ。ごめんよ」
ジナルマー、めちゃくちゃ良い奴だな。
その横にいるヴィオレットが睨んでなきゃ親友になって欲しいくらいだ。
俺が完全なる敵扱いだぞ。
恐らく、『ジナルマーに気を遣わせやがって』くらいには考えているのだろう。
「美味しいものとか食べた時に嬉しくて緩んだりしないのか?」
「…それは、まぁ…どうでしょう」
ライの言葉に、まだ【覚醒】してから短い間だが思い出の引き出しを開けてみる。
日本は凄く食事が美味しいから、それを知ってる俺としては少し物足りないとも思っていた。
甘いものが好きな俺は、某有名コーヒー店が作るフラペチーノやら某有名チョコレート店が作るチョコの飲み物、タピオカティーやらパフェ、ケーキなどを知っているって言うのはこういう時つらい。
あの味が恋しくなってくるのだ。
「甘いものは好きなのですが、あまり好みの味に出会わないので」
「へぇ、グルメだね」
「いや…ここのお菓子が美味しくないという訳ではありませんからね」
グルメ、確かにグルメなのかもしれない。 ジナルマーに言われ、なんだか納得してしまった。
この茶会のお菓子も別に不味くはないが、もっとこう、頭が悪くなったのかってくらいの物が欲しくなる。
俺ってもしかしてだいぶストレス溜まってるんじゃないか?
ジナルマーは苦笑して兄のヴィオレットを見ていた。そんな視線も気にせずヴィオレットは紅茶を優雅に口にしていた。
「まぁまぁ、ジナルマー様が心配なんじゃん?」
「おい、ライ。口調に気をつけろ」
ライオドアが公爵家のジナルマーへの口調が崩れすぎているとテーヴァルが注意する。
ライオドアとテーヴァルは距離感が近い気がする。
「ライとテーヴァルは元々知り合い?」
「僕とテーヴは小さい頃からの幼なじみなんだ。ほぼ生まれた時からね」
あ。これはライとテーヴは安全圏に入ったと俺のゲーム脳が言っている。
「ライがそそっかしいから俺がいつもフォローしなくちゃならない」
「あんだとーっ、テーヴだって誤解されやすいから俺がカバーしてるだろー?」
良いコンビのようだった。幼なじみか…
俺も女の子の幼なじみがいれば今すぐにでもフラグを立てにいくのに。くそ。
しかしまだこの2人は6歳。恋心は芽生えていないようだ。
つまりあまり親しくするのは安全圏であっても危険だということだ。
「ノエルは下の子ができるんだってね?」
「はい。まだ性別は分かりませんが」
ジナルマーに聞かれ、淡々と答えた。隣にいるヴィオレットがピクと眉根を上げたのを見逃さなかった。
え、もしかしてジナルマー過激勢…? 過保護というか同担拒否レベル?
話しかけんなとかそういう? でも無視してもヤバいしな。
「えー!楽しみだねぇ! いいなー!」
「ライ、静かにしろ」
「ノエルはセド伯爵夫人にそっくりだから、次はクリス伯爵様に似た子だと良いね」
「……父上は、母上に似てくれとお祈りしてました」
クリスは毎日セドの大きくなったお腹に向かって手を組んでお祈りを捧げている。
セドは「ノエルがいるじゃないか」と苦笑するも、クリスは「もう1人いたら可愛いが3倍だ。3倍だぞ?!」と訳の分からないことを言っていた。その後イチャつき始めた両親。いたたまれない俺。
イチャつくなら他でやってほしい。
この世界、恐ろしいことに男性妊娠が可能である。
それってもはや男性なのかと問いたくなるが、ついてるものはついてるので男性らしい。
といっても最初から女性のように子宮がある訳でなく、男性による精液により体を徐々に作り替えていくようだった。
文字を覚えて読んだ本の一発目がこの内容だった時の俺の心情を察して欲しい。
すぐに鏡を見て呪った俺の気持ちが分かるか。
「ノエルはどっちがいいんだー?」
ライに問われ、俺はすぐに答えた。
「母上に似た女の子が良いですね」
「女の子かー、女の子も可愛いよね」
すぐに同意を得られたのはジナルマーだった。
俺は男でクリスに似てない事を祈っていた。近親相姦のフラグも折っておきたいのだ。
「妹は可愛いぞ」
「テーヴの妹は本当に可愛いよなー、大人しくてお淑やかなんだ!」
「騒がしいのはお前だけで充分だ」
「なんだとー!」
まるで兄弟のように言い合うライとテーヴ。テーヴの眼がなんとなく優しいのは気のせいだと思いたい。
「ノエルっていつもそんな感じなのかい?」
「……そんな感じとは?」
「なんというか…こう、あんまり笑ったりしないなぁと。セド伯爵夫人がにこやかな方だから、なんとなくお人形みたいだなぁって」
ジナルマーは言葉を一つ一つ選ぶように話す。恐らく直訳すると、無愛想だと言いたいのかもしれない。
自分で笑顔の価値が理解出来ている。
母上と父上、メイド、他の使用人達に笑顔を見せた時に全員惚けたのだ。セドで見慣れているクリスですらだ。
だから俺はこのお茶会中は無表情に徹していた。
自意識過剰? 知らん! フラグが立たなきゃ良いだけだ!
「普段からこんな感じです。機嫌が悪いとかではないので、すみません」
「ああっ、責めてる訳じゃないんだ。ごめんよ」
ジナルマー、めちゃくちゃ良い奴だな。
その横にいるヴィオレットが睨んでなきゃ親友になって欲しいくらいだ。
俺が完全なる敵扱いだぞ。
恐らく、『ジナルマーに気を遣わせやがって』くらいには考えているのだろう。
「美味しいものとか食べた時に嬉しくて緩んだりしないのか?」
「…それは、まぁ…どうでしょう」
ライの言葉に、まだ【覚醒】してから短い間だが思い出の引き出しを開けてみる。
日本は凄く食事が美味しいから、それを知ってる俺としては少し物足りないとも思っていた。
甘いものが好きな俺は、某有名コーヒー店が作るフラペチーノやら某有名チョコレート店が作るチョコの飲み物、タピオカティーやらパフェ、ケーキなどを知っているって言うのはこういう時つらい。
あの味が恋しくなってくるのだ。
「甘いものは好きなのですが、あまり好みの味に出会わないので」
「へぇ、グルメだね」
「いや…ここのお菓子が美味しくないという訳ではありませんからね」
グルメ、確かにグルメなのかもしれない。 ジナルマーに言われ、なんだか納得してしまった。
この茶会のお菓子も別に不味くはないが、もっとこう、頭が悪くなったのかってくらいの物が欲しくなる。
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