2 / 54
転生したらBL世界だった
しおりを挟むパチッ
目が覚めた瞬間だった。
見覚えのない天井が眼前に広がっていた。
横を向いて、規則的に並ぶ棒が見える。反対にもあった。どうやら俺は囲まれているようだった。
柵? どうして柵があるのか。
起き上がって確認しようとしても、身体が上手く動かせない。
ならば、と声を出そうとした。
「ぁーぅー」
声も上手く出せない。というより、声の質が根本から違っている。
これはまるで…
「起きたのかい?」
柵の上から覗き込んで来て、天井が声の主に塗り替えられた。
金の髪に、碧の眼。まるでおとぎ話のような風貌は女性のようにも見えるが、声の低さは男のソレだった。
金髪の美男子は俺を軽々と持ち上げた。
持ち上げられる瞬間、怖くて少し暴れるが、関係なく抱き寄せられてしまった。
明らかに男の胸である。
どうして女の胸でないのか。
いや、それよりも気づくべきは、この男が巨人であることである。
俺は17歳の男だったんだ。男子高校生を軽々持ち上げるなぞ、ありえない、おかしい。
そう思って、男の服を掴んだ手を見た。
俺の手だ。俺の体にくっついている。
しかし、その手は明らかに赤ん坊の手だった。ぷくぷく、ムクムク、とした可愛らしい肉厚な手をしていた。
「あー!」
「ん?どうしたんだい? お話してくれるのかなー?」
驚いて声を出したら、男は横抱きにした俺の顔をニコニコと覗き込んできた。
いや、イケメンだけど、抱き上げられるなら女がいい。
いや、そういうことじゃない!
男子高校生がどうして赤ちゃんに?!
そしてここはどこ?!
この男は一体何者?!
分からなくて赤ちゃんの上手く働かない脳で混乱していると、目の前の男とは別の声が聞こえてくる。
「セド、どうした?」
これまた男だった。 俺を抱き上げている男が儚げな美男子だとすれば、この声をかけてきた男はなんというか、秀麗な美男子だった。これまた金の髪に碧の目をしている。
セド、と呼ばれた儚げな俺を抱く美男子が俺を寝かせようと揺すりながら秀麗な美男子に言う。
「クリス。起きちゃったみたいなんだ。 もう一回寝るかなって」
クリスと呼ばれた秀麗な美男子は、俺を覗き込んでくる。
「…なんか全然泣かないし、笑わないな。どうしたんだ?」
「確かに、いつも途中で起きたら良く泣いてたのに」
いや、だって俺赤ちゃんじゃなくて、男子高校生だからね?
17歳なの。 てか俺今何歳なんだ?
「まぁいっか。ほら、まだお休みだよー」
「寝てくれないと困るな」
困るって何に。赤ちゃんだから寝るのが仕事だってか。いやしかし17歳のはずなんだが。意識も今しっかりしてる中、眠れるわけもない。
「ようやく解禁されたのに」
「も、もう…何言ってるの……」
セドはクリスの言葉に顔を赤くしている。 解禁て、ワインの解禁か?
しかし、そんな俺の想像を遥かに超える衝撃が降りかかった。
なんとこの美男子達、赤ん坊の俺の目の前でキスしたのだ。
しかも、めちゃディープなんですが!舌が入ってんの、下からだと丸見えなんですけど!セドからは「んっ……」なんて色っぽい声が聞きたくないのに聞こえてくる!
「ぁあぁあああ……」
つい声が出てしまった。恐怖に打ちひしがれた声が漏れてしまった。
なぜ俺の目の前でホモな展開が起きているんだ?
2人は俺の声に驚いて、キスを中断してくれた。
セドは真っ赤な顔のまま、また俺を揺さぶり始めた。
「ご、ごめんねぇ、ノエルー」
明らかに俺を見てノエルと言った。俺はノエルなのか。
いやそんなことはどうでもいい、どうして男同士でキスしたんだ。
「ノエル、早く寝てくれー、俺はもうお前のためにめちゃくちゃ我慢したんだからなー」
「もうクリスってば…」
我慢。男がキスをして、俺が寝てくれなくて困って、我慢している。ということはだ。つまり、そういうことか?いやそういうことなのか?!いやいや!分かりたくない!
何故こうも簡単にホモが展開されているんだ?!
「早く大きくなってねぇ、ノエル」
「ノエルが大きくなって1人で寝られるようになったらセドといつでもできるな」
「もうっ、クリスのバカ!」
なんで男の乳繰りあいを見せつけられているのか!
脳内がスパークしてショートした俺は、フッと電源が切れたかのように眠りについた。
21
お気に入りに追加
1,873
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる