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番外編
恋心 side レイリー
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レイリー=スタームは、7年間後悔し続けた。ラヴェル=アンデルベリに会わないと決めたのは自分自身であったのに、イヴに言われた通り、後悔したのだ。
それでも生きるために仕事をこなし、イヴに時折心配されながらも過ごしてきた。
いつかは忘れられるし、向こうも忘れられるだろうと思っていた。
けれど、ラヴェルの天使のような微笑みが浮かんで消えていかない。
ふとした瞬間思い出せば、治療の手を止めてしまう。
仕事に支障を来たし始めた頃に連絡が来た。
「ラヴェルが、学園に入学した。まだ、ラヴェルのことを忘れていなかったら、会いに行って欲しい」
7年ぶりに公爵閣下から連絡が来た時には、驚きすぎて返事を忘れてしまった。
レイリーは自分でも驚くほど冷静ではなかった。本当は午後の診療があったのに、部下に全部丸投げして学園に向かった。
部下も、常にないレイリーの焦りっぷりに「早く行ってください!」と見送ってくれた。
イヴはそんなレイリーの姿を見て苦笑していた。「……そんなに会いたかったなら、すぐに行けばよかったのに」と後で言われることになってしまった。
そして、許しを乞うた。
まさか自分が、十二も歳の離れた子供に向かって「許してくれ」と言うとは思っていなかった。
恥ずかしながら、この時ようやくレイリーは恋心を自覚することになったのだ。
二十七の男がみっともなくボロボロと十五歳の子供に泣きついたが、ラヴェルは怒りもせず、「婚約者で居て欲しい」と浅はかであったレイリーを許してくれた。
そして、しばらくして冷静になったレイリーはようやくラヴェルの学生の服を見て驚くこととなった。
◆
「ええ?! ラヴェル様、文官コースじゃなく、騎士コースに入学してたんですか?!」
イヴにラヴェルの服の姿のことを言うと、やはりイヴも驚いていた。
あの病弱だったラヴェルが、まさか騎士になろうとしていたとは思わず、びっくりして涙も止まったのだ。
ラヴェルは「僕は自分を支えて欲しいと言うよりは、自分が支えたいんですよね」と、少し精悍に変わった顔立ちで笑った。
あの時の天使のような微笑みは、まさかここまでカッコよく育っているなどと、想像だにしていなかった。
身長もまだ十五歳のはずなのに、レイリーとほぼ変わらない、いやむしろ少しだけ抜かれていた気がする。
そしてラヴェルは騎士コースに首席合格していたらしい。実技もあるはずなのに、あの病弱だった子供は一体どこへ行ってしまったのか。
そして、ラヴェルの父は「やっぱり血は争えないね」とラヴェルに向かって言っていた。
ラヴェルの母、公爵夫人は騎士であり、公爵閣下を守るために強くなったらしい。そして、十五歳年上の公爵閣下を10年間かけて口説き落としたという。
ものすごい執念だと感心してしまった。
「……兄様、さっきラヴェル様が兄様の身長を追い抜いたと言っていましたね?」
「?ああ、驚いたよ。子供ってあんなに成長するんだなってしみじみ思ったよ」
イヴは腕を組んで考え込んでしまった。何か変なことでも言ったのだろうか。
「……兄様。ラヴェル様が大人になったと判断したら、直ぐに私に報告してください」
「え? なぜ?」
「多分、その時分かりますよ」
レイリーは首を捻った。イヴが言ったことがその時1ミリも理解出来なかった。
3年後、十八になったラヴェルが大人になったと思い、イヴの言葉を思い出した。
イヴに仕事の時よりも真剣な顔つきで、シャワーの使い方、辛くない体位、必ず滑りを良くしておくことなど、閨の話を徹底的にレクチャーされた。
ラヴェルが辛くないようにしなくてはならないからか、と呑気に考えていた。
しかし、事が始まると何故だがレイリーが押し倒され、あれよあれよという間にレイリーがラヴェルに貫かれていた。
イヴの最後の言葉は「……兄様、良いですか。男の我慢は我慢になりません。相手が若いなら尚更です。後は兄様の体力次第です」で締めくくられていたことを思い出した。こういうことだったのか。
そして、三十路にはとてもじゃないが十八歳についていけず、次の日はベッドから起き上がれなくなっていた。
「……ごめんなさい、10年越しに叶ったと思ったら…、つい」
ラヴェルはベッドの横で正座をして本気で反省していた。
昨日学園を首席で卒業したような男にはとても見えなかった。
そして、つい、でここまで抱き潰されるとは思っていなかった。
「……ラヴェル様。 少し、セーブして頂ければと…」
「! します! セーブします! 1回に込めるんじゃなくて、小出しにします!」
セーブの意味が、上手く伝わっていない気がする。
「レイリーさんとっても可愛かったですよ」
「隙あらば口説くのは止めてください……」
「ふふふー、恥ずかしくて顔が赤くなるレイリーさんも可愛いです!」
「や、止めてください…」
そして、10年前は天使のような微笑みだったが、精悍な顔立ちに変わって微笑む。
「レイリーさん、大好きです!」
---------------
長い間読んでくださってありがとうございました。
番外編も終わり、これで 浮薄な文官は嘘をつく は終了となります。
一部、騎士×文官でないところもありましたことは、ここでお詫び申し上げます。
また、次の話でお会い出来ることをお祈りしております。
七咲陸
それでも生きるために仕事をこなし、イヴに時折心配されながらも過ごしてきた。
いつかは忘れられるし、向こうも忘れられるだろうと思っていた。
けれど、ラヴェルの天使のような微笑みが浮かんで消えていかない。
ふとした瞬間思い出せば、治療の手を止めてしまう。
仕事に支障を来たし始めた頃に連絡が来た。
「ラヴェルが、学園に入学した。まだ、ラヴェルのことを忘れていなかったら、会いに行って欲しい」
7年ぶりに公爵閣下から連絡が来た時には、驚きすぎて返事を忘れてしまった。
レイリーは自分でも驚くほど冷静ではなかった。本当は午後の診療があったのに、部下に全部丸投げして学園に向かった。
部下も、常にないレイリーの焦りっぷりに「早く行ってください!」と見送ってくれた。
イヴはそんなレイリーの姿を見て苦笑していた。「……そんなに会いたかったなら、すぐに行けばよかったのに」と後で言われることになってしまった。
そして、許しを乞うた。
まさか自分が、十二も歳の離れた子供に向かって「許してくれ」と言うとは思っていなかった。
恥ずかしながら、この時ようやくレイリーは恋心を自覚することになったのだ。
二十七の男がみっともなくボロボロと十五歳の子供に泣きついたが、ラヴェルは怒りもせず、「婚約者で居て欲しい」と浅はかであったレイリーを許してくれた。
そして、しばらくして冷静になったレイリーはようやくラヴェルの学生の服を見て驚くこととなった。
◆
「ええ?! ラヴェル様、文官コースじゃなく、騎士コースに入学してたんですか?!」
イヴにラヴェルの服の姿のことを言うと、やはりイヴも驚いていた。
あの病弱だったラヴェルが、まさか騎士になろうとしていたとは思わず、びっくりして涙も止まったのだ。
ラヴェルは「僕は自分を支えて欲しいと言うよりは、自分が支えたいんですよね」と、少し精悍に変わった顔立ちで笑った。
あの時の天使のような微笑みは、まさかここまでカッコよく育っているなどと、想像だにしていなかった。
身長もまだ十五歳のはずなのに、レイリーとほぼ変わらない、いやむしろ少しだけ抜かれていた気がする。
そしてラヴェルは騎士コースに首席合格していたらしい。実技もあるはずなのに、あの病弱だった子供は一体どこへ行ってしまったのか。
そして、ラヴェルの父は「やっぱり血は争えないね」とラヴェルに向かって言っていた。
ラヴェルの母、公爵夫人は騎士であり、公爵閣下を守るために強くなったらしい。そして、十五歳年上の公爵閣下を10年間かけて口説き落としたという。
ものすごい執念だと感心してしまった。
「……兄様、さっきラヴェル様が兄様の身長を追い抜いたと言っていましたね?」
「?ああ、驚いたよ。子供ってあんなに成長するんだなってしみじみ思ったよ」
イヴは腕を組んで考え込んでしまった。何か変なことでも言ったのだろうか。
「……兄様。ラヴェル様が大人になったと判断したら、直ぐに私に報告してください」
「え? なぜ?」
「多分、その時分かりますよ」
レイリーは首を捻った。イヴが言ったことがその時1ミリも理解出来なかった。
3年後、十八になったラヴェルが大人になったと思い、イヴの言葉を思い出した。
イヴに仕事の時よりも真剣な顔つきで、シャワーの使い方、辛くない体位、必ず滑りを良くしておくことなど、閨の話を徹底的にレクチャーされた。
ラヴェルが辛くないようにしなくてはならないからか、と呑気に考えていた。
しかし、事が始まると何故だがレイリーが押し倒され、あれよあれよという間にレイリーがラヴェルに貫かれていた。
イヴの最後の言葉は「……兄様、良いですか。男の我慢は我慢になりません。相手が若いなら尚更です。後は兄様の体力次第です」で締めくくられていたことを思い出した。こういうことだったのか。
そして、三十路にはとてもじゃないが十八歳についていけず、次の日はベッドから起き上がれなくなっていた。
「……ごめんなさい、10年越しに叶ったと思ったら…、つい」
ラヴェルはベッドの横で正座をして本気で反省していた。
昨日学園を首席で卒業したような男にはとても見えなかった。
そして、つい、でここまで抱き潰されるとは思っていなかった。
「……ラヴェル様。 少し、セーブして頂ければと…」
「! します! セーブします! 1回に込めるんじゃなくて、小出しにします!」
セーブの意味が、上手く伝わっていない気がする。
「レイリーさんとっても可愛かったですよ」
「隙あらば口説くのは止めてください……」
「ふふふー、恥ずかしくて顔が赤くなるレイリーさんも可愛いです!」
「や、止めてください…」
そして、10年前は天使のような微笑みだったが、精悍な顔立ちに変わって微笑む。
「レイリーさん、大好きです!」
---------------
長い間読んでくださってありがとうございました。
番外編も終わり、これで 浮薄な文官は嘘をつく は終了となります。
一部、騎士×文官でないところもありましたことは、ここでお詫び申し上げます。
また、次の話でお会い出来ることをお祈りしております。
七咲陸
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感想ありがとうございます!
最初から全部読んでくださるとは、一気に読むのは大変だったと思います。とっても嬉しいです…!
実はレイリーを受けにするとは自分でも思ってませんでした笑 ラヴェルは天使の様だったのに、今ではイケメンになってきっとレイリーは振り回されてしまっているでしょう。
コリンはなんとなく闇を抱えていそうだな、と思っていました。シルヴァ登場の瞬間、これしかない…!とばかりに闇を詰め込みました。私の悪い癖が出たのでちょっと反省してたりしてます。
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感想ありがとうございます!
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読んでくださってありがとうございました!
感想ありがとうございます!
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読んでくださってありがとうございました!