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番外編
出逢う side ダリル
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ダリル=ジルヴァールは学園に行くのが気が重かった。
文官コースで学ぶものは、大体性格が根暗だった。大っぴらにイジメは起きないものの、影でしてくるのだ。物を隠したり、落書きしたりと証拠が残りそうなことはしてこない。無視や悪口と言った形の残らない方法でしてくる。
まだ少しでも物理的な方法を取ってくるならば対処の方法がありそうなものだが、頭が良い奴がやってくることはそんな初歩的なミスをしない。
ダリルにとって、学園生活で1番つらいのは、教師にも蔑ろにされることだった。
さすがに点数に私的な事情は入れてこないが、ダリルを居ないものとして扱ったり、かと思えば難しい問題でわざと指名してきたりする。ある意味、学生よりも子供らしかった。
おそらく、教師の鬱憤を晴らす的のような扱いなのだろうな、とダリルは思った。
こんな学園という狭い世界で生きていくと、ストレスも溜まるだろう。ただでさえ貴族の子供が多い学園は気を遣うことが多そうだ。
ダリルは移動教室のために廊下を歩いていた。
文官コースは東館にあり、騎士コースはは西館である。
ダリルは文官コースの為、東館に居たのだが、目の前にいる人物は騎士の格好をしていた。
しかも、その騎士は学園支給のものではない服と鎧を着用していた。おそらく、王宮付きの騎士だ。
騎士の中でも凡庸なものはそれなりの就職先となる。しかし、成績上位者はエリートコースが約束されている。それは貴族でも平民でも同じである。学園が機能している理由はそこにある。将来の確約のための登竜門となっていた。
しかし、どうして騎士が東館にいるのかわからない。けれども、それはダリルには関係の無いこと。
授業に遅刻したとなれば、これみよがしに教師の鬱憤を晴らす人形と化すことが分かりきっている。
急ぎ足でその騎士の横を通り過ぎようとした。
「お前、サシャ=ジルヴァールに似てるな」
横を通った瞬間に、声をかけられた。
よりにもよって、忌々しい兄の名前を知っているものだったらしい。
ダリルは一瞬で舌打ちしたくなる気持ちになるが、さすがに王宮付き騎士に喧嘩を売った所で、何も良いことはない。
何とか黒いモヤモヤを押さえつけて、ダリルは騎士を見た。
その男は、ブラックオニキスのような黒くそれでいて光は白い筋が入っているような瞳をしていた。青みがかった黒髪は、地味と言うには際立っていて凛々しい顔をした男の魅力を引き出しているようだった。背もダリルの頭1個か1個半ほど上にあった。体躯もよく、ダリルには到底及ばない筋肉がついていた。
「お前がサシャ=ジルヴァールの身内か」
「……だからなんだよ」
噂は、貴族はもちろん学園にまで轟いている。
美しい身内のサシャ=ジルヴァールを蔑ろにする伯爵家。
この男も、その噂でダリルに声をかけてきたに違いない。ダリルは益々舌打ちをしたい気分になった。
「俺ちょっとした知り合いなんだが、少し話そうぜ」
「はぁ?」
知り合いだからなんだと言うのだ。
そもそもダリルは授業に向かっている最中であって、こんな所で油を売っている場合ではない。
こんな変な男に構っている場合では無いのだ。
「嫌。授業に向かってる最中なんだ。邪魔」
ハッキリ分かりやすく言ってやった。
ダリルは傲慢だった。
それは兄の一件があったとしてもなかなか変えられるものではない。16年間物心がついた頃からの性格は矯正するのは難しく、そのまま育ってしまった。
ダリルはそのまま男の横を通り過ぎようとした。しかし、男がダリルの腕を掴んで進ませまいとしたのだ。
「まあ待てよ。授業が終わったあとで良い。お前の話が聞きてぇんだよ」
「…っ、僕が話す義理はない」
それでもダリルは抵抗する。この男に関わるのは危険だと、ダリルは察知したのだ。
昔から勘だけは良かった。関わって大丈夫な奴と、そうでない奴の違いを区別するのはダリルの得意とするところであった。
そして、この男は関わってはいけないタイプだと判断したのだ。
「じゃ、また後でな」
「な…っ!」
パッと腕を掴んでいた手を離され、男はダリルの進行方向と逆に歩いていってしまった。
ダリルは何だったのかよく分からなくなって、男の姿が見えなくなるまで見続けてしまった。
そのせいで、授業は完璧に遅刻して最悪な気分を味わうことになるのだった。
文官コースで学ぶものは、大体性格が根暗だった。大っぴらにイジメは起きないものの、影でしてくるのだ。物を隠したり、落書きしたりと証拠が残りそうなことはしてこない。無視や悪口と言った形の残らない方法でしてくる。
まだ少しでも物理的な方法を取ってくるならば対処の方法がありそうなものだが、頭が良い奴がやってくることはそんな初歩的なミスをしない。
ダリルにとって、学園生活で1番つらいのは、教師にも蔑ろにされることだった。
さすがに点数に私的な事情は入れてこないが、ダリルを居ないものとして扱ったり、かと思えば難しい問題でわざと指名してきたりする。ある意味、学生よりも子供らしかった。
おそらく、教師の鬱憤を晴らす的のような扱いなのだろうな、とダリルは思った。
こんな学園という狭い世界で生きていくと、ストレスも溜まるだろう。ただでさえ貴族の子供が多い学園は気を遣うことが多そうだ。
ダリルは移動教室のために廊下を歩いていた。
文官コースは東館にあり、騎士コースはは西館である。
ダリルは文官コースの為、東館に居たのだが、目の前にいる人物は騎士の格好をしていた。
しかも、その騎士は学園支給のものではない服と鎧を着用していた。おそらく、王宮付きの騎士だ。
騎士の中でも凡庸なものはそれなりの就職先となる。しかし、成績上位者はエリートコースが約束されている。それは貴族でも平民でも同じである。学園が機能している理由はそこにある。将来の確約のための登竜門となっていた。
しかし、どうして騎士が東館にいるのかわからない。けれども、それはダリルには関係の無いこと。
授業に遅刻したとなれば、これみよがしに教師の鬱憤を晴らす人形と化すことが分かりきっている。
急ぎ足でその騎士の横を通り過ぎようとした。
「お前、サシャ=ジルヴァールに似てるな」
横を通った瞬間に、声をかけられた。
よりにもよって、忌々しい兄の名前を知っているものだったらしい。
ダリルは一瞬で舌打ちしたくなる気持ちになるが、さすがに王宮付き騎士に喧嘩を売った所で、何も良いことはない。
何とか黒いモヤモヤを押さえつけて、ダリルは騎士を見た。
その男は、ブラックオニキスのような黒くそれでいて光は白い筋が入っているような瞳をしていた。青みがかった黒髪は、地味と言うには際立っていて凛々しい顔をした男の魅力を引き出しているようだった。背もダリルの頭1個か1個半ほど上にあった。体躯もよく、ダリルには到底及ばない筋肉がついていた。
「お前がサシャ=ジルヴァールの身内か」
「……だからなんだよ」
噂は、貴族はもちろん学園にまで轟いている。
美しい身内のサシャ=ジルヴァールを蔑ろにする伯爵家。
この男も、その噂でダリルに声をかけてきたに違いない。ダリルは益々舌打ちをしたい気分になった。
「俺ちょっとした知り合いなんだが、少し話そうぜ」
「はぁ?」
知り合いだからなんだと言うのだ。
そもそもダリルは授業に向かっている最中であって、こんな所で油を売っている場合ではない。
こんな変な男に構っている場合では無いのだ。
「嫌。授業に向かってる最中なんだ。邪魔」
ハッキリ分かりやすく言ってやった。
ダリルは傲慢だった。
それは兄の一件があったとしてもなかなか変えられるものではない。16年間物心がついた頃からの性格は矯正するのは難しく、そのまま育ってしまった。
ダリルはそのまま男の横を通り過ぎようとした。しかし、男がダリルの腕を掴んで進ませまいとしたのだ。
「まあ待てよ。授業が終わったあとで良い。お前の話が聞きてぇんだよ」
「…っ、僕が話す義理はない」
それでもダリルは抵抗する。この男に関わるのは危険だと、ダリルは察知したのだ。
昔から勘だけは良かった。関わって大丈夫な奴と、そうでない奴の違いを区別するのはダリルの得意とするところであった。
そして、この男は関わってはいけないタイプだと判断したのだ。
「じゃ、また後でな」
「な…っ!」
パッと腕を掴んでいた手を離され、男はダリルの進行方向と逆に歩いていってしまった。
ダリルは何だったのかよく分からなくなって、男の姿が見えなくなるまで見続けてしまった。
そのせいで、授業は完璧に遅刻して最悪な気分を味わうことになるのだった。
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