7 / 37
困惑 sideサシャ
しおりを挟む
サシャ=ジルヴァールはティム=カンポスとなってアーヴィンに翻弄される毎日を送っていた。
家に帰ってから、やっぱり騙された気がする、とキスの練習をさせられたことを思い出した。
けれど、誰にも相談できるはずもなく、サシャはため息をついた。
徐々に続けていけば慣れていくものなのかもしれない。
そしたら緊張せずともクラークとキスが出来るようになるかもしれない。
しかしこれは本当に良い事なのか。
不貞行為では無いのだろうか、とも思ったが、やっぱり誰にも相談出来ないサシャにはどうしようもない悩み事だった。
アーヴィンはサシャがぶつかった事を気にしてない様子だったので、嘘をつく理由も思い当たらない。
とくれば、やはり考えつくのは親切心で練習をしてくれているという事に行き当たった。
そして、サシャは思い切って練習を続行することに決めた。
「慣れた?」
「っ! ん!んん…ぁ…ん…」
慣れない。
今日で初めてのキスの練習を含めて5日目だが、サシャは全く慣れなかった。むしろアーヴィンの翠眼を見るだけで何故だが身体が強張り、顔が火照ってくるのを感じてしまうほどだった。
いつも本棚に磔にされるようにキスをされる。 身動きが取れなくて、恥ずかしくて逃げることもさせてもらえない。
サシャは息も絶え絶えになりながら、舌を絡ませてくるアーヴィンの動きに翻弄される。
アーヴィンは意地の悪い性格をしている。
サシャが顔を逸らそうとすれば顎を手で押え、せめて舌だけでも入れさせないように唇を閉じていると鼻を指で摘まれる。
そういうことをしてくるアーヴィンの顔はなんだか楽しそうだった。
「んっ…ふ。ぁ…んん…っ!」
たまに口内に敏感なところでもあるのか、アーヴィンの舌がかすると全身に電流が駆け巡るような痺れを感じる。
アーヴィンは執拗に敏感な所を責めたりはしない。
それでも、サシャには未知の体験で、これは正常な反応なのか、判断がつかなかった。
やがてアーヴィンは満足したのか、はたまたサシャが本棚を背に立っていられなくなりそうな産まれたての子鹿のような足になっていることに気づいたからなのか、唇が離れていく。
サシャはこの瞬間が1番苦手だった。
うっすらアーヴィンの翠眼を見ていると、苦しそうな顔を一瞬しているのが分かるからだ。
「ん、はぁ、はぁ…」
「ごっそさん」
一瞬の苦しいような顔つきから、いつものアーヴィンの微笑みに戻る。
サシャは呼吸を整えることで精一杯だった。
「なぁ、5日連続でやってるけど、癖にでもなった?」
「っな! なってない! 練習が、要るって言ったから」
アーヴィンの質問に思わず声を張った。
徐々に恥ずかしくてなのか尻すぼみになっていく。
「じゃあまだ恋人とはしてないんだ」
「え? し、していいの?」
練習中はしてはならないと勝手に思い込んでいたサシャはアーヴィンの言葉に戸惑った。
彼が困ったような顔をしていたので、サシャはアーヴィンが親切心でやってくれていることを思い出した。
「あ……ごめん。こんなことに付き合わせて」
「いや! それは全然! 俺から言い出したしな?!」
「でも」
「何回でも付き合う」
アーヴィンはどこまでも親切だった。
こんな忌々しい紫眼を持ったサシャに対しても、態度も変えなければこうやって練習にも付き合ってくれている。
人に優しくされたことなど数える程しかないサシャにとったら、アーヴィンは天使のように見えた。
だからこそ、これ以上アーヴィンに甘える訳にはいかないと思った。
「いや。明日、挑戦してみる」
「え」
「練習、付き合ってくれてありがとう」
「まだ早いんじゃ」
「でもきっと逃げ出したりはしないと思う!」
そう、アーヴィンにこうやって本棚に追い込まれているものの、もうさすがにクラークから逃げ出したりはせずに済むはず。
サシャはもうクラークを困らせたり落ち込ませたりしたくない。逃げなければなんとかなる、とそう思った。
「うわ、墓穴掘った」
意気込んでいるサシャの前で、アーヴィンが何か呟いていたがよく意味は分からなかった。
◆
次の日、サシャは相変わらず弟に渡された課題のせいで少し眠かったが、授業は寝ずに受けることが出来た。
そして昼になってクラークの所にいつものように向かった。
5日間、クラークは優しかった。
キスを迫ってきたり、距離を必要以上に縮めてこなかった。サシャはクラークの穏やかな優しさが好きだ。
「サシャ」
いつもの中庭に行くと、ふわりと柔和な笑みを浮かべるクラークは騎士らしくないと思う反面、サシャは心の中がきゅぅと音を立てるように苦しく感じた。
サシャの名前をこんなに優しく奏でてくれるのはクラークだけだ。
クラークがくれるものはなんであれ、サシャにとっては宝物のように感じた。
サシャはクラークの隣にいつものように腰掛けた。
座ってから、覚悟を決める。
今日こそは、キスをする。
アーヴィンがあんなに親切に教えてくれたのだ。サシャはきっと逃げ出さずに出来るはず。
そう思って、緊張で喉にたまる唾を飲み込んだ。
「? どうしたの?サシャ」
「あ、あああの、クラ、ーク!」
膝の上に乗せた手は、服をギュッと握っている。
サシャは恥ずかしさで顔がのぼせてくるのが分かった。
中庭は喧騒もなく、静かに風が吹いて木々を揺らしている音だけが響いているのに対して、心の中は穏やかではなかった。
サシャはそれでも勇気を出す。
クラークを悲しませないために、困らせないために。
喜んで欲しくて。
「き、…………す、したい」
「え? サシャごめん、聞こえなかった」
「クラークと! キス!したい……です……」
中庭に静寂が流れる。
サシャは心配になり、クラークをちらりと見ると、クラークはポカンと驚いているようだった。
「く、クラーク?」
「あっ、ああ! サシャがそんなこと言うなんて、びっくりしちゃった」
「う」
「どうして? こないだのこと気にしてるの?」
クラークにとったら、サシャのこの言動はサシャらしくないと思っているのだろう。
クラークの言葉に力なく頷いた。
「僕は嬉しいけど、いいの?」
もう一度、サシャは頷く。
「ちゃんと、練習したから大丈夫」
すると、クラークはピタリと動きを止めた。
サシャは疑問に思ってクラークの顔を見る。
今まで見た事がない、戸惑ったような、不思議に思っているような、どうしたら良いのか分からない表情を見せていた。
「サシャ? 練習って?」
「? えっと、キスの練習」
「誰かと?」
「う、うん」
アーヴィンの名前は出さなかった。
アーヴィンはあくまでティムとして接しているのだから、知られるのは良くないと思った。
「やっぱり、サシャは噂通りだったんだね」
「く、クラーク?」
「噂を信じてなかった僕が馬鹿だった」
彼が一体何を言っているのか、サシャには理解できなかった。
クラークの顔が、怒気を含んだものに変わっていく。
そんなクラークは初めてのことで、サシャは困惑した。
どうして、クラークを喜ばせたかっただけなのに。
ベンチを立ち上がり、クラークの目は汚いものを見るような目をしていた。
まるで、家族と同じような目だった。
「サシャ、残念だよ。信じてたのに」
「クラーク?!」
「二度と顔も見たくない」
「っ!」
クラークはそう言って、1度も振り返らずに中庭から去ってしまった。
サシャは頭の中がぐちゃぐちゃで、追いかけることは出来なかった。
家に帰ってから、やっぱり騙された気がする、とキスの練習をさせられたことを思い出した。
けれど、誰にも相談できるはずもなく、サシャはため息をついた。
徐々に続けていけば慣れていくものなのかもしれない。
そしたら緊張せずともクラークとキスが出来るようになるかもしれない。
しかしこれは本当に良い事なのか。
不貞行為では無いのだろうか、とも思ったが、やっぱり誰にも相談出来ないサシャにはどうしようもない悩み事だった。
アーヴィンはサシャがぶつかった事を気にしてない様子だったので、嘘をつく理由も思い当たらない。
とくれば、やはり考えつくのは親切心で練習をしてくれているという事に行き当たった。
そして、サシャは思い切って練習を続行することに決めた。
「慣れた?」
「っ! ん!んん…ぁ…ん…」
慣れない。
今日で初めてのキスの練習を含めて5日目だが、サシャは全く慣れなかった。むしろアーヴィンの翠眼を見るだけで何故だが身体が強張り、顔が火照ってくるのを感じてしまうほどだった。
いつも本棚に磔にされるようにキスをされる。 身動きが取れなくて、恥ずかしくて逃げることもさせてもらえない。
サシャは息も絶え絶えになりながら、舌を絡ませてくるアーヴィンの動きに翻弄される。
アーヴィンは意地の悪い性格をしている。
サシャが顔を逸らそうとすれば顎を手で押え、せめて舌だけでも入れさせないように唇を閉じていると鼻を指で摘まれる。
そういうことをしてくるアーヴィンの顔はなんだか楽しそうだった。
「んっ…ふ。ぁ…んん…っ!」
たまに口内に敏感なところでもあるのか、アーヴィンの舌がかすると全身に電流が駆け巡るような痺れを感じる。
アーヴィンは執拗に敏感な所を責めたりはしない。
それでも、サシャには未知の体験で、これは正常な反応なのか、判断がつかなかった。
やがてアーヴィンは満足したのか、はたまたサシャが本棚を背に立っていられなくなりそうな産まれたての子鹿のような足になっていることに気づいたからなのか、唇が離れていく。
サシャはこの瞬間が1番苦手だった。
うっすらアーヴィンの翠眼を見ていると、苦しそうな顔を一瞬しているのが分かるからだ。
「ん、はぁ、はぁ…」
「ごっそさん」
一瞬の苦しいような顔つきから、いつものアーヴィンの微笑みに戻る。
サシャは呼吸を整えることで精一杯だった。
「なぁ、5日連続でやってるけど、癖にでもなった?」
「っな! なってない! 練習が、要るって言ったから」
アーヴィンの質問に思わず声を張った。
徐々に恥ずかしくてなのか尻すぼみになっていく。
「じゃあまだ恋人とはしてないんだ」
「え? し、していいの?」
練習中はしてはならないと勝手に思い込んでいたサシャはアーヴィンの言葉に戸惑った。
彼が困ったような顔をしていたので、サシャはアーヴィンが親切心でやってくれていることを思い出した。
「あ……ごめん。こんなことに付き合わせて」
「いや! それは全然! 俺から言い出したしな?!」
「でも」
「何回でも付き合う」
アーヴィンはどこまでも親切だった。
こんな忌々しい紫眼を持ったサシャに対しても、態度も変えなければこうやって練習にも付き合ってくれている。
人に優しくされたことなど数える程しかないサシャにとったら、アーヴィンは天使のように見えた。
だからこそ、これ以上アーヴィンに甘える訳にはいかないと思った。
「いや。明日、挑戦してみる」
「え」
「練習、付き合ってくれてありがとう」
「まだ早いんじゃ」
「でもきっと逃げ出したりはしないと思う!」
そう、アーヴィンにこうやって本棚に追い込まれているものの、もうさすがにクラークから逃げ出したりはせずに済むはず。
サシャはもうクラークを困らせたり落ち込ませたりしたくない。逃げなければなんとかなる、とそう思った。
「うわ、墓穴掘った」
意気込んでいるサシャの前で、アーヴィンが何か呟いていたがよく意味は分からなかった。
◆
次の日、サシャは相変わらず弟に渡された課題のせいで少し眠かったが、授業は寝ずに受けることが出来た。
そして昼になってクラークの所にいつものように向かった。
5日間、クラークは優しかった。
キスを迫ってきたり、距離を必要以上に縮めてこなかった。サシャはクラークの穏やかな優しさが好きだ。
「サシャ」
いつもの中庭に行くと、ふわりと柔和な笑みを浮かべるクラークは騎士らしくないと思う反面、サシャは心の中がきゅぅと音を立てるように苦しく感じた。
サシャの名前をこんなに優しく奏でてくれるのはクラークだけだ。
クラークがくれるものはなんであれ、サシャにとっては宝物のように感じた。
サシャはクラークの隣にいつものように腰掛けた。
座ってから、覚悟を決める。
今日こそは、キスをする。
アーヴィンがあんなに親切に教えてくれたのだ。サシャはきっと逃げ出さずに出来るはず。
そう思って、緊張で喉にたまる唾を飲み込んだ。
「? どうしたの?サシャ」
「あ、あああの、クラ、ーク!」
膝の上に乗せた手は、服をギュッと握っている。
サシャは恥ずかしさで顔がのぼせてくるのが分かった。
中庭は喧騒もなく、静かに風が吹いて木々を揺らしている音だけが響いているのに対して、心の中は穏やかではなかった。
サシャはそれでも勇気を出す。
クラークを悲しませないために、困らせないために。
喜んで欲しくて。
「き、…………す、したい」
「え? サシャごめん、聞こえなかった」
「クラークと! キス!したい……です……」
中庭に静寂が流れる。
サシャは心配になり、クラークをちらりと見ると、クラークはポカンと驚いているようだった。
「く、クラーク?」
「あっ、ああ! サシャがそんなこと言うなんて、びっくりしちゃった」
「う」
「どうして? こないだのこと気にしてるの?」
クラークにとったら、サシャのこの言動はサシャらしくないと思っているのだろう。
クラークの言葉に力なく頷いた。
「僕は嬉しいけど、いいの?」
もう一度、サシャは頷く。
「ちゃんと、練習したから大丈夫」
すると、クラークはピタリと動きを止めた。
サシャは疑問に思ってクラークの顔を見る。
今まで見た事がない、戸惑ったような、不思議に思っているような、どうしたら良いのか分からない表情を見せていた。
「サシャ? 練習って?」
「? えっと、キスの練習」
「誰かと?」
「う、うん」
アーヴィンの名前は出さなかった。
アーヴィンはあくまでティムとして接しているのだから、知られるのは良くないと思った。
「やっぱり、サシャは噂通りだったんだね」
「く、クラーク?」
「噂を信じてなかった僕が馬鹿だった」
彼が一体何を言っているのか、サシャには理解できなかった。
クラークの顔が、怒気を含んだものに変わっていく。
そんなクラークは初めてのことで、サシャは困惑した。
どうして、クラークを喜ばせたかっただけなのに。
ベンチを立ち上がり、クラークの目は汚いものを見るような目をしていた。
まるで、家族と同じような目だった。
「サシャ、残念だよ。信じてたのに」
「クラーク?!」
「二度と顔も見たくない」
「っ!」
クラークはそう言って、1度も振り返らずに中庭から去ってしまった。
サシャは頭の中がぐちゃぐちゃで、追いかけることは出来なかった。
172
お気に入りに追加
1,256
あなたにおすすめの小説

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**

αからΩになった俺が幸せを掴むまで
なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。
10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。
義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。
アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。
義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が…
義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。
そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる