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出会い side アーヴィン
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アーヴィン=イブリックはこれまでの人生で苦労をしたことは殆どなかった。
小さい頃から運動神経が良く、体躯にも恵まれ、女子から黄色い声が上がるほどの顔で産まれていることに自分でも分かっていた。
決してナルシストのつもりもない。ナルシストならば他人はアーヴィンに寄ってこないだろう。
アーヴィンは人望も持ち合わせていた。
人との会話も合わせることになんら苦痛を感じることは無かったし、むしろ他人が自分に合わせているなと感じることもあった。
けれど、実際のところは面倒臭がりであり、親友と呼べる者が1人だけ居れば、あとは将来のために仲良くなっとけば良いだろう、位にしか考えていなかった。
アーヴィンは今、貴重な休み時間に中庭に向かっていた。
机の中に紛れていた手紙には【話したいことがあります】と場所と時間の指定が書いてあり、明らかに女子の字であった。
手紙に要件を書いてくれればいいものの、もじもじとなかなか話ださない女子たちにはウンザリしていた。
アーヴィンは同性愛者であった。
アーヴィンはそれをおくびにも出さず、女子ウケする困った微笑みでそれを見て、その女の一世一代の告白を断るのだ。
それがいつものお決まりのパターンであった。
中庭に向かうには渡り廊下を真ん中まで渡らなくてはならない。渡り廊下はとても長く、中庭の広さを表現しているようだった。
あと少しで中庭に出る所まで来た。その瞬間。
何かドンっと勢いよくアーヴィンの身体にぶつかってきた。
アーヴィンはビクともしなかった。
ぶつかってきた人物はとても軽く、勝手に跳ね返るように尻もちをついていた。
アーヴィンは貴重な休み時間を潰されることと、女子の告白を断る煩わしさで、ただでさえ面倒だと思っていたため機嫌が悪かった。
「っ!いたた…」
「おい、なんだよ」
ぶつかった人物に手を貸すなど、優しいことは出来なかった。
騎士としてあるまじき行動ではあったが、アーヴィンはそれだけイライラしていたのだ。あからさまに不愉快だと言わんばかりの視線を、ぶつかった人物に向けた。
しかし、アーヴィンにとってそれは誤算であった。
この時手を差し出して、掴んでおけば、この人物はアーヴィンに抵抗することは不可能だったはずだ。
尻もちをついた袖口の手は細く、白磁の陶器のように滑らかで白かった。
「おい、お前」
そして、尻もちをついたまま、目の前の人物は顔を上げた。
アーヴィンは只々驚くことしか出来なかった。
まさに青天の霹靂、という言葉がピッタリ合う程、頭に電流が走ったのだ。
1つに括った肩口に流れるようにしている艶やかな銀の髪は、陽の光にあってキラキラと煌めいていた。長い睫毛は銀糸のようで艶めかしく、そんな銀の睫毛に隠れるように伏し目がちな目から覗く瞳は高貴なアメジストの輝きを放っていた。服から覗く細い首に滑らかなデコルテ、そこに流れる汗は淫靡であるとも思った。
そう、アーヴィンにとってぶつかった人物は、月の精と見まごうほどの美しい人物であった。
こんな美しい人物をアーヴィンは見たことがなかった。
「名前」
「え?」
「名前教えろ」
柄にもなく焦っていた。立ったまま、尻もちをついている相手に手も差し出さず、名を名乗るように命令してしまった。
目の前で尻もちをついたまま美しい人物は、口をはくはくしていた。
しかし、手元に落ちた眼鏡に気づいたようだった。その美しい人物の顔が一気に青くなっていった。
「っ!」
「あ!おい!」
そして、眼鏡を握って立ち上がり、アーヴィンの制止も聞かずに東館に走り去ってしまった。
アーヴィンは追いかけたかったが、咄嗟のことで足が動かなかった。
あの走りに一瞬で追いつくことは可能だったはずだ。
「え、嘘だろ」
アーヴィンは人生で1度も人に避けられたことなどなかった。そのせいか、ショックで走り出せなかったのだ。
彼の姿が見えなくなるまで、見送ってしまった。
直ぐに東館に走ればまだ居るかもしれない。アーヴィンはなんとか持ち直して東館に走った。
しかし、渡り廊下から東館を覗いても、あの艶やかな銀糸のような髪色は、どこにもいなかったのだった。
東館をフラフラ探し回ることは出来ない。さすがに騎士として東館を我が物顔で歩くことは躊躇った。
しかし、アーヴィンは思い直す。
あんな艶やかな銀糸のような髪色に麗しい程の目鼻立ち、煌めくアメジストの瞳。目立つのは間違いない。絶対に直ぐに見つかるはず。
そう考えついて、アーヴィンは鼻歌を歌いながら西館へ戻るのだった。
アーヴィンはもう女子の告白タイムのことは完全に頭から抜けていた。
教室へ入り、席に戻った。
機嫌良く鼻歌を歌っているアーヴィンを訝しげに見てくる親友のディランが隣にいた。
「なんだ?告白してきた女子がそんな可愛かったのか?」
ディランは、教室を出るまで明らかに不機嫌だったアーヴィンが、鼻歌をうたってしまうほどテンションが高く楽しそうにしている姿に疑問を持った。
もちろんその不機嫌はディランにしか分からないほど些細なものではあったが。
「あ?告白? そんなもんどーでもいい」
「え、お前その為に中庭に行ったんじゃねぇのかよ」
「それよりも」
アーヴィンには告白などもう本当にどうでもよかった。その女子にどう言われようとも、後で言い訳はいくらでも思いつく。
そんなことよりも、アーヴィンには大事なことがあった。
「文官に、めちゃくちゃ美人な奴がいた」
「は?」
「銀の髪にアメジストの瞳、長いまつ毛に白い肌。ディラン、この男の名前知らないか?」
ディランは一瞬、アーヴィンの様子にポカンと口を開いていた。およそ頭が働いているとは思えなかった。
しかしディランは少し経ってから首を振って正気に戻ったようだった。
ディランはアーヴィンの様子や言葉に笑うことなく、真剣にうーん、と悩んでいた。
「銀の髪に紫の瞳? いやさすがに目立つだろ。美人ったって、相談室の先生じゃないんだろ?」
「あの先生はプラチナブロンドだろ。もっと儚い感じだし、文官の服を着ていた」
進路相談室にいるのは、まるで月下美人を体現したような麗人が居ることで有名であった。しかしその人物は人妻であり、アーヴィンの食指は動かない。
もっと幼く、儚かった。時が経てば経つほど、月に帰ってしまうのではないかと思うほどに美しかった。
ディランはもう一度腕を組んでうーん、と悩んでいたが、思いつかなかったようだった。
「そんな美人いたら、もう噂になってるだろ」
「そうだよなぁ、途中で編入してきたのか?それとも…」
ブツブツと考え込むアーヴィンをディランは横目に見ながら言う。
「お前がそんな他人に興味を持つなんて、よっぽどの美人だな」
「あれは奇跡としか言えない」
ディランにとって、アーヴィンは何事にも冷めている男だったはずだった。
冷静とも言えるが、ディランには冷めている印象が強い。他人にも、物事にも冷めていた。
ディランが親友たる位置に君臨できた理由は、自らはアーヴィンの立場を笠に着ず、アーヴィンが首席をとるならば次席がディランであったこと、何よりもお互い地位に奢り昂らず、されどもお互いの欠点を低く見ることもなかったからである。
何よりも対等な立場であった。
そんな親友は、情に厚くもなく、かといって親友以外と交流がない訳でもない。
騎士団に入り、それなりの地位に就きたいが、それは将来を安泰なものにしたいという理由であり、熱く語ることもなかった。ディランはそんなアーヴィンをリアリストだと表現していた。
だが今のアーヴィンはどうだ。
突如天啓だと言わんばかりに他人に興味を持ち、あまつさえ探しだそうとしている。
他人に対し美人以上に奇跡とまでのたまった。これのどこがリアリストなのか。
アーヴィンのこんな姿は学園初年度から一緒に居たが、初めての事だった。
「いや、でもディランの言う通りだ。あんな美しいなら直ぐに見つかる」
「そうそう、見つかるって」
そんな軽口を叩いて、アーヴィンの機嫌の良い時の鼻歌を、もう一度ディランは聞いた。
小さい頃から運動神経が良く、体躯にも恵まれ、女子から黄色い声が上がるほどの顔で産まれていることに自分でも分かっていた。
決してナルシストのつもりもない。ナルシストならば他人はアーヴィンに寄ってこないだろう。
アーヴィンは人望も持ち合わせていた。
人との会話も合わせることになんら苦痛を感じることは無かったし、むしろ他人が自分に合わせているなと感じることもあった。
けれど、実際のところは面倒臭がりであり、親友と呼べる者が1人だけ居れば、あとは将来のために仲良くなっとけば良いだろう、位にしか考えていなかった。
アーヴィンは今、貴重な休み時間に中庭に向かっていた。
机の中に紛れていた手紙には【話したいことがあります】と場所と時間の指定が書いてあり、明らかに女子の字であった。
手紙に要件を書いてくれればいいものの、もじもじとなかなか話ださない女子たちにはウンザリしていた。
アーヴィンは同性愛者であった。
アーヴィンはそれをおくびにも出さず、女子ウケする困った微笑みでそれを見て、その女の一世一代の告白を断るのだ。
それがいつものお決まりのパターンであった。
中庭に向かうには渡り廊下を真ん中まで渡らなくてはならない。渡り廊下はとても長く、中庭の広さを表現しているようだった。
あと少しで中庭に出る所まで来た。その瞬間。
何かドンっと勢いよくアーヴィンの身体にぶつかってきた。
アーヴィンはビクともしなかった。
ぶつかってきた人物はとても軽く、勝手に跳ね返るように尻もちをついていた。
アーヴィンは貴重な休み時間を潰されることと、女子の告白を断る煩わしさで、ただでさえ面倒だと思っていたため機嫌が悪かった。
「っ!いたた…」
「おい、なんだよ」
ぶつかった人物に手を貸すなど、優しいことは出来なかった。
騎士としてあるまじき行動ではあったが、アーヴィンはそれだけイライラしていたのだ。あからさまに不愉快だと言わんばかりの視線を、ぶつかった人物に向けた。
しかし、アーヴィンにとってそれは誤算であった。
この時手を差し出して、掴んでおけば、この人物はアーヴィンに抵抗することは不可能だったはずだ。
尻もちをついた袖口の手は細く、白磁の陶器のように滑らかで白かった。
「おい、お前」
そして、尻もちをついたまま、目の前の人物は顔を上げた。
アーヴィンは只々驚くことしか出来なかった。
まさに青天の霹靂、という言葉がピッタリ合う程、頭に電流が走ったのだ。
1つに括った肩口に流れるようにしている艶やかな銀の髪は、陽の光にあってキラキラと煌めいていた。長い睫毛は銀糸のようで艶めかしく、そんな銀の睫毛に隠れるように伏し目がちな目から覗く瞳は高貴なアメジストの輝きを放っていた。服から覗く細い首に滑らかなデコルテ、そこに流れる汗は淫靡であるとも思った。
そう、アーヴィンにとってぶつかった人物は、月の精と見まごうほどの美しい人物であった。
こんな美しい人物をアーヴィンは見たことがなかった。
「名前」
「え?」
「名前教えろ」
柄にもなく焦っていた。立ったまま、尻もちをついている相手に手も差し出さず、名を名乗るように命令してしまった。
目の前で尻もちをついたまま美しい人物は、口をはくはくしていた。
しかし、手元に落ちた眼鏡に気づいたようだった。その美しい人物の顔が一気に青くなっていった。
「っ!」
「あ!おい!」
そして、眼鏡を握って立ち上がり、アーヴィンの制止も聞かずに東館に走り去ってしまった。
アーヴィンは追いかけたかったが、咄嗟のことで足が動かなかった。
あの走りに一瞬で追いつくことは可能だったはずだ。
「え、嘘だろ」
アーヴィンは人生で1度も人に避けられたことなどなかった。そのせいか、ショックで走り出せなかったのだ。
彼の姿が見えなくなるまで、見送ってしまった。
直ぐに東館に走ればまだ居るかもしれない。アーヴィンはなんとか持ち直して東館に走った。
しかし、渡り廊下から東館を覗いても、あの艶やかな銀糸のような髪色は、どこにもいなかったのだった。
東館をフラフラ探し回ることは出来ない。さすがに騎士として東館を我が物顔で歩くことは躊躇った。
しかし、アーヴィンは思い直す。
あんな艶やかな銀糸のような髪色に麗しい程の目鼻立ち、煌めくアメジストの瞳。目立つのは間違いない。絶対に直ぐに見つかるはず。
そう考えついて、アーヴィンは鼻歌を歌いながら西館へ戻るのだった。
アーヴィンはもう女子の告白タイムのことは完全に頭から抜けていた。
教室へ入り、席に戻った。
機嫌良く鼻歌を歌っているアーヴィンを訝しげに見てくる親友のディランが隣にいた。
「なんだ?告白してきた女子がそんな可愛かったのか?」
ディランは、教室を出るまで明らかに不機嫌だったアーヴィンが、鼻歌をうたってしまうほどテンションが高く楽しそうにしている姿に疑問を持った。
もちろんその不機嫌はディランにしか分からないほど些細なものではあったが。
「あ?告白? そんなもんどーでもいい」
「え、お前その為に中庭に行ったんじゃねぇのかよ」
「それよりも」
アーヴィンには告白などもう本当にどうでもよかった。その女子にどう言われようとも、後で言い訳はいくらでも思いつく。
そんなことよりも、アーヴィンには大事なことがあった。
「文官に、めちゃくちゃ美人な奴がいた」
「は?」
「銀の髪にアメジストの瞳、長いまつ毛に白い肌。ディラン、この男の名前知らないか?」
ディランは一瞬、アーヴィンの様子にポカンと口を開いていた。およそ頭が働いているとは思えなかった。
しかしディランは少し経ってから首を振って正気に戻ったようだった。
ディランはアーヴィンの様子や言葉に笑うことなく、真剣にうーん、と悩んでいた。
「銀の髪に紫の瞳? いやさすがに目立つだろ。美人ったって、相談室の先生じゃないんだろ?」
「あの先生はプラチナブロンドだろ。もっと儚い感じだし、文官の服を着ていた」
進路相談室にいるのは、まるで月下美人を体現したような麗人が居ることで有名であった。しかしその人物は人妻であり、アーヴィンの食指は動かない。
もっと幼く、儚かった。時が経てば経つほど、月に帰ってしまうのではないかと思うほどに美しかった。
ディランはもう一度腕を組んでうーん、と悩んでいたが、思いつかなかったようだった。
「そんな美人いたら、もう噂になってるだろ」
「そうだよなぁ、途中で編入してきたのか?それとも…」
ブツブツと考え込むアーヴィンをディランは横目に見ながら言う。
「お前がそんな他人に興味を持つなんて、よっぽどの美人だな」
「あれは奇跡としか言えない」
ディランにとって、アーヴィンは何事にも冷めている男だったはずだった。
冷静とも言えるが、ディランには冷めている印象が強い。他人にも、物事にも冷めていた。
ディランが親友たる位置に君臨できた理由は、自らはアーヴィンの立場を笠に着ず、アーヴィンが首席をとるならば次席がディランであったこと、何よりもお互い地位に奢り昂らず、されどもお互いの欠点を低く見ることもなかったからである。
何よりも対等な立場であった。
そんな親友は、情に厚くもなく、かといって親友以外と交流がない訳でもない。
騎士団に入り、それなりの地位に就きたいが、それは将来を安泰なものにしたいという理由であり、熱く語ることもなかった。ディランはそんなアーヴィンをリアリストだと表現していた。
だが今のアーヴィンはどうだ。
突如天啓だと言わんばかりに他人に興味を持ち、あまつさえ探しだそうとしている。
他人に対し美人以上に奇跡とまでのたまった。これのどこがリアリストなのか。
アーヴィンのこんな姿は学園初年度から一緒に居たが、初めての事だった。
「いや、でもディランの言う通りだ。あんな美しいなら直ぐに見つかる」
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