【完結】イリヤくんの受難

七咲陸

文字の大きさ
上 下
18 / 18

18、イリヤくんのそれから

しおりを挟む

「それから、天使は君に飼われてると」

「もう放し飼いしても帰ってくるようになった」

「ああ、ハウスを覚えたの?それにしてもあのちょっと頭の足りなそうな子が君のタイプだったなんてねぇ?次期宰相の君が選ぶことにビックリだよ」


  ルドウェルは、常にないほど機嫌の良いレオンの様子に驚いて詳細を掻い摘んで聞いた。


「頭が足りないからイイんだよ」

「……君は裏も表も考えなくちゃいけない立場だからね。僕もだけど。あんなに綺麗に表だけ見せてくる子なんて天然記念物だ」

「それが面白いのかリーザがお茶会に連れ出して遊んでるらしい」

「……お菓子の食べすぎで太らないといいね」


  レオンの母、リーザに連れ出されお茶会に参加してるが、イリヤは『ただのお茶会』だと本気で思ってるらしい。

  リーザの友人たちからは、馬鹿な可愛い人形扱いされているようだった。


「リーザ殿の周辺に気に入られれば、その辺の貴族に利用されもしないから安心だ」

「政治利用は全く出来ねぇと思ってイリヤにペラペラと話す輩が居るからウケるぞ」

「あはは。毒気がないから素直に話しちゃうんだ! それは面白いね!」


  リーザは更に面白がって礼儀が整った辺りからリーザの友人以外の色んなお茶会にイリヤを一人で行かせるようにした。

  その度に面白い情報を引き出してくるようになった。

  この間もイリヤは『なんかねぇ、××の家が新しい畑の整備で忙しいんだって言ってたよー? 大変だねぇ』とレオンに言ってきた。どこぞの侍女でも孕ませてしまったのだろう。イリヤには全く理解できないからとペラペラ良く喋れるものだ。

ちなみにイリヤからはなんの情報も得られない。レオンがやっていることを1ミリも理解出来てないからだ。


「まぁ君が幸せそうで良かった。世の中をずっとつまらなそうに、適当に生きてる感じがしたし」

「……は。馬鹿と居ると飽きねぇぞ」

「うんうん。これぞ生き甲斐ってやつだ。素晴らしいね」


  そんなレオンの生き甲斐のイリヤは今日もどこぞのお茶会に参加している。

  最近はお茶とお菓子の美味しさで家のランク付けするのが趣味になっているらしい。このランク付けも馬鹿にならない。流行の先端を見たり、財力の蓄えの差を見たりと色んな価値があった。


「まさかあの馬鹿に使い道があるとは思ってなかったけどな」

「しかもそれを全部素でやってる所が良いね」

「……堕とせば変わると思ったらなんにも変わらなかった」

「ふふ。 本物の天使だった訳だ。ちょっとやそっとじゃ堕ちても穢れない。最高だね」


  するとレオンは、ク、と口端を上げて嗤う。


「ああ最高だ。二度と昇らせるかよ」

「可哀想に。一生檻の中なことに全く気づいてないんだろうな。ま、それはそれで幸せか」


  レオンの嗤う声が珍しく部屋を響かせる。
  やはり機嫌の良いレオンに、ルドウェルは肩を竦めたのだった。







------------------

ここまで読んでくださってありがとうございました。

別のお話でお会いできますように


七咲陸
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

たす
2022.10.02 たす

ひたすら可愛いです! その後のストーリーなどあればぜひ読みたいです♡

七咲陸
2022.10.03 七咲陸

感想ありがとうございます!
その後のストーリーは考えていませんでした……! 降りてきたら書いてみたいですね、キャラ完全に忘れてるので読み直しからかもです…
読んでくださってありがとうございました!

解除
こここ
2022.07.09 こここ

エロかわ♡♡
読めて良かったです!!

七咲陸
2022.07.09 七咲陸

感想ありがとうございます!
良かったと言ってくださって嬉しいです、ありがとうございます!

解除
syarin
2022.04.14 syarin
ネタバレ含む
七咲陸
2022.04.14 七咲陸

感想ありがとうございます!
レオンがレオンなりにイリヤのことを溺愛しているのが伝わると嬉しいです……!
読んでくださってありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

【完結】暁の騎士と宵闇の賢者

エウラ
BL
転生者であるセラータは宮廷魔導師団長を義父に持ち、自身もその副師団長を務めるほどの腕のいい魔導師。 幼馴染みの宮廷騎士団副団長に片想いをしている。 その幼馴染みに自分の見た目や噂のせいでどうやら嫌われているらしいと思っていたが・・・・・・。 ※竜人の番い設定は今回は緩いです。独占欲や嫉妬はありますが、番いが亡くなった場合でも狂ったりはしない設定です。 普通に女性もいる世界。様々な種族がいる。 魔法で子供が出来るので普通に同性婚可能。 名前は日本名と同じくファミリーネーム(苗字)・ファーストネーム(名前)の表記です。 ハッピーエンド確定です。 R18は*印付きます。そこまで行くのは後半だと思います。 ※番外編も終わり、完結しました。

兄のやり方には思うところがある!

野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます! 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m ■■■ 特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。 無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟 コメディーです。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。