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変心

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  次の日の昼もリーシャは呼び出され、昼食を共にした後に物陰に連れ込まれた。

「んっ……ぅ、ん…ふ、ちゅ……」
「ん、きもちーな?」

  長い長いキスをされて、口内をしゃぶり尽くされた。酸欠と快感で頭と腰が痺れてリーシャは一人で立っていられず、レオナルドに支えてもらっていた。
  気持ちいいかと尋ねられ、ポーっとする頭では考えつかず、身体が勝手に頷いていた。一瞬だけ驚いたように目を見開いたレオナルドだったが、すぐにク、と笑みを浮かべていた。

「リーシャ。もう一回、今度は自分からしてみろ」
「え……?」
「ほら」

  自分から、と言われポヤポヤとしていた頭が少しだけ冴える。今までずっと、リーシャのキスは受け身だった。レオナルドが降らせるキスの雨に翻弄され、嵐のような爪痕を残されていく。そういうものだった。
  なのにレオナルドは今、自ら嵐の中に飛び込めと言ってきた。

「そ、そんな。だ、誰か来たら」
「あ? そんなの俺がやろうがお前がやろうが変わらねぇな。むしろリーシャがやらなきゃその分時間が長引いて誰か通るぞ?」

  人通りの少ない物陰とはいえ、すぐ近くに道はある。気配もそこそこ感じたままキスをしていたのだが、いつ誰かが来てもおかしくない。そんな中、自分から。自分からレオナルドにキスをしなくてはならないのか。

「リーシャ」
「あ、うぅ……」

  名を呼ばれて催促される。
  モジモジとして俯いたり、キョロキョロしたりと落ち着かないでいたリーシャは、最後にチラリ、とレオナルドを見た。

「ほら。早く」
「っ……!」

  リーシャは瞼に力を入れてギュッと瞑った。こういうのは勢いだと、誰かが言っていた気がする。

  リーシャはレオナルドの唇に唇を重ねて、離れた。

「は? そんなママゴトみたいなやつがいまさらキスって言えると思ってんのか?」
「ぇ、ぁ、ぅ……!」
「ちゃーんと、濃厚なやつぶちかまして来いよ?」

  勇気を出したのに、ママゴトと言われ恥ずかしくなった。意地の悪い笑顔で言われ、リーシャはもう一度勇気を出した。

唇を重ね、うっすらと開いている口に舌を差し込んだ。どうしたらいいか最初は分からなかったけれど、レオナルドの舌がリーシャの舌に絡みついてぴちゃ、と音を立てていた。

  そこからは、リーシャもよく覚えてない。プルプルと震える背伸びの最中、レオナルドが腰を支えてくれていたのは覚えている。しかし、リーシャは自らレオナルドの背中に腕を回して抱きつく姿勢になっていることには気づいてなかった。
  キスはレオナルドが先導しなくとも、リーシャの舌が勝手に口内を駆け回り、必死にレオナルドの舌に絡みついていた。息も絶え絶えなのに、離れ難い。レオナルドの厚くて温かい舌が、唾液が美味しいとすら感じていた。リーシャが口内を犯しているはずなのに、気持ちいい。
  リーシャは知らずにレオナルドの股間に腰を押し付けていた。敬虔な聖職者であるはずのリーシャをそこまで変えたのだとレオナルドは身震いしたくなった。

「ん……ん、んちゅ、ん……んぅ、……は…」
「えっろ…はー、夜が待ち遠しいなぁ?リーシャ」
「あ…ん……」

  キスを終え、リーシャとレオナルドの間に銀糸が渡る。レオナルドは躊躇なくその銀糸を辿るようにリーシャに短いキスをした。

  レオナルドの問いにリーシャは自らの意志を持ってコクリ、と頷いた。昨日も苛まれた下腹部がキュンキュンと唸り、腰がズクリと疼くのだ。

  肉欲からかけ離れた人生を送ってきたリーシャはもう何処にもいなかった。ただ、男に肉棒を穿たれる快楽を追うだけの人に成り果てた。

  このリーシャの姿をここまで育ててくれた恩人であるレイディットが見たら、どんな反応をするだろうか。悲しむだろうか、複雑な顔をするだろうか、それとも、失望させてしまうだろうか。

  けれどもうリーシャはレオナルドから自ら離れたいとは思えなかった。

  彼は時に優しく、時にリーシャを甘やかし、時にイヤらしく、リーシャの十八年間埋まることのなかった欲を全て満たしてくれるのだから。
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