1 / 17
聖職者、リーシャ
しおりを挟む
この国の国教は、一神教である。スラーナディア神のみを崇め奉る。この国の繁栄と、勝利と、豊穣をスラーナディア神に祈る。
リーシャもその祈りを捧げる信奉者の一人だ。
スラーナディア神の偶像が描かれた見事なステンドグラスから射し込む光に照らされた場所から、手を組んで祈る。
この国の安寧と、スラーナディア神の平穏を。
「リーシャ」
目を瞑り、俯いて祈りを捧げていた所を後ろから声がかかる。すっと目を開けて振り返ると、そこにいたのは司祭服を身に纏う上司の姿だった。
「レイディット様」
「相変わらず敬虔ですね。スラーナディア神もリーシャの姿には感動するでしょう」
感心するように顎に手を当てながらウンウンと首を頷かせている。レイディットはリーシャの直属の上司であり、下積み時代からずっとお世話になっている。
誰に対しても平等であるはずのレイディットですら、謙虚で敬虔な姿をみせるリーシャには目をかけてしまう。
「いえそんな」
レイディットは目を細めて眩しそうにリーシャを見つめる。幼い頃から教会にいたリーシャはレイディットにとって息子同然の気持ちである。品行方正で優秀なリーシャが可愛くないはずがなかった。
「はぁ…本当に心配です。そんなリーシャが辺境に行かなくてはならないなんて」
「レイディット様……人手が足りないというならば僕は喜んで行きます。また戻って来た時、僕のこと覚えててくださいね」
「忘れるはずありません。手紙も書きます。はぁ……いつか司祭になる為とはいえ、何も辺境でなくとも……はぁ……」
今回のリーシャの辺境行きは出向扱いである。ここ、水の王都であるルーシアから辺境、ヴァレンテインへは馬車で約一ヶ月かかる距離にある。そんな辺境に、目に入れても痛くないほど目をかけてきたリーシャを送らなくてはならないレイディットは気が気でなかった。
「レイディット様には感謝しております。僕にとってのスラーナディア神の祝福は貴方だと思っております」
「リーシャ……! あああ……本当に行かせたくない。行かせたくないです……! 今からでも大司教様に…」
レイディットは知っていた。なぜリーシャが辺境行きに選ばれてしまったのかを。こうやってレイディットがリーシャを贔屓しているつもりはなくとも、周りの目はそう映ってしまい、リーシャの位を上げにくいからだ。今のままリーシャを司祭へ繰り上げたとしても、周りは贔屓だと納得しないだろうという上層部の判断である。
つまり、レイディットのせいでもあるのだが、リーシャはあまりその辺に気づいておらず、レイディットの心の中で留めている。
「これは、思し召しでもあると僕は思っています。大丈夫です、レイディット様。僕は立派にこなしてみせます」
「何かあったら必ず連絡をするのですよ。良いですね」
「はい。ありがとうございます」
にこ、と微笑んで心配するレイディットを安心させようとしたのだが、逆効果なのかレイディットは顔を歪めてオイオイと泣き始めてしまった。
リーシャはそれを宥め、翌週には辺境へと旅立ったのだった。
リーシャもその祈りを捧げる信奉者の一人だ。
スラーナディア神の偶像が描かれた見事なステンドグラスから射し込む光に照らされた場所から、手を組んで祈る。
この国の安寧と、スラーナディア神の平穏を。
「リーシャ」
目を瞑り、俯いて祈りを捧げていた所を後ろから声がかかる。すっと目を開けて振り返ると、そこにいたのは司祭服を身に纏う上司の姿だった。
「レイディット様」
「相変わらず敬虔ですね。スラーナディア神もリーシャの姿には感動するでしょう」
感心するように顎に手を当てながらウンウンと首を頷かせている。レイディットはリーシャの直属の上司であり、下積み時代からずっとお世話になっている。
誰に対しても平等であるはずのレイディットですら、謙虚で敬虔な姿をみせるリーシャには目をかけてしまう。
「いえそんな」
レイディットは目を細めて眩しそうにリーシャを見つめる。幼い頃から教会にいたリーシャはレイディットにとって息子同然の気持ちである。品行方正で優秀なリーシャが可愛くないはずがなかった。
「はぁ…本当に心配です。そんなリーシャが辺境に行かなくてはならないなんて」
「レイディット様……人手が足りないというならば僕は喜んで行きます。また戻って来た時、僕のこと覚えててくださいね」
「忘れるはずありません。手紙も書きます。はぁ……いつか司祭になる為とはいえ、何も辺境でなくとも……はぁ……」
今回のリーシャの辺境行きは出向扱いである。ここ、水の王都であるルーシアから辺境、ヴァレンテインへは馬車で約一ヶ月かかる距離にある。そんな辺境に、目に入れても痛くないほど目をかけてきたリーシャを送らなくてはならないレイディットは気が気でなかった。
「レイディット様には感謝しております。僕にとってのスラーナディア神の祝福は貴方だと思っております」
「リーシャ……! あああ……本当に行かせたくない。行かせたくないです……! 今からでも大司教様に…」
レイディットは知っていた。なぜリーシャが辺境行きに選ばれてしまったのかを。こうやってレイディットがリーシャを贔屓しているつもりはなくとも、周りの目はそう映ってしまい、リーシャの位を上げにくいからだ。今のままリーシャを司祭へ繰り上げたとしても、周りは贔屓だと納得しないだろうという上層部の判断である。
つまり、レイディットのせいでもあるのだが、リーシャはあまりその辺に気づいておらず、レイディットの心の中で留めている。
「これは、思し召しでもあると僕は思っています。大丈夫です、レイディット様。僕は立派にこなしてみせます」
「何かあったら必ず連絡をするのですよ。良いですね」
「はい。ありがとうございます」
にこ、と微笑んで心配するレイディットを安心させようとしたのだが、逆効果なのかレイディットは顔を歪めてオイオイと泣き始めてしまった。
リーシャはそれを宥め、翌週には辺境へと旅立ったのだった。
77
お気に入りに追加
694
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。



次期当主に激重執着される俺
柴原 狂
BL
「いいかジーク、何度も言うが──今夜も絶対に街へ降りるな。兄ちゃんとの約束だ」
主人公ジークは、兄にいつもそう教えられてきた。そんなある日、兄の忘れ物を見つけたジークは、届けなければと思い、迷ったのち外へ出てみることにした。そこで、ある男とぶつかってしまう。
「コイツを王宮へ連れて帰れ。今すぐに」
次期当主に捕まったジーク。果たして彼はどうなるのか。
溺愛ヤンデレ攻め×ツンデレ受けです
ぜひ読んで見てください…!


性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる