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3.デート
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気がつくと家を出なければならない30分前であった。身体も頭も重かったがどうにか着替えて家を出る。
待ち合わせ場所に着くと、約束の時間の5分前であった。和人はまだ来ていない。すると和人が向こうから走ってきた。
「お待たせしました!早いですね!!」
「そう?あ、今日はどこ行くの?」
和人は私の顔を覗き込み、ぼーっとしているのか返答がなかった。
「かずと?」
「え、あっ、すみません、いいイタリアン見つけたのでそこ行きましょう!」
「え、あ、うん。」
名前を呼びかけてようやく反応した。
ちなみにメイクも髪型も変えていない。多少痩せたくらいで。だからなぜ彼が私の顔を覗き込んでいた理由がわからない。
その後はそのイタリアンに着くまで他愛のない話をした。
イタリアンのお店はおしゃれな外観であった。普段ならきっとテンションが上がるのだろうが、全くと言っていいほど何も感じなかった。むしろいつも以上に疲れてしまい、一刻も早く帰りたいとさえ感じてしまった。
そんな私を和人はまた長いこと見つめていた。
「何?」
「あ、いえ、なんでも…」
いつもと様子が違う彼を怪訝に思いながらも、前を行く彼の後に続いて中に入った。
店内は薄暗く、テーブルの上のキャンドルがぼんやり辺りを照らしていた。ホールのスタッフさんもとても品があり、高級感が漂っている。そういえば、ドアもスタッフさんが開けてくださった。
案内された席は窓際であり、周囲には誰もいなかった。薄暗いため席に着くまで気づかなかったが、テーブルの上には花瓶も置いてあった。生けているのは桃色の胡蝶蘭のようだ。胡蝶蘭全体の花言葉は「幸福がとんでくる」であるから縁起は良いのだが、とりわけ桃色の場合は「あなたを愛します」という意味になる。プロポーズするならまだしも普段なら白色に変えてはどうか…とどうでも良いことに想いを馳せていた。
ぼーっとしている私に和人がメニューを手渡してくれた。ありがとうと言いながらおずおずとメニューを手に取った。メニューにはパスタやピザ等が羅列されていた。
パスタは大好物である。嬉々としてパスタを選びたいが、やはりどうも食欲が湧かずそんな気分になれない。豊富なメニューから選ぶのも面倒で目についたボンゴレビアンコにした。
和人にアルコールはどうかと尋ねられたが、全くアルコールを飲む気分にならず水にした。決してお酒は嫌いなわけでも体質上苦手なわけでもない。むしろ強くて好きな方だ。
店員さんを呼び、和人がボンゴレビアンコとボンゴレビアンカを注文した。私に気にせずアルコールを頼んでいいと言ったが、私が飲まないなら飲まないとのことで2人とも水である。1人でお酒を飲んでも楽しくない気持ちはわかるので特にそれ以上は何も言わなかった。
店員さんが立ち去り、周囲に誰もいなくなったのを見計らったように和人が口を開いた。
「あの、凛乃さん、最近忙しいんですか?」
「いや特にそんなことは。なぜ?」
「いえ、痩せたな、と…忙しくてご飯食べれていないのかもと思って…なら何か変わったこととか悩みとかあるんですか?何でも聞きますよ?」
正直上司のことを話すか悩んだ。心優しい彼氏はきっと途中で遮ることもなく聞き終えても怒鳴ることもなく一緒に考えてくれるのだろう。
だからこそ、心配をかけたくなかった。また捨てられてしまうのが怖かった。
上司のことはもう「日常」だ。日常なのだから変わったことなんてない、そしてその上司にこのようなことをされるのは自分が至らないからだ、と半ば強引に自分を納得させ、無理矢理笑顔を作って答えた。
「ううん、特に。でもありがとう。」
納得した様子ではなくどこかこちらを疑う姿勢を崩さなかった。
が、私が今は口を割らないと悟ったのだろうか。
「それならいいんです、でも何かあったら絶対に言ってくださいよ、時間もちゃんと作って聞きますから。」
この反応は…応えた。捨てられてもいいから全て打ち明けてしまいたかった。だけど頼り方がわからない。頼ったら迷惑をかけてしまう。
タイミング良く店員さんがパスタを運んできてくれた。返事はせず食べることに集中しているフリをした。
待ち合わせ場所に着くと、約束の時間の5分前であった。和人はまだ来ていない。すると和人が向こうから走ってきた。
「お待たせしました!早いですね!!」
「そう?あ、今日はどこ行くの?」
和人は私の顔を覗き込み、ぼーっとしているのか返答がなかった。
「かずと?」
「え、あっ、すみません、いいイタリアン見つけたのでそこ行きましょう!」
「え、あ、うん。」
名前を呼びかけてようやく反応した。
ちなみにメイクも髪型も変えていない。多少痩せたくらいで。だからなぜ彼が私の顔を覗き込んでいた理由がわからない。
その後はそのイタリアンに着くまで他愛のない話をした。
イタリアンのお店はおしゃれな外観であった。普段ならきっとテンションが上がるのだろうが、全くと言っていいほど何も感じなかった。むしろいつも以上に疲れてしまい、一刻も早く帰りたいとさえ感じてしまった。
そんな私を和人はまた長いこと見つめていた。
「何?」
「あ、いえ、なんでも…」
いつもと様子が違う彼を怪訝に思いながらも、前を行く彼の後に続いて中に入った。
店内は薄暗く、テーブルの上のキャンドルがぼんやり辺りを照らしていた。ホールのスタッフさんもとても品があり、高級感が漂っている。そういえば、ドアもスタッフさんが開けてくださった。
案内された席は窓際であり、周囲には誰もいなかった。薄暗いため席に着くまで気づかなかったが、テーブルの上には花瓶も置いてあった。生けているのは桃色の胡蝶蘭のようだ。胡蝶蘭全体の花言葉は「幸福がとんでくる」であるから縁起は良いのだが、とりわけ桃色の場合は「あなたを愛します」という意味になる。プロポーズするならまだしも普段なら白色に変えてはどうか…とどうでも良いことに想いを馳せていた。
ぼーっとしている私に和人がメニューを手渡してくれた。ありがとうと言いながらおずおずとメニューを手に取った。メニューにはパスタやピザ等が羅列されていた。
パスタは大好物である。嬉々としてパスタを選びたいが、やはりどうも食欲が湧かずそんな気分になれない。豊富なメニューから選ぶのも面倒で目についたボンゴレビアンコにした。
和人にアルコールはどうかと尋ねられたが、全くアルコールを飲む気分にならず水にした。決してお酒は嫌いなわけでも体質上苦手なわけでもない。むしろ強くて好きな方だ。
店員さんを呼び、和人がボンゴレビアンコとボンゴレビアンカを注文した。私に気にせずアルコールを頼んでいいと言ったが、私が飲まないなら飲まないとのことで2人とも水である。1人でお酒を飲んでも楽しくない気持ちはわかるので特にそれ以上は何も言わなかった。
店員さんが立ち去り、周囲に誰もいなくなったのを見計らったように和人が口を開いた。
「あの、凛乃さん、最近忙しいんですか?」
「いや特にそんなことは。なぜ?」
「いえ、痩せたな、と…忙しくてご飯食べれていないのかもと思って…なら何か変わったこととか悩みとかあるんですか?何でも聞きますよ?」
正直上司のことを話すか悩んだ。心優しい彼氏はきっと途中で遮ることもなく聞き終えても怒鳴ることもなく一緒に考えてくれるのだろう。
だからこそ、心配をかけたくなかった。また捨てられてしまうのが怖かった。
上司のことはもう「日常」だ。日常なのだから変わったことなんてない、そしてその上司にこのようなことをされるのは自分が至らないからだ、と半ば強引に自分を納得させ、無理矢理笑顔を作って答えた。
「ううん、特に。でもありがとう。」
納得した様子ではなくどこかこちらを疑う姿勢を崩さなかった。
が、私が今は口を割らないと悟ったのだろうか。
「それならいいんです、でも何かあったら絶対に言ってくださいよ、時間もちゃんと作って聞きますから。」
この反応は…応えた。捨てられてもいいから全て打ち明けてしまいたかった。だけど頼り方がわからない。頼ったら迷惑をかけてしまう。
タイミング良く店員さんがパスタを運んできてくれた。返事はせず食べることに集中しているフリをした。
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