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35,生徒会に入る

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本格的に学園生活が始まった。

一般教養の科目は、既に勉強した内容ばかりだったので余裕だ。薬学に関しても、既に知っている知識ばかりだった。それでも座学の授業は面白く、有意義な時間を過ごすことができていた。
実技の必修科目では苦手な刺繍の時間があったが、それ以外は概ね順調だ。

お昼はクリスお兄様とヴィーク、ユリウス様と一緒に取ることになった。
クリスお兄様とユリウス様はヴィークと行動を共にすることが多いようだ。いわゆる側近らしいことは学園に入ってから知った事実だ。
本当はユリウス様も飛び級して、ヴィークの側近として同じ学年で学ぶ予定だったようだが、なぜかはわからないが、飛び級せずに学園生活を送っているらしい。
だから授業の時間以外はヴィークと行動を共にしているということもわかった。





魔法の授業は必修科目である。

この世界では皆魔力を内に秘めている。
魔力量が増えるかどうかは本人の努力次第である。
私はシドに教えてもらい、日々実践してきたので、同年代より遥かに魔力量が多かった。
魔力量を増やす訓練を毎日欠かさず行ってきたので、現在の魔力量は2万を越えている。

既に全属性習得しているので授業も楽勝だ。
3回目の授業の後、先生に呼ばれた。
魔法は誰に教わったか聞かれたのでシドという王宮魔術師、と言うと

「えっ?!あのシド様直々に?!あり得ない…」

あり得ないと言われても実際教えて貰ったしな。


そんな日々を過ごしているとすぐにテストの時期となった。
テストは、全教科満点で学年首位の成績を取ることができた。

「すごいですね、エリナリーゼ様。でも、次は負けませんよ!」

とユリウス様からのライバル宣言を受けた。この数ヶ月でユリウス様ともそんな事を言い合うくらいには仲良くなった。

「私も3位だけど、1位と2位が圧倒的すぎますね」
と言うのは同じクラスのジークハルト様だ。

ちなみに私は500点満点、ユリウス様は497点、そして3位のジークハルト様は485点という結果だ。
ジークハルト様だって十分凄いのに。

「エリナリーゼ様、さすがです!」

「本当になんでもできるのですね、エリナリーゼ様、尊敬します。」

「才能のある方は違いますのね!今度是非お勉強をご一緒させていただきたいです!」

「そんなことないわよ。ヤマが当たっただけよ。」

私はこういうことを言われるのが嫌いなので、引き攣った笑みをみせながらそう言う。

(あぁ面倒臭いな。少しは一人で何かを成し遂げる努力をしたら?)

と心の中で悪態をついていると、

「エリィは頑張り屋さんだからね。君たちの知らないところで沢山努力をしているんだよ。」

とヴィークが声を掛けてきた。

「エリィ、1位おめでとう!これでエリィも生徒会の仲間入りだね。」

その声にほっとしたのもつかの間、聞き捨てならないことを聞いたような気がする。

「ヴィークグラン殿下よ!」

「エリナリーゼ様と本当にお似合いだわ。」

「お二人はお付き合いされているのかしら?」

などと聞こえてくるがスルーだ。

「生徒会ってなんの話?」

「知らなかった?この学園では成績の上位5名は生徒会に入る決まりがあるんだよ。」

(聞いてないわよ…、生徒会なんて面倒くさそうなことやりたくないわ。他にやることも沢山あるのに。)

「えっと…、それは辞退することはできないの?」

「今まで辞退した人はいないかな。」

「……」

「じゃあ生徒会室に案内するよ。」

なんだろう、ヴィークってばすごいいい笑顔じゃない。

「ヴィークも生徒会に入ってるの?」

「そうだよ。これからはエリィと一緒にいられる時間が増えるね。あ、もちろんクリスも生徒会のメンバーだから安心して?」

そういう問題ではないのだけど……。断われなさそうな雰囲気を察した私は、ため息をつきながらも生徒会に入ることにしたのだった。

一年生なので今はそんなにやることはないらしい。
後期から本格的になるみたいだ。

学園が終わってからはハーブの研究をしたりしているし、やりたいことは沢山あるからやっぱり時間が足りない。時間を伸ばせる魔法か、眠くならない魔法とかないかな?
子供の頃からよく使っているリフレッシュという魔法は短時間しか効果がないしなぁ。何かいい魔法ないかな?
帰りの馬車の中でそんな事を考えていると、私の顔を見ていたヴィークがふと聞いてくる。

「エリィ、夏休みはどこかに行くの?」

「夏休みはルーファンに行くのよ。」

「ルーファンか。良いところだよね。」

「えぇ、とても気に入っているの。あそこにしか咲いてない花や薬草があるのよ。」

「そうなんだ?いつ頃いくの?」

「来週から2週間位行こうと思ってるの。」

「じゃあさ、その前に街へ行かない?」

「街へ?」

「うん!行ってみたいところがあるんだけど、男1人では行きにくくて。」

「えぇ、もちろん。私で良ければ是非。」





ヴィークと街へ出掛ける日がやってきた。
屋敷まで迎えに来てくれて、ちゃんとエスコートまでしてくれる。本当に紳士だなぁ。

と思っていると、ハンドクリームや化粧水のお礼にとドレスを贈りたいと言い出した。 

「え?いいわよ、ドレスなんて。私着ていく機会ないもの。」

自慢じゃないがパーティーには未だに苦手意識があるのでほとんど欠席している。

「これからはパーティーにも出席せざるを得なくなってくるよ?」

「ドレスなら家に沢山あるわ。お母様のドレスがいいの。」

さすがにドレスの贈り物は丁重にお断りしたい。

「私があげたいんだ。ダメかな?」 

「う~ん……。ドレスは大丈夫よ」

頑なにドレスを拒むと、ヴィークは悲壮感を漂わせながら聞いてきた。

「ねぇ、エリィ。…エリィは婚約者は作らないの?」

「今のところは考えていないわ。」

「…もしかして、誰か好きな人がいるの?」

「えぇ、そうよ。」

「………っ!!…それは僕も知ってる人?」 

「えぇ、知ってるわね。」

「誰か聞いても……?いや、やっぱりいい。」

わかりやすく元気がなくなったわね…。ちゃんとお父様って言った方が誤解は溶けそうだけど……。

「ねぇヴィーク、もしかして行きたかった所ってそこ?」

「うん、そうだよ。」

力なく答えるヴィークがなんだか可哀相になってきてしまった。私が悪いみたいになっているのは気のせいかしら。

「…ちょっとお茶しない?あそこのカフェずっと気になっていたの。」

「うん、もちろん。」

お花屋さんの前にあるカフェは、テラス席ではお花屋が見える。ここでゆっくりお茶をしながら店頭に置いてあるお花を眺めたいと思っていたのだ。

「いろんなお花があってきれいね。」

「うん、エリィはどの花が一番好き?」

「うーん、一番は選べないわね。どのお花もキレイだから。」

そんな話をしながらお花屋さんを眺めていると、何を買おうか迷っている人がいる。
迷っているがその姿はどこか嬉しそうだ。

「私だったら何を買おうかな?」

「エリィって、お花を買うことあるの?買うより育てる方が好きそう。」

「確かにね。でも買うこともあるわよ。」

「へぇ。僕もらったことないけど?」

「ヴィークってお花欲しかったの?」

「エリィが選んでくれるならなんでも欲しいよ?」

「じゃあ後で選んであげる!」

「ほんとに?嬉しいよ。」

「あ、出てきた。ふふっ。嬉しそう。」

「どうしたの?」

「花屋さんから出てきた人、さっきからとっても迷っていたの。10分くらい前からかな?
それでね、やっと出てきたんだけど嬉しそうな顔でキレイな花束を持っていたの。幸せそうでなによりだわ。」

「ふふっ。そうだね。」

そう笑ったヴィークの笑顔はとても柔らかく私を見ていた。

なんとなく気まずくなってきた。
話を変えよう。

「そういえば、生徒会の仕事って何をすればいいの?」

あぁ、それはね~と生徒会の役割や仕事についていろいろと教えてもらった。



その後お花屋さんに寄りお互いに花を贈りあう。
ドレスはなんとか断ることができたが、ヴィークは悲しそうな顔をしていてなんだか罪悪感を感じた。

楽しかったけど、屋敷に着いた頃にはいつも以上に疲れてしまっていた。

馬車から降りる時、ヴィークは必ずエスコートしてくれる。そして最近は、手にキスをした後抱き締めてくる。

「この挨拶をされるのは嫌?」

以前泣きそうな顔でそう言われてしまったので、それ以来受け入れている。

ヴィークにとっては挨拶かもしれないけど、私は変にドキドキしてしまうからやめてもらいたいけど、やっぱり抱き締めて欲しいような複雑な気持ちを抱えていた。
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