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11,太陽と大地の恵み

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「エリィ、遠乗りに行かない?」

「遠乗りですか?」

「うん、格好いい馬に乗ってお出かけしよう!」

そわそわしているお兄様達に連れられて厩舎へ到着すると、お兄様達は愛用しているらしい馬を私に紹介する。
こ…こわい。なんか睨まれている気がするわ。馬ってこんなに大きかったかしら。
どうしよう、乗ったら振り払われたりしないかな?

迷った挙句、私はルークお兄様と一緒に乗ることにした。

「怖がらなくても大丈夫だよ」

後ろから包まれるように抱きしめられる。お父様に似た安心感だ。



「ここをエリィに見せたかったんだ」
目的地に到着した私を迎えたのは、一面の向日葵畑だった。太陽の光を一身に浴びて黄金色に輝く向日葵畑はまさに絶景だった。

「先日叔父上に会いに行った時、ここを通ってね。エリィならここを気に入るんじゃないかと思ったんだ」

どうやらここはマガン領らしい。マガン領。養蜂場のあるマガン領。そういえば向日葵オイルも肌を保護したり、保湿性を高める効果があったはず。
その向日葵オイルでハンドクリームを作ったら、より品質の良いものが作れるのではないかしら?なんかマガン領ってハンドクリームを作るのに最適な環境じゃない?
向日葵畑を一頻り堪能した後、私はダメ元でお兄様達に提案をした。

「マガン領はとても豊かな処なのですね。ルークお兄様、私街へ行ってみたいです!駄目でしょうか?」

「ごめんね、エリィ。人の多い場所にはまだ連れていくことはできないんだ」

やはりまだ駄目なのか……。まぁ想定内だけども。

「そうですか……。では向日葵オイルを買ってきてもらえませんか?」

「向日葵オイル?」

「はい。これだけの向日葵があるのなら、向日葵オイルもありますよね?どこに売っているか私には分からないのですが…」

「調べてみないと分からないけど、聞いたことがないな」

「こんなに素敵な向日葵畑があるんですもの。きっとありますわ!お願いします、お兄様。私、向日葵オイルが欲しいの」

お願いするとあっさり買ってきてくれることとなり、私はフィルお兄様とクリスお兄様と向日葵畑を見ながらお茶をして待っていた。
暫くしてルークお兄様は戻ってきたが、やはり向日葵オイルは出回っていないようだ。本当に??もしかして作っていないの……?

「なんて宝の持ち腐れなの!それにここは観光地化したら絶対人気が出ると思うのに……」

「え?ちょっと詳しく教えて?」

呟きのように言った独り言を、ルークお兄様は聞き逃さなかったようだ。思い切り食いつかれてしまった。
ルークお兄様は半年程前に足に怪我を負ってしまい、騎士になるのは諦めて領地管理にシフトしたらしい。何せ領地はとても広いのだ。
それにここはマガン領ではあるが、リフレイン家の領地なので豊かにする政策には余念がない。

「例えば、この向日葵畑をもっと観光しやすいように整えるのです。それにこの黄金の大輪花は魅せるだけではなく、収穫してオイルを作ることもできるのですよ。そしてそのオイルこそ私の作りたいものに必要なのです!」

「ちなみに、その向日葵オイルはどうやって作るの?」

「花が枯れて、栄養がたっぷり詰まった種子が黒く輝いたら、収穫を始めます。そしてその種子から圧搾してオイルを作るのです。オイルは化粧品にはもちろん、食べ物にも使えます。きっとこのマガン領の特産品となるのではないでしょうか」

簡単に言ったが、これは結構大変な作業だ。収穫した後品質を保つためには完全に水分を飛ばさなくてはいけないし、葉や茎と選別する作業もある。とても手間のかかる工程なのだ。私の話を聞いたお兄様は少し考えた後、質問を投げかける。

「エリィはどうしてそんなことを知っているの?」

「私の作りたいものに必要なものだからです。それに沢山本を読んだのですよ。」

「すごいな…それができたら…、いややってみせる!エリィ、協力してくれるかな?」

「もちろんですわ。太陽と大地の恵みと名売って、より良い地に致しましょう!」

「はは、本当に8歳?なんだか僕より全然大人みたいだ」

「エリィってたまに物凄く大人っぽいこと言うよね。どこで覚えてくるんだろう?」

「ふふっ、大体本の知識ですよ」


とても楽しく充実した一日だった。私はルンルンで帰りはフィルお兄様の馬に乗って帰ることとなった。
しかしその帰路、大変な事態が起こるのだった。


「きゃあっっっっ!!」

突然馬が暴れだしたのだ。今までそんなことはなかったのか、慌てたフィルお兄様が私から手を離ししてしまい、私は宙に浮いていた。馬から落下したのである。それでもギリギリのところで飛翔魔法を発動させ、安心していたら心配して戻ってきたクリスお兄様の馬に引かれそうになった。
数秒の出来事だったように思うが、その突進してくる馬がとても恐ろしかった。
引かれる手前でクリスお兄様の馬は止まったが、馬は私を睨んでいるように感じたし、また引かれそうになった恐怖とで私は泣き出してしまった。

……それから馬に乗れなくなってしまったことは言うまでもない。

お兄様達には平謝りされて、帰宅してからお父様にもこってり絞られたようだった。
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