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45,留学中の王女
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2学年で学ぶ必須授業は既に知っていることばかりだったのだが、新しい分野の選択授業も取っているのでメリハリがある。
やっぱり学ぶことは楽しい。
生徒会の仕事にもだんだん慣れてきたが、家に帰るのが大分遅くなってしまった。ヴィークも生徒会に所属しているので帰りは送ってくれる。
学園生活は今しか味わえない限定の青春なので、充分に謳歌していたいと思っている。
イーサンと行うハンドクリームや化粧水の販売に関する業務や工場の視察などと並行し、有意義な生活を送っていた。
ヴィークは最高学年で生徒会長となったことと、王族としての公務などもあるようで、最近あまりランチを一緒に食べることができなくなっていた。
そんなある日、
「エリィ、ごめんね。お昼なんだけど当分一緒に食べられそうにないんだ。」
とヴィークが残念そうに言ってきた。
「そうなの?残念ね、じゃあまたタイミングが合えば一緒に食べよう?」
「もちろんだよ!」
私もとても残念だったけど、最近本当に忙しそうだから身体は大事にしてもらいたい、と思っていた。生徒会室にも顔を出す機会が減ってきていている。
(そうだわ、疲れによく効くハーブでハンドクリームを作ってみようかな。)
ヴィークの好きそうな香りで精油を調合してハンドクリームを作る。
(喜んでくれるといいな。)
出来上がったハンドクリームを早く渡したいと思い学園内を探していると、運良くすぐに見つけることができた。
ラッキーだったわ!と思い話しかけようとすると女性と一緒にいることに気がつく。
女性はヴィークの腕を組み、豊満な胸を押し付けている。とても距離が近い。
ヴィークも満更ではなさそうだ。
(うん。これは、今ではないわね。出直しましょう。)
とその場を後にした。
それから何度か学園内でヴィークを見かけるといつもその女性が隣りにいた。
(もしかして婚約者になる方かな?)
それならば私が何も言うことはない。
ヴィークは王族だし、早く婚約者を決める必要があるからだ。ヴィークが幸せならそれが何よりだわ。
それよりも最近胸のむかつきがひどい。毎朝スムージーを飲んでいるのにどうしてだろう?
ある日、久々にカイルとランチをしている時にふと聞かれた。
「エリィ、最近は殿下と話せてる?」
「最近はあんまり話せてないわね。生徒会にも顔を出すことが減っているし。忙しそうよね?」
と言うと、カイルはうーんと唸ってしまった。この二人、結局仲が良いのか悪いのかよくわからない。
何かあるのかしら?と思い、そういえば最近気になっていることを聞いてみることにした。
「そういえば、最近ヴィークと一緒にいる女性はどなたなのかしら?」
「え?あぁ、彼女はジュエル王女だよ。確か前期はここに留学しているんだ。」
ジュエル王女といえば、ナッシュ王国の南側に位置するノーヴァ国の王女で、美しいと評判だ。長身でスタイルも良く、二人並んだ姿はとてもお似合いだったわね。
私は背が小さいので心底羨ましい。
「留学している間は殿下が面倒を見ることになってるらしくて。それで忙しいんじゃないかな?」
「そうなんだ。この間見かけた時、とても距離が近くてビックリしちゃったわ。」
「あぁ、あの二人は婚約の話も出ているみたいだしね。というか、ジュエル王女が猛プッシュしてるって話だよ。」
「そうだったの。ヴィークはいい男だものね。モテない方がおかしいわ。」
「ねぇ、ヴィークとジュエル王女が本当に婚約したらどうする?」
「どうする、とは?」
「エリィは誰か婚約したいと思う人はいないの?」
「……そうね、私も婚約者を作った方がいいのかしら。そういうカイルはどうなの?」
「……俺は…エリィとなら婚約してもいいかなって思ってるけど。」
「え?」
「いや、別に変な意味じゃなくて。その、俺としてはどちらかというと婚約したいっていうか…」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったが、
「そうね、婚約すればカイルの筋肉も触り放題ね?ふふっ。」
「エリィは本当に筋肉が好きなんだな?」
「もちろんよ。お父様やお兄様たちの筋肉もチェックしてるのよ?」
「ははっ。それはすごいな。それができるのはこの世でエリィだけだよ。」
「そうでしょうね。ふふっ。」
そんな会話をしながらも悶々とした気持ちは膨らんでいくばかりだった。
◆
授業が終わり、いつものように生徒会室へと歩いている時だった。
「あなた、エリナリーゼ様よね?」
その言葉に振り返るとジュエル王女が腕を組んでこちらを睨んでいる。睨まれる覚えなんてないんだけどな。美女に睨まれる日が来るなんて。
内心を悟られないように、平常に挨拶を交わす。
「えぇ、そうですわ。ごきげんよう、ジュエル王女殿下」
私のその当たり障りのない挨拶が気に入らないようだった。
ジュエル王女は私を舐めるように見ていきなり喧嘩を売ってきた。
「あなたみたいな子供みたいなちんちくりん女、ヴィークグラン殿下の隣には相応しくないわ。弁えなさい。」
「…ちんちくりん?」
突っ込みたいところが沢山あるが、ちんちくりんって。確かに私は小さいけど、王族である彼女にそんな子供の喧嘩みたいな程度の低い事を言われるとは思っていなくて、思わず聞き返してしまった。
「ヴィークグラン殿下は私と婚約するのですから、今後近づかないで。」
「……はぁ。」
次は何を言ってくるのだろう、と思い黙っていると私を睨みつけた後生徒会室と逆の方へ去っていった。
強烈!!
そして今の会話で、王女の教養はかなり低いことがわかった。品位も低い。
ジュエル王女がヴィークの事を好きなのはわかったから、もう二人でやってほしい。私を巻き込まないで。
その後も顔を合わせると、ジュエル王女は私を親の敵のように睨みつけてきた。
その行動が自分の価値を下げるとも知らずに。
やっぱり学ぶことは楽しい。
生徒会の仕事にもだんだん慣れてきたが、家に帰るのが大分遅くなってしまった。ヴィークも生徒会に所属しているので帰りは送ってくれる。
学園生活は今しか味わえない限定の青春なので、充分に謳歌していたいと思っている。
イーサンと行うハンドクリームや化粧水の販売に関する業務や工場の視察などと並行し、有意義な生活を送っていた。
ヴィークは最高学年で生徒会長となったことと、王族としての公務などもあるようで、最近あまりランチを一緒に食べることができなくなっていた。
そんなある日、
「エリィ、ごめんね。お昼なんだけど当分一緒に食べられそうにないんだ。」
とヴィークが残念そうに言ってきた。
「そうなの?残念ね、じゃあまたタイミングが合えば一緒に食べよう?」
「もちろんだよ!」
私もとても残念だったけど、最近本当に忙しそうだから身体は大事にしてもらいたい、と思っていた。生徒会室にも顔を出す機会が減ってきていている。
(そうだわ、疲れによく効くハーブでハンドクリームを作ってみようかな。)
ヴィークの好きそうな香りで精油を調合してハンドクリームを作る。
(喜んでくれるといいな。)
出来上がったハンドクリームを早く渡したいと思い学園内を探していると、運良くすぐに見つけることができた。
ラッキーだったわ!と思い話しかけようとすると女性と一緒にいることに気がつく。
女性はヴィークの腕を組み、豊満な胸を押し付けている。とても距離が近い。
ヴィークも満更ではなさそうだ。
(うん。これは、今ではないわね。出直しましょう。)
とその場を後にした。
それから何度か学園内でヴィークを見かけるといつもその女性が隣りにいた。
(もしかして婚約者になる方かな?)
それならば私が何も言うことはない。
ヴィークは王族だし、早く婚約者を決める必要があるからだ。ヴィークが幸せならそれが何よりだわ。
それよりも最近胸のむかつきがひどい。毎朝スムージーを飲んでいるのにどうしてだろう?
ある日、久々にカイルとランチをしている時にふと聞かれた。
「エリィ、最近は殿下と話せてる?」
「最近はあんまり話せてないわね。生徒会にも顔を出すことが減っているし。忙しそうよね?」
と言うと、カイルはうーんと唸ってしまった。この二人、結局仲が良いのか悪いのかよくわからない。
何かあるのかしら?と思い、そういえば最近気になっていることを聞いてみることにした。
「そういえば、最近ヴィークと一緒にいる女性はどなたなのかしら?」
「え?あぁ、彼女はジュエル王女だよ。確か前期はここに留学しているんだ。」
ジュエル王女といえば、ナッシュ王国の南側に位置するノーヴァ国の王女で、美しいと評判だ。長身でスタイルも良く、二人並んだ姿はとてもお似合いだったわね。
私は背が小さいので心底羨ましい。
「留学している間は殿下が面倒を見ることになってるらしくて。それで忙しいんじゃないかな?」
「そうなんだ。この間見かけた時、とても距離が近くてビックリしちゃったわ。」
「あぁ、あの二人は婚約の話も出ているみたいだしね。というか、ジュエル王女が猛プッシュしてるって話だよ。」
「そうだったの。ヴィークはいい男だものね。モテない方がおかしいわ。」
「ねぇ、ヴィークとジュエル王女が本当に婚約したらどうする?」
「どうする、とは?」
「エリィは誰か婚約したいと思う人はいないの?」
「……そうね、私も婚約者を作った方がいいのかしら。そういうカイルはどうなの?」
「……俺は…エリィとなら婚約してもいいかなって思ってるけど。」
「え?」
「いや、別に変な意味じゃなくて。その、俺としてはどちらかというと婚約したいっていうか…」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったが、
「そうね、婚約すればカイルの筋肉も触り放題ね?ふふっ。」
「エリィは本当に筋肉が好きなんだな?」
「もちろんよ。お父様やお兄様たちの筋肉もチェックしてるのよ?」
「ははっ。それはすごいな。それができるのはこの世でエリィだけだよ。」
「そうでしょうね。ふふっ。」
そんな会話をしながらも悶々とした気持ちは膨らんでいくばかりだった。
◆
授業が終わり、いつものように生徒会室へと歩いている時だった。
「あなた、エリナリーゼ様よね?」
その言葉に振り返るとジュエル王女が腕を組んでこちらを睨んでいる。睨まれる覚えなんてないんだけどな。美女に睨まれる日が来るなんて。
内心を悟られないように、平常に挨拶を交わす。
「えぇ、そうですわ。ごきげんよう、ジュエル王女殿下」
私のその当たり障りのない挨拶が気に入らないようだった。
ジュエル王女は私を舐めるように見ていきなり喧嘩を売ってきた。
「あなたみたいな子供みたいなちんちくりん女、ヴィークグラン殿下の隣には相応しくないわ。弁えなさい。」
「…ちんちくりん?」
突っ込みたいところが沢山あるが、ちんちくりんって。確かに私は小さいけど、王族である彼女にそんな子供の喧嘩みたいな程度の低い事を言われるとは思っていなくて、思わず聞き返してしまった。
「ヴィークグラン殿下は私と婚約するのですから、今後近づかないで。」
「……はぁ。」
次は何を言ってくるのだろう、と思い黙っていると私を睨みつけた後生徒会室と逆の方へ去っていった。
強烈!!
そして今の会話で、王女の教養はかなり低いことがわかった。品位も低い。
ジュエル王女がヴィークの事を好きなのはわかったから、もう二人でやってほしい。私を巻き込まないで。
その後も顔を合わせると、ジュエル王女は私を親の敵のように睨みつけてきた。
その行動が自分の価値を下げるとも知らずに。
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