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60,平和な日々

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楽しい!ここに来て冒険者に登録してからの日々が楽しすぎる!
もうずっとここにいたいな。

そう思いながら今日も今日とて薬草とハーブ採取をする。
戻ってきてからはケイトの家で宴会?をしている。

やらなければいけないことは沢山ある。
しかし、ここでの生活が楽しすぎて後回しになってしまっているのだ。
レイともあれ以来沢山話すようになって、最近はよく笑ってくれる。レイは普通にしてると怖いからな。

いつものようにお茶をしながら話していた時、ケイトが急にこう言い出した。

「そういえば最近、貴族様の屋敷から聞こえてくる曲知ってる?」

思わずドキっとしてしまう。
(え?聞こえていたの?)

「…いえ、知らないわ。」

「なんか聞いたことない曲なんだよな。でもすごい穏やかな気分になれるっていうか。けっこう好きで聞こえてくるの待ってるんだよ。」

それを聞いて嬉しくなった私は思わずこう言っていた。

「きっとその令嬢がこの街に来て感じた事を曲にしてみてるんじゃない?ケイトが穏やかな気分になれるっていうことはこの街はいい街ってことなのよ!」

「そういえば聞いたことあるな。あそこの令嬢、曲作るらしいよ。この間あった母親の10周忌式典で弾いた曲はヤバいらしい。」

こう言うのはアイザックだ。
ヤバいってどういう意味?

「その話よく聞くよな。どんな曲か聞いてみたいな。」

スコットも興味あるみたい。だが、なぜそんなに有名になったの?

「……そんなに有名なの?」

「あぁ、そこにいた人は皆涙を流して感動したらしい。奇跡の令嬢は賛歌の女神だってね。」

「へぇ…、そうなの?」

賛歌の女神って…。ちょっと引きながらも、あの時は余裕がなくて周りを全然見ていなかったことを思い出した。
少し居心地が悪くなってきた私は話題を変える。

「それにしてもレイはケイト達とずっと一緒で羨ましいわ。」

「リナもランク上げればいいのに。そしたら同じパーティーで活動できるじゃん!」

「そうなんだけど…、私は薬草採取が好きなのよね。」

それにいろいろな場所へ自由に行けないのは困るし…。
レイは一時的にケイトたちとパーティーを組むことになり、活動を共にしている。
早くお金を稼ぎたいようだ。

「レイも早く国に戻れるといいわね。」

「戻る前に、王都へ行こうと思ってるんだ。」

「王都かー。この街の方が絶対楽しいのに!私はずーっとここにいたいわ!」

本当にできることならそうしたい。

「そういえばリナはいつまでここにいるんだ?」

私は夏の間だけ遊びに来ているということにしてあるのだ。

「実はあと1週間くらいしかいれないのよ。」

「えっ、そうなの?!せっかく仲良くなれたのに寂しくなるわね」

「俺も寂しいぞー!」

どさくさに紛れてアイザックが抱きついてこようとする。お酒を飲んでるとただのセクハラ兄さんだ。でもそれはただの振りで本当は本気であることを私はわかっていた。だから敢えて冗談で躱す。

「ケイトー、アイザックがロリコンー。」

「ひどいなーリナは。俺とリナの仲じゃないかー。」

「スコットは紳士なのに。」

「スコットはムッツリだぞ。」

「えっ、そうなの?」

「そんなわけないだろ!適当なこと言うなよ!」

「レイは?どんな女が好きなんだ?」

「……女は嫌いなんだ。」

「えー!!仲良くなれたと思ったのに!!!!どうしようケイト!!」

衝撃の発言に悲しくなってしまう。

「落ち着け。レイ、リナのことも嫌いなのか?」

「リナとケイトは嫌いじゃない。」

嬉しいけど、あれ?それってレイの中の女の括りに入っていないってことかしら?
まぁいいか。

「よかったぁー!自分だけが仲良しだと思ってるなんて悲しいわ。」

「リナのこと嫌いってやつ、いないと思うけどな。」

「友達だと思ってた人が、向こうは友達だなんて思ってなかったってことがあって。」

「そんなことある?なんのためにそんなことをするんだ?」

「んー…あのね、私友達がいなかったの。それで親が心配して手を回してくれた子がいたのよ。
私はそのことを知らずにその子と友達になれたと思ってずっと楽しく過ごしてたんだけど、その子にとってはそんな感情なんてなくて、ただ面倒くさいとか思いながら私と友達ごっこしてくれてたのかなーってさ。
今までのことは全部嘘だったのかと思うと悲しくて。」

あの時は本当に悲しかったけど、今はもう何とも思っていない。先日スコットと話した時、全て吹っ切れたのだ。あれから信じられないくらい身体が軽い。
それに、嫌な事を忘れられるくらいの素敵な出会いと体験を沢山したから。

「うーん、なんかよくわからないけど、その子も最初はそうだったかもしれないけど、ずっと一緒にいたならきっとその子はリナのこと友達だと思ってると思うよ。」

「リナはいい子だからな。」

「ふふっ、ありがとう。ケイト達が友達になってくれたから私はもう何とも思っていないの。
ねぇ、レイはいつ王都に行くの?」

「そろそろ金も貯まったからなるべく早めに行きたいと思ってるんだ。」

「そうなの?寂しくなるわね。」

「ふっ、そんな事を言うのはリナくらいだ。」

「そんなことないわよ。みんな寂しいわよね?」

「まぁ冒険者やってると出会いの数と同じくらい別れの数もあるからな。」

「そうそう、だから一緒にいる時楽しく過ごせればいいんだよ!」

「そういうものなの?」

「だな。それに生きていればまたいつか会えるさ。」

「もし死んでも生まれ変わって会いに来るわ。」

「そんな風に思ってくれるなんて、なんか照れちゃうな。」

生暖かい空気を変えるようにスコットがレイに疑問を投げかける。

「というか王都へは何しに行くんだ?
金が貯まったならそのまま国に帰ればいいんじゃないの?」

「せっかくこの国に来たから、会いたい人がいるんだ。」

「レイが会いたい人がいるなんて珍しいわね。」

「女か?」

「男だ。」

「まぁ、わかってたよ。」


楽しい時間はあっという間に過ぎ、時計を見るともう18時を過ぎていた。

「私、そろそろ帰らないと。」

「もうそんな時間か!本当に早いな。」

「家まで送るよ。」

「大丈夫よ、人通りもあるしすぐ近くなの。」

そう、本当に近くてビックリしたのだ。ただし飛翔魔法を使えば、の話だが。

「そうなのか?じゃあ気をつけて!」

「また明日ね!バイバイ!!」





「リナは本当に可愛いなぁ。しかもめっちゃいい子だし。あんな妹欲しい~。」

「もう姉妹みたいなもんだろ。リナ、めっちゃケイトに懐いてんじゃねぇか。」

「俺はあんな彼女がほしい。」

「お前……」

「いやだってさ、可愛いし性格いいし、胸もでかいし。男だったら放っておけないよな。そう思わないか、レイ?」

「まぁ、そうだな。でも放っておけないはちょっと違う気がするな。」

「すごく自分を持ってるししっかりしてるよな。」

「でも、初めて会った時は今にも消えそうなくらい儚げだったよ。なんかぴんと張り詰めててさ、少しでもバランスが崩れたら壊れちゃいそうな子だと思ったんだ。その時は放っておけない感じだと思ったな。」

「あー、それは俺も思ってた。最初はすげー壁があったよな。」

「そうなのか?今の感じからは想像できないな。」

「最初会ったの1ヶ月くらい前だけど、この子大丈夫かな?って思うくらい儚げだったんだ。
そんな子が冒険者ギルドにいたから、思わず話しかけちゃったよね。
で、その日達成報告しに行ってギルドでまた会った時、すごいスッキリした顔してたんだ。
この数時間で何があったんだろう?って思って興味が湧いてね、それでそれから気にかけて話すようになったんだ。」

「リナって実はけっこう謎だよな。」

「いつも別れるとき違う方向に行くんだよな。親戚の所にいるって言ってたけど、どこら辺か聞いてもいつもはぐらかされるしな。」

「街をぶらぶらしてから帰ってるらしいぞ?この間花屋にいるの見たな。」

「あ、それ私も見たことあるわ。」

「あんまり自分のことは話したがらないよな。なんかお嬢様っぽいし。」

「案外領主の娘だったりして!」

「あり得るな。」

「讃歌の女神って名高い令嬢だろ?でも確か身体が弱いんじゃなかったっけ?」

「そうなの?騎士団家系なのに?」

「いや、よく知らないけどそんな話をちらっと聞いたことがある。」

「「ふーん、、まぁリナはリナだけどな!」」

「そうだな!!」

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