積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと

文字の大きさ
上 下
58 / 78

58,薬草採取は楽勝?

しおりを挟む
翌朝冒険者へ行くと彼女はもう来ていた。

「おはよう!」

「おはよう。朝から元気だな。」

「ふふっ。ケイトたちは一緒に来なかったの?」

「あぁ。少し早めに出てきた。」

掲示板で何の依頼にするか迷っていると、

「私はこの依頼を受けるわ。」

と言う彼女が剥がした依頼書を見るとEランクの薬草採取だった。

「私も同じものにしてもいいだろうか?」

「ん?えぇ、もちろんよ。一緒に行きましょう。」

意外だったのだろう、少し驚いたようだったが快諾してくれた。

受付に依頼書を出し、森の方へ行く。
彼女の歩みはとても確かで、はっきりと前を見つめている。

「今回の依頼はこの薬草よ。この辺に沢山あるわ。採り方はわかる?」

「薬草採り方なんてあるのか?」

「キレイに取らないと成長が止まってしまうし、まとめて同じ場所ばかり取ると生えなくなっちゃうから、いくつか群生している処から少しずつね。根から丁寧に採るのよ。」

こんな感じで、とお手本をやってみせた。

「じゃあ、お互い別々の所で取りましょ?私はあっちに行ってみるわ。」

そう言い残し彼女は向こうへ行ってしまった。

一人になって依頼の薬草を取っていくとあることに気が付く。

あれ、これってすぐ終わってしまうのでは?
まぁいいか。魔物が出たら討伐してひとまず金を稼がないとな。世話になった者にも何か礼をしたい。

-----1時間経過。

終わってしまった。彼女はまだ取っているのだろうか?遅すぎないか??
とりあえず魔物でも倒すか。魔物がいない…。
…寝るか。


何かよくわからない魔力の気配で目が覚めた。
なんだこの匂いは?

匂いのする方へ目を向けると彼女が水魔法で火を消しているところだった。

「あぁよかったー。ビックリしたわ。火事になるところだった。」

(何をしてるんだ?え?何?もしかして俺を殺そうとしてた?)

思わず身構える。

「あ、起こしちゃった?ゴメンね。
久しぶりに火魔法の練習をしていたのよ。火魔法が苦手で…、ちょっと燃え上っちゃったから、消火してたの。」

(え?もしかしてこの子、複数の属性の魔法が使えるのか?)

「変な所を見せてしまったわね。街へ戻りましょう。薬草はもう終わっているのでしょう?」

「……あぁ。」

「薬草採取だけだと時間が余っちゃうわよね、あなたなら魔物の討伐もできると思うし、ちょっとギルドの人に相談してみましょうか。」

「いいのか?」

「もちろんよ、時間は有限だからね。
今日は少し無駄な時間を過ごさせてしまったかしら?」

「いや、そんなことはないよ。いろいろありがとう。」

本当に感謝しているんだ。というか、この子言うことも大人びているな。とても15歳とは思えない。

ギルドに戻り完了報告をした後、早速相談してくれている。

「ねぇミリアム、彼とても優秀だからランク上げのテストをしてもらいたいの。今日できるかしら?」

「今日でしたら、14時からテストがありますよ。」

「じゃあそれに彼も参加できる?」

「わかりました。手配しておきますね。」

「ありがとう!ミリアム!
そういう訳で今日14時からランク上げのテストを受けてみてね。」

「あぁ。助かる。」

「うん!よかったわ!
それまで時間があるからご飯でも食べに行かない?」

「あぁ。」

断る理由は全くないし、私自身お腹も空いている。
入ったお店は昨日お勧めしていたお店だ。

「こんにちはー。」

「リナちゃん、いらっしゃい。あら、今日は男連れ?」

「ふふっ。そうなんですよ。」

「テキトーに座って。今日のおすすめはホーンラビットの香草ソテーだよ!」

この子は誰と会話をするときでも笑顔なんだな。私なんかまだ名乗ってもいないし、どこの誰だかもわからないのに。
無防備すぎないか?
そして奴は今日も付いてきているが。大丈夫なのか?ちゃっかり店にも入ってるじゃないか。

「美味しそうね!迷っちゃうわ。」

空いてる席に座り、真剣な表情でメニューと睨めっこしている。

「決めたわ、やっぱりおすすめの香草ソテーにしよう!
あ、ここはね本当に何でも美味しいの。どれを食べてもハズレないから安心して!」

「じゃあ私も同じものにしてみよう。」

「飲み物はどうする?私はいつも果実水を飲むけどあなたはお酒の方がいいのかな?」

「いや、私も果実水でいい。」

手際よく注文を済ませると、果実水が届く。
爽やかな味付けで美味しい。

「ところで、今更なんだけどあなたのことは何と呼べばいいかしら?あ、私はリナって呼んでね。」

やっと名を聞かれたことに安堵した自分に驚く。

「レイだ。」

「レイね。宜しく!」

差し伸べられた手はとても細く少し力を入れると折れてしまいそうだった。握った小さい手はひんやりしていて、とても柔らかく心地がよかった。

「あぁ。よろしく。」

雑談をしていると料理が届く。

「いい匂いね!美味しそうだわ!いただきます!!」

パクっ。もぐもぐ。。

「おいしい~~っ!!」

凄く美味しそうに食べるな。なんだか微笑ましい。

「レイも食べてみて!!」

笑顔で私にも勧めてくる。妹がいたらこんな感じなのか?と思いつつ食べてみる。

「…美味い。」

「でしょ?美味しいよねー!!
この香草、ローズマリーといってね、さっきの場所にも生えていたのよ。ローズマリーは料理に使うと肉の臭みを減らして脂の甘味を引き出す、最高の薬草なのよ!!」

「いきなりテンションが上がったな?」

「上がっちゃうでしょー?こんなに美味しいのよ?薬草の奥深さを皆もっと知るべきなのよ!!」

年相応に無邪気にはしゃぐその姿は、とても可愛らしかった。

「ふふっ、そうだな。確かに薬草は奥深い。君は薬草博士並に詳しいな。」

その言葉はスルーされ、

「カリナさん、これとっても美味しいです!使ったお塩は例のハーブ塩ですか?」

と店員に話しかけている。

「それはよかったわ!えぇ!あれを使った新作よ!リナちゃんのおかげで料理の幅が広がって、客にも好評なんだよ。また、あの塩頼めるかな?もちろん今度はお金払うよ!」

「嬉しいわ。でもあの塩はもうないのよ。実験で作ったものだったから。ごめんなさいね。」

「あら、そうなのかい。残念だねぇ。。」

「あ、でもこのローズマリーの香草焼をするときは普通のお塩でもできますよ。風味が少し弱くなってしまうけど。」

「なるほど。じゃああの塩がなくなったらやってみるよ!」

「えぇ、是非。」

「さぁ、温かいうちに食べなよ。リナちゃん、細すぎて心配になるわ。」

「ふふっ。」

「じゃあごゆっくりねー」

本当に楽しそうに話す子だな。見ているこっちまで頬が緩む。

「店員とも仲が良いんだな。」

「ええ、そうなの。とても良くしてくれて親切なのよ。この街の人たちは皆本当にいい人なの。だから大切にしたいのよ。」

「そうか。」

…ん?この子はこの街の人間ではないのか?

「それにしても本当に美味しいわね!レイの国ではこういう食べ方はする?」

呼んで欲しいとは言ったが、年下の女からレイと呼ばれるのはなんか変な感じだ。

「いや、薬草を料理に取り入れるのは聞いたことがないな。でもアリだな。」

「ふふっ。帰ったら是非試してみてね。」

食事を終え、店を出たのは13時半を回ったところだった。

「じゃあ私はこれで。これからテストがんばってね!」

「ありがとう。がんばるよ。」

「うん!じゃあまた明日!」

「あぁ、また明日。」

そう言いながら自然と笑顔になっている自分に驚いた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...