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53,魔物の正体

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気がつくと朝になっていた。
魔力量は回復している。
鑑定してみると、久しぶりに魔力量が増えていた。ここ最近は限界まで使うことも少なくなっていたのだ。

別荘のベッドにいるということはフレディが連れ帰ってくれたのね。フレディには申し訳ないことをしたわ。あとで謝らなくちゃ。
それにしてもさすがにお腹が空いたわ。

「おはよう。」

部屋を出ると、セバスが控えていた。

「お嬢様!もう大丈夫ですか?」

「えぇ、心配かけたわね。あと昨日はありがとう。私は大丈夫よ。魔力体力切れと空腹が原因だと思うの。何か食べるものはある?」

「もちろんご用意してございます。何か食べたいものはありますか?」

「とりあえず、かぼちゃのスープとパンが食べたいわ。」

質素だとよく言われてしまうけど、私はこれが好きなのだ。
5分ほどでスープとパンが運ばれてくる。

「美味しいわ。やっぱりスープはかぼちゃが一番好ね。」

と言うとセバスは微笑みながら、

「他に何か召し上がりたいものはございますか?」

と聞いてくるので、ベーコンと卵もリクエストしてみた。

すぐに運ばれてきたのは、スクランブルエッグとカリカリに焼かれたベーコンだ。久しぶりに食べるわ。

「うん、やっぱりパンに合うわね。体力が回復したわ。ありがとう。」

食事を済ませると、いつものように出掛ける準備をする。

「じゃあ出掛けてくるわね。」

と言う私に皆心配そうだ。

「もう大丈夫なのですか?くれぐれも、お気をつけて。いってらっしゃいませ。」

フレディも後から付いてくる。

「フレディ、昨日はありがとう。助かったわ。」

「いえ、とんでもありません。お体はもう大丈夫ですか?」

「えぇ。もう大丈夫よ。」


皆に見送られて別荘を出た私はとりあえず冒険者ギルドへ行く。
そういえばまだ依頼達成の報告をしていないことを思い出したのだ。あと、氷漬けにしたあの魔物も引き取ってもらおう。魔石化しない魔物をアイテムボックスにずっと入れておくのもなんとなく気味が悪い。

「ミリアム、おはよう。」

「リナちゃん、おはようございます!戻ってきていたんですね!遅かったから心配していたんですよ!」

本当に私はいろんな人に心配されているなぁ。

「大丈夫よ。心配してくれてありがとう。これ、依頼の薬草よ。」

ミリアムも鑑定をして、直ぐに受理された。

「はい確かに。ありがとうございます。貴重な薬草なので助かります。」

と報酬を貰う。いつもの3倍もある。

「よかったわ。あ、あとね偶然魔物を討伐したの。引き取ってもらえる?」

「もちろんです。何の魔物ですか?」

そういえばまだ鑑定してなかったんだった。

「これは何の魔物だったかしら?ちょっと見てみるわね。」

アイテムボックス内に適用される鑑定を見てみると『ブルーワイバーン A’ランク』と表示されていた。思わず2回鑑定をするも結果は同じ表示。
Aならわかるけど、A’って何??

………でもこれ、出したら面倒くさそうなヤツだな。 

思わず私はマウンテンベアの魔石を出していた。

「マウンテンベアもCランクなんですけどね…」

と何かを察したらしいミリアムがまた少し心配顔だ。
いけない、また心配させてしまうわね。

「じゃあよろしくね。」と適当に誤魔化して早々にギルドを後にした。

「はい。ゆっくり休んで下さいね。」


その声を背にギルドを出ようとしたところでケイトたちに会った。

「ケイト!おはよう、今から行こうと思っていたの。」

「リナ、身体は大丈夫なのか?昨日いきなり倒れて心配したんだぞ。」

「私は大丈夫よ。ちょっとお腹が空きすぎてて。」

「本当に大丈夫なのか?」

「えぇ。今日は朝から沢山食べたからもう元気よ!彼はどんな感じ?」

「まだ寝てるよ。起きる気配はないな。」

「そう、そしたらあとで行ってもいい?」

「もちろん。じゃあ昼に食堂で待ちあわせしよう。」

「うん、じゃあまた後で。」

「あぁ。気をつけて。今日は倒れるなよ。」





ノーダンマウンテンの山頂に来た。
そこには何事もなかったかのようにいつもと同じ光景があった。

昨日あの魔物を倒した場所へ行っても特に変わった様子は何もない。

でも思い出すとゾッとするわ。本当によく倒せたわよね。
あれ、でもアイテムボックスに入ってるならいつも一緒みたいな感じじゃない?

そう思うと急に怖くなってきてしまった。

早く引き取ってもらいたいけど、どうやって引き取ってもらおうかな…。
早く魔石化しないかな…。でもアイテムボックスの中って時間が経過しないのよね。どうしたものか…。

それにしても、いろんな意味で忘れられない場所になってしまった。


気を取り直し、ユーカリの葉を採取したり花を採取したりするが、なんとなく長居をする気にはなれずにすぐ街へ戻った。

とてもお腹が空いていたが、ケイトたちと一緒に食べたかったので街を散歩する。
いつも歩かない時間なので新しい発見があるわね。

この時間の市場は活気があってとても賑やかだ。果物や珍しいものを買ったり、魔道具を見たりしているとすぐにお昼になった。

食堂へ行き、ケイト達を待っていると暫くしてやって来た。

「ケイト!スコット!アイザック!」

「リナ!早いな。待たせたかな?」

「さっき来たばかりよ。」

「お腹空いたなー。何食べるか決めた?」

「えぇ、もう決めたわ!今日はハンバーグステーキの気分なの。」

「おっ、いいな。オレもそれにしよう。」

「私も。」

「じゃあ、俺も!」

と皆で仲良く同じメニューだ。
こういうのなんか嬉しい。

「リナがガッツリいくなんて珍しいな!」

「いっぱい食べて大きくなりなよ。」

「胸じゃなくて上に栄養がいくといいな!」

アイザックのセクハラ発言はスルーなのはお約束だ。それにしても皆私が沢山食べると嬉しそうなのなんでなんだろう?

「ちょっとみんな、ひどくないー?私これでも、17歳なんですけど?」

「「「えっ、そうだったの?!」」」

……そんなに驚かなくてもいいじゃない。

「あれ。言ってなかった?」

「初めて聞いたよ。」

「ごめん、オレ15歳だと思ってた。」

冒険者に登録できるのが15歳からだからそう思われるのも無理はないか。

「オレも。」

紳士的に謝ってくれるスコットとは逆にアイザックはむしろ嬉しそうだ。なんで?

「まぁ、実際私も。」

「むー…ケイトまで。。これでも毎日牛乳飲んでいたのに。」

そうなのだ。私はカームリーヒルに来ても毎朝牛乳と豆乳スムージーは欠かさずに飲んでいるのだ。

「その栄養全部胸にいったんだな。」

なんかもう飲んでるの?というくらいアイザックはセクハラ発言を連発してくる。

「ちょっとアイザック、どこ見てんのよ。」

と一喝するケイトに乗っかって私もちょっと文句を言う。

「本当に遠慮ない視線ね!失礼しちゃうわ。」

そんな会話をしていると、

「はい、できたよー。リナちゃんのはちょっと多めにしておいたよ!大きくなりな!」

聞こえていたのかカリナさんまでそんな事を言ってくる。

「カリナさんまでー。」

そんな笑いの絶えない会話をしながら皆で食べるハンバーグステーキは、今まで食べたどんな高価な料理よりも美味しかった。
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