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47,カームリーヒル

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カームリーヒルへは王都から4日間の長旅だ。
ここナッシュ王国の北東に位置していて、山に囲まれた自然豊かな街で、山を挟んだ向こう側にはベルリンツ王国があるため交易が栄えている。
活気があって陽気な人も多く雰囲気が良い街だ。

カームリーヒルに着くと早速街を散策してみる。治安がいいので私一人でも問題はない。何かあったとしても今の私なら安全に逃げることくらいはできる。
私は常に防御結界を張っているし、フレディはいつものように後ろを付いてきている。

近くにはダンジョンがあるため冒険者が沢山いる。若い冒険者も多く、皆楽しげだ。そんな冒険者達を見ていると、ふと私も混ざりたいと思った。

(冒険者か……。気分転換にここにいる間だけでもやってみようかな?)

なんとなくそう思い、思うがままに冒険者ギルドの中へ入る。
中には人は少なかったが、視線を感じる。ワンピースを着て帽子を被っているせいだろう。

(…こんな格好で来ちゃって場違いだったな。せめてズボンで来るべきだったわ。でもせっかく中へ入ったんだし、ちょっと見ていこう。)

周りの視線なんて気にするのはやめよう。
手前にある大きな掲示板を見ると、依頼書が貼ってあって薬草採取から魔物の討伐、ダンジョンの達成条件など実に様々な依頼書がある。

へぇ。ランクが低くても討伐できる魔物もいるのね。
その中の依頼書の一つに目が釘付けになる。あれ?これは採ったことのない薬草だわ。
依頼書をよく見るとその薬草はダンジョンの中にあるようだ。ダンジョンは冒険者や限られた者しか入ることができない場所である。

(これ欲しいな、是非研究してみたい。)

よし、ものは試しだ。
ちょっと登録をしてみよう!

勢いで受付の方へ行く。

「すみません、冒険者の登録をしたいのですが。」

まさか私がそんなことを言うと思わなかったようだが、ちゃんと対応してくれる。

「え?あ、はい。ではまずこちらの水晶に手をかざして下さい。」

取出された水晶に手をかざすと青色に光る。

「問題ありませんね。ではこちらの書類に記載してください。」

青だと問題はないのか。というか今の水晶はなに?
そういえば昔王都でも一度同じような水晶があったわね。
気になったので聞いてみると、犯罪歴のある者が手をかざすと赤に光り登録はできないようだ。
なるほど、そういう管理をしているのね。

書類に記載する名前欄にはリナとだけ書いた。

「これでいい?」

「ありがとうございます。
では冒険者についてご説明しますね。冒険者にはFランクからSランクまであって、最初はFランクからのスタートです。
地道に実績を重ねてランクアップをしていく方法もありますが、Dランクまででしたら試験を受けて合格すればランクアップすることができます。

依頼を受けるにはあちらの掲示板を見て、受けたいと思ったものをこちらへ持ってきて下さい。
依頼が受理されたら、依頼をお受けいただけます。
万が一依頼が達成できないと違約金がかかってしまうこともあるので無理のない依頼を受けるようにして下さいね。
依頼を達成されましたらまたこちらへ来てください。
達成確認ができましたら、その場で報酬をお支払い致します。」

シンプルでわかりやすいわね。

「わかりました。では例えば偶然魔物を討伐してしまった場合などはどうすればいいですか?」

「その場合は依頼を後付することができます。」

「魔石にならない魔物を倒した場合はどうやって運べばいいでしょうか?」

「依頼をお受けいただく際にアイテムボックスをお貸ししていますので、その中に入れていただければ大丈夫ですよ。」

「アイテムボックス?」

「こちらの魔道具です。魔力をお持ちでしたら、誰でもお使いになれますよ。対象に向かって収納、と言えばこの中に入ります。また、ここに中身が表示されるので内容を確認することもできます。」

魔法も使えるけど、魔道具の方が便利そうね。こんなものがあったなんて。
それに私レベルの鑑定魔法だと、鑑定できないものもあるから純粋に欲しい。

「じゃあ例えば、植物を入れると何の植物か表示されるということなの?」

「はい。植物でも魔物でも中に入れば何でも表示されます。ただ、生きているものは入れることはできないので、魔物が入らない時はまだ息がある状態だと思って下さい。」

「わかったわ。」

「これで依頼がちゃんと達成できたかを確認できるので、薬草採取などでもミスを防げるのです」

本当に優れものなのね。これは欲しいわ。
魔法も使えるけど、人前で使えないのが不便なのよね。正確には人前で使わないほうがいい、とシドに言われているのだ。
その点魔道具なら安心である。

「これ、購入することはできますか?」

「はい。もちろん購入することもできます。」

「今買えますか?」

「はい、こちらは金貨10枚になります。3色ありますのでお好きな色をお選び下さい。」

水色、ピンク、クリーム色の新品のアイテムボックスを取り出す。
金貨10枚を支払い、ピンクを選ぶとお姉さんはなぜか満足げだった。

「あと詳細はこちらのガイドブックに記載されていますので、ご一読下さいね。
他に何かご不明点はありますか?」

ガイドブックには冒険者としての心得や、基本的な注意事項などが書かれているようだった。

「ここは何時からやっているのですか?」

「朝8時から20時まででしたらいつでもお入りいただけます。それ以外でもこの建物には常に人がいますので緊急事態などがあれば、来ていただいても大丈夫ですよ。」

職員は泊まっているのかな?大変な仕事なのね。

「混む時間は何時くらいですか?」

「朝9時くらいと夕方の時間は混みますね。」

「わかりました。ありがとう!」

「はい、では頑張ってくださいね。」

勢いで冒険者登録をしてしまった。それにしても登録するだけならこんなに簡単なのか。通行証としても使えるみたいだし、登録して良かったわ。
新しいことをするのはワクワクする。
冒険者ギルドを出る頃には、ここ最近の暗い感情は霧散していた。

その後、服屋でズボンなどの動きやすい洋服を買って別荘に戻る。

今回は1ヶ月以上滞在する予定のため、アンナとマリーの他に執事のセバスと料理人のユジーンを連れてきていた。
少人数なのだし、別荘なのだから食事はみんなでしたいと思っているのだが、今回はセバスというお目付け役の執事もいるのでまず叶わないだろう。
そんなわけで、後ろに控えるマリーやアンナと会話をしながら私は一人で食事を始める。

食事は私好みの味付けにしてくれているし、量も多くないので安心して任せられる。

その日私は久しぶりにぐっすり眠ることができたのだった。
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