積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと

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32,学園生活

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教室の扉を開けると一斉に視線を受けた。それはただ扉が開いたから見ただけのことにすぎないはずだった。
しかし、私を見た男子生徒は固まり女生徒は探るような視線を向けてくる。
少し怯むが、にっこり笑ってみる。

席は自由っぽかったので、少し考えてから窓際の真ん中の席へ座る。
その辺が一番空いていたからである。

すると、一人のクラスメイトが隣に座る。
なぜわざわざ隣に座ったのかしら?と思っていると、

「はじめまして、私はユリウス・ローベルトと申します。以後お見知り置きを。」

と挨拶を受けた。
深い青の髪に、眼鏡の奥に宿る透き通るような水色の瞳は切れ長で、聡明そうな男子生徒だった。
ローベルト公爵家といえば宰相の家系だ。このユリウス様も賢い方なのだろうな。
ユリウス様の挨拶を受けて、私も挨拶を返す。

「はじめまして。エリナリーゼ・リフレインと申します。ローベルト様、宜しくお願い致しますわ。」

周辺で聞き耳を立てていたらしいクラスメイトが、はっと息を飲む気配を感じた。

目の前のユリウス様は私の事を知っていたのだろう。
私が人前に出たのはルークお兄様の結婚式くらいだから、きっとそこにいたのだろうな。
もう4年も前なのに凄い。さすが宰相のご子息ね。

「私のことは是非ユリウス、とお呼び下さい。これから学問を共にするのですから。」



オリエンテーションでは、学園の基本的な時間割や必修科目と選択科目の説明があった。
このクラスは中等部から持ち上がりの生徒が過半数を占めていて、その中に私のような高等部から入学する貴族や、優秀な平民がいた。

お兄様達は寮に入っていたので私も入るのかと思っていたが、騎士科のみ全寮制で他の科は任意ということだった。騎士科の訓練は朝早く行われるためだそうだ。少し楽しみにしていたのだけど、残念だわ。

授業は1日に4限。ゆったりとした時間設定で、
1限は9:00~10:00
2限は10:30~11:30
ランチタイム 11:30~13:00
3限は13:00~14:00
4限は14:30~15:30
という割り振りだ。

1.2限は全員必須の一般教養、そして3.4限は選択授業となっている。
大学の授業のように単位制なので、最低限の必須科目だけ取るのも良いし沢山取るのも構わない。
貴族は単に人脈を得る為や、パートナーを見つける為に通う場合もあるようで、午前中で授業を終える人も多く、
反対に平民は、積極的に授業を受けている生徒が多いようだ。

私は選択授業では薬学を始め、いろいろ取るつもりだ。多国語も取ってみたいな。
早く薬学博士の資格を取得したい。

なんだか楽しみになってきた!


初日のオリエンテーションでは、簡単に説明を受けた後選択科目を決めて解散だそうだ。
すぐに決まってしまったが、カイルが後で迎えに来てくれるって言ってたから待っていないといけないわね。

配られたプリントを読んでいると、

「何を選択するか決まりましたか?」

と隣に座ったユリウス様が聞いてくる。

「はい、私は決まりましたわ。ユリウス様ももう決められたのですか?」

「はい。僕は経済学や他国語、帝王学等を選択しました。後は来年以降に色々取ってみようかと思っています。」

「あら、私も経済学を選択しましたよ。同じですね。」

「本当ですか?選択科目は沢山あるのに同じものがあると嬉しいな。」

「ふふっ。そうですわね。最初はわからないことだらけですしね。」

「これでも初等部から学園に在籍しているので、わからない事等ありましたら何でも聞いてくださいね。」

そんな話をしているとユリウス様のところへクラスメイトの男子生徒が数人やってきて、先程の私とのやりとりと同じような内容が繰り返された。

席を離れるのも不自然かと思い、配られた資料をまたパラパラめくっていると、その男子生徒達からお勧めの科目やこの先生が良いなどの情報を一頻り教えてもらった。
そして思い出したようにふいに聞かれた。

「すみません、失礼ですがお名前をお聞きしても?私はダグラス・ハイヤーと申します。」
「私はジークハルト・シュナイデンです。美しいレディにお会いできて光栄です。」

「失礼致しました。紹介が遅れて申し訳ありません。私はエリナリーゼ・リフレインと申します。ハイヤー様、シュナイデン様、一年間宜しくお願い致します。」

そういえばまだ名乗っていなかったことを思い出し、自己紹介をすると目を見開き驚かれてしまった。

「リフレイン家の奇跡のご令嬢……?」
「噂は本当だったのか……」
「エリナリーゼ様、同じクラスになれて大変光栄です。一年間といわず今後とも宜しくお願い致します。」

奇跡の令嬢って何。幻の令嬢は言われたことあるけど。というか噂ってなんだろう?気になって聞こうとすると、ユリウス様に遮られた。

「 今日はこれから予定はありますか?よかったら学園内を案内しましょうか?」

「お気遣いありがとうございます。でも、友人が案内してくれるので大丈夫ですよ。」

「ご友人が?」

「えぇ、その方を待っているんです。」

「そうだったのですね。」

とユリウス様達と話しているとカイルがやってきた。

「エリィ、ごめんね少し遅くなっちゃって。げっ、ユリウス!ダグにジークも!」

「カイルか。まさかエリナリーゼ様のご友人とはカイルなのですか?!」

「あら、カイルと皆さんはお友達なのですか?」

「まぁ…腐れ縁のようなものだよ。」

カイルがどことなく居心地が悪そうに言う。悪友なのかしら?
微妙になってしまった空気を変えるかのように、カイルは明るく元気に話す。

「エリィ、行こう。学園を案内するよ。」

「えぇありがとう。ではユリウス様、また明日。」

「えぇ、エリナリーゼ様。また明日お会いしましょう。」

「エリィ、ユリウス達と仲良くなったの?」

「気を使って話掛けてきてくれたの。ユリウス様は優しかったわ。」

「そう……、まぁ行こうか!」

何だろう、何か誤魔化したわね。

「あれ?ところでヴィークは一緒ではないの?」

「……後で合流する予定だよ。」

「そうなの?じゃあ行こっか。」

「うん!」

「学園内はとても広いわね。確かにこれは迷ってしまいそうだわ。」

途中でヴィークとも合流し、穴場スポットなども教えてくれた。

そんなこんなで初日を終え帰ろうとすると、ヴィークが家まで送ってくれることになった。
通り道らしい。

「エリィ、もしよかったらお昼は一緒に食べない?」

と誘ってくれた。

「ありがとう!ヴィークにそう言ってもらえると安心だわ。でもヴィークがいつも一緒に食べていた方とかは大丈夫なの?」

「ん?私は数人で食べていたから、一人くらい抜けても問題はないと思うよ。」

「ヴィークはお友達が沢山いるのね。」

「いやまぁ、友達っていうのとはちょっと違うんだけどね。」

「ふーん、貴族って面倒臭いわよね。」

そう言うとヴィークは言いにくそうにこう切り出した。

「…エリィ、周りから聞くよりも僕から直接話したいことがあるんだけど、聞いてくれる?」

「えぇ、なにかしら?」

「エリィのことだから予想はついていたと思うけど、僕の名前はヴィークグラン・ティム・ナッシュというんだ。」

「…?はい。私の名前はエリナリーゼ・リフレインです。」

「えっ?」

「えっと、私も正式に名乗ってなかったなと思って。」

「ねぇ、今まで通りのままでいてくれる?」

「もちろんよ。どうして変える必要があるの?」

そう言うと嬉しそうだった。


家に着くのはあっという間だ。
ヴィークは先に降りてエスコートしてくれる。
こういうことは初めてなので新鮮だ。

「私は社交的ではないから、お昼のお誘いはとても嬉しかったわ。ありがとうヴィーク。」

と言うと、ヴィークはハグしながら耳元で

「エリィいい匂いがする。」

と言ってきた。
さすがに匂いを嗅がれるのはちょっと恥ずかしい。
フィルお兄様と同じことをしないでほしい。

「恥ずかしいわよヴィーク。匂いを嗅がないでよ。」

私を離すと髪を撫でながら、

「また明日ね。」

と言い帰っていった。

今のは何だったのかしら。
……忘れよう。

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