上 下
28 / 78

28,ローベルト公爵家

しおりを挟む
「ユリウス、今度ルーク殿が結婚するらしい。」

「えぇ。聞きました。」

「結婚パーティーには出席するぞ。」

「はい。」

そう言いながら面倒臭いな、あの脳筋一家怖いし。無駄に顔だけはいいからまたムカつくんだよな。と思っていた。

「おそらくご令嬢も姿を見せるだろう。どんな子か見ておきたい。」

ローベルト公爵家の現当主であり、この国の宰相をしている父はどうやらリフレイン公爵令嬢のことが気になっているようだった。

私はそんなことはどうでもよかった。
それよりも結婚式なんかに行く暇があったら勉強したい。父の跡を継いで宰相になるべく日々勉強を頑張っているのだ。

でも父には逆らえまい。
そうこうしているうちに結婚パーティー当日になった。

会場であるリフレイン公爵邸へ足を踏み入れると、音楽が流れていて華やかで上品な香りが立ち込めており、招待客たちはその香りと音楽に酔いしれていて皆楽しげな雰囲気だった。
なによりも絶妙に適温なのだ。

「意外だな、アンディにこんな趣味とは。風の魔道具か。」

「ではこの香りも?」

「おそらくな。また珍しいものを使うな、脳筋のくせに。」

リフレイン公爵家が絡むと父は少し口が悪くなる。

少しすると、新郎新婦とその家族が現れた。
新郎新婦が挨拶をした後、家族が挨拶をする。

その中に私と同じくらいの年齢の美しい少女がいた。

「あれがエリナリーゼ様!なんと美しい!!」

などという声がちらほら聞こえてくる。
確かに美しいな。でもただそれだけだ。

家族の挨拶が終わると、位が上の者から順に挨拶をしていく。我が家は公爵家なので、すぐに挨拶に訪れた。

「本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。」

「ショーン、来てくれたのだな!」

「ルーク殿おめでとう。これからも大変だとは思うが上手くやってくれたまえよ。」

「はい。ありがとうございます。」

「アンディ、これはまた随分意趣を凝らしたものだな。」

「ふふん、どうだ、我がリフレイン家は!もう以前のリフレイン家ではないのだよ!」

「自慢気に言うな、腹立たしい。しかし、風の魔道具とは考えたな。」

「あぁ!すごいだろう!全部エリィが考えたのだぞ!」

「うちのエリィは本当に天使ですからね。」

「もう女神に昇格してもいいのではないかと私は思ってるぞ。」

「お前ら…、似た者親子だな。まぁ確かに美しい娘だな。なぜ今まで隠していた?」

「まぁそのなんだ、昔いろいろあったしな。それに外に出すと悪い虫がつくだろう?」

「エリィには虫一匹も近づけませんけどね。」

「お前らがそう言うと冗談に聞こえないな。」

「冗談ではないぞ?」

「でもいずれは嫁ぐのだろ?婚約者はまだいないのか?」 

「エリィにはまだ必要ないですね。」
「うむ。」

「ユリウスなんてどうだ?」

「冗談は休み休み言えよ。エリィは私と結婚すると言ってくれているのだ!お前の息子など相手にするはずがなかろうよ」

「……親バカにもほどがあるだろ。」

「まぁいい、ではまたなショーン。そうだ、あとでいいものが見れるぞ。せっかくだ、帰るのはそれを見てからにしたほうがいいと思うぞ。」

「あぁ、ではまたな。」




「父上とリフレイン公爵って仲が良かったのですか?」

「まぁ…腐れ縁だな。脳筋だが悪いやつではない。」

「えぇ、ルーク殿も脳筋だけど気持ちの良い男ですしね。あの令嬢も脳筋だったら嫌ですね。」

「お前、面白いこと言うな。」

面白い事を言ったつもりはないのだが。

「……」

その後暫くするとサンルームのような場所が開放され、そこに置かれたピアノにはあの少女が座っていた。

あの子がピアノを弾くのか、と周りの皆も見ている。

楽団の演奏に合わせて弾き始めたピアノの音色は軽やかでとても心地良かった。続いて流れてきた曲は、聞いたことのない曲だった。歌い始めたその歌声は透き通っていて、その歌詞からは溢れんばかりの祝福が感じられた。
目が離せなかった。
さっきまでざわついていた他の者も一様に聞き入っていた。
歌声が心に響くが、それと同じくらい歌詞も素晴しい。鳥肌が立った。

これがリフレイン家のご令嬢……

演奏が終わり簡単な挨拶をすると、割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。

家族に抱き締められ、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。さっき見た少女とは別人のようだった。
さっきは美しいだけの女かと思っていたが、今はその可愛らしくも美しい天使のような少女から目を離すことができなかった。

「…ユリウス、エリナリーゼ嬢はお前と同じ年だ。おそらく今年学園に入学するだろう。意味はわかるな?」

「えぇ。父上。」
父が令嬢と言わずに名前で呼ぶなんて珍しい。

その後またすぐエリナリーゼ様はどこかへ行ってしまいお目にかかることはできなかったが、少し話をしてみたかったな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

処理中です...