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28,ローベルト公爵家
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「ユリウス、今度ルーク殿が結婚するらしい。」
「えぇ。聞きました。」
「結婚パーティーには出席するぞ。」
「はい。」
そう言いながら面倒臭いな、あの脳筋一家怖いし。無駄に顔だけはいいからまたムカつくんだよな。と思っていた。
「おそらくご令嬢も姿を見せるだろう。どんな子か見ておきたい。」
ローベルト公爵家の現当主であり、この国の宰相をしている父はどうやらリフレイン公爵令嬢のことが気になっているようだった。
私はそんなことはどうでもよかった。
それよりも結婚式なんかに行く暇があったら勉強したい。父の跡を継いで宰相になるべく日々勉強を頑張っているのだ。
でも父には逆らえまい。
そうこうしているうちに結婚パーティー当日になった。
会場であるリフレイン公爵邸へ足を踏み入れると、音楽が流れていて華やかで上品な香りが立ち込めており、招待客たちはその香りと音楽に酔いしれていて皆楽しげな雰囲気だった。
なによりも絶妙に適温なのだ。
「意外だな、アンディにこんな趣味とは。風の魔道具か。」
「ではこの香りも?」
「おそらくな。また珍しいものを使うな、脳筋のくせに。」
リフレイン公爵家が絡むと父は少し口が悪くなる。
少しすると、新郎新婦とその家族が現れた。
新郎新婦が挨拶をした後、家族が挨拶をする。
その中に私と同じくらいの年齢の美しい少女がいた。
「あれがエリナリーゼ様!なんと美しい!!」
などという声がちらほら聞こえてくる。
確かに美しいな。でもただそれだけだ。
家族の挨拶が終わると、位が上の者から順に挨拶をしていく。我が家は公爵家なので、すぐに挨拶に訪れた。
「本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。」
「ショーン、来てくれたのだな!」
「ルーク殿おめでとう。これからも大変だとは思うが上手くやってくれたまえよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「アンディ、これはまた随分意趣を凝らしたものだな。」
「ふふん、どうだ、我がリフレイン家は!もう以前のリフレイン家ではないのだよ!」
「自慢気に言うな、腹立たしい。しかし、風の魔道具とは考えたな。」
「あぁ!すごいだろう!全部エリィが考えたのだぞ!」
「うちのエリィは本当に天使ですからね。」
「もう女神に昇格してもいいのではないかと私は思ってるぞ。」
「お前ら…、似た者親子だな。まぁ確かに美しい娘だな。なぜ今まで隠していた?」
「まぁそのなんだ、昔いろいろあったしな。それに外に出すと悪い虫がつくだろう?」
「エリィには虫一匹も近づけませんけどね。」
「お前らがそう言うと冗談に聞こえないな。」
「冗談ではないぞ?」
「でもいずれは嫁ぐのだろ?婚約者はまだいないのか?」
「エリィにはまだ必要ないですね。」
「うむ。」
「ユリウスなんてどうだ?」
「冗談は休み休み言えよ。エリィは私と結婚すると言ってくれているのだ!お前の息子など相手にするはずがなかろうよ」
「……親バカにもほどがあるだろ。」
「まぁいい、ではまたなショーン。そうだ、あとでいいものが見れるぞ。せっかくだ、帰るのはそれを見てからにしたほうがいいと思うぞ。」
「あぁ、ではまたな。」
「父上とリフレイン公爵って仲が良かったのですか?」
「まぁ…腐れ縁だな。脳筋だが悪いやつではない。」
「えぇ、ルーク殿も脳筋だけど気持ちの良い男ですしね。あの令嬢も脳筋だったら嫌ですね。」
「お前、面白いこと言うな。」
面白い事を言ったつもりはないのだが。
「……」
その後暫くするとサンルームのような場所が開放され、そこに置かれたピアノにはあの少女が座っていた。
あの子がピアノを弾くのか、と周りの皆も見ている。
楽団の演奏に合わせて弾き始めたピアノの音色は軽やかでとても心地良かった。続いて流れてきた曲は、聞いたことのない曲だった。歌い始めたその歌声は透き通っていて、その歌詞からは溢れんばかりの祝福が感じられた。
目が離せなかった。
さっきまでざわついていた他の者も一様に聞き入っていた。
歌声が心に響くが、それと同じくらい歌詞も素晴しい。鳥肌が立った。
これがリフレイン家のご令嬢……
演奏が終わり簡単な挨拶をすると、割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。
家族に抱き締められ、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。さっき見た少女とは別人のようだった。
さっきは美しいだけの女かと思っていたが、今はその可愛らしくも美しい天使のような少女から目を離すことができなかった。
「…ユリウス、エリナリーゼ嬢はお前と同じ年だ。おそらく今年学園に入学するだろう。意味はわかるな?」
「えぇ。父上。」
父が令嬢と言わずに名前で呼ぶなんて珍しい。
その後またすぐエリナリーゼ様はどこかへ行ってしまいお目にかかることはできなかったが、少し話をしてみたかったな。
「えぇ。聞きました。」
「結婚パーティーには出席するぞ。」
「はい。」
そう言いながら面倒臭いな、あの脳筋一家怖いし。無駄に顔だけはいいからまたムカつくんだよな。と思っていた。
「おそらくご令嬢も姿を見せるだろう。どんな子か見ておきたい。」
ローベルト公爵家の現当主であり、この国の宰相をしている父はどうやらリフレイン公爵令嬢のことが気になっているようだった。
私はそんなことはどうでもよかった。
それよりも結婚式なんかに行く暇があったら勉強したい。父の跡を継いで宰相になるべく日々勉強を頑張っているのだ。
でも父には逆らえまい。
そうこうしているうちに結婚パーティー当日になった。
会場であるリフレイン公爵邸へ足を踏み入れると、音楽が流れていて華やかで上品な香りが立ち込めており、招待客たちはその香りと音楽に酔いしれていて皆楽しげな雰囲気だった。
なによりも絶妙に適温なのだ。
「意外だな、アンディにこんな趣味とは。風の魔道具か。」
「ではこの香りも?」
「おそらくな。また珍しいものを使うな、脳筋のくせに。」
リフレイン公爵家が絡むと父は少し口が悪くなる。
少しすると、新郎新婦とその家族が現れた。
新郎新婦が挨拶をした後、家族が挨拶をする。
その中に私と同じくらいの年齢の美しい少女がいた。
「あれがエリナリーゼ様!なんと美しい!!」
などという声がちらほら聞こえてくる。
確かに美しいな。でもただそれだけだ。
家族の挨拶が終わると、位が上の者から順に挨拶をしていく。我が家は公爵家なので、すぐに挨拶に訪れた。
「本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。」
「ショーン、来てくれたのだな!」
「ルーク殿おめでとう。これからも大変だとは思うが上手くやってくれたまえよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「アンディ、これはまた随分意趣を凝らしたものだな。」
「ふふん、どうだ、我がリフレイン家は!もう以前のリフレイン家ではないのだよ!」
「自慢気に言うな、腹立たしい。しかし、風の魔道具とは考えたな。」
「あぁ!すごいだろう!全部エリィが考えたのだぞ!」
「うちのエリィは本当に天使ですからね。」
「もう女神に昇格してもいいのではないかと私は思ってるぞ。」
「お前ら…、似た者親子だな。まぁ確かに美しい娘だな。なぜ今まで隠していた?」
「まぁそのなんだ、昔いろいろあったしな。それに外に出すと悪い虫がつくだろう?」
「エリィには虫一匹も近づけませんけどね。」
「お前らがそう言うと冗談に聞こえないな。」
「冗談ではないぞ?」
「でもいずれは嫁ぐのだろ?婚約者はまだいないのか?」
「エリィにはまだ必要ないですね。」
「うむ。」
「ユリウスなんてどうだ?」
「冗談は休み休み言えよ。エリィは私と結婚すると言ってくれているのだ!お前の息子など相手にするはずがなかろうよ」
「……親バカにもほどがあるだろ。」
「まぁいい、ではまたなショーン。そうだ、あとでいいものが見れるぞ。せっかくだ、帰るのはそれを見てからにしたほうがいいと思うぞ。」
「あぁ、ではまたな。」
「父上とリフレイン公爵って仲が良かったのですか?」
「まぁ…腐れ縁だな。脳筋だが悪いやつではない。」
「えぇ、ルーク殿も脳筋だけど気持ちの良い男ですしね。あの令嬢も脳筋だったら嫌ですね。」
「お前、面白いこと言うな。」
面白い事を言ったつもりはないのだが。
「……」
その後暫くするとサンルームのような場所が開放され、そこに置かれたピアノにはあの少女が座っていた。
あの子がピアノを弾くのか、と周りの皆も見ている。
楽団の演奏に合わせて弾き始めたピアノの音色は軽やかでとても心地良かった。続いて流れてきた曲は、聞いたことのない曲だった。歌い始めたその歌声は透き通っていて、その歌詞からは溢れんばかりの祝福が感じられた。
目が離せなかった。
さっきまでざわついていた他の者も一様に聞き入っていた。
歌声が心に響くが、それと同じくらい歌詞も素晴しい。鳥肌が立った。
これがリフレイン家のご令嬢……
演奏が終わり簡単な挨拶をすると、割れんばかりの拍手と歓声が鳴り響いた。
家族に抱き締められ、とても幸せそうな笑顔を浮かべている。さっき見た少女とは別人のようだった。
さっきは美しいだけの女かと思っていたが、今はその可愛らしくも美しい天使のような少女から目を離すことができなかった。
「…ユリウス、エリナリーゼ嬢はお前と同じ年だ。おそらく今年学園に入学するだろう。意味はわかるな?」
「えぇ。父上。」
父が令嬢と言わずに名前で呼ぶなんて珍しい。
その後またすぐエリナリーゼ様はどこかへ行ってしまいお目にかかることはできなかったが、少し話をしてみたかったな。
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