友達の彼女

みのりみの

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友達らしく

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内海に話してから、俺は心が軽くなった気がした。心の中のしこりみたいのが、もうずっとズキズキしたりワサワサとなったりしていたけど開き直ったというべきなのだろうか。ひろこの事は結婚しても好きって言う温かい気持ちになれた気がしていた。

「集まってー!ミーティング!」
アッキーが手帳とファイルを片手に全員を呼んだ。
すっかり木曜日以外は春のマンションでミーティングをするようになった。

「新曲のリリースで来週から局の出入り増えるからその確認と、ひろこちゃんの番組。またゲスト出演。」

「また聖司かよ?人気者だな。」

つまらなそうに春が言い放つと訳が違った。

「ケン、行って。呼ばれたから。大丈夫?」

「え?まじで俺?」
「やったー!」

意外にも俺が指名されて呼ばれたと同時に山ちゃんも大喜びだった。以前ひろこにプロデューサーが俺を呼びたいと聞いた事はあったけど、まさか本当に依頼が来るとは思ってもいなかったからだ。
無償に嬉しくて、内海にすぐ報告した。

『良かったじゃないですかー!絶対見ますね!!』

相変わらず、ひろこを好きな俺を内海は見守ってくれていた。メンバーにも話せない事を異性に相談してるってどうかと思うけどその気持ちを理解してくれている内海の存在が心の中でありがたくて仕方なかった。

『あの番組、面白いですよね。面白くしなきゃまた次呼ばれないから面白い事した方がいいですよ』

内海は根っからのテレビ人で、話したりメールしてたり面白いと思う事も多々あった。多分俺達演者側とは違う職種の考え方の異なる話や意見に俺は新鮮さもあった。

『面白い事かぁ。一緒に歌うとかありきたりだもんな。』

『いっそ酔っぱらう、とか。こないだの唯さんみたく、お酒ではっちゃけるってファンも見たいんですよね。』

そんなメールをしていたら背後に誰かいる事に気づいた。

「ケン、誰と真剣にメールしてるの?」

振り返ると春がビールを持ちながら覗いていた。1番見られたくない人に見られた気がして俺はすごい焦って変な声をあげた。

「ただいまー!」

するとひろこが入ってくる声がした。

「ひろおかえりー」

いつも通り優希がひろこを抱きしめ、その後ろで春が笑顔で出迎えた。
俺の焦った様がひろこの登場でそこまでクローズアップされず俺は心を落ち着かせたけど本当はすごくドキドキしていた。
結婚してまでもまだひろこが好きとか自分でも信じられなかった。

「ケンくん、聞いたよね?よろしくね。」
遊井さんがにこやかに俺に声をかけた。
「ケン、番組来てくれるんでしょ?おもしろいんだけどー!楽しみ楽しみ!」

「・・・俺も楽しみだよ。」

体育座りの態勢のまま俺はひろこに普通に言えていた。
今まではこんな返しは多分できなかったけど、多分本当に手に入らない人だと分かったから本能的に素になっていたのかもしれない。

インターフォンが鳴って春が出たらピザを5箱抱えていた。

「あれ?アッキー頼んだっけ?」

「今日ひろことピザ頼んだんですよ。帰りがてら、な。」
「今日はうちの事務所経費です!でもこれで足りるかなぁ。11人分だよ?」

またビールの用意が始まって今宵も宴会が始まった。

「俺イタリアンバジルー!」
向かい側に座る沢村が紙皿に乗せて俺に渡してくれた。
「私もイタリアンバジルがいいな。沢村さん取れますか?」
隣でひろこが俺の紙皿を見て沢村に言うとまた沢村が取ってひろこに笑顔で渡していた。
「ケンも?やっぱりイタリアンバジルだよね。」
「ピザーラはやっぱりイタリアンバジルでしょ」

普通に普通に、ごく普通の慣れ親しんだ友達のようにひろこと話をする。それが嬉しかった。

「俺もイタリアンバジルがいい。沢村、取って」
ひろこの右横で春が沢村に言った。
「春さんシーフードミックスじゃないんですか?もう取ってありますよ」
「俺もイタリアンバジルがいい。」
「春の分もう取ってあるから先にこっち食べなさい」
アッキーが沢村の隣から紙皿を出してきた。
「違う。俺もイタリアンバジルがいい」
だけど春は頑なに拒否している。もう顔が子供のような顔をしていた。

「違うんだよアッキー。ひろこちゃんと同じのがいいんだよな。」

聖司の一言でみんな一斉に笑った。春も笑いを含みながらいーじゃんと横を見ながら口を尖らせて照れていた。

「もう紙皿ないんですよ。」
「あ、沢村さん私取ってくるから」

ひろこが立ち上がってキッチンの奥へ行ってガサガサと紙皿を探していた。

「ひろこ、紙皿こないだたくさん買ったやつ上の棚に移動したんだよ」
「え?上のどこ?」

春も立ち上がってキッチンへ走って行った。
ひろこが右手を伸ばして右上の棚を開けようとすると春がひろこの左肩に手を置いて固いのか右手でひろこの右手に乗せて一緒に開けていた。
側から見ているとぴったりくっつく磁石のように身体を寄せ合っていた。
どのくらいひろこが腕を伸ばせば棚に手が届くのか、春の胸のあたりにいるひろこがどのくらいかがめば春の邪魔にならないのかそれはお互いがあたかもお互いの身体を熟知していなくては分からないような距離感で身体を寄せ合っていた。

「あの2人、ただ2人で棚あけてるだけでなんかエロいよな。」

隣にいる五十嵐がポツリと言った。













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