友達の彼女

みのりみの

文字の大きさ
上 下
9 / 32

内出血

しおりを挟む
結局占い師は聖司と俺を占って今日は締めた。優希と春は明日とスタッフ達に告げられるも待ち損ともいえる仕打ちに怒る暇もなく春はアッキーと途端に消えた。

「すげーよ。俺。ギタリストとしての地位を確立できて、30代半ばで結婚できるって」

俺はホテルに移動する車内でみんなに占い結果を話しながらも、ひろこの事は淡い恋、憧れ、ファンというくくりなんだと思うようにしていた。
でも心の中では全然整理なんてできていなかった。

「春はひろとどこに泊まっての?」
「俺らの泊まるホテルのすぐ横のホテルらしいよ。」

優希が運転する五十嵐と話していた。

「遊井さんと会ってからひろと会ってないし明日の朝起きたらひろに会いに行ってもいい?モーニング一緒にたべたいよ」

「!!!!!」

この発言に全員が反応した。

即座に山ちゃんが春の泊まるホテルを調べ上げ、8人分の朝ご飯の追加を電話していて俺は大笑いした。
ひろこに久々会えると思うと途端に笑顔になった。


翌朝メンバーとマネージャー全員で朝8時に2人の泊まるホテルに向かった。春のチョイスはこれまた大きな敷地内にあるオシャレなヴィラだった。

「まだ寝てるよね?」
「服はまだ着てないんじゃないか?」

男8人でニヤニヤしながら想像していたけど、間もなく会えると思うと俺は心が踊った。

ピンポーンピンポーンとインターフォンを何度もアッキーが押すと春がTシャツにデニム姿で出てきた。
俺たち8人を見るとげっそりした顔をした。

「・・・なんで全員で来るの?」

俺はお構いなしに部屋にあがった。俺よりも先に優希は中にあがりすでにひろこに抱きついていた。

「ひろー久しぶりー!」
「わ、優希!」

抱き合って笑い合うひろこが俺に気づいて目が合った。

「ケン!おはよー!久しぶり!」

この笑顔に勝てるものはないって思った。
久々に会うひろこは本当に本当に可愛くて、眩しかった。
以前会った時よりもさらに磨きがかかったような可愛さで見惚れているのに気づいた。

優希がひろこから離れてひろこの肩を抱いていた時俺は目が点になった。
ひろこの首から胸元から内出血だらけだった。腕にもついていた。
何個だろう。分からない。もう身体の柄のように痛々しくついていた。

「ひろ、これすっごいね」
横から優希が鎖骨についた跡をちょっと触っていた。触れる優希はうらやましいけど、ひろこは静かに!と言わんばかりに指を口元で1本かざした。

セックスした残骸とも言えるような生々しい証拠なんだろうけど、その内出血の色の濃さや数が春の気持ちが反映されているかのようでたまらない気持ちになった。


庭には大きなプールもあって、その庭を眺めるかんじで大きなテーブルに朝ご飯が届いてみんなで食べた。
俺はすぐひろこの左隣に座ったら間もなく春がやって来てひろこの右隣に座った。
近くで見ると、内出血は顎にもあった。

「ケン、髪の色いつもキレイだねー!よく痛まないね。」

ひろこが隣で俺の髪を見ながら言った。

「美容院のトリートメントつかってるんだよ。よくある青いやつ」
「青いやつ?」
「今度あげるよ。」

すると反対側から春がひろこに自分が飲まないのかリンゴジュースを渡してきた。

「ケンの髪質いいよね。今度トリートメントくれるって。」

受けとりながら春に話しかけると春はニコッと笑った。
「ひろこのうちのトリートメントもいいよ。いい香りするし」
「そお?じゃあうちのケンにあげるから交換こしようよ」

『交換こ』って言葉にまた嬉しくなった。
俺はこうやって、ひろこの言葉に嬉しくなったりするんだ。

「俺さ、昨日の占い師に30代半ばで結婚するって言われたよ。あと、ギタリストとしての地位を確立するって!」
「えー!ケン、結婚するの!」
「ひろこも見てもらえよ!」
「結婚しないとか言われたりしたら怖いよ」

隣で春がそれは絶対ないって思ってるだろう表情をしてパンを食べていた。

絶対そう。
春はひろこと結婚する。
俺には分かる。
無理矢理にでも結婚する。


朝ご飯を食べ終わった後、広い庭のプールの脇に南国らしい木々が並んでいて春がひろこの写真を撮っていた。俺はその光景をぼんやり見つめていた。

「ひろこちゃんのキスマーク、俺数えちゃったよ。」

隣で山ちゃんがやって来てボソッと言った。
何個?って聞きたくないのに山ちゃんはあっさり答えた。

「21個。あの肺活量で吸われるからそりゃすごいにしても、春も気持ちむき出しだな。想像したくないけど。」

「・・・」

どんなセックスしてんだとか想像は俺だってしたくない。けど、ひろこと久々会えて話せて、2人きりじゃないけど純粋に嬉しくて。
ただのひろこのファン。俺はそうゆう気持ちなのだろうか。


「先、車で待っててよ」

ホテルを出る時春が俺達に言った。別れ際、2人で何か話したい事でもあるんだろうな、と思った。

「あ、ケン!次会う時トリートメント持ってくね!」

「わかった!」

ひろこが笑いながら俺に手を振った。
鼓動が早くなったのが分かった。ひろこの笑顔がまた瞼から離れなくなる。

「別れ際に一発やるのか聞いたら違った」

聖司が俺の横に来て言った。

「聖司、春っていつも女1年毎に変えてたよな?ひろことはもう1年半くらいか?更新したよな。」

「1年半、だね。クリスマスプレゼント、ネックレス買ったんだって。これでプレゼントしてないアクセサリーは残すはブレスレットと指輪らしいぞ。リーチ近いよな」

「まさか。」

結婚は絶対まだできないって思っていた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...