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懸念事項
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ひろこのゆるいダンスのPVは予想通り話題になった。
誰でも踊れるというのがハマってカラオケでは若い子がみんなしてひろこの真似をして踊る。
キルズアウトの戦略通り。新たなバースデーソングの誕生にCDも売れた。
キルズアウトはオリコン初登場2位に位置付け1位を守るSOULと並んだ。
安藤ひろこって何してる子?
事務所には取材や雑誌の依頼が複数社来た。
ひろこ世代のファッション誌はもちろんひろこの可愛さに目をつけて特集を組みたいと言う。
上昇傾向。
俺は今波に乗らなければと毎日奔走した。
大阪でSOULと秋元さんと呑んだ日から事務所の垣根を超えて仲良くなった。
たまに局内で会うと決まってその日は秋元さんと夜呑みに行こうとなり、もう3回2人で呑みに行った。
なぜか決まって飲み屋は六本木ヒルズの目の前にある24時間営業の中国居酒屋だった。
見た目チンピラと言われる俺に対してはじめはお互い敬語だった秋元さんも、実は俺より2つ年上でビックリした。
しかし秋元さんは俺に対して敬語を使った。
マネージャーとは3つのタイプにだいたい分かれる。
チャラい系、ガラ悪系、バリバリ系
秋元さんのチャラい系に対してガラ悪な俺はタイプ違えど仕事に対しての情熱の熱さは同じだった。
秋元さんはおもしろい男でなぜかメンバーがいないと同業の俺との会話に仕事とメリハリをつけたいのかメンバーの事をくん付けで話してくるのだ。
「うちの春くんがさぁ。キルズアウトのPVにでてたひろこちゃんが可愛くてキルズアウトに嫉妬しててこないだその足でオフにソッコー大阪行ったみたいで」
「あ、やっぱり?あのオフの日ふたりでいたみたいですね。ひろこが韓国人街行ったとかなんとか」
「そう!それそれ!」
当のふたりには俺達が飲み友達になってる事は特に言わないがお互いにお互いのマネジメント相手に対しての情報共有と言えばいいのだろうか。
やれひろこと春はここ行っただの、春の部屋にはひろこの写真が大事そうに飾ってあるだの、そんな事でも自分の商品とも言える人の現状を知っておきたかったのは秋元さんと共通の気持ちだった。
その中には全く知らない事もたくさんあった。ひろこが年始にメンバーやスタッフと新潟旅行へ行った事。その後2人でハワイへ行った事。
あぁ。だから年明け日焼けしてたのかと後からパズルをはめるのかのように得た情報だった。
そして、春くんが会った事もないひろこに写真見て一目惚れして売れっ子になるために1年走り続けてきた事。これには驚かされた。
「SOULはね、春がひろこちゃんに一目惚れしてから変わったんです。有名にならなきゃ安藤ひろこに会えないって。売れっ子になって大阪でライブして大阪放送のひろこちゃんのでてる音楽番組に出るのを目標に。聖司くん、毎日歌作りましたよ。」
パズルが、はまっていく気がした。
春くんがひろこを本当に好きで。口説かれひろこは簡単に付き合ったのかもしれないけど今は春くんに恋をして輝いている。
売れるまでの過程をお互いで支えてきたんだと思った。お互いを恋する気持ちだけで。
それがこんな奇跡的なCMまでできて、もはや運命以外の何者でもない。
とっておきのラブストーリーに酔いしれそうなおっさん2人だが、仕事が絡むともう目の色が変わってお互い相談し合った。
週刊誌に撮られたらどうする?
結婚したいって言い出したらどうする?
週刊誌はまだひろこは大阪だから東京の春くんの家に行かなければまだいい。
結婚も結婚で問題は多いけど、ひろこの現状から東京に戻るまでは結婚は絶対しないと思った。
しかしその中でも特に厳しく目を配る懸念事項があった。
妊娠だ。
「ひろこが今妊娠されたら本当に困る」
「あの勢いだと、絶対セックスしまくってると思いますよ。朝ひろこちゃんち迎えに行くともう雰囲気で分かる。夜やりまくってましたー!みたいな。」
「やりまくってる?うわーやめてくれよー!! 避妊してるんですかね。体型見てるとひろこはまだ妊娠はしてないな」
「それは遊井さんは聞けないだろうから俺から聞いてみますよ。春くんも今パパになられたらファン離れが俺もゾッとする」
SOULはひろこ出演のCMではじめてオリコン初登場1位になったばかりだった。
しかもその曲はロングヒットを飛ばし1ヶ月間1位の座を守った。
これは音楽業界で久々の怪物バンド誕生を意味しメディアも騒ぎ出していた。
ひろこの妊娠。
その事だけが俺たちの不安材料だった。
俺は大阪でひろこと会う時は体型は必ず見てないフリして観察した。
見た目だけで1キロ太った、痩せた、容易に分かるこのマネジメントスキルは確かである。
ひろこは腹が人より薄い。ウエストの細さではなく腹が異様に薄いから胸も大きく見えるのだ。
「まだ妊娠だけはしないでくれよ」
大阪から帰るときひろこに一度釘を刺した。
「まだ2人だけでいたいんだ」
春くんに相当愛されているのだろうか、それを自分で確信しているのだろうか。
ひろこの顔は幸せそうに微笑んだ。少し伸びた前髪の隙間から見せる魅力的な目つき。
何も言えなかった。一言でかわいいね、とかではない。
「世の男が全員好きになるタイプ」の顔はもはや恋をして開花して色気を放ち、見てるこっちがため息をつくしかなかった。
その顔を見てキレイになったな、と言いかけたがやめた。
誰でも踊れるというのがハマってカラオケでは若い子がみんなしてひろこの真似をして踊る。
キルズアウトの戦略通り。新たなバースデーソングの誕生にCDも売れた。
キルズアウトはオリコン初登場2位に位置付け1位を守るSOULと並んだ。
安藤ひろこって何してる子?
事務所には取材や雑誌の依頼が複数社来た。
ひろこ世代のファッション誌はもちろんひろこの可愛さに目をつけて特集を組みたいと言う。
上昇傾向。
俺は今波に乗らなければと毎日奔走した。
大阪でSOULと秋元さんと呑んだ日から事務所の垣根を超えて仲良くなった。
たまに局内で会うと決まってその日は秋元さんと夜呑みに行こうとなり、もう3回2人で呑みに行った。
なぜか決まって飲み屋は六本木ヒルズの目の前にある24時間営業の中国居酒屋だった。
見た目チンピラと言われる俺に対してはじめはお互い敬語だった秋元さんも、実は俺より2つ年上でビックリした。
しかし秋元さんは俺に対して敬語を使った。
マネージャーとは3つのタイプにだいたい分かれる。
チャラい系、ガラ悪系、バリバリ系
秋元さんのチャラい系に対してガラ悪な俺はタイプ違えど仕事に対しての情熱の熱さは同じだった。
秋元さんはおもしろい男でなぜかメンバーがいないと同業の俺との会話に仕事とメリハリをつけたいのかメンバーの事をくん付けで話してくるのだ。
「うちの春くんがさぁ。キルズアウトのPVにでてたひろこちゃんが可愛くてキルズアウトに嫉妬しててこないだその足でオフにソッコー大阪行ったみたいで」
「あ、やっぱり?あのオフの日ふたりでいたみたいですね。ひろこが韓国人街行ったとかなんとか」
「そう!それそれ!」
当のふたりには俺達が飲み友達になってる事は特に言わないがお互いにお互いのマネジメント相手に対しての情報共有と言えばいいのだろうか。
やれひろこと春はここ行っただの、春の部屋にはひろこの写真が大事そうに飾ってあるだの、そんな事でも自分の商品とも言える人の現状を知っておきたかったのは秋元さんと共通の気持ちだった。
その中には全く知らない事もたくさんあった。ひろこが年始にメンバーやスタッフと新潟旅行へ行った事。その後2人でハワイへ行った事。
あぁ。だから年明け日焼けしてたのかと後からパズルをはめるのかのように得た情報だった。
そして、春くんが会った事もないひろこに写真見て一目惚れして売れっ子になるために1年走り続けてきた事。これには驚かされた。
「SOULはね、春がひろこちゃんに一目惚れしてから変わったんです。有名にならなきゃ安藤ひろこに会えないって。売れっ子になって大阪でライブして大阪放送のひろこちゃんのでてる音楽番組に出るのを目標に。聖司くん、毎日歌作りましたよ。」
パズルが、はまっていく気がした。
春くんがひろこを本当に好きで。口説かれひろこは簡単に付き合ったのかもしれないけど今は春くんに恋をして輝いている。
売れるまでの過程をお互いで支えてきたんだと思った。お互いを恋する気持ちだけで。
それがこんな奇跡的なCMまでできて、もはや運命以外の何者でもない。
とっておきのラブストーリーに酔いしれそうなおっさん2人だが、仕事が絡むともう目の色が変わってお互い相談し合った。
週刊誌に撮られたらどうする?
結婚したいって言い出したらどうする?
週刊誌はまだひろこは大阪だから東京の春くんの家に行かなければまだいい。
結婚も結婚で問題は多いけど、ひろこの現状から東京に戻るまでは結婚は絶対しないと思った。
しかしその中でも特に厳しく目を配る懸念事項があった。
妊娠だ。
「ひろこが今妊娠されたら本当に困る」
「あの勢いだと、絶対セックスしまくってると思いますよ。朝ひろこちゃんち迎えに行くともう雰囲気で分かる。夜やりまくってましたー!みたいな。」
「やりまくってる?うわーやめてくれよー!! 避妊してるんですかね。体型見てるとひろこはまだ妊娠はしてないな」
「それは遊井さんは聞けないだろうから俺から聞いてみますよ。春くんも今パパになられたらファン離れが俺もゾッとする」
SOULはひろこ出演のCMではじめてオリコン初登場1位になったばかりだった。
しかもその曲はロングヒットを飛ばし1ヶ月間1位の座を守った。
これは音楽業界で久々の怪物バンド誕生を意味しメディアも騒ぎ出していた。
ひろこの妊娠。
その事だけが俺たちの不安材料だった。
俺は大阪でひろこと会う時は体型は必ず見てないフリして観察した。
見た目だけで1キロ太った、痩せた、容易に分かるこのマネジメントスキルは確かである。
ひろこは腹が人より薄い。ウエストの細さではなく腹が異様に薄いから胸も大きく見えるのだ。
「まだ妊娠だけはしないでくれよ」
大阪から帰るときひろこに一度釘を刺した。
「まだ2人だけでいたいんだ」
春くんに相当愛されているのだろうか、それを自分で確信しているのだろうか。
ひろこの顔は幸せそうに微笑んだ。少し伸びた前髪の隙間から見せる魅力的な目つき。
何も言えなかった。一言でかわいいね、とかではない。
「世の男が全員好きになるタイプ」の顔はもはや恋をして開花して色気を放ち、見てるこっちがため息をつくしかなかった。
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