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「遊井くんごめんね。俺異動になっちゃった。後任プロデューサーが芸人の番組やりたいんだって」
夏の中盤に秀光さんから連絡があった。
秀光さんはTV局社員。
サラリーマンだ。 異動先はスポーツ局。
現場ともおさらばな異動だ。
「ひろぴょんまだ見てたかったな。あの子だけは育ててな。本当これから先が楽しみな子なんだ」
なんとも心を掴めた凄腕プロデューサーとひろこもこれで決別。
また現場復帰の可能性もあるかもしれないので業界特有の丁重にお礼をして電話を切った。
翌日ひろこに言うとブチ切れた。
「それ、どう言う事?」
これで大きなレギュラーを失った。
もはや無職と一緒だ。
平日毎日通っていたTV局にも行かなくなるためこれは相当働かない感覚になる。
「グラビアやりましょう」
社長も立ち会う中ひろこに言った。
ひろこの不満気な顔。
「一発写真集だしましょうよ。海外ロケで」
俺もマネージャー歴15年。その子にあった売り方はずっと考えてきた。戦略に出ようと思った。
写真集撮影の前にまたヤンマガのグラビア撮影で会った頃俺はびっくりした。
目が違う。笑顔が違う。オーラが違う。
ふわふわとしたひろこにいつものツンケンした匂いはない。
「恋でも、してるのか」
ひろこは吹き出していたがどうやら好きな男ができたようだ。
「今日、お祭り行くから早く家までおくってね」
幸せそうな笑顔が本当に可愛かった。
8月に入り、ひろこは19歳になった。
ワンナイでは誕生日の子は最後の尺5分が貰える。
そこでひろこは幼少期から高校時代までの写真を惜しげもなく披露し、最後はひろこのアップで番組は終了した。
その翌日、また視聴者センターから『安藤ひろこがかわいい』と言ったワンナイメンバーの中でも抜群の人気を誇る電話があったそうだ。
世間の目は必ずひろこに向く。
俺は自信しかなかった。
俺の想像通り、それは写真集のグアムロケで大爆発した。
「色っぽいね」
カメラマンがため息をつく。
水着の写真もワンピースでの写真もそこまで性欲を沸かせるようなポーズもさせてないのにあふれる色気にふとした表情は目を見張るものがある。
きっとここまで化けたと言うことは、恋する相手と何かあったのだろう。
「遊井さん、この子ワンナイに出てたなんてもったいないよ。仕事これからバンバン来ると思うよ。だって本当にかわいいもん」
ベテランカメラマンは絶賛した。
「ひろこ、調子いいな。カメラマン褒めてたぞ」
メイクを治されているひろこに言うときょとんとした顔で俺を見た。
「ひろこは今日は恋する顔なんだよね」
スタイリストの女の子が言うとひろこはあっはっはと笑った。
「恋する顔は色っぽく写真にうつるものなの?」
こんなに日差しが強い中での撮影でバテるどころかひろこは恋のエネルギーに力を借りて生きている。
それしか思えなかった。
あのスカウトした夏、彼氏の「りょうくん」と幸せそうにしていた恋するひろこはあの頃より学生さが抜けセクシーに妖艶に人々を魅了する。
仕事がなくなったというのにここまで輝いている。
この女は恋をすればがらりと変わるんだと知った。
写真集の出来は完璧だった。
あの輝いているひろこを完璧に写真は納めてくれた。
俺は次の仕事を考えていた。
このままグラビアを出しまくってバラエティ枠に進出か、ドラマちょい役そしてブレイクコース。
これが一般的かと。
雑誌のモデルをやらせながらグラビア活動、狙うわCM、司会業もこなせるタレントとして成長。
どれもこれも出だしはグラビアでひとつ抜け出ないといけない。
しかしひろこはそこまでグラビアに乗り気でもない。
あと手段は?
そんな中、大阪放送での音楽番組司会という枠が事務所絡みであがってきた。
大阪放送となると収録で週1の大阪通いになる。
しかし大阪放送とうちの事務所は蜜月の関係でありタレントひとり任せるにはちょうど良い環境であった。
その音楽番組司会の傍ら局アナも同然で他の番組にも出させてくれるらしい。
局が借り上げたいわゆる社宅に住まわしても可能だという。
でもひろこもさすがに大阪転勤は嫌がるだろうと踏んでいた。
グラビアはしたくない。
なら番組司会をレギュラーで大阪からの出発と考えると大阪行きも視野に入れるのもありかと思い資料を鞄にしまいこんだ。
ロケから帰国してからひろこは1週間電話に出なかった。
こんな事は初めてだった。さすがにおかしいなと思い俺はひろこ住む事務所の借り上げた目黒のマンションへ向かった。
インターフォンをいくら押してもひろこは出てこなかった。
ドアを叩き、ドアノブを回しても出てこなかった。
もしも自殺なんてしていたら、と急に怖くなり俺は焦った。
「ひろこ!ひろこ!開けろ!」
ゆっくりドアが開くと出てきたひろこの姿に驚愕した。
やつれ果てていた。
メイクはグアムのまま泣き腫らしボロボロ。
何も食べていないのか顔は痩せこけてうっすら骨が浮き上がり骸骨のお化けのようだった。
あのグアムの頃とは別人すぎていた。
哀れな姿を見て失恋したんだと思った。
夏の中盤に秀光さんから連絡があった。
秀光さんはTV局社員。
サラリーマンだ。 異動先はスポーツ局。
現場ともおさらばな異動だ。
「ひろぴょんまだ見てたかったな。あの子だけは育ててな。本当これから先が楽しみな子なんだ」
なんとも心を掴めた凄腕プロデューサーとひろこもこれで決別。
また現場復帰の可能性もあるかもしれないので業界特有の丁重にお礼をして電話を切った。
翌日ひろこに言うとブチ切れた。
「それ、どう言う事?」
これで大きなレギュラーを失った。
もはや無職と一緒だ。
平日毎日通っていたTV局にも行かなくなるためこれは相当働かない感覚になる。
「グラビアやりましょう」
社長も立ち会う中ひろこに言った。
ひろこの不満気な顔。
「一発写真集だしましょうよ。海外ロケで」
俺もマネージャー歴15年。その子にあった売り方はずっと考えてきた。戦略に出ようと思った。
写真集撮影の前にまたヤンマガのグラビア撮影で会った頃俺はびっくりした。
目が違う。笑顔が違う。オーラが違う。
ふわふわとしたひろこにいつものツンケンした匂いはない。
「恋でも、してるのか」
ひろこは吹き出していたがどうやら好きな男ができたようだ。
「今日、お祭り行くから早く家までおくってね」
幸せそうな笑顔が本当に可愛かった。
8月に入り、ひろこは19歳になった。
ワンナイでは誕生日の子は最後の尺5分が貰える。
そこでひろこは幼少期から高校時代までの写真を惜しげもなく披露し、最後はひろこのアップで番組は終了した。
その翌日、また視聴者センターから『安藤ひろこがかわいい』と言ったワンナイメンバーの中でも抜群の人気を誇る電話があったそうだ。
世間の目は必ずひろこに向く。
俺は自信しかなかった。
俺の想像通り、それは写真集のグアムロケで大爆発した。
「色っぽいね」
カメラマンがため息をつく。
水着の写真もワンピースでの写真もそこまで性欲を沸かせるようなポーズもさせてないのにあふれる色気にふとした表情は目を見張るものがある。
きっとここまで化けたと言うことは、恋する相手と何かあったのだろう。
「遊井さん、この子ワンナイに出てたなんてもったいないよ。仕事これからバンバン来ると思うよ。だって本当にかわいいもん」
ベテランカメラマンは絶賛した。
「ひろこ、調子いいな。カメラマン褒めてたぞ」
メイクを治されているひろこに言うときょとんとした顔で俺を見た。
「ひろこは今日は恋する顔なんだよね」
スタイリストの女の子が言うとひろこはあっはっはと笑った。
「恋する顔は色っぽく写真にうつるものなの?」
こんなに日差しが強い中での撮影でバテるどころかひろこは恋のエネルギーに力を借りて生きている。
それしか思えなかった。
あのスカウトした夏、彼氏の「りょうくん」と幸せそうにしていた恋するひろこはあの頃より学生さが抜けセクシーに妖艶に人々を魅了する。
仕事がなくなったというのにここまで輝いている。
この女は恋をすればがらりと変わるんだと知った。
写真集の出来は完璧だった。
あの輝いているひろこを完璧に写真は納めてくれた。
俺は次の仕事を考えていた。
このままグラビアを出しまくってバラエティ枠に進出か、ドラマちょい役そしてブレイクコース。
これが一般的かと。
雑誌のモデルをやらせながらグラビア活動、狙うわCM、司会業もこなせるタレントとして成長。
どれもこれも出だしはグラビアでひとつ抜け出ないといけない。
しかしひろこはそこまでグラビアに乗り気でもない。
あと手段は?
そんな中、大阪放送での音楽番組司会という枠が事務所絡みであがってきた。
大阪放送となると収録で週1の大阪通いになる。
しかし大阪放送とうちの事務所は蜜月の関係でありタレントひとり任せるにはちょうど良い環境であった。
その音楽番組司会の傍ら局アナも同然で他の番組にも出させてくれるらしい。
局が借り上げたいわゆる社宅に住まわしても可能だという。
でもひろこもさすがに大阪転勤は嫌がるだろうと踏んでいた。
グラビアはしたくない。
なら番組司会をレギュラーで大阪からの出発と考えると大阪行きも視野に入れるのもありかと思い資料を鞄にしまいこんだ。
ロケから帰国してからひろこは1週間電話に出なかった。
こんな事は初めてだった。さすがにおかしいなと思い俺はひろこ住む事務所の借り上げた目黒のマンションへ向かった。
インターフォンをいくら押してもひろこは出てこなかった。
ドアを叩き、ドアノブを回しても出てこなかった。
もしも自殺なんてしていたら、と急に怖くなり俺は焦った。
「ひろこ!ひろこ!開けろ!」
ゆっくりドアが開くと出てきたひろこの姿に驚愕した。
やつれ果てていた。
メイクはグアムのまま泣き腫らしボロボロ。
何も食べていないのか顔は痩せこけてうっすら骨が浮き上がり骸骨のお化けのようだった。
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