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子供
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『二日酔い大丈夫?春くんさえよければまた呑みに来てね。』
『もちろんまた行くよ。ラジオのゲストまじで呼ぶね。』
数時間で起床してひろこより朝一に剛くんとメールのやり取りをした。
俺は剛くんと仲良くなった。
歳は俺より6歳年上だった。話が盛り上がりすぎて俺のラジオ番組のゲストに来てもらう約束までしていた。
なぜか歳の差も感じなくてタメ口だった。
酒の力は素晴らしい。
俺は酒が好きだとしみじみ思った。
「なんだ春、二日酔いか?」
アッキーが朝来るなり嫌そうな顔をした。
「酒臭い?」
「酒の臭いしかしない。」
俺は顔色悪くアッキーの車に乗った。
外を見ると局の横を通過した。
ひろこの番組の横断幕が派手に飾られていた。横断幕のひろこはお団子頭でとびきりかわいい顔して笑っている。
「ひろこちゃんの番組、制作側は大物ゲストに続々とオファーをしているらしいぞ。聖司の次は支倉大介だってな。」
「あ、それ。ひろこから聞いた。」
横断幕を見ていた俺にアッキーが運転席から一緒に見て言った。
「ひろこちゃんヤバイかわいいよな。文句なしのかわいさ。」
俺はビックリした。
アッキーが芸能人を褒めたのはこれが初めてだった。
「そんなの俺が1番分かってるよ」
「・・遊井さんか春かもな。」
こんな朝から二日酔いでもひろこの事を考えてたら会いたくなってきてすぐメールした。
『おはよ。今日どこにいるの?』
『赤坂で撮影だよ。』
俺も今日赤坂に行く。会えないかな?なんて思ってたら幼稚園の前を通過した。
園児達は園庭を走り回っていた。今日もマリア像は立ちはだかっている。
『ひろこと結婚できますように』
ひろこが東京に戻ってから願い事がまた変わった。
朝だからか、紺色の服に身を包んだ品のよさそうな母親達は制服姿の園児と登園している途中だった。
子供。
ひろこと俺に子供ができたら。
ひろこ本人も言っていた。あの性格だと絶対中絶なんてしないだろう。
事務所の社長や遊井さんにどんなに言われても中絶しないと思う。
あの、沖縄の時の無理してさみしさをみせないぐっと閉じた口。
あの顔を思い出した。
ひろこの外見よりも、あの内面から出る凛とした強さに俺は惚れているんだ。
あんなに可愛いのに、自分で分かってるんだか分かってないんだか分からない。そして悪口を言わない。
あんな女、本当見たことない。
「昨日、『安藤ひろことHARUは付き合ってるの?』って内容のファンレターけっこうな数見たぞ。」
「見たんだ」
ちらほら届いているとは聞いていたけど、ちらほらじゃなくてけっこうな数になったんだ、と思った。
「その中に、安藤ひろこの事務所ごと火をつけますってのもあった。まぁそうゆう過激なのが5通かな」
「そっか。」
週刊誌こそ撮られてないけど、俺たちの事は世間に浸透しはじめてきたんだと思った。
そう思うと世間に俺たちの交際を認めてほしい!なんて前向きな気持ちよりもっと隠れて交際しなきゃって思えてくる。
そんな風に思う事に心が妙にキリキリしていた。
「春、普通の恋愛じゃないからな。俺が家に彼女呼ぶのと訳が違うからな」
「分かってるよ」
普通の恋愛じゃないってアッキーにダイレクトに言われてやっぱり普通じゃないんだと思った。
ひろこがもしファンに何かされたら、と思うと俺は考えるたびにゾッとしていた。
ファンを逆撫でする事はできない。でも俺たちはファンで食っていけている。ファンありきのこの仕事でどうやって結婚なんてできるのだろう。
ひろこもひろこであの社長は絶対結婚なんて今はさせてくれるハズがない。
もしもひろこに子供ができたら、あの社長にボコボコにされてもひろこと結婚できるならそれでいい。
でもメンバー3人には迷惑をかける。
そしてひろこが仕事を手放すことになる。
今、仕事が絶好調のひろこが仕事を手放すとしたらそれは悲しむだろう。
また沖縄の占い師の言葉が思い出された。
『お前のせいで多くの人間が傷ついている。大迷惑してる。重いよ。これは重罪だよ。』
「おー始まったー!!」
ケンがTVをつけてくれてスタジオでひろこの番組の初回が放送された。メンバー全員、マネージャー全員、また揃ってみんなで鑑賞タイムに入った。
『第一回目のゲストはSOULのSEIJIさんです。こんばんはー』
『これ、お土産です』
第一回目は聖司を迎え華々しくスタートを切っていた。
「この番組のプロデューサー知ってる?」
突如山ちゃんが俺に言ってきた。
「知らない。有名な人なの?」
俺はビールを持ってきて空けて一口飲んだ。
「新進気鋭のまだ若いプロデューサーだよ。これからひっぱりだこになるんじゃない?センスいいよね。編集も。」
「ふーん」
俺は黙って笑顔のひろこをTVで見ていた。
「前に優希がcameraって雑誌出た時のさ、白部編集長覚えてる?その弟だよ」
隣で話を聞いていた五十嵐が言った。
「あ、そうなの?白部編集長優しくて大好きだなー。兄弟でひろのファンって言ってたよ。」
優希の悪気はないだろう発言にまた心は焦ってくる。
ピリリリリリ
その時俺の携帯が鳴った。
『よー!春久しぶり。』
昔1度だけPVをつくってもらった事のあるプロデューサーの浅川さんだった。
「浅川さん、お久しぶりです。」
『ねーねー春って安藤ひろこちゃんと付き合ってるって本当?実はさ、今PVつくってるバンドのギタリストの子がずっと前から好きで会いたいって言ってるんだけど。』
また、ひろこのファンがいる。
ずっと前からっていつなんだ?俺だってずっと好きだったんだってそのギタリストに電話口で言いたいくらいの気持ちになった。
「付き合ってますよ。俺の、彼女なんです。だから、手出さないでくださいよ」
また、焦りが湧いてくる。
『結婚とか、するんですか?』
番組で聖司がふざけて絡むとひろこはビックリした顔して笑った。
『いやー、できるんですかね?』
ひろこをSOULの熱狂的なファンの嫌がらせに合う前に、別の男に取られる前に、「結婚」がよぎった。
『もちろんまた行くよ。ラジオのゲストまじで呼ぶね。』
数時間で起床してひろこより朝一に剛くんとメールのやり取りをした。
俺は剛くんと仲良くなった。
歳は俺より6歳年上だった。話が盛り上がりすぎて俺のラジオ番組のゲストに来てもらう約束までしていた。
なぜか歳の差も感じなくてタメ口だった。
酒の力は素晴らしい。
俺は酒が好きだとしみじみ思った。
「なんだ春、二日酔いか?」
アッキーが朝来るなり嫌そうな顔をした。
「酒臭い?」
「酒の臭いしかしない。」
俺は顔色悪くアッキーの車に乗った。
外を見ると局の横を通過した。
ひろこの番組の横断幕が派手に飾られていた。横断幕のひろこはお団子頭でとびきりかわいい顔して笑っている。
「ひろこちゃんの番組、制作側は大物ゲストに続々とオファーをしているらしいぞ。聖司の次は支倉大介だってな。」
「あ、それ。ひろこから聞いた。」
横断幕を見ていた俺にアッキーが運転席から一緒に見て言った。
「ひろこちゃんヤバイかわいいよな。文句なしのかわいさ。」
俺はビックリした。
アッキーが芸能人を褒めたのはこれが初めてだった。
「そんなの俺が1番分かってるよ」
「・・遊井さんか春かもな。」
こんな朝から二日酔いでもひろこの事を考えてたら会いたくなってきてすぐメールした。
『おはよ。今日どこにいるの?』
『赤坂で撮影だよ。』
俺も今日赤坂に行く。会えないかな?なんて思ってたら幼稚園の前を通過した。
園児達は園庭を走り回っていた。今日もマリア像は立ちはだかっている。
『ひろこと結婚できますように』
ひろこが東京に戻ってから願い事がまた変わった。
朝だからか、紺色の服に身を包んだ品のよさそうな母親達は制服姿の園児と登園している途中だった。
子供。
ひろこと俺に子供ができたら。
ひろこ本人も言っていた。あの性格だと絶対中絶なんてしないだろう。
事務所の社長や遊井さんにどんなに言われても中絶しないと思う。
あの、沖縄の時の無理してさみしさをみせないぐっと閉じた口。
あの顔を思い出した。
ひろこの外見よりも、あの内面から出る凛とした強さに俺は惚れているんだ。
あんなに可愛いのに、自分で分かってるんだか分かってないんだか分からない。そして悪口を言わない。
あんな女、本当見たことない。
「昨日、『安藤ひろことHARUは付き合ってるの?』って内容のファンレターけっこうな数見たぞ。」
「見たんだ」
ちらほら届いているとは聞いていたけど、ちらほらじゃなくてけっこうな数になったんだ、と思った。
「その中に、安藤ひろこの事務所ごと火をつけますってのもあった。まぁそうゆう過激なのが5通かな」
「そっか。」
週刊誌こそ撮られてないけど、俺たちの事は世間に浸透しはじめてきたんだと思った。
そう思うと世間に俺たちの交際を認めてほしい!なんて前向きな気持ちよりもっと隠れて交際しなきゃって思えてくる。
そんな風に思う事に心が妙にキリキリしていた。
「春、普通の恋愛じゃないからな。俺が家に彼女呼ぶのと訳が違うからな」
「分かってるよ」
普通の恋愛じゃないってアッキーにダイレクトに言われてやっぱり普通じゃないんだと思った。
ひろこがもしファンに何かされたら、と思うと俺は考えるたびにゾッとしていた。
ファンを逆撫でする事はできない。でも俺たちはファンで食っていけている。ファンありきのこの仕事でどうやって結婚なんてできるのだろう。
ひろこもひろこであの社長は絶対結婚なんて今はさせてくれるハズがない。
もしもひろこに子供ができたら、あの社長にボコボコにされてもひろこと結婚できるならそれでいい。
でもメンバー3人には迷惑をかける。
そしてひろこが仕事を手放すことになる。
今、仕事が絶好調のひろこが仕事を手放すとしたらそれは悲しむだろう。
また沖縄の占い師の言葉が思い出された。
『お前のせいで多くの人間が傷ついている。大迷惑してる。重いよ。これは重罪だよ。』
「おー始まったー!!」
ケンがTVをつけてくれてスタジオでひろこの番組の初回が放送された。メンバー全員、マネージャー全員、また揃ってみんなで鑑賞タイムに入った。
『第一回目のゲストはSOULのSEIJIさんです。こんばんはー』
『これ、お土産です』
第一回目は聖司を迎え華々しくスタートを切っていた。
「この番組のプロデューサー知ってる?」
突如山ちゃんが俺に言ってきた。
「知らない。有名な人なの?」
俺はビールを持ってきて空けて一口飲んだ。
「新進気鋭のまだ若いプロデューサーだよ。これからひっぱりだこになるんじゃない?センスいいよね。編集も。」
「ふーん」
俺は黙って笑顔のひろこをTVで見ていた。
「前に優希がcameraって雑誌出た時のさ、白部編集長覚えてる?その弟だよ」
隣で話を聞いていた五十嵐が言った。
「あ、そうなの?白部編集長優しくて大好きだなー。兄弟でひろのファンって言ってたよ。」
優希の悪気はないだろう発言にまた心は焦ってくる。
ピリリリリリ
その時俺の携帯が鳴った。
『よー!春久しぶり。』
昔1度だけPVをつくってもらった事のあるプロデューサーの浅川さんだった。
「浅川さん、お久しぶりです。」
『ねーねー春って安藤ひろこちゃんと付き合ってるって本当?実はさ、今PVつくってるバンドのギタリストの子がずっと前から好きで会いたいって言ってるんだけど。』
また、ひろこのファンがいる。
ずっと前からっていつなんだ?俺だってずっと好きだったんだってそのギタリストに電話口で言いたいくらいの気持ちになった。
「付き合ってますよ。俺の、彼女なんです。だから、手出さないでくださいよ」
また、焦りが湧いてくる。
『結婚とか、するんですか?』
番組で聖司がふざけて絡むとひろこはビックリした顔して笑った。
『いやー、できるんですかね?』
ひろこをSOULの熱狂的なファンの嫌がらせに合う前に、別の男に取られる前に、「結婚」がよぎった。
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