俺のカノジョに手をだすな!

みのりみの

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楽屋

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ひろこがモテる。

そんなの、初めて写真見ただけで一目惚れした頃は考えもしなかった。
近くにいる山ちゃんがファンなだけだと思ってた。

俊はまだひろこの事を諦めきれていないと大ちゃんが教えてくれた。ひろこが俊になびかないとは分かってる。
だけど、これからもっとひろこのことを好きになる男が出てきて、ひろこに手を出そうとしていると思うと気分は悪かった。


「電話番号教えてくれるかな?」
「うーん。どうだろう。あれはマネージャーと仲良くならなきゃ無理じゃないか?」

エレベーターに乗ろうとしたらflaverの中山くんがマネージャーと目の前でエレベーターを待っていた。
flaverは最近流行ってる2人組のストリート系ミュージシャンだ。
普段ラフな格好の俺は中山くんのスニーカーがセンスいいな、と思って後ろ姿から見つめていた。

「あれ、マネージャー怖そうだよな」
「怖いと思うぞ。第一関門だよな。」

マネージャーが怖い。
第一関門。

俺が前に遊井さんに対して思っていた事だ。

エレベーターが開いて3人で乗った時、俺に気づいて軽く会釈した。エレベーター内は3人無言で下の階にすぐ着いてお互い違う方向に歩いた。

「あの怖そうなマネージャー、ユウイさんって人だよね。」
「そうそう。チンピラにしか見えないよな。かんじよくな。」

「・・・」

盗み聞きじゃない。
聞こえた。
中山くんもひろこを狙ってるんだ。

ひろこの楽屋を探していたらちょうど楽屋から出てくる遊井さんがいた。

「春くん!」 

俺に気づくと遊井さんは手を振った。頭には何やら葉っぱがついていた。

「遊井さん、葉っぱ頭についてますよ」
「葉っぱ?」

頭から葉をとってあげると遊井さんは笑っていた。

「今、音楽番組収録してたんでしょ?さっき秋元さん見たよ」

「そうなんです。もう帰るから。」

「ひろこの楽屋、今植物園だよ。SOULの花も届いてたよ。ありがとう。」

今日が収録初日。アッキーが赤い大きなバラを送ったとは聞いていた。どれだけ大きなバラを送ったのだろう。
扉をノックして安藤ひろこ様と書かれた楽屋の扉を空けると大量のスタンド花で埋め尽くされ植物園と化していてひろこが見えなかった。

「すっごい花。ひろこ、いる?」
「来てくれたのー?」

初回らしく楽屋には埋め尽くすほどの花がたくさん届いていた。
贈り主を見るとキルズアウトの花もあった。しかも俊は個人でも送っていた。個人名の花は白い大きなバラだった。
CMスポンサー、前に音楽番組の司会をやっていただけにありとあらゆるアーティストから届いていた。その中にはなんらひろこと接点のなさそうな俳優や今をときめくIT社長の名前の入ったものもあった。

「春もお花ありがとう!SOULのお花1番目立つところに遊井さん飾ってくれたよ」

赤いバラを指差してるようだが、植物の隙間からひろこの服がチラッと見えるだけで顔が見えない。

「ひろこ、花が多すぎてそっち行けないんだけど」
「こっちこっち!あ、ここバラのトゲ気をつけて!」
「ひろこどこだー?」

割と広めの個人の楽屋で植物と植物の間からひろこの腕がチラチラと見えるがなかなか本人までたどり着けない。隙間から手を伸ばしたら手が触れた。

「捕まえた!」

「捕まっちゃったー!こっち、ここからくぐって」

伸びた枝をくぐり抜けて俺はひろこの横にたどり着いた。

「すごい。テーブルも花だらけじゃん」

畳のあがりの手前にテーブルが置いてあって、テーブルの上も所狭しと花が置いてあった。
俺はひろこのスカートを見て引っ張った。レースクイーンを彷彿するかのごとく確かに短かった。 

「短くない?」

ひろこは気にならないようで何も言わなかった。 

「仕事先で会うって新鮮だね」
「そうだね。」

ひろこの肩にも葉がついていて俺はそれを取ってあげた。

「すぐ帰るの?」
「ラジオ収録あるから帰るよ。だからあんまりいられないんだ。顔見に来ただけ」

植物に囲まれた狭いスペースで頭を撫でてそっとひろこの唇を触った。

「口紅つくよ」

唇を手で拭った。

「いいよ」

ゆっくりキスをした。
両手で抱き寄せたらもっとキスしたくなった。
植物が肘にまとわりついてくるのが邪魔でよけるようにひろこを畳の上に座らせた。

「ねぇ、これゴツゴツして痛いよ」

ひろこが俺の腕のゴツいバングルを触った。衣装だったのに返却を忘れていた事に気づいたけど、俺はとっさに外してひろこにつけていた。

キスした反動でひろこは畳の上に倒れこんだ。


俊がまだひろこを好き。
中山くんもひろこを狙ってる。

また追加された敵に焦りたくもないのに焦りが湧いてきた。
ひろこが誰かに取られたら。

無意識だった。
ひろこの短いスカートの中に手を入れて身体の中に指を入れていた。
入れた瞬間ひろこがビクッとなったのが分かった。

「あ、遊井さん、きちゃう。」

吐息まじりの声が聞こえる。
そのまま胸元のボタンを外していた。

「・・あっ」

楽屋でするなんて考えられなかった。でも止まらなかった。

さっきまでのひろこに好意を持つ男達への不満が独占欲に繋がって理性じゃ抑えきれずになっているのは分かっていた。

今すぐひろこを抱きたいって思った。
また心がコントロールできなくなっていく。


ブラの中に手を入れ、首にキスをした。

「はる、やっ あんっ」

ブラをずらした状態で乳首を吸った。

「やっ やめ・・」

ひろこの子宮あたりで指を動かした。

「あっ」


ピリリリリリリリ

携帯が鳴った。
電話もでずに胸に愛撫してるとまた電話が鳴った。

ピリリリリリリリピリリリリリリリ

「ねぇ、出て」

俺は手を離した。
声がでない。
少し我に返って重い手で電話に出た。

『春!!どこにいるんだ!!衣装さんがバングル返せって!早く戻るんだ!もうみんな待ってるぞ!!』

「ごめん。買い取るから。請求書送ってもらって」

呼吸を整えていつもの調子で言った。


『ひとまずどこにいるんだ!!みんな待っ』

アッキーの血相が変わってる予感がして、まだ言いたい事はあったっぽいけど俺はぷつりと電話を切った。


「このバングル買い取るの?」

起き上がって俺の顔を見つめた。

「あげる。ごめん。もう行くよ。まだ行きたくないけど」

ひろこの服の乱れをゆっくり直してボタンをひとつずつ止めた。

やけに脱力してる自分がいた。

「夜、遅くなるけど行くよ。」

首にキスをするとひろこは俺を見つめて色っぽい顔をした。


あの時、アッキーから電話がなかったら。

俺はひろこを犯すも同然に楽屋でやってたんだろうと思った。
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