俺のカノジョに手をだすな!

みのりみの

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不安

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新幹線の2時間ちょっとの中で俺は何を考えていたんだろう。

ひろこが俊にもうなびいてたら。
ひろこが俺に嘘ついて二股かけてたら。

不安の中にさっきのピンクの衣装をまとったふわふわした踊るひろこが脳裏をよぎる。

ひろこは俺の事をどう思っているのだろう。
そもそも俺が勝手に一目惚れして大阪でひろこを無理矢理ホテルに連れ込んだのがきっかけだ。

無理矢理言わせた事はあったけど、ひろこ自ら俺の事が好きという言葉は聞いた事がない。
もしかしたらひろこはすごくいい奴で誰に言い寄られても断れない人間なんじゃないか。
そこまで俺は考えた。
考えるともっと深く深く考えすぎてきりがなかった。

俺の不安をよそに新幹線は大阪に着いた。サラリーマンと酔っ払いがごった返す平日終電間近の新大阪駅の改札を降りるとひろこが待っていた。

俺を見ると笑って手を振る姿。
マスクもしていない。
初めて見る黒いワンピース。頭は仕事帰りのお団子頭でもその格好は妙に都会チックでやたらと大人びていてまわりの人達からしてみたらとびきり人目をひいて芸能人丸出しだった。

俺は会うなり自分のマスクを外してひろこにつけた。

「わ、何?大丈夫だよ。まだ有名じゃないから」

マスク越しにひろこは言うがマスクしろ!って説教の前に目がイルカの目をして笑っていた。

久々会えて気持ちが高まりひろこにマスク云々説教どころか今すぐ抱きしめたいくらいの気持ちが先行した。

マスクを外したせいもあり無意識に俺はキャップのつばを深く下げていた。
視界を狭くさせてもひろこばかり見ている。

「この時間、酔っ払いか疲れたサラリーマンしかいないよ」

ひろこは俺の仕草を見てなんとなく俺を安心させたかったのか、そう言うと俺はひろこの手を繋いで歩き出した。

「お腹すいたよ」
「俺も。なんか食べてから帰ろうか」
「今日、本当はスタッフ達に焼肉誘われてたのに断ったから焼肉がいい!」
「ひろこも?奇遇だね。俺も社長との焼肉断ったんだ」 

タクシー乗り場に向かうと目の前のビルの上にSOULのニューシングルの看板が目に入った。看板は俺達4人が4分割されてそれぞれの枠にクールな顔でダークな色合いで写っている。

「かっこいいじゃん」

ひろこが横から看板を見つめて俺に言った。俺はぼんやりとその看板を見つめていた。まるで自分ではないみたいだった。

「俺、いつもあんな顔してる?あーゆうの見ても、自分だと思えないんだよなぁ」

「春も?私も自分の写真見てそう思うよ。グラビアとか写り良すぎって思う。」

「ひろこはそのまんまだよ」

「そおかな?」

「だから、グラビアなんて見ると、」

「何?」

俺はひろこを見つめて肩に手を回した。嫉妬心剥き出しだったと思う。

「・・写真そのまんまだから、グラビアは特に世間にはみてもらいたくないなーって」

「そんな事考えてるの?」


2人で体を寄せ合って繁華街から少し離れた郊外にある焼肉店へタクシーで行った。以前ツアーの打ち上げ初日にみんなで行った高級焼肉店で個室で美味しいところだよ、とひろこに言ったら大阪放送社長やひろこの事務所の社長とも行った事があるという。
業界人は結局みんな使う店が同じで笑った。

「上カルビと上タンと上ロース2人分ください」
「はい。」
「飲み物は、生。ひろこは?」
「あたしも生ください。」
「あと上タン塩と、」


「春は上ばっかりだね。」

店員が注文を取って部屋からいなくなるとひろこはメニューを見ていたかと思ったら俺を除きこんだ。

「ひろこと食べるんだから、美味しいもの食べさせてあげたいじゃん。特上にしたいけどこの店は特上がないんだね。」

俺はキャップを外してひろこの頬杖をつく手をとってテーブルに重ねた。重ねた腕にはお揃いの時計が照明でキラキラと光った。
その輝く2つの時計を見つめていた。

「大阪に鶴橋って韓国街があるんだって。行った事ないけどそこも焼肉が有名みたい。生粋の韓国街で日本人もいないんだって」 
「へーじゃあ逆にマスクしないで歩けるだろうな」

店員が次々と運んで来て2人で肉を焼いた。

お団子頭から少し垂れる後れ毛がやたらと今日は色っぽくて無邪気に食べるひろこにもう何も言えなかった。

本当に好きで好きでしょうがなかった。
いっそ二股でもいいから俺のそばから離れてもらいたくなくて。



「さっぱりした。」

ひろこが風呂から出てくると濡れた髪をタオルで拭いていた。ドライヤーを持ってきて髪を乾かしてあげた。

「いい香りがする。」

「春も同じ香りがするハズだよ。同じシャンプーとリンス使ってるんだもん。マンゴーネクターの香り」

ひろこの髪がまだ半乾きの時にはもう気持ちが止まらなくて後ろから抱きしめていた。

ひろこは俺の彼女なんだ。


「どうしたの?」

ひろこが振り返った時にはもうキスしていた。
何回キスしたか分からなかった。
長い長いキスにそれでも足りなくて。


「・・エッチなこと、したいんでしょ」

キスをやめると俺の目を見て言った。

「エッチなこと?したいよ」

キャミソールをずらして胸にキスをした。
ひろこの肌がいつもよりしなっとしていて吸い付くようだった。

「ん」

首にキスをした時、思い切り音を立てて吸い付いた。
アザよりひどいものができるんじゃないか、というくらい吸い付いた。
うっすら赤くなる跡はまるで自分の名前でも貼り付けてるかのような気分になった。

「・・吸い過ぎ。ちょっと、痛い」

「ごめん。嫌?」

「・・嫌じゃないよ。」

色っぽい顔をするひろこにドキッとした。

なんでこんなに、どんどん好きになるんだろう。なんでなんだろう。

ひろこの身体に入るといつもより体温が高い気がするほど身体は火照っているのに気がついた。

「全部、入れて」

吐息混じりのひろこの声にもっとしたくなる。

「全部、入っちゃった」

ひろこの子宮にあたるこの感覚。
身体がビクッと反応するかのように感じていた。

「あ・・」

「たくさん動かしていい?」


荒くなる息使いに感じる声が部屋に響いた。

今日セックスして子供ができればひろこは俺から離れていかない。

ふとそんな事まで考えた。
俺はどこまでひろこを独占したいのだろう。 セックスだってしてるのに、身体だって知ってるし、いつもキスしてるし手も肩も腰も触れているのに。


「すごい濡れてるよ」

ひろこの中はぐちゃぐちゃになるくらい濡れていた。
俺に感じて濡れてるんだと思うと余計に興奮して揺れるひろこの身体を見た。

もっと気持ち良くなったらどうなるんだろうと思いながら、子宮近く、奥の方を突いた。
背中に立てる爪が引っ掻くように俺を傷つけていたけど、俺の感覚は全くなかった。


中で出したい。

ひろこの身体の奥で全部出したい。

あの、ハワイの時のような自分よがりな気持ちが湧き上がってきた。


「はる、」

荒い呼吸の中、俺を見つめて抱きしめた。
ひろこの肌がやっぱり吸い付くかのようにしなっとしてる。

「・・なに?」

「今日、排卵日、、」

呼吸を整えながら、虚な目で俺を見た。

「中で、出しちゃダメだよ」




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