スル気はないけどスキなんです

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　うちは業務用機器の販売店をしていて私もお父さんの跡を継ぐつもりでいる。それで工業高校に進学しようとしたら、専門的なことは家で勉強できるから共学の普通科に行って欲しいと両親に言われた。

　今日はお父さんと一緒に、改装するお店の下見に行く。同じクラスの家のケーキ屋さんがカフェにジョブチェンジするんだって。
　おじさんの許可を貰ったから私も勉強として参加できることになった。しかも今日は定休日だから一日空いてるのに、私の学校が終わるのに時間を合わせてくれた。

　設計をするのはおじさんのお姉さんの旦那さんで、そっちも娘さんを見習いとして連れて来ていた。建築学科に通ってるって言うから理系でキャリアウーマンっぽい人を想像してたら全然違った。

　背は150センチの私よりちょっと高いくらい。程よい脂肪と落ち着いた表情、インナーマッスルによる安定した姿勢。

　お姉さんは私にお辞儀をした。
「初めまして。平林ひらばやし愛理あいりです」
　『り』はどんな字か分からないけど『あい』は『愛』だよね。なるほど愛らしいというか、愛情深そうなお姉さん。

　なんだかジャージでいる自分が急に恥ずかしくなった。
「こんな格好ですみません。学校から直接来たので」
　愛理あいりさんが笑顔で首を振りながら優しく見つめて来る。

　少しの間のあと、お父さんに「名前」って言われて我に返った。あ、なんで見つめ合ってるんだろうって思ってたら私が名乗るのを待っててくれたんだ。

「安達小夏です。よろしくお願いします」
　お辞儀しながら出した私の右手を愛理あいりさんが両手で包んでくれた。
　しっかりと握りつつも私の腕を動かさない。良い仕事をしてるのは屈筋群くっきんぐんでしょうか、上腕筋じょうわんきんでしょうか。愛理あいりさんのお人柄のなせるわざでしょうか。