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30.ミッションスタート!
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土曜日の午後。
砂場で遊ぶ子供を、母親が微笑みながら見ていた。子供の楽しそうにはしゃぐ声が、和哉と母子以外に誰もいない公園に響いている。
長閑で平和な光景だった。できれば、このまま今日一日が終わってくれればいいのだが、それは叶わぬ願いだ。
ため息が出た。
沙耶が公園にやってきた。ベージュのワンピースに白のカーデガンを羽織っている。可愛いお嬢様といった感じだ。あくまで、見た目だけの話だが。
「何?」
沙耶が不愉快そうに和哉を見た。こんにちわと言え、とは言わないが、今日初めて顔を合わせたクラスメートに他に言う言葉はないのか。
「何もねえよ」
「目がいやらしいわよ」
大きなお世話だ。
沙耶が一人分空けてベンチに座った。
「公園で待ち合わせとは、デートみたいだな」
「気持ち悪いこと言わないで」
「へいへい」
「用意はできているの?」
「万全だよ」
「じゃあ、いきましょう」
世間話一つせずに沙耶がベンチから腰を上げた。
和哉の自宅まではすぐだった。隣の奈緒の家に寄って、インターフォンで彼女を呼び出した。
「ちょっと待って」
インターフォンから彼女の澄んだ声が聞こえてきた。ガレージに車がなかった。早朝に奈緒の両親が車で出ていく様子は、外から聞こえていた。
奈緒が玄関から出てきた。こちらは白のワンピースにピンクのカーデガンだ。清楚ないでたちだが、顔色が悪い。
「大丈夫か? 何かにとり憑かれているような顔をしているぞ」
「ほっといて」
「眠れなかったのか?」
彼女は何も答えなかった。
三人で隣の和哉の家に向かう。和哉が玄関のドアを開けて、二人を中に入れた。
「入っていいぞ」
沙耶が、玄関から家の中を珍しそうに見ている。彼女の大豪邸に比べたら犬小屋のような家だが、日本のごく平均的な住居のはずだ。
「おじゃまします」
奈緒が緊張した顔で靴を脱いだ。
「靴を脱ぐの?」と沙耶。
「当たり前だ」
玄関を上がり、二階の自室に行こうとすると、奈緒が「おばさんに挨拶しないと」といってリビングのほうを見ている。奈緒がこの家に入るのは、小学校の低学年以来だろう。
リビングのドアを開けると、母と桃香が二人でショートケーキを食べていた。
「あら、奈緒ちゃん?」
奈緒を認めた母が軽く微笑み、後ろに立っている沙耶を見て目を丸くした。桃香が二人を見て固まっている。
「こいつ、隣のクラスの蛇尾さん」
お邪魔します。沙耶がいかにも育ちのいいお嬢様然とした澄んだ声で、挨拶をした。
「どうしたの?」
「ちょっとした用で、俺の部屋のパソコンを使うことになったんだ」
「突然押しかけてしまってすみません」沙耶が母と桃香を見て微笑んだ。和哉には決して見せない笑顔。こいつが笑っているのを見るのは、初めてかもしれない。
「用が終わればすぐに帰りますから」
「いいのよ、ゆっくりしていって」
沙耶は最後に母に頭を下げ、リビングに背を向けた。
「さあ、早く準備を済ませましょう」
いつものポーカーフェイスに戻った沙耶が、案内もなしに勝手に人の家の二階に上がっていく。奈緒が桃香に、後で話そうねといって笑っている。奈緒と桃香は、近所のスーパーで顔を合わせると言葉を交わす仲だ。
「適当に座ってくれ」
部屋に入ると二台のノートパソコンのスイッチを入れた。
「可愛い妹ね」
「そうだろ」といって沙耶を見たが、彼女がこちらを睨んでいる。
「何だよ」
「小島くんが手を出しそうになるのもわかるわ」
「あのなあ。桃香は妹だぞ」
「桃ちゃん、本当にきれいになったわよね」
奈緒がしみじみという。
「だろ?」
「でも、GPSは駄目じゃん」
「そうよ、変態の所業だわ」
これ以上この話を続ければ面倒なことになりそうだったので、無視してパソコンを二台ともテーブルの上に置いた。
その場に和哉や沙耶が一緒にいれば、美登里は逃げ出してしまうかもしれない。だから、奈緒が一人で美登里に対応する。その代わり、カメラを奈緒の家の中に設置して和哉と沙耶は美登里とのやりとりをこの部屋で見守る。もし美登里の仲間が乗り込んできたりやばいことになりそうになったら、和哉と沙耶が乗り込む。二人にそう簡単に説明した。
「パソコンはカメラのモニターになるんだ」
テーブルの上に超小型カメラを置いた。庭に出没するイタチを撮影したカメラだ。電波の受信距離は五十メートル。隣の奈緒の家からなら、どこにセットしてもここまで電波は届く。
「こんな小さなカメラではっきり映るの?」
「現代のテクノロジーを甘く見るんじゃねえよ」
カメラを小型バッテリーにつなぎ、部屋の隅のクローゼットの上に置いた。パソコンの液晶画面に、和哉の部屋が映し出されている。カメラを見ている奈緒と沙耶がはっきり映っている。
「小型マイクも内蔵されているんだ。パソコンに録音録画もできるんだぜ」
そういって二人を見た。二人の顔色が変わっている。奈緒が敵意に満ちた目で和哉を睨んでいた。
「どうした?」
「そのカメラで桃ちゃんの着替えやお風呂を盗撮しているんじゃないでしょうね?」
「はあ?」
力のこもった目が四つ、こちらを睨んでいる。
「お、俺って、そんな疑われ方されんの?」
「私も同じことを考えていたわ」と沙耶。「超小型カメラを持った小島くんなんて、核を持つ北朝鮮より危険だわ」
おまえ、北朝鮮好きだなあ!
「今から調べるわ」沙耶がパソコンのハードディスクのファイルを調べ始めた。奈緒が急に下を向いた。
「妹を盗撮なんて、するわけないだろ」
「他にも日本の法律に触れるものがあるかもしれないわ」
「言っておくが、おまえが期待しているようなものは入っていないぞ」
「私が何を期待していると思ってるの?」
「エロいやつだよ」
「そんなもの、保存してるの?」と奈緒。
「だから、ないって」
本気で疑っているのか、二台のパソコンのハードディスクを沙耶が手際よく調べた。意外と、パソコンには詳しそうだ。
「ないわ。そんなはずないんだけど。どこかに隠したのね」
この女は俺の言うことなど、微塵も信じる気はないようだ。
「妹さんの部屋は?」沙耶が、和哉ではなく奈緒を見た。
「たぶん、廊下の突き当りよ」
「行きましょう」といって、沙耶が立ち上がった。
「何をする気なんだ?」
「妹さんの部屋を調べるのよ。妹さんの着替えを盗撮するために、部屋にカメラを仕掛けているに決まってるわ。どこかにカメラがあるはずよ」
「なにいってんだよ、いいかげんにしろよ」
「そうよね、調べなきゃ」奈緒も立ち上がった。完全に和哉のことを犯罪者扱いしている。
あなたはここにいなさい。沙耶はそういい残すと、奈緒の手をとって二人で部屋を出て行った。
桃香の部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。ドアが開き、二人が桃香の部屋に入っていく気配が伝わってきた。
もう、抗う気も失せていた。兄貴がカメラを仕掛けて妹の着替えを盗み撮りしているかも、などと言われたら、桃香は二度と口をきいてくれなくなるだろう。
まあ、そのときはそのときだ。
部屋に寝転んで二人を待った。笑い声が聞こえてきた。三人の若い女の笑い声。あの沙耶も笑っている。まったく、あの二人はここに何をしに来たのか。
しかし、奈緒の気が少しでも晴れるなら、少々のことは我慢してやるか。
桃香の部屋のドアが開く音、廊下を歩く足音、和哉の部屋のドアが開いた。
「どこにもカメラなんてなかったわ」奈緒が言った。
「あたりまえだ」
「目的の映像を撮ったら速やかにカメラを回収して証拠を消し去る。さすがは小島くん、ぬかりないわね」
「そんな褒め言葉、嬉しくないんですけど」
足を抱えて座った。ため息が何度も出てくる。
「この程度のことで落ち込んでいるようじゃ、この先の試練を乗り切ることはできないわよ」
おまえはこの先、俺にどんな試練を与えるつもりなんだ!
「とにかく、カメラの性能はわかったわ。それで、どうするの?」
「美登里が来たら、リビングに招き入れてくれ」
奈緒が緊張しているのがわかる。
「そう固くなるな。おまえの部屋の様子はここでずっと見ていてやるから」
奈緒が弱々しく頷いた。
三人で和哉の家を出て、隣の奈緒に家に向かった。彼女の両親は旅行に出ているので、家は無人だった。奈緒の家に入るのも、小学校以来だ。当時の室内のレイアウトを微かに覚えている。あまり変わっていない。
リビングの天井とキャビネットの上に二箇所、カメラをセットした。
「大丈夫かな」
奈緒の声が震えている。
「美登里が怖いのか?」
「わからない。でも、これから会うのは、私の知っている美登里じゃないんでしょ?」
お前はもう、美登里の正体を知っている。そう言おうとしたが、いえなかった。
「昨日、朱里と理事長の元を訪ねたの。朱里が、あの施設が少女売春に関わっているって言いだしたから」
「本当か?」
沙耶も驚いた顔をしている。
「もう、なんかむちゃくちゃ。気がおかしくなりそうだよ」
奈緒が顔を伏せて、震える声で言った。
砂場で遊ぶ子供を、母親が微笑みながら見ていた。子供の楽しそうにはしゃぐ声が、和哉と母子以外に誰もいない公園に響いている。
長閑で平和な光景だった。できれば、このまま今日一日が終わってくれればいいのだが、それは叶わぬ願いだ。
ため息が出た。
沙耶が公園にやってきた。ベージュのワンピースに白のカーデガンを羽織っている。可愛いお嬢様といった感じだ。あくまで、見た目だけの話だが。
「何?」
沙耶が不愉快そうに和哉を見た。こんにちわと言え、とは言わないが、今日初めて顔を合わせたクラスメートに他に言う言葉はないのか。
「何もねえよ」
「目がいやらしいわよ」
大きなお世話だ。
沙耶が一人分空けてベンチに座った。
「公園で待ち合わせとは、デートみたいだな」
「気持ち悪いこと言わないで」
「へいへい」
「用意はできているの?」
「万全だよ」
「じゃあ、いきましょう」
世間話一つせずに沙耶がベンチから腰を上げた。
和哉の自宅まではすぐだった。隣の奈緒の家に寄って、インターフォンで彼女を呼び出した。
「ちょっと待って」
インターフォンから彼女の澄んだ声が聞こえてきた。ガレージに車がなかった。早朝に奈緒の両親が車で出ていく様子は、外から聞こえていた。
奈緒が玄関から出てきた。こちらは白のワンピースにピンクのカーデガンだ。清楚ないでたちだが、顔色が悪い。
「大丈夫か? 何かにとり憑かれているような顔をしているぞ」
「ほっといて」
「眠れなかったのか?」
彼女は何も答えなかった。
三人で隣の和哉の家に向かう。和哉が玄関のドアを開けて、二人を中に入れた。
「入っていいぞ」
沙耶が、玄関から家の中を珍しそうに見ている。彼女の大豪邸に比べたら犬小屋のような家だが、日本のごく平均的な住居のはずだ。
「おじゃまします」
奈緒が緊張した顔で靴を脱いだ。
「靴を脱ぐの?」と沙耶。
「当たり前だ」
玄関を上がり、二階の自室に行こうとすると、奈緒が「おばさんに挨拶しないと」といってリビングのほうを見ている。奈緒がこの家に入るのは、小学校の低学年以来だろう。
リビングのドアを開けると、母と桃香が二人でショートケーキを食べていた。
「あら、奈緒ちゃん?」
奈緒を認めた母が軽く微笑み、後ろに立っている沙耶を見て目を丸くした。桃香が二人を見て固まっている。
「こいつ、隣のクラスの蛇尾さん」
お邪魔します。沙耶がいかにも育ちのいいお嬢様然とした澄んだ声で、挨拶をした。
「どうしたの?」
「ちょっとした用で、俺の部屋のパソコンを使うことになったんだ」
「突然押しかけてしまってすみません」沙耶が母と桃香を見て微笑んだ。和哉には決して見せない笑顔。こいつが笑っているのを見るのは、初めてかもしれない。
「用が終わればすぐに帰りますから」
「いいのよ、ゆっくりしていって」
沙耶は最後に母に頭を下げ、リビングに背を向けた。
「さあ、早く準備を済ませましょう」
いつものポーカーフェイスに戻った沙耶が、案内もなしに勝手に人の家の二階に上がっていく。奈緒が桃香に、後で話そうねといって笑っている。奈緒と桃香は、近所のスーパーで顔を合わせると言葉を交わす仲だ。
「適当に座ってくれ」
部屋に入ると二台のノートパソコンのスイッチを入れた。
「可愛い妹ね」
「そうだろ」といって沙耶を見たが、彼女がこちらを睨んでいる。
「何だよ」
「小島くんが手を出しそうになるのもわかるわ」
「あのなあ。桃香は妹だぞ」
「桃ちゃん、本当にきれいになったわよね」
奈緒がしみじみという。
「だろ?」
「でも、GPSは駄目じゃん」
「そうよ、変態の所業だわ」
これ以上この話を続ければ面倒なことになりそうだったので、無視してパソコンを二台ともテーブルの上に置いた。
その場に和哉や沙耶が一緒にいれば、美登里は逃げ出してしまうかもしれない。だから、奈緒が一人で美登里に対応する。その代わり、カメラを奈緒の家の中に設置して和哉と沙耶は美登里とのやりとりをこの部屋で見守る。もし美登里の仲間が乗り込んできたりやばいことになりそうになったら、和哉と沙耶が乗り込む。二人にそう簡単に説明した。
「パソコンはカメラのモニターになるんだ」
テーブルの上に超小型カメラを置いた。庭に出没するイタチを撮影したカメラだ。電波の受信距離は五十メートル。隣の奈緒の家からなら、どこにセットしてもここまで電波は届く。
「こんな小さなカメラではっきり映るの?」
「現代のテクノロジーを甘く見るんじゃねえよ」
カメラを小型バッテリーにつなぎ、部屋の隅のクローゼットの上に置いた。パソコンの液晶画面に、和哉の部屋が映し出されている。カメラを見ている奈緒と沙耶がはっきり映っている。
「小型マイクも内蔵されているんだ。パソコンに録音録画もできるんだぜ」
そういって二人を見た。二人の顔色が変わっている。奈緒が敵意に満ちた目で和哉を睨んでいた。
「どうした?」
「そのカメラで桃ちゃんの着替えやお風呂を盗撮しているんじゃないでしょうね?」
「はあ?」
力のこもった目が四つ、こちらを睨んでいる。
「お、俺って、そんな疑われ方されんの?」
「私も同じことを考えていたわ」と沙耶。「超小型カメラを持った小島くんなんて、核を持つ北朝鮮より危険だわ」
おまえ、北朝鮮好きだなあ!
「今から調べるわ」沙耶がパソコンのハードディスクのファイルを調べ始めた。奈緒が急に下を向いた。
「妹を盗撮なんて、するわけないだろ」
「他にも日本の法律に触れるものがあるかもしれないわ」
「言っておくが、おまえが期待しているようなものは入っていないぞ」
「私が何を期待していると思ってるの?」
「エロいやつだよ」
「そんなもの、保存してるの?」と奈緒。
「だから、ないって」
本気で疑っているのか、二台のパソコンのハードディスクを沙耶が手際よく調べた。意外と、パソコンには詳しそうだ。
「ないわ。そんなはずないんだけど。どこかに隠したのね」
この女は俺の言うことなど、微塵も信じる気はないようだ。
「妹さんの部屋は?」沙耶が、和哉ではなく奈緒を見た。
「たぶん、廊下の突き当りよ」
「行きましょう」といって、沙耶が立ち上がった。
「何をする気なんだ?」
「妹さんの部屋を調べるのよ。妹さんの着替えを盗撮するために、部屋にカメラを仕掛けているに決まってるわ。どこかにカメラがあるはずよ」
「なにいってんだよ、いいかげんにしろよ」
「そうよね、調べなきゃ」奈緒も立ち上がった。完全に和哉のことを犯罪者扱いしている。
あなたはここにいなさい。沙耶はそういい残すと、奈緒の手をとって二人で部屋を出て行った。
桃香の部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。ドアが開き、二人が桃香の部屋に入っていく気配が伝わってきた。
もう、抗う気も失せていた。兄貴がカメラを仕掛けて妹の着替えを盗み撮りしているかも、などと言われたら、桃香は二度と口をきいてくれなくなるだろう。
まあ、そのときはそのときだ。
部屋に寝転んで二人を待った。笑い声が聞こえてきた。三人の若い女の笑い声。あの沙耶も笑っている。まったく、あの二人はここに何をしに来たのか。
しかし、奈緒の気が少しでも晴れるなら、少々のことは我慢してやるか。
桃香の部屋のドアが開く音、廊下を歩く足音、和哉の部屋のドアが開いた。
「どこにもカメラなんてなかったわ」奈緒が言った。
「あたりまえだ」
「目的の映像を撮ったら速やかにカメラを回収して証拠を消し去る。さすがは小島くん、ぬかりないわね」
「そんな褒め言葉、嬉しくないんですけど」
足を抱えて座った。ため息が何度も出てくる。
「この程度のことで落ち込んでいるようじゃ、この先の試練を乗り切ることはできないわよ」
おまえはこの先、俺にどんな試練を与えるつもりなんだ!
「とにかく、カメラの性能はわかったわ。それで、どうするの?」
「美登里が来たら、リビングに招き入れてくれ」
奈緒が緊張しているのがわかる。
「そう固くなるな。おまえの部屋の様子はここでずっと見ていてやるから」
奈緒が弱々しく頷いた。
三人で和哉の家を出て、隣の奈緒に家に向かった。彼女の両親は旅行に出ているので、家は無人だった。奈緒の家に入るのも、小学校以来だ。当時の室内のレイアウトを微かに覚えている。あまり変わっていない。
リビングの天井とキャビネットの上に二箇所、カメラをセットした。
「大丈夫かな」
奈緒の声が震えている。
「美登里が怖いのか?」
「わからない。でも、これから会うのは、私の知っている美登里じゃないんでしょ?」
お前はもう、美登里の正体を知っている。そう言おうとしたが、いえなかった。
「昨日、朱里と理事長の元を訪ねたの。朱里が、あの施設が少女売春に関わっているって言いだしたから」
「本当か?」
沙耶も驚いた顔をしている。
「もう、なんかむちゃくちゃ。気がおかしくなりそうだよ」
奈緒が顔を伏せて、震える声で言った。
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