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第五章
Blanc de Blancs(7)
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プライベートでは優しい顔をローランもオフィスでは厳しい上司としてしかルネに接してこない。それに、仕事を離れても相変わらず多忙な日々が続いているようで、試しにルネがデートに誘ってみても、すまなげな顔をして断わられてしまった。
アカデミー・グルマンディーズの活動には、ローランは直接関わっていないはずだから、爆弾事件以来表向きはおとなしいソロモン派への対策のためだろうか。
ガブリエルが巻き込まれかけたその事件について、警察の捜査がどこまで進んでいるのかルネは知らないが、ソロモンはもちろん関与を否定している。最後までしらを切り通して、今度も逃げ切るつもりなのだろう。
アカデミーに招かれた、シェフ・オベールは、ガブリエルの庇護のもと厳重に守られており、仮にソロモン派がシェフに何かしようとしても今回ばかりは不可能だ。
(そうすると、ソロモン派の人間達はどう動くんだろう…? このまま、ガブリエルが定例会を成功させて、アカデミー・グルマンディーズの指導者として承認されるのをただ見ているだけってことはないんじゃないかな)
本来なら全く関心などないだろう、やんごとない人々の権力争いの行方にルネが神経を傾けるのも、その渦中にローランがいるがゆえだ。
(もしもまたガブリエルが狙われるようなことがあったら、ローランは許さないだろう。ガブリエルは命がけで守るといつも言っている人だもの、自分の身は顧みず、危険なことにでも平気で手を出しそうだ。もし、それでローラン自身が怪我でもしたら…)
縁起でもない想像をしてしまったルネは、ぞっとしたように身をすくめ、ふるふると頭を振った。
(ううん、ローランが危ない目にあわないようにするのが僕の役目だ。片時も離れず、彼の行く所ならばどこでも付き従って、いざとなれば僕が守る…)
恋の成就のためにはマイナス要因にしかならないとずっと思いこんでいた武道の才だが、ようやっと、それに対してルネは肯定的に考えられるようになってきていた。
そうして、ふと、ガブリエルのために全てを投げ打って、ルレ・ロスコーにやって来た経緯を話してくれた時のローランの晴れやかな顔を思い出した。
(ガブリエルに必要されている…そのことだけで、ローランはあんなに満ち足りた顔になれるんだ。僕もいつか…おまえが必要だとローランに言ってもらえるだろうか。あの人を支えられるのは僕だけなんだと確信できたなら、ローランの目が他に向いていても不安にはならないし、どんなにか僕は幸せだろう)
ローランの前ではひたすら猫を被り続けているルネにとって、今の所、それは、いつかこうなりたいという願望に過ぎない。
それでも、自分が何を望んでいるのかはっきり気がついた今、それは少しの努力を払えば実現可能な夢に思われた。
そんな訳で、ローランに半ば忘れられたような日々が過ぎても、ルネは割合落ち着いていた。
いずれローランが自分を思い出すことは分かっていた。
だから、ローランから声をかけられた時、それが予想外に早かったことと、その内容が今の時期にそぐわなかったことにむしろ戸惑いを覚えたのだ。
「は…? オペラ、ですか?」
「そうだ。今まで見に行ったことはあるのかと、俺はおまえに聞いたんだ」
その日は朝からずっと難しい顔で何かを考え込んでいて、ルネが話しかけても心ここにあらずのローランだったのに、夕方遅く、副社長室にコーヒーを運んでいくといきなり、そんな話をし始めた。
「あ…はい、学生の頃、一、二度…演目は、ちょっと忘れましたが…」
シーズン真っ最中のオペラの話などを振ってくるローランの意図が読めず、ルネは戸惑うばかり。友達に誘われて安い立ち見席で見ただけで、別にオペラもバレエも好きな訳ではなく、内容を必死に思い出そうとしているうちに、ローランは更に続けた。
「急な話なんだが、明日の夜オペラ・ガルニエで上演される『ラインの黄金』のチケットが二枚俺の手元にある。ガブリエルのために数ヶ月前からバルコニー席を予約していたんだが、定例会が間近なこともあり、あいつはやはり都合が悪くなって行けなくなった。せっかくだから、おまえの予定が何もなければ、一緒に…と思ったんだ」
「デート…に誘ってくれているんですか…?」
ルネは目をぱちぱちさせて、信じられないように聞き返した。平時であれば喜んで飛び付く申し出だが、何となく引っかかったため、即座に応えられなかった。
「まぁ、そういうことだな…オペラは好きじゃないとか、ガブリエルの代わりというのが気になるのなら、無理に誘わないが…?」
「もう、意地悪を言わないでくださいよ、ローラン…あなたのせっかく誘いを、僕が断わるはずがないじゃないですか」
ルネが素の表情に切り替わり、打ち解けた口調で返すのに、ローランも安堵したらしい、にっと笑って、ルネを自分の方に引き寄せた。
「だが、あまり嬉しそうな顔をしていないぞ?」
「嬉しいですよ…ただ、今この時期に、あなたが僕とのデートなんて思いついたことが意外だったんです。アカデミー・グルマンディーズの定例会は来週でしたよね。いいんですか、こんな大事な時期に、僕に構ったりして…?」
「俺は、別にアカデミーの人間という訳じゃないからな。ガブリエルの願いもあって、定例会の当日にはほとんど毎回駆けつけているが、その準備には全く関わっていない。別に、おまえのために時間を割けないほど忙しい訳ではないさ」
ルネはローランの頭にそっと手を添え、艶々した黒い髪を指先で優しく撫でつけながら、真率な口ぶりで言い募った。
「そうは言っても、ソロモン派の妨害がいつあるともしれませんし、せめて定例会が無事に終わるまでは、あなたは僕よりもムッシュ・ロスコーの傍にいたいんじゃないですか?」
どこかルネを困らせて楽しんでいるようだったローランの顔から、瞬間、全ての表情が消えた。
「ローラン、どうかしましたか? 僕、何かおかしなことを言ったでしょうか?」
不思議に思ってルネが問いかけると、ローランは我に返ったように瞬きをした。
「全く、ルネ、お前という奴は…」
ローランは愛しさと哀れみが綯い交ぜになったような、複雑な眼差しをルネに注いだ。
「自分よりもガブリエルの傍にいたんじゃないかなんて、わざわざ聞かなくてもいいだろうに…それで、もしも俺がそうだと言ったら、おまえ、どうするつもりだ? また、俺の身勝手を許して、好きにさせるのか…つくづく馬鹿な奴だな」
「自分でも損な性格だと思いますけど…僕のためにあなたに無理をさせるよりは、あなたの一番いいようにしてあげたいんだから、仕方ないですよ。あなただって、自分のことは後回しにして、いつもガブリエルを一番にして尽くしているでしょう? それと同じです」
「そう切り返してきたか…くそっ、参ったな」
ローランは、ふわりと微笑むルネから顔を背け、途方に暮れたように呟いた。
「しかし、おまえはもう少し自分本位になるべきだな、ルネ…そうしてくれた方がありがたい時だってある」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
困惑顔のローラン相手に嬉々と目を輝かせながら、ルネは言った。
「本当にあなたが無理をしているのでなければ…明日のオペラ鑑賞、僕は喜んでお供しますよ。別にデートじゃなくても、あなたの行く所なら、僕はどこでもついていきたいんですから…」
ローランの膝に半ば乗りかかって、甘えた口調で言いながら、ルネは、仏頂面のまま目を逸らしている彼の視線を捕えようとする。
(ずっとローランに寄り添っていれば、いつ何が起こっても、僕が守ることが出来るから、安心だもの)
頭の中でそんな計算を働かせているルネに、ふいに、ローランが問いかけた。
「ルネ、おまえ、そんなに俺が好きか?」
どことなく苛立たしげな光を潜めた緑の瞳に射すくめられて、ルネは身を強張らせた。
「ど…どうしたんですか、いきなり…?」
ローランは、戸惑うルネの顎に指をかけ、今にも唇が触れんばかりに顔を近づけてきた。
「俺を愛しているのか、どうなんだ?」
はぐらかすことなど許さないような性急な口調で追求されて、ルネは焦った。
「は、はい…あ…愛しています。無理矢理白状させなくったって、そんなこと、あなたが一番よく知っているでしょうに…」
最後の方の恨めしげな訴えは、覆いかぶさってきたローランの唇によって、強引に封じられた。
ローランの口調は不機嫌そうだったが、それとは裏腹に触れてくる唇は優しく、頬を撫でる大きな手は温かくて、ルネはほっとした。
(よかった…ローランはちょっと苛々しているようだけれど、僕に怒っている訳ではないみたいだ)
ルネの緊張がほどけたのを感じ取ったかのように、ローランは更に体を密着させてくる。
ふわりと、彼の愛用のコロンが香り立った。
(ああ、いい匂いだな…甘く、刺激的で、セクシーな…僕をいつもうっとりとさせる…大好きなローランの匂いだ)
ローランの体と触れ合っている所がじわりと熱を帯び、それが全身に広がっていくのをルネは意識した。
「ふ…ぅ…ひゃっ」
空気を求めて唇を離した瞬間、力の抜けた体が滑り落ちそうになり、ルネは慌ててローランの体にしがみついた。そんな彼の腰をローランの手がしっかりと支え、膝の上に座り直させる。
「気をつけろ」
ルネの額にくすぐるように唇で触れながら、ローランは低い声でたしなめた。
「はい…」
再びローランの唇が下りてくるのを認め、ルネは微かに赤みを帯びた唇を素直に開いて、それを迎えた。
(あ…まだ定時にもなっていないのに、オフィスでこんないちゃいちゃ、いいのかなぁ)
真面目な頭の片隅にそんな思いが一瞬過るも、ローランにキスをされれば、たちまち霧散した。
(ううん、そんなこと、どうでもいい…この人のキスが欲しい)
重なり合う唇と唇の合間で、舌が動いている。優しく歯列を割って口腔を嬲るローランの舌に、遠慮がちにルネは己の舌を絡めていく。
背中に回ったローランの腕に強く締め付けられて、のけぞったルネの喉が鳴った。
「ローラン…好き…大好き…」
キスの合間に掠れた声で囁くルネを更に追いつめるよう、ローランは執拗に問いかけてくる。
「ならば、ルネ…お前は、俺が望めば、どんなことでも出来るか…? おまえの気性におよそ合わないような…必要なら嘘をついたり、自分を信じる人間を騙したり裏切ったりすることも、俺のためなら仕方がないと簡単に割り切れるのか…?」
「え…?」
半ば心を蕩かされながらも、ローランが苦々しく漏らした言葉を聞き咎めたルネは、彼の腕を掴んでいた指先に力を込めて押し返した。
「ローラン、それ…どういう意味ですか…あっ…ん…」
ルネは鋭く追求しようとするが、首筋に回ったローランの唇に敏感な部分を甘噛みされ、また力が抜けそうになった。
「ロ、ローラン…ちょっと待って下さいってば…ひゃっ…」
何とか頭をしっかりさせようと懸命に努力しながら、ルネはローランの胸を叩いてみるが、その手には甘えているくらいの力しか入らず、彼の膝の上から転がり落ちないようにするだけで精いっぱいだった。
「俺は、大切なものを守るためなら、何だってやれてしまう男だ。俺とおまえは確かによく似ているが、決定的に違う部分があるとすれば、その一点に尽きるだろうな。潔癖なおまえに、俺のような狡い真似ができるか…?」
ローランは苦々しげに独りごちると、ルネの腰が弓なりになるほど一際強い力で抱きすくめ、それから、ふいに引き離した。
「ローラン…?」
息を弾ませ、潤んだ目で呆然とローランを見上げるルネの顔には、優しいかと思えば突然理解できない言動で自分を振り回す恋人に対する不安と疑念、与えられる快感にすっかり取り乱した自分を見られることの恥ずかしさや腹立たしさなど、せめぎ合うすべての感情が透けて見えるようだった。
「いや、おまえにはやはり無理だよ、ルネ」
やけに納得したように呟いて、ローランはよろよろと身を起こすルネから顔を背けた。
(な、何、今の…僕には無理とか、どういう意味…?)
ルネはローランに背を向け、服の乱れを震える手で直した。その耳に、ローランの小さな舌打ちが聞こえた。
「全く、何をやっているんだ、俺は…」
ルネはおずおずとローランの様子を窺った。
ローランは忌々しげに手で髪をかき回した後、所在なげに肩を落として佇んでいるルネの方に体を向けた。
「ルネ、今のはただの戯言だ。大した意味などないんだ…どうか忘れてくれ」
ルネが唇をきゅっと引き結んで黙っていると、ローランは椅子から立ち上がり、その俯いた頭に手を伸ばした。
「…怒っているのか?」
ルネは一瞬、その手を振り払ってやろうかと思った。しかし、迷っているうちに体ごと引き寄せられ、頭にこつんと押し付けられた彼の額を感じた。
「お前を混乱させて、すまない、ルネ…俺が今、腹がたって仕方ないのは自分に対してだ。それをお前にぶつけてしまうなんて、全くどうかしているな」
心底後悔したようなローランの声。
「あなたを苛立たせている原因は…僕ではないのですか…? 僕はあなたを愛していると口では言うけれど、態度では充分示すことが出来ていないから…」
ローランに伝えるべきことをまだ伝えられていない後ろめたさから、ルネはつい尋ねてみた。
「違う。それは違うぞ、ルネ、おまえが原因だなんて、馬鹿なことを考えるな」
ローランは一瞬瞠目した後、真顔になって否定した。
「でも…僕は…」
自信なげに瞳を揺らせるルネに、ローランは急いた口調で、畳みかけるように言い聞かせた。
「おまえが、俺を愛してくれていることはよく分かっている。そんなお前の心が、ブラン・ド・ブランのように混じりっ気のない純粋なものだということもな…俺はおまえを信じているから、心配するな」
「ジャック・セロスのブラン・ド・ブラン…僕のイメージだといつかあなたは言いましたね。でも僕は、あなたが思っているほど純真という訳ではないですよ」
ルネはローランの腕からそっと身を引き、切ない目をして微笑んだ。
それを見てローランは何か言いかけたが、結局諦めたように口をつぐんだ。
2人とも黙りこんでしまったため、部屋には束の間、張りつめたような静寂が下りた。
(どうしよう…気まずい雰囲気になっちゃった。どうにかして、この空気を和ませないと…)
うまい方法はないものかと探し求めるかのように、ルネは視線をさ迷わせ、ローランの後ろのある大きな窓の外を眺めやった。そろそろ街灯の灯りだした時刻、宵闇に沈みつつある見慣れた街並みがそこにある。
ローランに誘われてここで働き始めてまだ四カ月程度しか経っていないのだが、ずっと前からここにいるかのような錯覚さえ覚えさせられるほど、目に馴染んだ光景だ。
(最初はいつまで続けられるかどうか不安だった、ルレ・ロスコーでの仕事だけれど、いつの間にかすっかり慣れて、今ではここにいることが当たり前のように感じられるようになった。今更故郷に帰りたいとは思わない。そう、ローランがいる、このルレ・ロスコーが、僕の居場所なんだ…手放すことなんか、考えられない)
ルネがぼんやりと物思いにふけっている間、ローランは再び椅子に座りなおして、彼とは別の物思いにふけっていたようだ。
ふいに、目の前に置かれた、まだ手をつけていないコーヒー・カップに気付いて、彼は呟いた。
「せっかく、お前が淹れてくれたコーヒーがすっかり冷めてしまったな」
ルネは夢から覚めたかのように瞬きをし、自分をじっと見つめているローランを振り返った。
「新しいものに入れ直してきましょうか?」
ルネがいつもそうしているように、ごく自然に言葉は唇からこぼれた。
「いや、これでいい」
ローランは優しく目を細め、ルネが彼のために用意したコーヒーをゆっくりとうまそうに飲みほした。
こんな会話は2人にとってお馴染みのもの。こんな情景も、ルネがここで何度も見た覚えがあるものだった。
部屋の空気は、2人の心を反映して、いつのまにか凪いでいた。
「お願いがあります、ローラン」
椅子の背に泰然と身を持たせかけて自分を見守っているローランの前に立った時、ルネは普段通り落ち着いていた。
「あの…明日のデートの後、2人きりで話す時間をいただけませんか。あなたに、どうしても聞いてもらいたい話があるんです」
今まで頭の中で何度もシミュレーションしていたものの、なかなか切り出せなかった言葉なのに、案外簡単に口にすることが出来た。
ローランはその頼みをしばし吟味するかのように考え込んだ後、ルネの顔を正面から見据えて確認した。
「それは、今話した方がよくはないのか…?」
一瞬ルネは迷った。今なら冷静に自分の抱えた事情を説明し、これまでローランを騙していたことを謝れそうな気がしたが――。
「いえ…できれば、オフィスでするよりも、2人だけのプライベートな時間で話したい内容なので…」
「そうか」
ルネの意志が固いのを見て取ったのだろう、ローランはすぐに引き下がった。
「それでは、明日…楽しみにしていますね、ローラン」
ルネはにこりと笑って、腕を込んで物思わしげに黙りこんでいるローランの前から、空になったカップを引き上げ、部屋を出て行った。
ローランが胸の内は、ルネにとって、相も変わらず謎なままだ。
しかし、いずれにしろ明日、ルネがこれまでひた隠してきた秘密をぶつけてみた時のローランの反応を見れば、彼の自分に対する気持ちの程が分かるはずだ。
そればかりか、自分達がこれから先もずっとここで同じ時間を紡いでいけるか、それとも明日を最後に終わらせるしかないのかも、きっと――。
アカデミー・グルマンディーズの活動には、ローランは直接関わっていないはずだから、爆弾事件以来表向きはおとなしいソロモン派への対策のためだろうか。
ガブリエルが巻き込まれかけたその事件について、警察の捜査がどこまで進んでいるのかルネは知らないが、ソロモンはもちろん関与を否定している。最後までしらを切り通して、今度も逃げ切るつもりなのだろう。
アカデミーに招かれた、シェフ・オベールは、ガブリエルの庇護のもと厳重に守られており、仮にソロモン派がシェフに何かしようとしても今回ばかりは不可能だ。
(そうすると、ソロモン派の人間達はどう動くんだろう…? このまま、ガブリエルが定例会を成功させて、アカデミー・グルマンディーズの指導者として承認されるのをただ見ているだけってことはないんじゃないかな)
本来なら全く関心などないだろう、やんごとない人々の権力争いの行方にルネが神経を傾けるのも、その渦中にローランがいるがゆえだ。
(もしもまたガブリエルが狙われるようなことがあったら、ローランは許さないだろう。ガブリエルは命がけで守るといつも言っている人だもの、自分の身は顧みず、危険なことにでも平気で手を出しそうだ。もし、それでローラン自身が怪我でもしたら…)
縁起でもない想像をしてしまったルネは、ぞっとしたように身をすくめ、ふるふると頭を振った。
(ううん、ローランが危ない目にあわないようにするのが僕の役目だ。片時も離れず、彼の行く所ならばどこでも付き従って、いざとなれば僕が守る…)
恋の成就のためにはマイナス要因にしかならないとずっと思いこんでいた武道の才だが、ようやっと、それに対してルネは肯定的に考えられるようになってきていた。
そうして、ふと、ガブリエルのために全てを投げ打って、ルレ・ロスコーにやって来た経緯を話してくれた時のローランの晴れやかな顔を思い出した。
(ガブリエルに必要されている…そのことだけで、ローランはあんなに満ち足りた顔になれるんだ。僕もいつか…おまえが必要だとローランに言ってもらえるだろうか。あの人を支えられるのは僕だけなんだと確信できたなら、ローランの目が他に向いていても不安にはならないし、どんなにか僕は幸せだろう)
ローランの前ではひたすら猫を被り続けているルネにとって、今の所、それは、いつかこうなりたいという願望に過ぎない。
それでも、自分が何を望んでいるのかはっきり気がついた今、それは少しの努力を払えば実現可能な夢に思われた。
そんな訳で、ローランに半ば忘れられたような日々が過ぎても、ルネは割合落ち着いていた。
いずれローランが自分を思い出すことは分かっていた。
だから、ローランから声をかけられた時、それが予想外に早かったことと、その内容が今の時期にそぐわなかったことにむしろ戸惑いを覚えたのだ。
「は…? オペラ、ですか?」
「そうだ。今まで見に行ったことはあるのかと、俺はおまえに聞いたんだ」
その日は朝からずっと難しい顔で何かを考え込んでいて、ルネが話しかけても心ここにあらずのローランだったのに、夕方遅く、副社長室にコーヒーを運んでいくといきなり、そんな話をし始めた。
「あ…はい、学生の頃、一、二度…演目は、ちょっと忘れましたが…」
シーズン真っ最中のオペラの話などを振ってくるローランの意図が読めず、ルネは戸惑うばかり。友達に誘われて安い立ち見席で見ただけで、別にオペラもバレエも好きな訳ではなく、内容を必死に思い出そうとしているうちに、ローランは更に続けた。
「急な話なんだが、明日の夜オペラ・ガルニエで上演される『ラインの黄金』のチケットが二枚俺の手元にある。ガブリエルのために数ヶ月前からバルコニー席を予約していたんだが、定例会が間近なこともあり、あいつはやはり都合が悪くなって行けなくなった。せっかくだから、おまえの予定が何もなければ、一緒に…と思ったんだ」
「デート…に誘ってくれているんですか…?」
ルネは目をぱちぱちさせて、信じられないように聞き返した。平時であれば喜んで飛び付く申し出だが、何となく引っかかったため、即座に応えられなかった。
「まぁ、そういうことだな…オペラは好きじゃないとか、ガブリエルの代わりというのが気になるのなら、無理に誘わないが…?」
「もう、意地悪を言わないでくださいよ、ローラン…あなたのせっかく誘いを、僕が断わるはずがないじゃないですか」
ルネが素の表情に切り替わり、打ち解けた口調で返すのに、ローランも安堵したらしい、にっと笑って、ルネを自分の方に引き寄せた。
「だが、あまり嬉しそうな顔をしていないぞ?」
「嬉しいですよ…ただ、今この時期に、あなたが僕とのデートなんて思いついたことが意外だったんです。アカデミー・グルマンディーズの定例会は来週でしたよね。いいんですか、こんな大事な時期に、僕に構ったりして…?」
「俺は、別にアカデミーの人間という訳じゃないからな。ガブリエルの願いもあって、定例会の当日にはほとんど毎回駆けつけているが、その準備には全く関わっていない。別に、おまえのために時間を割けないほど忙しい訳ではないさ」
ルネはローランの頭にそっと手を添え、艶々した黒い髪を指先で優しく撫でつけながら、真率な口ぶりで言い募った。
「そうは言っても、ソロモン派の妨害がいつあるともしれませんし、せめて定例会が無事に終わるまでは、あなたは僕よりもムッシュ・ロスコーの傍にいたいんじゃないですか?」
どこかルネを困らせて楽しんでいるようだったローランの顔から、瞬間、全ての表情が消えた。
「ローラン、どうかしましたか? 僕、何かおかしなことを言ったでしょうか?」
不思議に思ってルネが問いかけると、ローランは我に返ったように瞬きをした。
「全く、ルネ、お前という奴は…」
ローランは愛しさと哀れみが綯い交ぜになったような、複雑な眼差しをルネに注いだ。
「自分よりもガブリエルの傍にいたんじゃないかなんて、わざわざ聞かなくてもいいだろうに…それで、もしも俺がそうだと言ったら、おまえ、どうするつもりだ? また、俺の身勝手を許して、好きにさせるのか…つくづく馬鹿な奴だな」
「自分でも損な性格だと思いますけど…僕のためにあなたに無理をさせるよりは、あなたの一番いいようにしてあげたいんだから、仕方ないですよ。あなただって、自分のことは後回しにして、いつもガブリエルを一番にして尽くしているでしょう? それと同じです」
「そう切り返してきたか…くそっ、参ったな」
ローランは、ふわりと微笑むルネから顔を背け、途方に暮れたように呟いた。
「しかし、おまえはもう少し自分本位になるべきだな、ルネ…そうしてくれた方がありがたい時だってある」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
困惑顔のローラン相手に嬉々と目を輝かせながら、ルネは言った。
「本当にあなたが無理をしているのでなければ…明日のオペラ鑑賞、僕は喜んでお供しますよ。別にデートじゃなくても、あなたの行く所なら、僕はどこでもついていきたいんですから…」
ローランの膝に半ば乗りかかって、甘えた口調で言いながら、ルネは、仏頂面のまま目を逸らしている彼の視線を捕えようとする。
(ずっとローランに寄り添っていれば、いつ何が起こっても、僕が守ることが出来るから、安心だもの)
頭の中でそんな計算を働かせているルネに、ふいに、ローランが問いかけた。
「ルネ、おまえ、そんなに俺が好きか?」
どことなく苛立たしげな光を潜めた緑の瞳に射すくめられて、ルネは身を強張らせた。
「ど…どうしたんですか、いきなり…?」
ローランは、戸惑うルネの顎に指をかけ、今にも唇が触れんばかりに顔を近づけてきた。
「俺を愛しているのか、どうなんだ?」
はぐらかすことなど許さないような性急な口調で追求されて、ルネは焦った。
「は、はい…あ…愛しています。無理矢理白状させなくったって、そんなこと、あなたが一番よく知っているでしょうに…」
最後の方の恨めしげな訴えは、覆いかぶさってきたローランの唇によって、強引に封じられた。
ローランの口調は不機嫌そうだったが、それとは裏腹に触れてくる唇は優しく、頬を撫でる大きな手は温かくて、ルネはほっとした。
(よかった…ローランはちょっと苛々しているようだけれど、僕に怒っている訳ではないみたいだ)
ルネの緊張がほどけたのを感じ取ったかのように、ローランは更に体を密着させてくる。
ふわりと、彼の愛用のコロンが香り立った。
(ああ、いい匂いだな…甘く、刺激的で、セクシーな…僕をいつもうっとりとさせる…大好きなローランの匂いだ)
ローランの体と触れ合っている所がじわりと熱を帯び、それが全身に広がっていくのをルネは意識した。
「ふ…ぅ…ひゃっ」
空気を求めて唇を離した瞬間、力の抜けた体が滑り落ちそうになり、ルネは慌ててローランの体にしがみついた。そんな彼の腰をローランの手がしっかりと支え、膝の上に座り直させる。
「気をつけろ」
ルネの額にくすぐるように唇で触れながら、ローランは低い声でたしなめた。
「はい…」
再びローランの唇が下りてくるのを認め、ルネは微かに赤みを帯びた唇を素直に開いて、それを迎えた。
(あ…まだ定時にもなっていないのに、オフィスでこんないちゃいちゃ、いいのかなぁ)
真面目な頭の片隅にそんな思いが一瞬過るも、ローランにキスをされれば、たちまち霧散した。
(ううん、そんなこと、どうでもいい…この人のキスが欲しい)
重なり合う唇と唇の合間で、舌が動いている。優しく歯列を割って口腔を嬲るローランの舌に、遠慮がちにルネは己の舌を絡めていく。
背中に回ったローランの腕に強く締め付けられて、のけぞったルネの喉が鳴った。
「ローラン…好き…大好き…」
キスの合間に掠れた声で囁くルネを更に追いつめるよう、ローランは執拗に問いかけてくる。
「ならば、ルネ…お前は、俺が望めば、どんなことでも出来るか…? おまえの気性におよそ合わないような…必要なら嘘をついたり、自分を信じる人間を騙したり裏切ったりすることも、俺のためなら仕方がないと簡単に割り切れるのか…?」
「え…?」
半ば心を蕩かされながらも、ローランが苦々しく漏らした言葉を聞き咎めたルネは、彼の腕を掴んでいた指先に力を込めて押し返した。
「ローラン、それ…どういう意味ですか…あっ…ん…」
ルネは鋭く追求しようとするが、首筋に回ったローランの唇に敏感な部分を甘噛みされ、また力が抜けそうになった。
「ロ、ローラン…ちょっと待って下さいってば…ひゃっ…」
何とか頭をしっかりさせようと懸命に努力しながら、ルネはローランの胸を叩いてみるが、その手には甘えているくらいの力しか入らず、彼の膝の上から転がり落ちないようにするだけで精いっぱいだった。
「俺は、大切なものを守るためなら、何だってやれてしまう男だ。俺とおまえは確かによく似ているが、決定的に違う部分があるとすれば、その一点に尽きるだろうな。潔癖なおまえに、俺のような狡い真似ができるか…?」
ローランは苦々しげに独りごちると、ルネの腰が弓なりになるほど一際強い力で抱きすくめ、それから、ふいに引き離した。
「ローラン…?」
息を弾ませ、潤んだ目で呆然とローランを見上げるルネの顔には、優しいかと思えば突然理解できない言動で自分を振り回す恋人に対する不安と疑念、与えられる快感にすっかり取り乱した自分を見られることの恥ずかしさや腹立たしさなど、せめぎ合うすべての感情が透けて見えるようだった。
「いや、おまえにはやはり無理だよ、ルネ」
やけに納得したように呟いて、ローランはよろよろと身を起こすルネから顔を背けた。
(な、何、今の…僕には無理とか、どういう意味…?)
ルネはローランに背を向け、服の乱れを震える手で直した。その耳に、ローランの小さな舌打ちが聞こえた。
「全く、何をやっているんだ、俺は…」
ルネはおずおずとローランの様子を窺った。
ローランは忌々しげに手で髪をかき回した後、所在なげに肩を落として佇んでいるルネの方に体を向けた。
「ルネ、今のはただの戯言だ。大した意味などないんだ…どうか忘れてくれ」
ルネが唇をきゅっと引き結んで黙っていると、ローランは椅子から立ち上がり、その俯いた頭に手を伸ばした。
「…怒っているのか?」
ルネは一瞬、その手を振り払ってやろうかと思った。しかし、迷っているうちに体ごと引き寄せられ、頭にこつんと押し付けられた彼の額を感じた。
「お前を混乱させて、すまない、ルネ…俺が今、腹がたって仕方ないのは自分に対してだ。それをお前にぶつけてしまうなんて、全くどうかしているな」
心底後悔したようなローランの声。
「あなたを苛立たせている原因は…僕ではないのですか…? 僕はあなたを愛していると口では言うけれど、態度では充分示すことが出来ていないから…」
ローランに伝えるべきことをまだ伝えられていない後ろめたさから、ルネはつい尋ねてみた。
「違う。それは違うぞ、ルネ、おまえが原因だなんて、馬鹿なことを考えるな」
ローランは一瞬瞠目した後、真顔になって否定した。
「でも…僕は…」
自信なげに瞳を揺らせるルネに、ローランは急いた口調で、畳みかけるように言い聞かせた。
「おまえが、俺を愛してくれていることはよく分かっている。そんなお前の心が、ブラン・ド・ブランのように混じりっ気のない純粋なものだということもな…俺はおまえを信じているから、心配するな」
「ジャック・セロスのブラン・ド・ブラン…僕のイメージだといつかあなたは言いましたね。でも僕は、あなたが思っているほど純真という訳ではないですよ」
ルネはローランの腕からそっと身を引き、切ない目をして微笑んだ。
それを見てローランは何か言いかけたが、結局諦めたように口をつぐんだ。
2人とも黙りこんでしまったため、部屋には束の間、張りつめたような静寂が下りた。
(どうしよう…気まずい雰囲気になっちゃった。どうにかして、この空気を和ませないと…)
うまい方法はないものかと探し求めるかのように、ルネは視線をさ迷わせ、ローランの後ろのある大きな窓の外を眺めやった。そろそろ街灯の灯りだした時刻、宵闇に沈みつつある見慣れた街並みがそこにある。
ローランに誘われてここで働き始めてまだ四カ月程度しか経っていないのだが、ずっと前からここにいるかのような錯覚さえ覚えさせられるほど、目に馴染んだ光景だ。
(最初はいつまで続けられるかどうか不安だった、ルレ・ロスコーでの仕事だけれど、いつの間にかすっかり慣れて、今ではここにいることが当たり前のように感じられるようになった。今更故郷に帰りたいとは思わない。そう、ローランがいる、このルレ・ロスコーが、僕の居場所なんだ…手放すことなんか、考えられない)
ルネがぼんやりと物思いにふけっている間、ローランは再び椅子に座りなおして、彼とは別の物思いにふけっていたようだ。
ふいに、目の前に置かれた、まだ手をつけていないコーヒー・カップに気付いて、彼は呟いた。
「せっかく、お前が淹れてくれたコーヒーがすっかり冷めてしまったな」
ルネは夢から覚めたかのように瞬きをし、自分をじっと見つめているローランを振り返った。
「新しいものに入れ直してきましょうか?」
ルネがいつもそうしているように、ごく自然に言葉は唇からこぼれた。
「いや、これでいい」
ローランは優しく目を細め、ルネが彼のために用意したコーヒーをゆっくりとうまそうに飲みほした。
こんな会話は2人にとってお馴染みのもの。こんな情景も、ルネがここで何度も見た覚えがあるものだった。
部屋の空気は、2人の心を反映して、いつのまにか凪いでいた。
「お願いがあります、ローラン」
椅子の背に泰然と身を持たせかけて自分を見守っているローランの前に立った時、ルネは普段通り落ち着いていた。
「あの…明日のデートの後、2人きりで話す時間をいただけませんか。あなたに、どうしても聞いてもらいたい話があるんです」
今まで頭の中で何度もシミュレーションしていたものの、なかなか切り出せなかった言葉なのに、案外簡単に口にすることが出来た。
ローランはその頼みをしばし吟味するかのように考え込んだ後、ルネの顔を正面から見据えて確認した。
「それは、今話した方がよくはないのか…?」
一瞬ルネは迷った。今なら冷静に自分の抱えた事情を説明し、これまでローランを騙していたことを謝れそうな気がしたが――。
「いえ…できれば、オフィスでするよりも、2人だけのプライベートな時間で話したい内容なので…」
「そうか」
ルネの意志が固いのを見て取ったのだろう、ローランはすぐに引き下がった。
「それでは、明日…楽しみにしていますね、ローラン」
ルネはにこりと笑って、腕を込んで物思わしげに黙りこんでいるローランの前から、空になったカップを引き上げ、部屋を出て行った。
ローランが胸の内は、ルネにとって、相も変わらず謎なままだ。
しかし、いずれにしろ明日、ルネがこれまでひた隠してきた秘密をぶつけてみた時のローランの反応を見れば、彼の自分に対する気持ちの程が分かるはずだ。
そればかりか、自分達がこれから先もずっとここで同じ時間を紡いでいけるか、それとも明日を最後に終わらせるしかないのかも、きっと――。
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