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第五章
Blanc de Blancs(6)
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「私が忠告してから随分経ったはずなのに…まだ肝心なことは何1つ、ローランに打ち明けられていないんですか?」
ロスコー家のシャトーでの休暇の最終日、2人きりで話す機会のあったガブリエルに、ローランとの間であったことを話した途端、呆れたようにそう言われた。
「もう少し意気地のある人かと思っていましたが、私の買いかぶりだったんでしょうかね。それとも、あなたはローランのことをそれほど本気で考えていた訳ではなかったのですか…?」
「そんなことないです! 僕だって思い切って打ち明けようとしたことはありました。ただ…その時は、ローランはあなたのことで頭が一杯だったので、言い出せなかったんです」
それにしても、多忙なガブリエルがよく真面目にこんな話に耳を傾けてくれたものだ。ローランが不在で、1人自室で暇を持て余していたルネをわざわざ訪ねてきたくらいだから、ローランとの恋の進展のなさに、ガブリエルも密かに気をもんでいたのだろう。
「ふうん…すると、私があなた方の邪魔をしてしまった訳ですか?」
ガブリエルが困ったように美しい眉を潜めながら問いかけるのに、ルネは焦って付け加えた。
「そ、そんなつもりで言ったんじゃないですよ。大体ローランの優先順位のトップにいるのがあなただという事実をどうこうするつもりは、僕にはもうありません」
「おや…それはまた一体どういう心境の変化でしょうね? ローランとの間に、何かありましたか…?」
意外そうに瞬きをするガブリエルに、ルネは躊躇いつつも打ち明けてみた。
「別に大したことじゃないですよ…ただ、僕が思っていた以上にローランは僕を信頼してくれてみたいで、うっかり公表できないような本音を漏らしたくれたんです。それを聞いて、我ながら単純だけど、もう細かいことで目くじら立てるやめようって気持ちになったんです」
その「本音」の対象が自分であることを知らないガブリエルは、ルネの話の意味を推し量るかのようにじっと考え込んでいる。
ローランの人生を、その言葉一つで変えてしまったことについて、ガブリエル自身はどう考えているのだろうか。
「だから、あなたのせいでローランとうまくいかないとか、そんな責任転嫁するつもりもないです。それどころか、こんな不甲斐ない僕のことを気にかけてくださって、ありがとうございます、ムッシュ・ロスコー」
「礼を言ってもらうようなことじゃないですよ、ルネ。ローランの大切な人なら、私が特別な関心を持つのは当然ですからね」
ガブリエルは優しい口調で言った後、どこまでルネの心が固まっているのか見極めようとするかのごとくすっと目を細めて、付け加えた。
「しかし、ルネ、そこまで思えるようになったなら、過去のトラウマに縛られるのもそろそろやめてしまいなさい。たった一度の苦い経験に足を引っ張られて、現在の恋がうまくいかないなんて馬鹿馬鹿しい。そんなあなたでもローランは信頼してくれている…そうと分かって、嬉しかったんですよね? ならば今度は、あなたが彼に対して心を開いてあげるべきではないですか?」
真摯な口調で諭されたルネは、神妙な面持ちになって黙りこんだ。
(何故だか、おまえになら別に話してもいいかという気持ちになった。こんな話、他の誰にしても信じてもらえないか、呆れかえって馬鹿にされるかのどっちかだろうが、おまえなら、きっと分かってくれるような気がしたからかな…?)
ローランがちょっと照れくさそうにしながらそう語った時、ルネは感激のあまり胸が熱くなるのを覚えた。
(ローランの心が分からないといつも愚痴ってばかりいた僕だけれど、あの瞬間、そんな不満は吹き飛んでしまった。彼が僕を信じてくれていることが嬉しくて…ああ、僕もあんなふうに、ごく自然に自分の気持ちを言葉にできたら、どんなにいいだろう。そう、ローランなら大丈夫、僕が武道の天才でも気にしない、今までと同じように僕を可愛いと思ってくれると信じられたなら、何の抵抗もなく、すんなりと告白できるはずなんだ。それなのに、僕は…)
明るかったルネの顔が、考えに浸っているうちに瞬く間に曇っていく。
「何を考え込んでいるんですか、ルネ?」
「いえ、その…僕はローランに心を開いてほしいと願っていたはずなんだけれど、本当はちょっと違っていたんだなって、今気付いたんです」
ルネは碧い瞳を落ちつかなげに揺らしながら、呆然と呟いた。
「本当は僕自身が…ローランに心を開けるようになりたかったんだ。あの人の顔色を窺ったり、不自然に取り繕ったりする必要もなく、素のままの自分で、言いたいことをぶつけられるようになりたい。ちょっとした気持ちのすれ違いや喧嘩があっても大丈夫…あの人との関係はそのくらいのことで壊れてしまうような脆いものじゃないと、自信を持って言い切れるようになりたいんだ」
そうしてまた黙り込むルネに、ガブリエルはしばし微笑を含んだ眼差しを向けた後、励ますように言った。
「大丈夫、あなたとローランなら、きっと、そんな素敵な恋人同士になれますよ」
あからさまに応援されたルネは、ちょっと怯んだように首をすくめ、今にも自分をかき抱こうとせんばかりに両手を差しのべてくるガブリエルから身を引いた。
「う…え、ええ…そうですね…ご期待に添えるよう、がんばります」
「ああ、またまた…弱気になってはいけませんよ、ルネ」
しかし、ガブリエルはルネの気後れなど意に介さず、意外に強い力でその体を引き寄せ、嬉々としながら話を続けた。
「ともかく、その気持ちが萎まないうちにさっさとローランを捕まえて告白することですね。何なら、私がその機会をお膳立てしてあげてもいい…そうだ、私のセラーの中からあなた方のためにとっておきのワインを一本贈りましょうか? IN VINO VERITAS(真実はワインの中にあり)とも言いますし、本音を語る時には、やはりワインですよ」
「あわわ、大天使のセラーからワインをいただくなんて、そんな恐れ多い…プロポーズする訳じゃなし、あなたの得意とするような派手な演出には、僕がついていけません」
「もうっ…身内の恋の成就に力を貸す楽しみを、私に少しくらい味あわせてくれてもいいじゃないですか、ケチですねぇ」
ガブリエルは困惑しきりのルネの肩を抱きながら、冗談とも本気ともつかぬ口ぶりでそんなことを言い、くすくす笑った。ふいに、何事か思い至ったかのように、口をつぐんだ。
「ムッシュ・ロスコー?」
「急に黙ったりしてすみませんね、ルネ。ちょっとした懸念を思い出したんです」
「懸念…ですか…?」
ガブリエルは宙の一点を見据えながら、ゆっくりと、噛んで含めるようにルネに言い聞かせた。
「…ローランは今、私のためにあれこれ画策して、自分のことは後回しにしている状況です。そのため、恋人であるあなたにも、時には腹立たし思いをさせるかもしれません。これは私の責任でもあるので、あなたには心からすまなく思っています」
「それは僕も承知していることですから、謝ってもらう必要はありませんよ、ムッシュ。先程も申しあげたように、ローランを愛しているからこそ、彼が必死になって守ろうとしているあなたのことも大切にしよう…今では僕も思っています。この非常時に、ローランの関心を無理矢理自分に向けさせようとは思いませんし…むしろ少しでも彼の負担を軽くできるよう、僕が積極的にサポートしていきたいと考えています」
「その心意気は大変ありがたいのですが、ローランは、目的のためなら手段を選ばない、マキャベリズムの権化みたいな男ですから…心を許した相手であれば、尚更、このくらいなら許してもらえるだろうと高をくくって、結果としてあなたをひどく傷つけるかも知れせん。その時に、彼を許すことのできる余裕が、あなたにあればいいのですが…」
ガブリエルは物憂げな眼差しを伏せて、ふっと溜息をついた
「あの…ムッシュ・ロスコー…?」
ガブリエルは、身内に対するように親しげに、ルネに微笑みかけた。その絹のような指先が、ルネの伸びかけて黒い地の色が目立ってきた金髪を優しく撫でつける。
「可愛いルネ、あなたとローランがうまくいくよう、私も願っていますよ。ローランなんて取り扱いの難しい男を理解し、幸せにしてあげられる人は、この世であなたくらいなものでしょうからね」
ガブリエルは思い立ったかのように、自分のスマートフォンの番号をルネに教え、念押しした。
「いいですか、何かあれば、私にすぐに連絡しなさい。決して悪いようにはしませんから…」
「あ、ありがとうございます」
ガブリエルは、ぱっと赤くなるルネの頭に手を添えて、両のほっぺたに素早くちゅちゅっとキスをした。
(う…わぁ…)
ガブリエルに体臭はなかった。頬に触れた、その柔らかな唇も、ふんわりと溶けるような蜂蜜色の髪の感触も、何もかも夢のようだった。
「また会いましょうね、ルネ」
そう言い残して部屋を出ていく、ガブリエルの後ろ姿を見送る間、ルネは天使か悪魔に魅了された人のように、しばし息をすることも忘れていたのだった。
(つくづく現実離れ…いや、人間離れした人だなぁ。大天使が僕とローランのことを認めてくれているということは…強い味方ができたと思っていいのかな…? ガブリエルが守護天使になってくれたなら、何だか、ローランとの恋もうまくいくような気がしてきた)
とはいえ、テレビでぶち上げた定例会の準備にソロモンとの駆け引きも加わって、忙しい身のガブリエルのこと、ルネを心にかけてくれているとはいえ、頼りにする訳にはいかない。
それに結局は、ルネの心の問題なのだ。自分で克服するしかないとは、分かっていた。
(僕は、ローランのことをどこまで信頼できるだろう。素のままの自分を見せても、彼は本当に僕から逃げていかないと信じられるだろうか…?)
ルネの胸の内に未解決の大きな課題を残したまま、やがて束の間の休暇は終わった。そして、またローランの秘書として忙しく働く日々が戻ってきた。
ロスコー家のシャトーでの休暇の最終日、2人きりで話す機会のあったガブリエルに、ローランとの間であったことを話した途端、呆れたようにそう言われた。
「もう少し意気地のある人かと思っていましたが、私の買いかぶりだったんでしょうかね。それとも、あなたはローランのことをそれほど本気で考えていた訳ではなかったのですか…?」
「そんなことないです! 僕だって思い切って打ち明けようとしたことはありました。ただ…その時は、ローランはあなたのことで頭が一杯だったので、言い出せなかったんです」
それにしても、多忙なガブリエルがよく真面目にこんな話に耳を傾けてくれたものだ。ローランが不在で、1人自室で暇を持て余していたルネをわざわざ訪ねてきたくらいだから、ローランとの恋の進展のなさに、ガブリエルも密かに気をもんでいたのだろう。
「ふうん…すると、私があなた方の邪魔をしてしまった訳ですか?」
ガブリエルが困ったように美しい眉を潜めながら問いかけるのに、ルネは焦って付け加えた。
「そ、そんなつもりで言ったんじゃないですよ。大体ローランの優先順位のトップにいるのがあなただという事実をどうこうするつもりは、僕にはもうありません」
「おや…それはまた一体どういう心境の変化でしょうね? ローランとの間に、何かありましたか…?」
意外そうに瞬きをするガブリエルに、ルネは躊躇いつつも打ち明けてみた。
「別に大したことじゃないですよ…ただ、僕が思っていた以上にローランは僕を信頼してくれてみたいで、うっかり公表できないような本音を漏らしたくれたんです。それを聞いて、我ながら単純だけど、もう細かいことで目くじら立てるやめようって気持ちになったんです」
その「本音」の対象が自分であることを知らないガブリエルは、ルネの話の意味を推し量るかのようにじっと考え込んでいる。
ローランの人生を、その言葉一つで変えてしまったことについて、ガブリエル自身はどう考えているのだろうか。
「だから、あなたのせいでローランとうまくいかないとか、そんな責任転嫁するつもりもないです。それどころか、こんな不甲斐ない僕のことを気にかけてくださって、ありがとうございます、ムッシュ・ロスコー」
「礼を言ってもらうようなことじゃないですよ、ルネ。ローランの大切な人なら、私が特別な関心を持つのは当然ですからね」
ガブリエルは優しい口調で言った後、どこまでルネの心が固まっているのか見極めようとするかのごとくすっと目を細めて、付け加えた。
「しかし、ルネ、そこまで思えるようになったなら、過去のトラウマに縛られるのもそろそろやめてしまいなさい。たった一度の苦い経験に足を引っ張られて、現在の恋がうまくいかないなんて馬鹿馬鹿しい。そんなあなたでもローランは信頼してくれている…そうと分かって、嬉しかったんですよね? ならば今度は、あなたが彼に対して心を開いてあげるべきではないですか?」
真摯な口調で諭されたルネは、神妙な面持ちになって黙りこんだ。
(何故だか、おまえになら別に話してもいいかという気持ちになった。こんな話、他の誰にしても信じてもらえないか、呆れかえって馬鹿にされるかのどっちかだろうが、おまえなら、きっと分かってくれるような気がしたからかな…?)
ローランがちょっと照れくさそうにしながらそう語った時、ルネは感激のあまり胸が熱くなるのを覚えた。
(ローランの心が分からないといつも愚痴ってばかりいた僕だけれど、あの瞬間、そんな不満は吹き飛んでしまった。彼が僕を信じてくれていることが嬉しくて…ああ、僕もあんなふうに、ごく自然に自分の気持ちを言葉にできたら、どんなにいいだろう。そう、ローランなら大丈夫、僕が武道の天才でも気にしない、今までと同じように僕を可愛いと思ってくれると信じられたなら、何の抵抗もなく、すんなりと告白できるはずなんだ。それなのに、僕は…)
明るかったルネの顔が、考えに浸っているうちに瞬く間に曇っていく。
「何を考え込んでいるんですか、ルネ?」
「いえ、その…僕はローランに心を開いてほしいと願っていたはずなんだけれど、本当はちょっと違っていたんだなって、今気付いたんです」
ルネは碧い瞳を落ちつかなげに揺らしながら、呆然と呟いた。
「本当は僕自身が…ローランに心を開けるようになりたかったんだ。あの人の顔色を窺ったり、不自然に取り繕ったりする必要もなく、素のままの自分で、言いたいことをぶつけられるようになりたい。ちょっとした気持ちのすれ違いや喧嘩があっても大丈夫…あの人との関係はそのくらいのことで壊れてしまうような脆いものじゃないと、自信を持って言い切れるようになりたいんだ」
そうしてまた黙り込むルネに、ガブリエルはしばし微笑を含んだ眼差しを向けた後、励ますように言った。
「大丈夫、あなたとローランなら、きっと、そんな素敵な恋人同士になれますよ」
あからさまに応援されたルネは、ちょっと怯んだように首をすくめ、今にも自分をかき抱こうとせんばかりに両手を差しのべてくるガブリエルから身を引いた。
「う…え、ええ…そうですね…ご期待に添えるよう、がんばります」
「ああ、またまた…弱気になってはいけませんよ、ルネ」
しかし、ガブリエルはルネの気後れなど意に介さず、意外に強い力でその体を引き寄せ、嬉々としながら話を続けた。
「ともかく、その気持ちが萎まないうちにさっさとローランを捕まえて告白することですね。何なら、私がその機会をお膳立てしてあげてもいい…そうだ、私のセラーの中からあなた方のためにとっておきのワインを一本贈りましょうか? IN VINO VERITAS(真実はワインの中にあり)とも言いますし、本音を語る時には、やはりワインですよ」
「あわわ、大天使のセラーからワインをいただくなんて、そんな恐れ多い…プロポーズする訳じゃなし、あなたの得意とするような派手な演出には、僕がついていけません」
「もうっ…身内の恋の成就に力を貸す楽しみを、私に少しくらい味あわせてくれてもいいじゃないですか、ケチですねぇ」
ガブリエルは困惑しきりのルネの肩を抱きながら、冗談とも本気ともつかぬ口ぶりでそんなことを言い、くすくす笑った。ふいに、何事か思い至ったかのように、口をつぐんだ。
「ムッシュ・ロスコー?」
「急に黙ったりしてすみませんね、ルネ。ちょっとした懸念を思い出したんです」
「懸念…ですか…?」
ガブリエルは宙の一点を見据えながら、ゆっくりと、噛んで含めるようにルネに言い聞かせた。
「…ローランは今、私のためにあれこれ画策して、自分のことは後回しにしている状況です。そのため、恋人であるあなたにも、時には腹立たし思いをさせるかもしれません。これは私の責任でもあるので、あなたには心からすまなく思っています」
「それは僕も承知していることですから、謝ってもらう必要はありませんよ、ムッシュ。先程も申しあげたように、ローランを愛しているからこそ、彼が必死になって守ろうとしているあなたのことも大切にしよう…今では僕も思っています。この非常時に、ローランの関心を無理矢理自分に向けさせようとは思いませんし…むしろ少しでも彼の負担を軽くできるよう、僕が積極的にサポートしていきたいと考えています」
「その心意気は大変ありがたいのですが、ローランは、目的のためなら手段を選ばない、マキャベリズムの権化みたいな男ですから…心を許した相手であれば、尚更、このくらいなら許してもらえるだろうと高をくくって、結果としてあなたをひどく傷つけるかも知れせん。その時に、彼を許すことのできる余裕が、あなたにあればいいのですが…」
ガブリエルは物憂げな眼差しを伏せて、ふっと溜息をついた
「あの…ムッシュ・ロスコー…?」
ガブリエルは、身内に対するように親しげに、ルネに微笑みかけた。その絹のような指先が、ルネの伸びかけて黒い地の色が目立ってきた金髪を優しく撫でつける。
「可愛いルネ、あなたとローランがうまくいくよう、私も願っていますよ。ローランなんて取り扱いの難しい男を理解し、幸せにしてあげられる人は、この世であなたくらいなものでしょうからね」
ガブリエルは思い立ったかのように、自分のスマートフォンの番号をルネに教え、念押しした。
「いいですか、何かあれば、私にすぐに連絡しなさい。決して悪いようにはしませんから…」
「あ、ありがとうございます」
ガブリエルは、ぱっと赤くなるルネの頭に手を添えて、両のほっぺたに素早くちゅちゅっとキスをした。
(う…わぁ…)
ガブリエルに体臭はなかった。頬に触れた、その柔らかな唇も、ふんわりと溶けるような蜂蜜色の髪の感触も、何もかも夢のようだった。
「また会いましょうね、ルネ」
そう言い残して部屋を出ていく、ガブリエルの後ろ姿を見送る間、ルネは天使か悪魔に魅了された人のように、しばし息をすることも忘れていたのだった。
(つくづく現実離れ…いや、人間離れした人だなぁ。大天使が僕とローランのことを認めてくれているということは…強い味方ができたと思っていいのかな…? ガブリエルが守護天使になってくれたなら、何だか、ローランとの恋もうまくいくような気がしてきた)
とはいえ、テレビでぶち上げた定例会の準備にソロモンとの駆け引きも加わって、忙しい身のガブリエルのこと、ルネを心にかけてくれているとはいえ、頼りにする訳にはいかない。
それに結局は、ルネの心の問題なのだ。自分で克服するしかないとは、分かっていた。
(僕は、ローランのことをどこまで信頼できるだろう。素のままの自分を見せても、彼は本当に僕から逃げていかないと信じられるだろうか…?)
ルネの胸の内に未解決の大きな課題を残したまま、やがて束の間の休暇は終わった。そして、またローランの秘書として忙しく働く日々が戻ってきた。
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