君に会いたい。だから走り出す。

好きって

「ふぇ？」
なんとも腑抜けた声が出た。
「急にどうした？頭に石でも当たったか？」
変な声が出てしまったため、慌てていつも道理の感じを装った。
「当たってません。で、どこなの？」
珍しく天然にしては論点をずらそうとしてもずれなかった。
「別に、俺は幼馴染のことが好きなわけじゃないぞ？朝も言った通り。てか、お前が一番良くわかってるでしょ。」
「そうなんだけどさ、最近仲いいじゃん。幼馴染のどこがいいの？」
「まぁ、優しいところと話しやすいところはいいなーって思うよ。」
「ふーん。」と、いうと彼女はタッタッタッと走り去って行った。
全く変なことを聞くなと思った。
「先輩って、天然先輩のこと好きですよね？」
と、後輩たちが言ってきた。
「ただの幼馴染だよ。」
「嘘だ～。幼馴染でも、男女ふたりきりでは帰りませーん。」
僕は天然とよく一緒に帰っている。
親友たちは別方向なので、ふたりきりで帰ることも多い。僕達は別に恋人関係でもなんでもない。
「いや～、絶対ウソですよ～」
「早く練習するぞ」
半ば強引に後輩たちを練習へと向かわせたが、なんだか面倒くさいことになったなと思った。
練習はおわり、下校の時間となった。
今日は親友が早く部活をおわり、帰ってしまったので天然と一緒に帰ろうとした。
帰路につこうとすると、担任が大きな声で僕を呼びとめた。
「僕～、これ。頼んだ。」
と、俺の手の上にプリントの束をドサッと載せた。
「頼んだとは？」
恐る恐る聞くと、
「幼馴染に教えてやって。」
「うん？」
「じゃあ、頼んだ～。」
先生は足早に校舎の中へと消えていった。
はぁ。
ため息が漏れてしまう。
実際、僕はなんやかんや頭がいい方で教え役みたいなことをしていた。
「じゃあ、帰りよってかないとね。」
天然が言った。
「そうだな。ついでに親友も呼び出そうぜ。」
僕は携帯を取り出し、一番上にある親友への着信履歴を押した。
予想どおり、彼はすぐ出たので今から幼馴染の家に来いと言って、電話を切った。
「向かうか。」
と、重い腰を上げると帰路から幼馴染の家への道へ行った。