49 / 51
49
しおりを挟む
ーーよく晴れた日の王立図書館大樹の下。
「・・・・・(それで君はどう思ったの?)」
「うーん、本当にものすごくめちゃくちゃ嫌な人、から、すごくめちゃくちゃ嫌な人くらいに変わったかもしれません。・・・たぶん。」
モサモサ頭に向かってアリシアはそう喋りかけた。
先日の図書館の一件で、イザークと図らずも話すことになったアリシアの率直な感想だ。
「なんだか、その人は、私から見たら高慢で、我儘で、婚約者には不誠実だし、何でも持ってるくせに私のことを僻んでる性格の悪い人なんですけど、話してみると、その人はその人なりに不自由さがあって、何かにもがいてる感じがしたんです。少しだけ本音を聞いたような気がして。それにルールは守らないし態度も言動も酷いけど、本を借りたいってことは学ぼうって気持ちがあるのかなって。」
「・・・・・(その人の立場や気持ちを考えられて素晴らしいね。)」
君は優しいね、そう告げるマックスさんの口元が柔らかく綻んだのを見た瞬間、アリシアは自分の頬が急に熱くなるのを感じて、その場所を両の手のひらで隠すように横を向いた。
「そ、そ、そんなことないですっ。私も、人任せだってその人に言われて、その時は怒れてきたけど、もしかしたら本当にそうかもしれないって思ったし。けど、あの人、本当に何かにすごく焦ってる気がする。」
そうなんだねと優しく頷く瓶底眼鏡にじっと視線を向けられるのに耐え切れなくなったアリシアは、慌てて立ち上がるとまた来ますと短く挨拶をして出口へと歩き出した。
火照る顔をぱたぱたと両手で冷やしながら、ふと、イザークに加護のことを聞けず終いだったことが頭の片隅をよぎったけど、家に着く頃には忘れていた。
そして、事件は起こった。
「今日の授業は、自分の持つ加護を実際に使いながら分析をしていきます。2人1組になってくださ~い。」
アリシアは当然のごとくヴァイオレットと組む。
イザーク達は3人。そして残りのメンバーも3人組なので誰がイザーク達のうちの1人と組むのかコソコソと話し合っている。
うーん、すごく嫌そう。当たり前よね。
そうこうしてるうちに何とイザークが前に出てきた。
「お前たちのうちの誰か、俺と組め。」
これにはアリシアやヴァイオレットだけでなく、ボールやゴッグまでも驚いた。
「えっ王子、それはっ。」
「そうです。私どもがっ。」
「俺が良いと言っているのだ。誰か居らぬのか。」
な、なに?あの不遜な態度。ちょっとイラッとする。けれど、もしかしたらもしかして、アレは歩みよりのつもりなのかしら?
そんなことを考えているアリシアの近くでまだペアの決まらない3人組が尚もヒソヒソと話していた。
(あんなプライドだけ高い落ち目と授業でも関わるのマイナスじゃね?)
(だよな~。俺も嫌だ。)
(どうするよ、誰か行かないとダメなの?)
嫌なのはわかるけど、ただの授業なのにプラスとかマイナスとか。それも違う気がする。アリシアはモヤモヤが止まらない。
しばらくしても誰も名乗りを上げず、教室内はシーンとして気まずい空気が流れた。
イザークは、そんな教室内を見回してクルリと背を向けた。
「ーーそんなに俺と組むのは嫌か。・・ならば良い。」
その声が少し震えていた気がして、さっきから感じていたモヤモヤもあって気づいたら思わず手を挙げていた。
「わ、私が組みます!」
「・・・・・(それで君はどう思ったの?)」
「うーん、本当にものすごくめちゃくちゃ嫌な人、から、すごくめちゃくちゃ嫌な人くらいに変わったかもしれません。・・・たぶん。」
モサモサ頭に向かってアリシアはそう喋りかけた。
先日の図書館の一件で、イザークと図らずも話すことになったアリシアの率直な感想だ。
「なんだか、その人は、私から見たら高慢で、我儘で、婚約者には不誠実だし、何でも持ってるくせに私のことを僻んでる性格の悪い人なんですけど、話してみると、その人はその人なりに不自由さがあって、何かにもがいてる感じがしたんです。少しだけ本音を聞いたような気がして。それにルールは守らないし態度も言動も酷いけど、本を借りたいってことは学ぼうって気持ちがあるのかなって。」
「・・・・・(その人の立場や気持ちを考えられて素晴らしいね。)」
君は優しいね、そう告げるマックスさんの口元が柔らかく綻んだのを見た瞬間、アリシアは自分の頬が急に熱くなるのを感じて、その場所を両の手のひらで隠すように横を向いた。
「そ、そ、そんなことないですっ。私も、人任せだってその人に言われて、その時は怒れてきたけど、もしかしたら本当にそうかもしれないって思ったし。けど、あの人、本当に何かにすごく焦ってる気がする。」
そうなんだねと優しく頷く瓶底眼鏡にじっと視線を向けられるのに耐え切れなくなったアリシアは、慌てて立ち上がるとまた来ますと短く挨拶をして出口へと歩き出した。
火照る顔をぱたぱたと両手で冷やしながら、ふと、イザークに加護のことを聞けず終いだったことが頭の片隅をよぎったけど、家に着く頃には忘れていた。
そして、事件は起こった。
「今日の授業は、自分の持つ加護を実際に使いながら分析をしていきます。2人1組になってくださ~い。」
アリシアは当然のごとくヴァイオレットと組む。
イザーク達は3人。そして残りのメンバーも3人組なので誰がイザーク達のうちの1人と組むのかコソコソと話し合っている。
うーん、すごく嫌そう。当たり前よね。
そうこうしてるうちに何とイザークが前に出てきた。
「お前たちのうちの誰か、俺と組め。」
これにはアリシアやヴァイオレットだけでなく、ボールやゴッグまでも驚いた。
「えっ王子、それはっ。」
「そうです。私どもがっ。」
「俺が良いと言っているのだ。誰か居らぬのか。」
な、なに?あの不遜な態度。ちょっとイラッとする。けれど、もしかしたらもしかして、アレは歩みよりのつもりなのかしら?
そんなことを考えているアリシアの近くでまだペアの決まらない3人組が尚もヒソヒソと話していた。
(あんなプライドだけ高い落ち目と授業でも関わるのマイナスじゃね?)
(だよな~。俺も嫌だ。)
(どうするよ、誰か行かないとダメなの?)
嫌なのはわかるけど、ただの授業なのにプラスとかマイナスとか。それも違う気がする。アリシアはモヤモヤが止まらない。
しばらくしても誰も名乗りを上げず、教室内はシーンとして気まずい空気が流れた。
イザークは、そんな教室内を見回してクルリと背を向けた。
「ーーそんなに俺と組むのは嫌か。・・ならば良い。」
その声が少し震えていた気がして、さっきから感じていたモヤモヤもあって気づいたら思わず手を挙げていた。
「わ、私が組みます!」
1
お気に入りに追加
2,944
あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。
西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。
私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。
それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」
と宣言されるなんて・・・

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。
久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」
煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。
その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。
だったら良いでしょう。
私が綺麗に断罪して魅せますわ!
令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました
あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。
自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。
その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

婚約破棄?ああ、どうぞご自由に。
柚木ゆきこ
恋愛
公爵家子息により急に始まる婚約破棄宣言。その宣言を突きつけた令嬢は婚約者ではなく、なんと別人だった。そんなちぐはぐな婚約破棄宣言を経て、最終的に全てを手に入れたのは誰なのか‥‥
*ざまぁは少なめ。それでもよければどうぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる