妹に全てくれてやります。でも自暴自棄じゃないですわ。私は復讐を果たします!

アホアホセブン

文字の大きさ
上 下
48 / 51

48

しおりを挟む
そう呟いたイザークの翡翠色の眼は光なく暗い感じがした。

な、何、急にまた萎れてそんなこと言い出して。
どうしよう、こんな時どう話したら良いかわからない。助けてマックスさん、ヴァイオレット、ヨハネス先生・・。

「え、っと・・」

何を言えば良いかわからずアリシアの頭はぐるぐるする。

「お前は良いな。誰もが羨む加護を持ち、好きなことをやり、だ。」
「・・・え?」

イザークはそう言うと、横を向いたまま本を借りる手続きを早くしろとせかした。
イザークの続け様の言葉に、アリシアに強く込み上げてきたのは憐憫でも同情でもなく怒りだった。

こんなのでも一国の王子で、この人には確かに私の知らない王族なりの苦労や不自由さがあるのかもしれない。
けど・・好きなことをやってる?自由?加護が羨ましい?
私のこと、何も知らないくせに!

「・・好きなことやって自由って、私のいったい何を知ってそんな事を言うんですか?私はこの加護を欲しいと思って得たわけでも、持って幸せだなんて思ったこともただの一度もないです!こんな加護、人にあげたいくらいです。貴方の方こそ、私に好きにものを言い、婚約者がいるくせに人の妹に現を抜かして、勉強もサボって。やりたい放題の自由人そのものじゃないですか!!」

静かな図書館に響くアリシアの叫びに、イザークは翡翠色の眼を驚いたように大きく見開いた。まさか言い返してくるとは思わなかったのだろう。

「なんだと・・?貴様は本当に可愛げや優しさのない女だな。俺から見たらお前など自由そのものだ!だいたい誰の不自由の上にお前たちの平和な生活が成り立っていると思っているのだ!生まれた時から公人の俺には何一つ自由などないわ。服一つ取っても国民の納める税で買った公のものよ。加護がいらぬ?なら俺に与えよ!いじけているだけのお前などより余程有効活用してやるわ。人任せなくせに悲劇ぶりおって。」
「なんですって?!それは貴方のことでしょう?何でもあるくせに無い無い言ってるだけの無責任な我儘王子じゃない!」
「なんだと!」



「はいは~い。ケンカは終わりで~す。ここは図書館で~す。他の人に迷惑で~す。」

お互いに主張が加熱していた所に、パンパンと手を叩きヨハネス先生が入ってきた。

「いや~子のケンカに親は出ないでおこうと思ってたんですけどね~。2人とも終わらせようとする気配がなさそうだったんで。」

どうやら一部始終をずっと見ていたらしい。もっと早く入ってきてくれれば良かったのに。

「いやはや2人とも。子犬のじゃれあいみたいで可愛かったですよ。お互い痛いところを抉りあっててね~。それにしても王子の本音、久しぶりに聞きましたよ。また僕も聞きたいなあ~。アリシア君も、本当はそんなに元気なコだったんですね。生徒の素直な姿が見れて僕は嬉しいですよ。」

ヨハネス先生は、王子の借りようとした本を手渡すと、ポンポンと王子の頭を撫で、また来てくださいと笑顔でヒラヒラと手を振った。

「ヨハネス、お前わざと・・・このタヌキめ。地味・・アリシア、だったな。フン。次来る時までに、もう少し可愛げを身につけておけ。」

そう嫌味を言い、アリシアに余計なお世話よと言われながら図書館を出て行くイザークの頬は少しだけ緩んでいて、アリシアもアリシアで、自分の加護に少しだけ向かい合う気持ちになれた気がした。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。

まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」 そう言われたので、その通りにしたまでですが何か? 自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。 ☆★ 感想を下さった方ありがとうございますm(__)m とても、嬉しいです。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

歪んだ恋にさようなら

木蓮
恋愛
双子の姉妹のアリアとセレンと婚約者たちは仲の良い友人だった。しかし自分が信じる”恋人への愛”を叶えるために好き勝手に振るまうセレンにアリアは心がすり減っていく。そして、セレンがアリアの大切な物を奪っていった時、アリアはセレンが信じる愛を奪うことにした。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

処理中です...