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ドサッ。ドサドサッ。
徐々に仕事に集中してきて俯いていたアリシアの頭を掠めるように、突如として大量の本が降ってきた。
びっくりして顔を上げると、目の前には久しぶりに見るイザーク。
喋ってみると決めたはずなのにアリシアは思わず身体を強ばらせた。まさか、噂をしていた今日に今日来るなんて。
「なんだ、地味女。人を見てビクつくとは。やはり貴様はとんでもなく地味で失礼な女なのだな。」
アリシアの様子を見たイザークは、眉間にシワを寄せながら嫌味を言ってきた。
あのカフェでの萎れた姿はいったい何だったんだと思わずにはいられない態度だ。それに地味なのは関係ないし!顔を見ない間にやや同情的になっていたはずのアリシアの気持ちは一瞬で消し飛んでしまった。
「わ、私の名前は、地味女ではありません!貴方こそ失礼ではないですか。それに、本を乱暴に扱わないでください!」
アリシアは自分に投げかけられた言葉もそうだけど、カウンターに落とすかのような本の扱いにも腹が立った。あんな扱い、本に対する侮辱だ。
「フン。破れたら弁償すれば良いだけのことだろう。弁償の目処が立つ相手に対して目くじらを立てるのはおかしいだろう。」
言い返してきたイザークの、耳を疑うような台詞を聞いた瞬間、アリシアの中の何かがプチっと切れた。
無意識にカウンターからすくりと立ち上がり、思わず、そう思わず本音をだだ漏れに叫んでしまった。
「お金があれば何をしても良いわけではありません!!図書館の本はみんなの物です。みんなの知識でみんなの財産です。貴方個人の物ではありません!一国の王子のくせに幼な子のようなへ理屈言わないでください!!」
一気に言い切ったアリシアの迫力にイザークはうっと漏らして押し黙った。
それでもきっと次の瞬間には怒り出すか嫌味を言うに違いないと構えていたら、ふいと横を向いて小さく口を動かした。
「そうかもしれないな。」
「え・・?」
やけにあっさり非を認める姿に身構えていたアリシアは拍子抜けしてしまった。一体どうしたというのか。やっぱり変だ。
イザークはそんなアリシアの様子に気づくこともなくどこか遠くを見てるようだった。
「そもそも俺自身のものなど、この世の何処にもないのだけれどな。」
徐々に仕事に集中してきて俯いていたアリシアの頭を掠めるように、突如として大量の本が降ってきた。
びっくりして顔を上げると、目の前には久しぶりに見るイザーク。
喋ってみると決めたはずなのにアリシアは思わず身体を強ばらせた。まさか、噂をしていた今日に今日来るなんて。
「なんだ、地味女。人を見てビクつくとは。やはり貴様はとんでもなく地味で失礼な女なのだな。」
アリシアの様子を見たイザークは、眉間にシワを寄せながら嫌味を言ってきた。
あのカフェでの萎れた姿はいったい何だったんだと思わずにはいられない態度だ。それに地味なのは関係ないし!顔を見ない間にやや同情的になっていたはずのアリシアの気持ちは一瞬で消し飛んでしまった。
「わ、私の名前は、地味女ではありません!貴方こそ失礼ではないですか。それに、本を乱暴に扱わないでください!」
アリシアは自分に投げかけられた言葉もそうだけど、カウンターに落とすかのような本の扱いにも腹が立った。あんな扱い、本に対する侮辱だ。
「フン。破れたら弁償すれば良いだけのことだろう。弁償の目処が立つ相手に対して目くじらを立てるのはおかしいだろう。」
言い返してきたイザークの、耳を疑うような台詞を聞いた瞬間、アリシアの中の何かがプチっと切れた。
無意識にカウンターからすくりと立ち上がり、思わず、そう思わず本音をだだ漏れに叫んでしまった。
「お金があれば何をしても良いわけではありません!!図書館の本はみんなの物です。みんなの知識でみんなの財産です。貴方個人の物ではありません!一国の王子のくせに幼な子のようなへ理屈言わないでください!!」
一気に言い切ったアリシアの迫力にイザークはうっと漏らして押し黙った。
それでもきっと次の瞬間には怒り出すか嫌味を言うに違いないと構えていたら、ふいと横を向いて小さく口を動かした。
「そうかもしれないな。」
「え・・?」
やけにあっさり非を認める姿に身構えていたアリシアは拍子抜けしてしまった。一体どうしたというのか。やっぱり変だ。
イザークはそんなアリシアの様子に気づくこともなくどこか遠くを見てるようだった。
「そもそも俺自身のものなど、この世の何処にもないのだけれどな。」
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