妹に全てくれてやります。でも自暴自棄じゃないですわ。私は復讐を果たします!

アホアホセブン

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ーーそんなこと、わかっているーー


って言ったような気がする。うん、多分そうだ。いや、絶対にそうだ。



「どうしたんですか、アリシア君。ボーっとして。珍しいですね。」

昨日のイザークのいつにない表情が気になって、前に図書館からの去り際に彼が何を呟いたのかを考えていたアリシアは、掛けられた言葉にペンを動かす自身の手が止まっていたことに気付く。

「あ・・はい、ちょっと考えごとをしていて。先生はお加減、すっかり良さそうですね。」

そう言って見上げたヨハネス先生の顔色は血の気も戻りかなり良くなったように見える。これなら近く図書館業務も復帰出来そうだとアリシアはホッと胸を撫で下ろした。

「王子もね~。根は決して悪い子じゃないんですよ。むしろ頭が回り過ぎて捻くれちゃった感が多々ありますしね。アリシア君に頼むことじゃないのはわかってるんですけど、少しだけ大らかに接してあげて下さい。」

アリシアの心の中を読んだかのようにヨハネス先生が喋り出したことに内心驚きながらも、わかりましたとごくごく当たり前の返事をした。

結局、昨日も今日も、イザークは図書館には来なかった。



「というわけで、最近、その人が変なんです。」
 
秋晴れの王立図書館の木陰でアリシアはペラペラとモサモサ頭に語り掛けた。

「・・・・・(心配してるの?)」

瓶底眼鏡にまっすぐに見返されて、アリシアはなんだか居心地が悪いような気分になって下を向いた。

マックスさんの前で大泣きして以来、アリシアはなんだか気恥ずかしくて瓶底眼鏡を直視出来ずにいる。
きっと家族にも見せたことのない醜態を晒したせいだろうと自分なりに結論付けてはいるのだけど。
対するマックスさんはといえば特段何か気にする素振りもなくいたって普通の態度だ。大人だなあ。


イザークのことを心配しているのかというマックスさんの問いに、アリシアは首を捻った。

入学式早々、絡まれて嫌なことを言われて、本は破られて(破いたのはボールだけど)、すれ違い様にいつも嫌なことを言うから、正直、好きじゃない。
けれど、もうどん底まで落ちているのを自業自得だ良い気味だとせせら嗤うほど恨んでいるわけでもない。

「わからないです。けどーー」

「・・・・・(なら、話してみると良い)」

意外な発見が君にもあるかもしれないーーそう言ったマックスさんの口元は緩やかな弓なりになっていた。
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