妹に全てくれてやります。でも自暴自棄じゃないですわ。私は復讐を果たします!

アホアホセブン

文字の大きさ
上 下
19 / 51

19

しおりを挟む
アリシアの重い気持ちとは裏腹に、時間はいつもより早いんじゃないかというくらいに進んでいき、とうとう特別授業の日が来てしまった。

「・・休みたい・・・」

朝、屋敷の玄関でそう呟くも、全ての加護の授業を休むのは不可能だということもちゃんとわかってる。
アリシアはトボトボと馬車に乗り込み、売られていく仔牛のような気持ちで学園へと向かった。


「おはよう、アリシア!・・って何て顔してるのよ。」
「おはよう、ヴァイオレット・・。大丈夫よ・・。」

そんなわけないでしょう鏡を見てみなさいとヴァイオレットに指摘され手鏡を取ると、目の下にはすごいクマが。
昨日の夜は、授業に出るのが嫌でよく眠れなかったのだ。

「私の白粉をつけてあげるわ。」

ヴァイオレットはそう言って美しく細工彫りの施された小さなケースを開くと、パタパタと薔薇の良い香りのする白粉を顔にはたいてくれた。ヘレフォード家の販売する人気の化粧品だ。

薔薇は、ヘレフォード領では商品にするほどの量ではないがそこそこ育つ花だった。
しかしこの1年の間に、何故かはわからないけれど、季節を問わずハーブのように大量にそして美しく咲くようになったのだ。それに目をつけたヴァイオレットは、早々にこの薔薇を使ったオイルや化粧品など女性向けの商品をプロデュースし、いまや貴族の奥方から庶民のおカミさんまで、広く話題の商品として王都で販売されるまでに至った。

「あら、これは・・まあっ。」

ヴァイオレットは白粉と、ほんのり色のついたリップをつけたアリシアを見て驚きの声を上げる。

「アリシア、今日はここまでだけど、次はフルメイクしてみましょうよ。」

どうやらメイク映えするらしいアリシアの薄化粧姿はヴァイオレットの何かに火をつけたようだ。
最高のおもちゃを見つけたような顔をしてその日は始終上機嫌だった。



加護の授業は今日の最後。

午前の授業は楽しかったけれど、午後一の授業になるとだんだんソワソワしてきて。
そしてとうとう次は加護持ちの授業。

「アリシア!教室を移動しましょう。」

ヴァイオレットが張り切ってるのがわかる。
もうここまで来たら授業に出るより仕方ない。アリシアはのろのろと席を立った。


教室には、すでに3人の学生が席についていた。
アリシアたちを見ると互いに目配せして何か喋っている。

アリシアは私のことかなと少し不安になりながらヴァイオレットの隣の席に腰かけた。

あの3人組はといえば、本鈴と同時くらいに教室に滑り込んで来て先に来ていた3人に席を譲るよう迫っていた。本当に困ったやつらだ。



「それでは、授業を始めます。」

しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

婚約破棄ですか? ならば国王に溺愛されている私が断罪致します。

久方
恋愛
「エミア・ローラン! お前との婚約を破棄する!」  煌びやかな舞踏会の真っ最中に突然、婚約破棄を言い渡されたエミア・ローラン。  その理由とやらが、とてつもなくしょうもない。  だったら良いでしょう。  私が綺麗に断罪して魅せますわ!  令嬢エミア・ローランの考えた秘策とは!?

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました

あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。 自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。 その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。

婚約破棄?ああ、どうぞご自由に。

柚木ゆきこ
恋愛
 公爵家子息により急に始まる婚約破棄宣言。その宣言を突きつけた令嬢は婚約者ではなく、なんと別人だった。そんなちぐはぐな婚約破棄宣言を経て、最終的に全てを手に入れたのは誰なのか‥‥ *ざまぁは少なめ。それでもよければどうぞ!

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

運命の人は貴方ではなかった

富士山のぼり
恋愛
「パウラ・ ヴィンケル……君との婚約は破棄させてもらう。」 「フレド、何で……。」 「わざわざ聞くのか? もう分かっているだろう、君も。」 「……ご実家にはお話を通されたの?」 「ああ。両親とも納得していなかったが最後は認めてくれた。」 「……。」 「私には好きな女性が居るんだ。本気で愛している運命の人がな。  その人の為なら何でも出来る。」

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

処理中です...