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アリシアがチャールズと婚約したのは9歳のとき。
その日、ピカリング家のお茶会に招かれたアリシアは両親とともに出掛けようとしていた。
アリシアは淡い水色のドレスに同じ色の花の髪飾りをつけ、それが亜麻色の髪と水色の瞳にとても良く似合っていた。
元々アリシアとチャールズを引き合わせるためのお茶会だったので自称身体の弱いケイトは家で留守番、のはずだった。
けれど案の定、アリシアが両親と出かけると知ると駄々をこね始めた。
「ケイトは身体が弱いからいつも置いてけぼり。お姉さまばかりずるい!ケイト一緒に行きたいの!!」
「ケイト、今日はアリシアの用事で出掛けるのよ。ケイトが行ってもつまらないわ。またの機会にケイトの好きなところに一緒に出掛けましょう?」
お母様がそう宥めるけれど、ケイトはますます意固地になるばかりで。
結局、根負けした両親はケイトも着替えさせてピカリング家へ連れて行くことにした。
そしてケイトは、アリシアが主役のお茶会だというのに、派手なピンクのドレスにピンクの髪飾りをつけ、自分こそが主役だと言わんばかりの恰好を選んだ。
上品な淡い水色のドレスを着たアリシアは、ケイトと隣に並ぶとケイトの派手さにどうしても地味に見えてしまう。
けれど両親は小さな子どものやることだからと、ケイトに注意することもなく馬車に乗り込んだ。
ケイトは馬車に乗る時にアリシアと目が合うと、くすりと勝ち誇ったように口の端を上げて笑った。
初めて会うチャールズ様は、絵本に出てくる王子様のようだった。
美しい金色の巻き毛にぱっちりした青い瞳、整った形の良い鼻に薔薇色の唇。
ちなみに、まだこの頃はオデコは光っていなかった。
アリシアは目の前の美しい少年に緊張しながら挨拶をした。
「お初にお目に掛かります。チャールズ様。アリシア・ニーダムと申します。」
するとチャールズは、アリシアを頭の天辺からつま先まで眺めまわすと、ふんっと鼻を鳴らしとんでもないことを言った。
「なんだ、地味なやつだな。あっちのピンクの子の方が100倍かわいいじゃんか。あっちの子の方がいい。」
これにはさすがに両家の両親が慌てふためいた。これは上品と言うのよ、とか、アリシアはとても頭が良くて素晴らしい力を持っているのよ、などフォローを入れていたが、この顔だけ王子様はそんなことには耳もかさず始終つまらなさそうな顔をして、たまにケイトをちらちら見ながらお茶会の席に座っていた。
そしてお茶会が終わると、そのまま婚約のくだりになってしまったのだが、アリシアは子ども心ながらに大丈夫なんだろうかと不安になった。
その日、ピカリング家のお茶会に招かれたアリシアは両親とともに出掛けようとしていた。
アリシアは淡い水色のドレスに同じ色の花の髪飾りをつけ、それが亜麻色の髪と水色の瞳にとても良く似合っていた。
元々アリシアとチャールズを引き合わせるためのお茶会だったので自称身体の弱いケイトは家で留守番、のはずだった。
けれど案の定、アリシアが両親と出かけると知ると駄々をこね始めた。
「ケイトは身体が弱いからいつも置いてけぼり。お姉さまばかりずるい!ケイト一緒に行きたいの!!」
「ケイト、今日はアリシアの用事で出掛けるのよ。ケイトが行ってもつまらないわ。またの機会にケイトの好きなところに一緒に出掛けましょう?」
お母様がそう宥めるけれど、ケイトはますます意固地になるばかりで。
結局、根負けした両親はケイトも着替えさせてピカリング家へ連れて行くことにした。
そしてケイトは、アリシアが主役のお茶会だというのに、派手なピンクのドレスにピンクの髪飾りをつけ、自分こそが主役だと言わんばかりの恰好を選んだ。
上品な淡い水色のドレスを着たアリシアは、ケイトと隣に並ぶとケイトの派手さにどうしても地味に見えてしまう。
けれど両親は小さな子どものやることだからと、ケイトに注意することもなく馬車に乗り込んだ。
ケイトは馬車に乗る時にアリシアと目が合うと、くすりと勝ち誇ったように口の端を上げて笑った。
初めて会うチャールズ様は、絵本に出てくる王子様のようだった。
美しい金色の巻き毛にぱっちりした青い瞳、整った形の良い鼻に薔薇色の唇。
ちなみに、まだこの頃はオデコは光っていなかった。
アリシアは目の前の美しい少年に緊張しながら挨拶をした。
「お初にお目に掛かります。チャールズ様。アリシア・ニーダムと申します。」
するとチャールズは、アリシアを頭の天辺からつま先まで眺めまわすと、ふんっと鼻を鳴らしとんでもないことを言った。
「なんだ、地味なやつだな。あっちのピンクの子の方が100倍かわいいじゃんか。あっちの子の方がいい。」
これにはさすがに両家の両親が慌てふためいた。これは上品と言うのよ、とか、アリシアはとても頭が良くて素晴らしい力を持っているのよ、などフォローを入れていたが、この顔だけ王子様はそんなことには耳もかさず始終つまらなさそうな顔をして、たまにケイトをちらちら見ながらお茶会の席に座っていた。
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