天底ノ箱庭 新世界

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5章

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1.
エリオから無くした指輪をもう一度貰ってから丸一日がたった。
あの日はエリオと行為を楽しんだ後、程なくして戻ってきた3人組がまた彼を酷く痛みつけた。
殴る蹴るの暴力を繰り返すものの、彼が屈しないことを察した3人はケトルで沸かした熱湯を彼の背中に浴びせた。
僕は彼が悲痛な叫びをあげるのをただじっと耐えて、早く終わってくれと願うことしか出来なかった。
彼の意識が失われるギリギリになるとバビロンのボスだという男が部屋にやってきて、エリオを連れて去っていく。
その後は、僕の番だった。
3人が飽きるまで性行為を繰り返し、彼らが疲れれば玩具や薬によって行為は続けられる。
意識を失っては目覚めを繰り返しあれからどのくらい時間が過ぎたのかもはや分からなかった。
「しっかしさぁ…お前も災難よなぁ」
ベッドとソファで刺青の男と火傷跡の男がそれぞれ寝息を立てる中でスナック菓子を食べながら金髪の男が僕を見つめる。
「あのまま俺を恋人だと思ってくれてればさ、ここまで酷くされなくて済んだのに。まだ正気があるんだろ?やめとけよ、さっさと考えることを放棄した方がお前のためだよ?」
僕がエリオと別れた直後に僕をここに連れてきたのは主に彼の行動によるものだったように思う。
最初僕はここで性奴隷か何かになるのだろうと思っていたが、彼を含め周りが妙に親切で、バビロンのボスを名乗るシャルルさんも優しく僕を家族だと言って迎え入れてくれたことを覚えている。
最初はなにかの罠か、またツケを請求されるものと思っていたのだがそんな様子もなく、平和で明るく人々が優しいこの環境は塔の中を思い出させるほどだった。
シャルルさんはいつも僕の話を親身になって聞いてくれた。僕が塔から来たことやエリオとどんなふうに暮らしていたか、何故1人になってしまったのか…彼は悲しそうな顔をして何度も僕に頭を下げる。
僕をここに置いてくれるのはお詫びなのだと彼は言っていた。
ここに来てから3日ほどたったある日、エリオが会いに来たとシャルルさんから伝えられ…僕は彼に会った。
目の前にいたのは確かにエリオで、懐かし気持ちと嬉しさに泣いてしまう僕を、ずっと抱きしめていてくれる。
泣くことも怒ることも無く僕を抱いてくれることがとても幸せだったが、それはエリオではなかった。
金髪の男と肌を重ねていた僕を…本物のエリオが見ていた。
あれだけ嫌悪された事を繰り返した悔しさとか、それを彼に見られた焦り、他の男をエリオだと思って接し続けた時間への気持ち悪さに取り乱した僕を、彼は強く強く抱きしめてくれた。
エリオはどんなに殴られても痛みつけられても僕を責めたり、見捨てようとはしなかった。
どんなに苦しくても僕を守ろうとしてくれて、僕を守るために僕が抱かれることに目をつぶってくれた。
彼から返された指輪が何度も陵辱される僕の心の深い所を守ってくれるようだった。
「ね、そんなにあいつのこと好き?」
お尻に差し込まれた玩具をグリグリと動かしながら金髪の男が僕の顔を覗き込む。
「ぅ…んん…」
「そ。ならしゃーねーや」
頷いた僕を見て金髪の男は手にしていた玩具を抜き去り床に投げ捨てた。
「その方が頑張ってぶっ壊してやろって気持ちになるからいいんだけどね」
彼は手を縛られた僕の胸から腹にかけてを指でなぞり体を重ねてくる。
「んん…はっ…ああ…」
「こんなによがってくれるのに、ツレないでやんの」
抉るように中を乱され痙攣する僕の中に好き放題に熱い物を注がれる。
それでも手を強く握りしめると感じる指輪の感触が、僕を冷静にさせてくれた。
「はあ…中に出しちまった…綺麗にしとかねーと怒られる…」
彼は指で丁寧に中のものをかきだし別の玩具を僕の中に押し込んだ。
「ねえ、俺と逃げない?もう嫌っしょこんなのさ」
ぐちゃぐちゃと水音をたてながら彼は再び僕の中をかき回す。
「んっ…ああ…はあっ…」
「なんつってさ。バビロンから逃げられるとこなんかどこにもねえけど…快適な暮らしから離れるのも嫌だしね」
金髪の男は乾いた笑いを吐いた。
「ああでも、最近上の階層から妙なヤツらが捜査に来てるんだっけ。見たことも無い武装してて、誰も歯が立たない。見えない壁と手があるみたいな?よく分からんけど」
見えない壁と手…?それは最近、塔の武装開発班が制作した自律念動式のプロテクトシステムの特徴によく似ている。
「何しに来たのかは知らんけど、毎日数十人くらい降りてきては何かを探してるみたいだって話だよ。うっかり重要な機密データでも捨てたんかね?」
話半分に話す彼の話を良い方に解釈すると、あのプロテクトシステムはまだ塔の外には出ていない技術のはず…となると塔の関係者が僕を探して人を派遣した可能性が高かった。
ここから何とか逃げ出して、彼らと合流することが出来れば塔に帰れるかもしれない。僕とエリオはここから逃げられるかもしれない。
「んん…はっ…」
「あの妙な武装、手に入ればなぁ…そしたらこのゴミ貯めのトップになれんのにね、まあ無理な話だけどな」
金髪の男は玩具から手を離して近くの椅子に座り込んだ。
「も少ししたらまたお勤めだしお前も寝とけ~。んまあ、それ突っ込んだまま寝れるんならだけど」
大きく伸びをした金髪の彼は背もたれに寄りかかってそのまま目を閉じた。
半端にいじられた穴がひくひくと動くのを感じながら眠れもせず、ただ時が経つのを待っていた。
暫くして3人が目を覚まし、缶詰やスナック菓子を食べているところにシャルルさんがぐったりとよろけるエリオを連れて来た。
「エリオ…!」
目の下に濃いクマを落としたエリオが僕の言葉に顔を上げる。やつれているが、彼は歯を見せて笑った。
いつもこの部屋で酷く痛みつけられたあと、気絶したエリオをどこに連れていくのか何をしているのかはわからないが…きっと酷い目にあっているのだろう。
シャルルさんはエリオをソファに座らせると、彼の右手首を壁に設置された短い鎖に繋いだ。
「じゃあ頼んだよ」
昨日も飲まされたバビロンの媚薬だという小瓶を4つサイドテーブルに置いて、大きな欠伸をしながら去っていくシャルルさん見送ると3人はそれぞれ動き出した。
刺青の男はエリオの顎を掴んで顔を上に向けさせる。
「おはよぉーリーサルウェポン。今日は何して遊ぼっか?あ、そうだ今日の4本、分配どうしたい?お前に選ばせてやってもいいよ?」
手に取った小瓶をエリオの目の前で揺らしながらニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる。
「じゃあ、それ全部俺が飲んだらどうなるんだ?シャムに追加を出したりしないだろうな」
刺青の男にエリオはニヤリと笑う。
「んーまあそうだな。別にそれでもいいよ。それはそれで面白そうだし」
「え、エリオ…4本はやめよう…?半分でも…1本だけでも僕大丈夫だから…」
あの薬4本は本当にキツい。何度もイっても収まらない衝動にもにた欲と快感が止まらなくなる。彼のそんな姿を見たら…僕は心配になってしまう。本当に。
「大丈夫、4本グイ飲みしてやるよ」
男に顎を掴まれたままエリオが僕を視線だけで見て笑った。
「ヒュー、かっこいい」
刺青の男は乾いた笑いを吐くと、部屋に備え付けのコップに小瓶の中身を全部開けてエリオの口元に持っていった。
「はい、アーン」
男に言われるまま、エリオは素直に口を開く。
口の中に流し込まれる透明の液体をエリオは一気に飲み干した。
「じゃ、そこで指でも咥えて見てな。あ、咥える指もねえか」
「エリオ…」
彼は男の挑発に目を細めて不愉快そうに鼻を鳴らしていたが、僕の声に彼は口元に小さく笑みを浮かべて頷いた。
それから3人はいつものように代わる代わるに僕を抱いて、僕はなるべく彼らの行為に答える。薬を飲まなかった分、いくらか冷静なアタマで対応できるのは楽ではあった。
ときどきどうしても気になってエリオの方に目をやると、彼はソファに蹲るように横になっていた。彼の顔は浅黒い肌でもよく分かるほど赤くなっていて、どこか焦点の合わない目で僕を見たり、目を逸らしたりしていた。
「ねえリーサルウェポン。お前もヤりたい?混ぜてあげよっか?」
僕を組み敷いて腰を振る刺青の男が少し機嫌良さそうにエリオを見下ろす。
「…いやだ」
エリオは彼を見もせずに、絞り出すような声で答えた。
「えーなんでよ?大好きなんだろ?興味無いわけないよなあ?ねえ、お前もなんか言ってやんなよ、お前のこと抱きたくないってよ」
僕の体をエリオ側に向けさせて彼は強く腰をうちつける。
「んっ…はあっ…えり…おっ…?」
僕の声にエリオが顔を上げる。荒い息を肩でしながら、彼は笑った。
「シャム、可愛いね…」
彼のその仕草と不意に飛んできた褒め言葉に顔が熱くなるのを感じた。
「おっ…ナカすげえしまった」
「やっ…エリオ…ごめっ…」
恥ずかしいやら見られたくないやら、でも彼の視線がくすぐったいような複雑な心境に体が熱くなってしまう。
「いいよ…気持ちよさそうで、可愛い…」
僕の言葉に彼はまた笑って、弱々しい声で僕を褒める。
「見てるだけで満足なわけ?」
金髪の男が何だか面白くなさそうにエリオを見下ろした。エリオは彼の視線を睨み返すと、それでも口元をつり上げる。
「んなわけ…あるかよ…。でも、まざんない…お前らの仲間になんか…死んでもまざらない」
「カッコつけかよ。きにいらね」
金髪の男はエリオのズボンに手をかけ彼の性器を露出させる。
「やめ…何すんだ…」
突然開けられた前を隠すようにエリオが更に身体を丸める。彼の性器は我慢の辛さを物語るように体液を滴らせ、すでにぐしょぐしょに濡れていた。
「ほら、カッコつけといてパンツこんなにぐしゃぐしゃだ。大したことねーや」
金髪の男はつま先でエリオの性器を軽く撫でたり揺らすようにつついた。
「くっ…ぅ…」
小さく呻きながらエリオが身体を震わせる。
「えっ…りおっ…やめ…」
「やめろなんて言うなよ?俺ら今楽しんでんじゃん、お前も楽しめ。できるだろ?」
僕がそう言いかけると背後の刺青の男の低い声が遮ってきた。
「んん…えり…っ」
もう一度彼の名前を呼びかけると、彼は僕の方を見て笑う。大丈夫だからと、小さく頷くそれは刺青の男に従えという意味だと分かった。
「あっ…んん…でもっ…」
「シャム、可愛いよ」
僕の言葉を遮って、エリオが声を掛ける。
「凄く可愛いから…もっと見せて…」
「だってよー、良かったじゃんシャムちゃーん」
刺青の男は彼によく見えるように僕の足を持ち上げて強く突き上げてきた。
「ああっ…はっ…あんっ…」
こんなになってる僕のことをじっと見つめるエリオの視線が気になって、体がますます熱くなる。
こんなとこ見られたくないのに彼に可愛いと言われると、僕は無条件で喜んでしまうようだった。
「いいオカズがあってよかったじゃん、なあ?」
刺青の男とは対照的に苛立った様子の金髪の男はベッドに散らばされた玩具を手に取ってエリオに向き直る。彼は振動するタイプのオナニーホールにエリオの張った股間を差し込んだ。
「うぁっ、はっ…」
ビクンとエリオが身体を大きく震わせて目を見開く。元々荒い呼吸がさらに浅く、早くなる。
「んぅ…あっ…」
刺青の男に中を掻き回されたり押し付けられたりしながら、僕はエリオのことをじっと見つめる。
「恋人が侵される光景をオカズにイって見せろよ。あいつに無様にイきまくるとこ見せつけろ」
金髪の男はオナニーホールのスイッチを入れた。
「い"っ…!あああっ!」
振動するそれに彼が背中を折り曲げて低く悲鳴を上げる。過呼吸のように呼吸を何度も繰り返し、時折身体を跳ねさせたり、曲げた足を足先まで折り曲げたりして耐え忍ぶ。
それが数分すると、元々あまり焦点の合っていなかった彼の両目がとろんと溶けたようになり、締まらなくなった口の端から唾液が漏れ始めた。
「あいつが頑張ってるとこもっと近くで見たいよなあ?」
刺青の男は楽しくなってきたのか僕を抱えてエリオの目の前に連れてきてくれた。
彼の性器を眼前に、刺青の男は強く腰をふり始めた。
「あっ…はっ…んんっえり…」
僕の中で男の物がどくどくと脈打ち始めるのを感じる目の前で、オナニーホールの先から見えるエリオのものが今にも射精したそうにビクビクと痙攣している。
「はぁっ、はっ、はぁ…くっ、はぁ…っ」
彼の苦しそうな息遣いが聞こえた。あの薬を4本も飲まされてイけない苦しさは僕にも何となくわかる。
僕は彼のものを「もう我慢しないでと」慰めるように、露出した先端に舌を這わせた。
「っい"…っ!?」
驚いたようにエリオが目を見開いて呻く。身体をガクガクと揺らして、すぐに僕の口の中にどくどくと溜め込んでいたものを吐き出した。
「っああ…すっげ締まる…」
エリオが果てるのとほぼ同時に刺青の男も僕の背中に暖かい体液を吐き散らかす。
「…っくそ」
金髪の男は顔を歪ませると部屋を出ていってしまった。
「なんだアイツ、サボり?」
「まあ、よくね。仕事はしたろ」
首を傾げる火傷跡の男に刺青の男が吐き捨てるように言い放った。
「そろっと次の仕事だしさ」
刺青の男は僕を抱きかかえベッド下ろすと、適当なバイブを僕に押し込んだ。
「んっ…うう…」
「それで遊んでな。俺らは今度はあいつと遊んでやらないとだから」
彼らが次に何をし出すかはだいたい予想が着いていた。
「さて、恋人の寝盗られで抜いた気分はどうよ」
刺青の男はエリオの頭を踏みつけて目を細める。
エリオは顔をソファに押し付けながら呻く。1度出したとは言え、まだ玩具はついたままで、媚薬を4本も飲んでいたら全然スッキリなんてしないだろう。
「何とか言えよ」
低い声で腹を強く踏みつけて体重を乗せる姿が見ていられずに、思わず顔を背ける。
「蹴られてよがってんのか?」
火傷跡の男も一緒になって蹴り飛ばしているのか、鈍い音がふたつに増える。
「…られ、てな…い…」
蹴られて咳き込みながら、エリオが苦しそうな声を絞り出す。
「寝取られてない…シャムは、俺のことしか、見てない…」
喉を鳴らして笑うような彼の声が聞こえる。
「エリ…オっ…!」
顔を上げると彼と目が合った。彼の強く綺麗な赤と青の瞳がやけに鮮やかに見える。
「あーらま、ちんぽ丸出しでかっこいいこと」
刺青の男は火傷跡の男に目で何かを合図した。火傷跡の男は部屋の隅に隠すように置いてあった、斧のようなものを持ってきた。
「今度は肩からイってみようか。どう、怖い?」
「…チェーンソーより、マシ」
エリオは踏みつけられたまま笑う。
「四肢を捥ぎたきゃ好きにしろよ…どうせ、右腕使えるの、俺だけだろ…」
そんなに挑発する彼を僕はハラハラと見守る。恐らく左腕を取ろうと言うのは脅しではないだろう。
彼の左腕は神経はあるものの血管までは通っていない、切り落としても失血死することは無いから、痛みつけるには絶好の部位だ。
「痛いのカワイソーだから俺がそこ、しごいててやろっか?どう?やる?」
エリオの性器に手を触れながら首を傾げる刺青の男にエリオは眉をしかめた。
「意味が…わかんねえ…」
「んまぁだろうね?本当は俺が触りてえだけだしな」
くちゃくちゃと音を立てながら玩具を掴んでしごく男は気味の悪い笑みを浮かべていた。
慣れ始めていた刺激に、急に別の動きが加わってエリオがビクビクと身体を震わせる。男が彼の様子を見ながら動きに緩急を付け、徐々に早くしていく。
「はっ、はっ、や、やめ…っ」
焦点の合わなかった目がまた少しずつ溶けていく。浅い呼吸を繰り返し、次第に口がしまらなくなる。
「ふーん結構いい反応するじゃん。お前も、痛みつけるよりこっちで追い詰めてやりたかったよ」
男がエリオのものを激しく扱くと、エリオはソファに沈むように顔を押し付けて、苦しそうな声をあげながら痙攣する。
ビクビクと一際大きく身体を跳ねさせ、彼の性器から白い液体が勢いよく吹き出した。
果てたばかりでとろけた顔をした彼はソファに顔を押し付けて肩で息をする。
「んじゃ切ろう」
刺青の男が冷たい声で言い放つと、後ろに居た火傷跡の男が構えていた斧を勢いよく振り下ろした。
バキリと金属が割れるような音とともに、彼の剥がれた装甲と、かけた斧の刃が飛び散る。
「一気に引きちぎるか、1本ずつ行くか悩むなあ…なあ、お前はどっちがいいんだ?」
刺青の男がエリオの顔を覗き込む。まだ少し焦点があってないものの、快感の余韻から少し戻ってきたエリオが顔を力なく上げた。
「…好きにしろよ…どっちも痛えから…」
「んじゃ一気にイくか。俺はそっちの方が好き」
エリオの神経線が鷲掴みにされたのを見て、僕は目をぎゅっととじて恐怖で耳を塞いだ。
暗闇で何も聞こえなくなって、エリオに対する心配とそれから目を背ける情けなさに涙が出そうになる。
「ぐあ"あああっ!があっ…あ"がっ…ぎ…っ」
耳を塞いでいても、手のひらを貫通してエリオの叫び声が聞こえた。
止めたくても泣きたくても僕はなるべく耐えなくてはいけなかった。大人しくして大人しくして、なるべく無傷でいることが彼との約束だ。
暫くして何も音が聞こえなくなるまで僕は震えて蹲っていた。
恐る恐る耳を塞いでいた手を離すと、彼らの話し声すら聞こえない。いつの間に彼らは部屋を出ていたらしい。
「エリオ!!!」
もう慣れて何も感じなくなっていたバイフを抜き捨てて、ソファでぐったりとしているエリオに駆け寄った。
「ああ…エリオ…痛いよね…ごめんね…何も出来なくて…」
泣きそうになりながら、彼の体にしがみついて彼の顔を覗き込む。彼は放心したようにどこか遠くを見つめていたが、僕の声に視線を戻してやつれた笑顔を向けた。
「大丈夫…怖い思いさせてごめんな。もう痛くないよ」
そこまで話すと、彼は目を伏せて苦笑いした。
「あと、その…恥ずかしいんだけど、股間のやつ…取ってもらえる…?」
「へっ…?あ、ああ!そっか!ごめんね気付かなくて」
彼の股間には精液がべっとり付着したオナニーホールがハマったままになっている。
少しドキドキしてしまうなんて不謹慎なことを考えながら、それをゆっくりと彼のものから引き抜いた。
引き抜くと、その反動でビクビクと彼が身体を大きく震わせ、気持ちを落ち着けようと深呼吸するのが聞こえた。
「…気持ちいい?」
そんな彼の反応が少し可愛らしくて、意地悪をしたくなってしまうのはダメだろうか?
まだ硬さの残る彼のものを手のひらで優しく撫でてみると、手の中でピクピクと跳ねるように動く。
「はっ…今シャムに触られたら、だめだって…」
完全に左腕を肩から失った彼は、ソファの上で身をよじって、眉を寄せて笑う。
「ふふっ…エリオはいつも男らしくてかっこいいけど、そういう所はちょっと可愛い」
さっき彼に言われたように可愛いなんて彼を褒めてみる。彼も嬉しくなったりするのだろうか。
「可愛いか~、複雑だけど情けないよりはいいかな…」
ふにふにと彼のものを両手で優しく握ったり、包んだりしていると彼は照れたように笑う。そのまま不意にしごくと、身体を縮こませて小さく喘ぐ。
「ああ…マジそれ…今つらい…」
「僕のこと可愛いって言ったでしょ。僕も辛かったよ?色んな意味で」
辛そうに震える彼に、僕は口をとがらせて抗議する。
そりゃ彼の意図は分からなくはない。僕が少しでも彼らの怒りに触れないように彼なりに考えてのことだったろう。実際今日は特別刺青の男の機嫌が良かった。
しかし…しかし…それで僕に妙な扉を開かせることは良くない!非常に良くない!
「なんでだよ、俺が怒ったり泣いたりしながら見てるより、可愛いって褒めてる方が気持ちも楽だし、楽しいだろ?」
冗談交じりに言いながら、彼は僕を見てニヤニヤと目を細めた。
「だ、だって…あんまり楽しくなったら………ダメだもん」
小さな声で呟くと、エリオは目を丸くしてから、またニヤニヤと笑う。
「…俺に見られてるの楽しかった?」
彼の言葉に顔が熱くなるのを感じた。
「ちっ…違うもん!!エリオなんてこうしてやる!こうしてやる!!」
少しムキになりつつ、僕は彼の性器を本格的にしごく。元から硬かったそれはみるみる硬さを増して、手の中で脈動した。
「ああ~っ、だめだそれ…っ、でる…から…っ」
震えながらエリオが声を上げるが、さっきまでとは違う気の抜けた嬉しそうな声だ。
「あの刺青の男の人にもイってたもんね?」
「ご、ごめん…て…」
丁寧にしごき続けると、エリオの呼吸が浅くなっていく。手の中で一際それが反るように動くと、先から精液を吐き出した。
「あ~…しんど…」
ソファに顔を押し付けるようにエリオが沈む。声がソファにこもって少し聞き取りずらい。
「…ごめんね。薬全部飲ませちゃって」
彼の髪をふわふわと触り声をかける。彼はソファに押し付けていた顔をこちらに向けると、少し疲れた顔で笑う。
「いいんだよ、シャムずっと身体使ってるんだから、俺が飲んだ方がお前も楽だろうと思ってさ。別に俺がケツ掘られることはなさそうな雰囲気だしさ」
「…あったらどうするの?」
「俺のケツくらい安いからダメージないよ。安心しろ」
薬の事もそうだし腕のダメージも心配だったが、冗談を飛ばせるくらいの元気があるようで安心した。
「ねえ、エリオ…僕、ここから逃げ出すヒントを掴んだかもしれないんだ」
僕はなるべく声を潜めて彼の耳元で囁く。
「外に、僕の事を探してる塔の関係者かもしれない人が毎日沢山最下層に来てるって…!何とかここを抜け出せば彼らに保護してもらって…それで一緒にここを出れるよ!」
嬉しさで声が大きくなってしまいそうになるのを抑えながら彼に、金髪の男から得た話を聞かせる。
エリオは目を丸くして僕を見つめてから、眉を寄せて困ったように目を伏せて、そのまま口元に笑みを作って僕を見た。
「…そうなんだ。逃げる宛てがあるなら、早く脱出した方がいいな」
「うん!だからさ…なんとか隙をついて外に出られれば…」
しかし僕はずっとこの部屋に鎖で繋がれ部屋の外に行くことが出来ないし、今は頼りのエリオの右腕は使うことが出来ない。
それ以外の時間帯はいつもあの3人が僕のことを見張っている。僕はこの建物はおろか、この部屋から出ることすら非常に難しいように思えた。
「…エリオは、エリオはこの部屋にいる時以外は何をしてるの?」
「あー…」
エリオは何故か気まずそうに目を逸らすと、苦笑いしながら僕を見る。
「シャルルに夜這いされて、バビロン入るって言うまでひたすら寸止めくらう罰ゲーム受けてる」
「えっ…夜這い…?」
なんかいつもぐったりしているから余程酷い拷問でも受けてるかと思ったら…いや。夜這いとは言っても、僕よりもっと酷い事をされている可能性だって…。
「そ、それは…その…どんなふうに?」
「いや、楽しい話じゃないから…単純にちんこシコられて寸止めされて、うんって言わないからエンドレスってだけ」
彼の顔をじっと見つめて思わず吹き出してしまった。
「なんだぁ…てっきりもっと本格的にしちゃってるのかと思った!エリオも…僕以外に気持ちよくなっちゃうんだね…?」
「その節は大変申し訳なく…」
僕の言葉にエリオが申し訳なさそうに肩を竦めて苦笑いする。
「でもそれならどうやって隙を作れば…エリオは気持ちよくなっちゃうし…僕は見張りが多いし…」
「シャムさん、ちょっと語弊があるので訂正したいんですが、よろしいでしょうか」
エリオが苦笑いしながら僕の言葉を遮ると、咳払いをしてから再び口を開く。
「シャルルの夜這いは、あの変な効果のあるアロマを充満させた部屋で俺の頭をバグらせるためにやってるみたいなんだ。だから、普通にやっても効かないから、俺をボコして頭がふわふわしてる時を狙ってくる。ここ4日で分かったのはそんな感じ」
やはりシャルルさんはエリオを殺す気はなく、ただただ仲間にしてやりたいだけなのだろう。
と、なればもしエリオが命の危機に瀕するのであればそこは手厚く助けるのが普通なように思えた。
「俺は大体気絶するまでボコられてシャルルの部屋へ運ばれるが、動けないことを前提にしてんのか基本はノーリードだ。放し飼い状態になるのはあの時だけ。逆に、あの時に俺が元気なら逃げ出すチャンスはあるはずだ」
エリオは扉を見つめながら、考えるように遠くに視線を投げる。
「…じゃ、じゃあ死にそうなフリは…どうかな?」
僕が提案するとエリオは僕を見て首を傾げる。
「…どんな風に?俺がやるの?」
「うん。話を聞く限り彼らがエリオを痛みつけるのはあくまで仲間にする為でしょ?それが僕には何がなんでも仲間にしようとしてるように感じるんだ。逆にそこまで仲間にしたい相手ならさ、死なせたくはないって思うかなって」
僕が彼に説明をしてる間、彼はソファに座り直して、ふんふんと相槌を打ちながら真剣な目を向けてくれた。
「もしエリオが死にそうになってて、これ以上の暴行が危険だって判断されれば、それ以上手を出してこないんじゃないかなって考えたんだけど…」
「なるほど…確かに、殺されないと思って俺も挑発してたから、一理あるな」
ソファの上にあぐらをかいて、彼は首を捻る。
「しかし…困ったことに俺、演技下手くそなんだよ。苦しむフリってどうしたらいいんだ?額に汗かくのに霧吹きでも使えたらいいけど、霧吹きなんてないしさ」
苦しそうなエリオ…エリオが演技力無しで彼らに暴行をやめさせるほどの苦しそうな状況を作り出す方法…。
「…媚薬を飲んで…とか?」
「えっ?」
「ほ、ほら…あの時のエリオってすごく苦しそうだったし…何とかくすねて隠し持っておいて暴行前に使って熱と苦しそうな呼吸とか…?」
僕の提案を聞いて、彼は苦笑いする。
「まあ…確かに苦しいには苦しいよな…。媚薬をくすねるタイミングはありそうか?俺、多分また夜中なり明日の朝なりにボコボコにされるだろうから、ちと俺がやるのは厳しいかも」
「じゃあ…薬は僕が何とか手に入れて見せるよ」
エリオにニッと目を細めてみせると、彼はまたキョトンと目を丸くする。
「なんか宛があるの?」
「うーん、上手くいくかはわからないけど…頼んでみる価値はあるかも…?」
宛というのはあの金髪の男の事だった。
最近彼は他のふたりに比べて独断行動が多いような印象があった。
それに…それはエリオにはあまり言いたくはないが、彼はきっと僕の事を好いているような気がする。
彼には悪い気がするが、その気持ちを上手く活用させてもらおうと考えていた。
「分かった。じゃあ、シャムにお願いする。俺も体力温存に努めて挑発すんのやめて、なるはやで気絶手前になるわ」
気絶手前に意識的になるのは難しい気もするが、エリオはニッと歯を見せて笑った。
「…うん!一緒に頑張ろう。それで塔に帰れたら…僕のことお嫁さんにしてね…?」
僕の言葉に彼は笑顔のまま一瞬だけ沈黙する。違和感のない程度のその沈黙の後、彼は頷いた。
「…うん、お嫁にきてくれ」
束の間の心安らぐ時間でエリオとそんな話をして、疲れの見える彼を早く寝るように促した。彼は僕と触れ合う時間が減るのが嫌だったようで、少しごねたので寝るまで頭を撫でてあげた。
逃げる計画を思いついてから、バビロンの人たちに隙が出来るのを見計らって大人しくするように努めた。相変わらず3人はエリオに暴行を加えてはシャルルさんが彼を部屋へ連れて行き、彼の目の前で凌辱されるのを休まずローテーションで行っていたが、エリオがあまり抵抗せずに、挑発もしなかったせいか過激な暴行を加えることが減ってきた。
今日も床に頭を叩きつけられてエリオが気を失ったのを見て三人は暴行をすぐに切り上げてくれた。この虐待が始まってから10日くらいが経過していた。
「今日は早かったな。そろそろあのチビくたばっちまうんじゃねーの?」
シャルルさんに運ばれていくエリオを見ながら金髪の男がぽつりと呟いた。
金髪の男の言葉に僕がむっと見つめ返すと彼は少し肩をすくめて「お前もね」と呟く。
「でも最近は二人とも大人しくて良い子だ。ずーっとこんな調子ならちょっとくらい休ませてやってもいいんだがなあ」
ベッドに足を抱えて座っていた僕の隣に刺青の男が大の字で横たわり、その傍の先ほどまでエリオが使っていたソファに火傷跡の男が腰を下ろした。
「…なあこんなに大人しくしてんなら一人残して後の二人は自室で寝たって良いんじゃねえか?ここじゃあベッド使えるのは一人だけになるし、どうせ鎖もあるんだ。逃げられはしないだろ」
身体の大きな火傷跡の男は毎日ソファで眠るのは堪えるようで背中をぐっと伸ばしたり、肩をまわしながら怠そうに言う。
「んー、まあいんじゃね?どうせ俺ら疲れて夜寝てるばっかだしな」
刺青の男が言う通りこうも続くと彼等の体力ももたないらしく、最初は夜まで続いていた行為も夜は殆ど行われなくなっていた。
「じゃ、じゃあ俺が見てっから!今日はベッドで寝てきたら?」
刺青の男の呟きに金髪の男がバッと立ち上がって声を上げる。
「ほーん…どする?任せる?」
「ああ任せようぜ、もう背中も肩もバキバキなんだ」
刺青の男と火傷跡の男はそれぞれ立ち上がって「じゃあまた明日ね」と僕に軽く手を振って部屋を出て行った。
急に訪れた大チャンスにぐったりしているふりをしていた僕は思わず半分体を起こす。
「二人きりだよ、久しぶりにさ」
彼は僕の隣に腰を下ろして手錠に繋がれた鎖を掴んで僕を手繰り寄せ、腰に手をまわしてキスを求める。僕はそんな彼の顔をただじっと見つめ返した。
「してくんねえのな。前まで喜んでしてたのに」
「前」というのは彼がエリオのフリをして僕の傍に居たときのことを言っているのだろう。
僕は彼の正体に気づかないまま数日を過ごし、恋人らしいこともそれなりにやった。今でも思い出すと喉の奥がぐるぐるとせり上がるような嫌悪感が残っている。
金髪の男は僕がキスに答えないとわかると顎を掴んで半ば強引に唇を重ねる。舌先で唇や歯をなぞられ、舌に絡みついてくるそれを僕は拒みも受け入れもしない。
そのまま彼は僕をベッドへと押し倒す。
「ちょっとくらい反応したっていーんじゃねえの?」
「…最近薬を飲んでいないから」
首元にキスを落とす彼に小さな声で囁く。ここ最近はいつもエリオが全部飲んでやると言い張って、それを面白がってる刺青の男が薬をエリオに飲ませるのが通例化していた。
彼の辛さと、夜まで性的な我慢を強いられているらしい環境を考えるとかなり心配ではあったが、そのおかげで薬の効果がすっかり抜けきった頭はすっきりしていてよく考えが回る。
「エッチなことするならあれが欲しいな」
彼の胸元に手を添えてやんわりと押し返す。あまり強く拒んで怒らせては本末転倒なのであくまでも軽くだ。
「…ああ、なるほどね。自分からアレを欲しがるなんてな、本当はもう落ちてるんじゃない?あのチビがお前の正気をギリギリとどめて…」
ぶつぶつとつぶやくと金髪の男は立ち上がる。
「いいぜ、俺の部屋に予備がいくつか残ってる。好きなだけ飲ませてやる」
そう言って彼は部屋を出て行った。
意図的に人を騙したり利用するのはこれが初めてだった。塔で暮らしていたころは自分がそんな事をする日が来るなんて思ってもみなかったが、エリオと一緒に塔に帰るためなら僕だって頑張らないといけない。
全く心が痛まないかと言われれば彼の好意を踏みにじるようで心は痛むが、彼や彼等バビロンが僕とエリオにしてきたことを思えばお互い様だろうとも思える自分がいた。
「ほら、お望み通り持ってきてやったぞ」
数分後、部屋に戻ってきた金髪の男はバラりとベッドにあの小瓶を散らばす。
その中の一つを手に取って僕の上に覆いかぶさり、親指で瓶の蓋を弾くとキュポンと高い音が鳴る。
「久しぶりだから1本から…いや一気に4本いくか?その方が手っ取り早く忘れられるぜ」
口元に寄せられた薬を僕はされるがままに流し込まれる。
身体が麻痺していくようなピリピリとした感覚と、くらくらするほどの熱に奪われそうな正気になんとかしがみつく。
僕に媚薬を与えることに夢中になっている彼の膝元に転がっていた小瓶を一つくすねて枕の下に忍び込ませた。
「もう身体が熱くなってきたな…触ってもいないのに乳首もちんこもこんなにしてさあ」
薬に反応して高揚した体を彼は嬉しそうに触って、舌を這わせた。
久しぶりに大量の薬を飲まされた僕はなんとか意識を保とうとはしたが、途中からの記憶が曖昧で気づけば同じベッドの上で火傷跡の男と刺青の男に背後から口から性器を咥えさせられて甘い声で悦んでいた。
目の端に映ったエリオは相変わらず薬を飲まされたのか辛そうに身を縮ませて、困惑の混ざったような赤い顔で僕を見つめていた。
彼の視線に熱くなる体に必死にブレーキをかけるのは久しぶりに辛い事だった。
彼に見られてものすごく興奮してるだなんて流石に…流石に知られたくはない。
3人が部屋を去って行った跡まだふらつきの残る身体でエリオに近づき枕の下に隠しておいた薬の瓶を彼に見せた。
「はぁ…これ…手に…入れた」
薬の効果が抜けてきたエリオがぼんやりした頭を横に振って、何度かまばたきをしながら僕の手に握られた小瓶を見やる。開ききってなかった目を丸くして、僕を見て笑った。
「なんか今日やけにシャムがとろとろだと思ったら、それのために身体這ってくれていたんだな…お疲れ様、ありがとう!」
左腕もなく、背中に大きな火傷を負ったままのエリオは今になっては全身アザだらけで、変色していない皮膚を探す方が難しいくらいボロボロだったが、そんな痛みも感じさせない明るい声で僕にお礼を言う。
「エリオと帰りたくて…頑張ったよ…!それと、最近夜…見張りが一人だけだから…多分チャンスかなって」
両腕が不自由な彼は一人で薬を飲むことも難しいだろう。それに一本だけとはいえ彼の薬の抜けきらない身体に追い打ちのように服用する事になるのだから、飲んですぐ脱出といけるかも定かではなかった。
「どうする…?あの人たちが戻ってくる前に飲まないとではあるけど…」
「アイツらの帰ってくる時間っておおよそ分かるんだっけ?分かるなら1時間前くらいに飲んでおきたいかな。あの辺が多分ピークだし」
僕の言葉に彼は首を捻る。ここ連日ずっと媚薬を飲み続けてる彼は、どのくらい時間が経つと辛いのかを男たちの会話から特定しようとしたらしく、度々彼らに時間を尋ねていた。3人はエリオが辛くて時間を聞いていると思っていたようで、煽る過程で事細かに時間について話してくれるようになっていた。
「それなら…直ぐに飲んだ方がいいね。大丈夫そう?」
彼等が食事をして帰ってくるとしたら長くても二時間、早ければ一時間くらいで戻ってくる。
「おし、任せろ!」
「わかった。じゃあこれ」
蓋を開けた瓶を彼の口元に近づける。それを彼は口で迎えにくると、開け口を唇で挟んで覆った。それをゆっくり傾けるとエリオも少し上を向く。流し込まれる液体を飲み込むのが、彼の喉の動きで分かった。
「ムリはしないでね」
怪我に触れないように彼の肩を優しく撫でてソファに寝せる。
エリオは大人しくそれに従って横になり、気持ちよさそうに目を細めていたが、次第にまた彼の身体が熱くなり、汗ばんできた。
「…なあ、シャムがお疲れのところ悪いな~って思いつつ願望だけ話していい?」
少し荒くなってきた息を混ぜながら、彼が苦笑いする。
何をするでもなく彼に寄り添うように座っていた僕は彼に向き直り彼の髪を撫でた。
「ん、なあに?」
「ムラムラしすぎて動けないと困るから、1回だけ抜いて貰えないかな…普段の4分の1だから大丈夫だとは思うんだけど…」
照れたようにエリオが笑う。
「ふふっ、本当はやりたいだけなんじゃないの?何でしたいの?口?それとも?」
からかうように彼の股間を撫でると、熱を持った膨らみがぴくぴくと僕に反応を返した。
「あっ、ちょ、ちょっと待って」
僕の手の動きに嬉しそうに笑いながら、彼はもぞもぞと寝返りを打って横になる。
僕に脇腹のディスプレイを見せると、彼は僕に視線を投げる。
「ここ、作戦決行前に調整して欲しいんだ。銃弾の強さを低くできるはずだから」
「低く…?」
彼の右手にあるスイッチを押してディスプレイを点灯させ調整画面を開くと確かにバレルのパワー表すメーターがあった。
「どのくらいにするの?」
「うーん、中くらいかなあ。一番低いとただの水鉄砲の血液版になってクソ使えなかったんだよね」
マックスになっていた出力を真ん中くらいまで調整して画面を戻す。
「出来たけど…どうして急に?」
彼はまた仰向けに転がると、眉を八の字にして微笑む。
「人を殺さないって言ったのに、この殺傷能力じゃ繰り返すだろ?せめてシャムの前でだけでも殺さないようでありたいし、こっちの方が気兼ねなく暴れられる」
「エリオ…」
彼の言葉に嬉しいやら申し訳ないやら、ありがとうやらいろんな言葉が浮かんで声が詰まる。
「ありがとう…!大好き、ほんっとうに大好き!!」
僕は彼が怪我をしているのも忘れて思い切り抱きついた。彼は身体を強ばらせて小さく痛みに唸ったが、それでも照れたように僕の頭に頬を擦り付ける。
彼の腕のない左肩が、僕を抱きしめ返しそうと少しだけ動いたのが分かった。
「…俺も好き。愛してるよ、死ぬまでずっと」
「ふふっ…ねえエリオ…最初のお願いの事だけど…」
僕は彼を抱きしめたまま耳元に口を寄せる。
「口じゃなくても…いい?」
彼は身体を少し話すと、にんまりと笑う。
「むしろ、それお願いしようと思ってた」
僕とエリオは行為に夢中にでつい時間を忘れてしまいそうになって、男たちが戻ってくる話声で慌てて行為を中断して彼と笑いあった。
次に彼とこんな風に過ごすのはきっと塔の中になるんだろう。彼と行きたい場所や彼とみたいものがたくさんある、それが本当に楽しみで希望だった。
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