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1章 最高にイカれた誕生日
【第6話】7月6日 21時10分
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金成の家は、俺の家と学校の間にある。電車で一時間くらいで、定期圏内だから俺は実質無料だ。こういう時だけ、家と学校が遠くて良かったと思う。定期で行ける距離が広がる。
そういや金成くらいの脳みそと経済力なら、もっとすげー学校も行けただろうに、なんで俺と同じ高校を選んだんだろう。実家の近くにも通える学校はあるんじゃないかと思うが。
電車を降りて、金成の家までのんびりと歩いて行く。
鉄筋コンクリート造りの小さくもまだ比較的新しいアパートは俺のうちより余程立派に見える。派手では無いが北欧風と言えばいいのか…なんだかオシャレな外装は何度来ても新鮮な気持ちにさせられる。
外階段を上がって二階に上り、俺は金成の部屋番号のついた扉の前に立つ。
チャイムを押し、ゆっくりと話す。眺めに穏やかなチャイムが鳴っているのが扉越しに聞こえた。部屋の電気はついているのが窓から分かる。
一応、前に貰った合鍵は持っているのだが、喧嘩した後にいきなり押し入るのも気まずい。チャイムで金成が出てくれるのを待つことにした。
一分くらい待つが、全く応答がない。仕方がないので、もう一回チャイムを鳴らす。やっぱり応答もなく、ドアを開けてくれる気配もなかった。
もしかして、まだめちゃくちゃ怒ってる?そんなに怒ることだったかなあ。
しぶしぶと俺はまたスマホから金成に通話コールをする。駅ビルの時のように呼び出し音が途切れることはなかったが、いつまで経っても誰も出ない。
怒ってるんじゃなくて、風呂にでも入ってるんだろうか。仕方ないので、俺は扉に背中をつけて座り込む。
大きな欠伸をすると涙が出た。それを擦りながら、俺はぼんやりと夜空を眺める。暇だなあ、せっかく会いに来てやったのに。
それから15分、30分、45分…不在着信があったら掛け直してくるかと思って待っていたが、いつまで経っても電話は来ない。
やっぱり怒ってる?風呂と怒ってるのダブルパンチか?俺はもう一度スマホから金成にコールする。
相変わらず電話に金成は出ない。そもそも、家の中で誰かが動いている気配がない。さすがに違和感を感じて、俺は扉をドンドンと軽く拳で叩いた。
「金成ー?」
合鍵で扉の鍵を開けようとして、鍵を差し込んで回すと鍵が回らない。驚いて反対に回すと、鍵が閉まった。もう一度、俺は反対側に鍵を回して扉を開けた。
「おい、鍵開いてんぞ」
玄関に入り込み、俺は中に呼びかける。
「おーい、金成ー?」
靴を脱いで中に上がりこむと、見慣れた茶の間には人の気配がない。鍵を開けたまま留守にするなんてことがあるだろうか。洗面台のある脱衣所の部屋を開けて確認するが、真っ暗だ。風呂場の磨りガラスの向こうも暗闇で、人がいる感じもない。
脱衣所はシャンプーの残っていて、使用感はある。電気をつけて確認すると、洗濯機の中には使用後の湿ったバスタオルが入れられていた。
「うんこかー?」
併設されたトイレの扉を叩く。それでも返事はなく、開いてみても誰もいない。
おかしいな、近所のコンビニにでも行ってんのかな?にしては、えらい長い時間帰ってこないな。
茶の間に戻って、中をよく見るといつもより散らかっている気がする。食卓となるローテーブルの角度が曲がっており、スチールラックに飾られているはずのプラモデルがいくつか床に落ちてパーツが取れてしまっている。
あーあ、こんなにしちゃって。俺はプラモデルを拾い上げて、取れてしまったパーツをくっつける。踏んで壊してもっと怒られても困る。
直したプラモデルを適当にラックに戻し、茶の間の奥へと上がりこむ。ふと、ベッドの下で何かがチカチカと光っているのが目に入り、俺はその場にしゃがみこむ。
点灯するそれは、驚いたことに現代人が大好きなスマホだった。ロックがかかっているので中は見れないが、俺からの不在着信が山ほど入っていることだけは分かる。つまり、これは金成のスマホで間違いない。同じ機種の別物ではないはずだ。
鍵を開けっ放しで、部屋がこれだけ荒れてて、スマホ置きっぱなしはさすがに変なんじゃないか?俺は嫌な予感がして、金成のスマホを片手に外へと飛び出す。
「金成ー!」
名前を呼びながら階段を駆け降り、そのまま金成がいそうな場所へと向かった。最寄りの駅前、公園、コンビニ。見つからなかったから隣の駅まで走った。喉が痛くなるまで金成の名前を呼んだが、どこにも金成の姿はなかった。
「どこ行ったんだよ…」
肩で息をしながら、俺はブツブツと一人で文句を垂れる。にわかに胸を支配し始める不安に冷や汗が出る。スマホで時間を確認すると、もう時刻は夜の11時を回ろうとしていた。
隣駅であとは心当たりがある場所と言えば、たまに喧嘩の練習とかで立ち寄る駅から少し離れた場所にある工場跡くらいだ。こんな深夜に身体を鍛えてるとは思えないが、俺はそこへ向かって走り出す。
今夜の月は随分と赤く見えた。あの月を俺は一生忘れることはないだろう。
そういや金成くらいの脳みそと経済力なら、もっとすげー学校も行けただろうに、なんで俺と同じ高校を選んだんだろう。実家の近くにも通える学校はあるんじゃないかと思うが。
電車を降りて、金成の家までのんびりと歩いて行く。
鉄筋コンクリート造りの小さくもまだ比較的新しいアパートは俺のうちより余程立派に見える。派手では無いが北欧風と言えばいいのか…なんだかオシャレな外装は何度来ても新鮮な気持ちにさせられる。
外階段を上がって二階に上り、俺は金成の部屋番号のついた扉の前に立つ。
チャイムを押し、ゆっくりと話す。眺めに穏やかなチャイムが鳴っているのが扉越しに聞こえた。部屋の電気はついているのが窓から分かる。
一応、前に貰った合鍵は持っているのだが、喧嘩した後にいきなり押し入るのも気まずい。チャイムで金成が出てくれるのを待つことにした。
一分くらい待つが、全く応答がない。仕方がないので、もう一回チャイムを鳴らす。やっぱり応答もなく、ドアを開けてくれる気配もなかった。
もしかして、まだめちゃくちゃ怒ってる?そんなに怒ることだったかなあ。
しぶしぶと俺はまたスマホから金成に通話コールをする。駅ビルの時のように呼び出し音が途切れることはなかったが、いつまで経っても誰も出ない。
怒ってるんじゃなくて、風呂にでも入ってるんだろうか。仕方ないので、俺は扉に背中をつけて座り込む。
大きな欠伸をすると涙が出た。それを擦りながら、俺はぼんやりと夜空を眺める。暇だなあ、せっかく会いに来てやったのに。
それから15分、30分、45分…不在着信があったら掛け直してくるかと思って待っていたが、いつまで経っても電話は来ない。
やっぱり怒ってる?風呂と怒ってるのダブルパンチか?俺はもう一度スマホから金成にコールする。
相変わらず電話に金成は出ない。そもそも、家の中で誰かが動いている気配がない。さすがに違和感を感じて、俺は扉をドンドンと軽く拳で叩いた。
「金成ー?」
合鍵で扉の鍵を開けようとして、鍵を差し込んで回すと鍵が回らない。驚いて反対に回すと、鍵が閉まった。もう一度、俺は反対側に鍵を回して扉を開けた。
「おい、鍵開いてんぞ」
玄関に入り込み、俺は中に呼びかける。
「おーい、金成ー?」
靴を脱いで中に上がりこむと、見慣れた茶の間には人の気配がない。鍵を開けたまま留守にするなんてことがあるだろうか。洗面台のある脱衣所の部屋を開けて確認するが、真っ暗だ。風呂場の磨りガラスの向こうも暗闇で、人がいる感じもない。
脱衣所はシャンプーの残っていて、使用感はある。電気をつけて確認すると、洗濯機の中には使用後の湿ったバスタオルが入れられていた。
「うんこかー?」
併設されたトイレの扉を叩く。それでも返事はなく、開いてみても誰もいない。
おかしいな、近所のコンビニにでも行ってんのかな?にしては、えらい長い時間帰ってこないな。
茶の間に戻って、中をよく見るといつもより散らかっている気がする。食卓となるローテーブルの角度が曲がっており、スチールラックに飾られているはずのプラモデルがいくつか床に落ちてパーツが取れてしまっている。
あーあ、こんなにしちゃって。俺はプラモデルを拾い上げて、取れてしまったパーツをくっつける。踏んで壊してもっと怒られても困る。
直したプラモデルを適当にラックに戻し、茶の間の奥へと上がりこむ。ふと、ベッドの下で何かがチカチカと光っているのが目に入り、俺はその場にしゃがみこむ。
点灯するそれは、驚いたことに現代人が大好きなスマホだった。ロックがかかっているので中は見れないが、俺からの不在着信が山ほど入っていることだけは分かる。つまり、これは金成のスマホで間違いない。同じ機種の別物ではないはずだ。
鍵を開けっ放しで、部屋がこれだけ荒れてて、スマホ置きっぱなしはさすがに変なんじゃないか?俺は嫌な予感がして、金成のスマホを片手に外へと飛び出す。
「金成ー!」
名前を呼びながら階段を駆け降り、そのまま金成がいそうな場所へと向かった。最寄りの駅前、公園、コンビニ。見つからなかったから隣の駅まで走った。喉が痛くなるまで金成の名前を呼んだが、どこにも金成の姿はなかった。
「どこ行ったんだよ…」
肩で息をしながら、俺はブツブツと一人で文句を垂れる。にわかに胸を支配し始める不安に冷や汗が出る。スマホで時間を確認すると、もう時刻は夜の11時を回ろうとしていた。
隣駅であとは心当たりがある場所と言えば、たまに喧嘩の練習とかで立ち寄る駅から少し離れた場所にある工場跡くらいだ。こんな深夜に身体を鍛えてるとは思えないが、俺はそこへ向かって走り出す。
今夜の月は随分と赤く見えた。あの月を俺は一生忘れることはないだろう。
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