天底ノ箱庭 春告鳥

Life up+α

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1章 赤い狼はご馳走を前にして笑いました

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「はあっ…んっ…」
あれから何時間たっただろうか、窓から差し込む光が薄くオレンジがかったような気がする。
このシェルターも時間によって照明の調整がなされているのかとぼんやりとした頭で考えていた。
この数時間耳に入ってくる音といえば、誰かの荒い息遣いとバネが軋むような音、時折何かを語りかけてくる五月蠅い男の声だった。
「見た目に似合わず我慢するなあ。イったら楽になるしスッキリするぜ?」
男の声にふとふわふわしていた意識が戻ると、先ほどから聞こえていた甘く高い声を混じらせた息遣いは自分のものだったということに気付かされる。
「もう…やだ…や…」
腹の中を掻き乱されているような感覚が絶え間なく俺を襲い、奥へと押し込まれる度自分でも聞いたことのない声が漏れる。
しばらくそうやって内臓を押し上げられるような圧迫感にされるがままになっているとミアラシがふと動くのをやめ声をかける。
「これはまた今度にしようと思ってたんだけど、そんなに我慢されたらやるしかないよな」
「こん…ど…?」
「何をする気だ」と問いかけるより先にミアラシは少し体勢を変え俺にのしかかるように体重をかけた。それにより中を突き上げていたモノが更に奥へと押し込まれようとしている。
「う゛っ…!?や、やめ…苦し…」
「大丈夫、これは痛くないから」
さも普通のことをしているように、ミアラシは体重をかけながら言葉を続ける。
「奥の方に気持ち良くなる場所があるんだよ。処理用の犬からしたらご褒美だぜ?あまりここまで入れる機会もないだろうし」
このまま内臓がどこからか押し出されてしまうんじゃないかと思うほど重く押しあがる。
それは薄暗くなった部屋の中、目の前がちかちかと眩しく感じるほどだった。
壁を突き破ろうとぐりぐり押し込まれているようなそれが根元まで押し入れられた時、バツンと壁を突き破られたような感覚が襲った。
「…───っ!?」
声にならない声が部屋に響く。それは確かに自分の声なのに、どこか客観的に聞こえてしまう。それほど現実味がなかった。
「お、入った入った」
背後から少し嬉しそうな声が聞こえる。彼はそのまま大きく押し上げたものを引き抜き、今までと比にならない力強さで再び1番奥に押し入れてきた。
「やっ、やっ…ああっ…!」
耳障りの悪い自身の声を噛み殺す余裕もなく、開け放たれた口から好き放題に声が漏れた。
「いいね、それくらい臨場感ある声出して貰うとゾクゾクするわ。こっからボーナスタイムだから頑張れ」
ミアラシは心底楽しんでいるのか腰を打ち付ける速度を落とさず、むしろ力が強くなる一方だった。
「はっ…すげえ中が痙攣してる!気持ちいいっしょ」
ギヒヒを気味の悪い笑い声をあげたミアラシの言葉を理解するだけの余裕も既に無くなっていた俺に、迫る快感を我慢しようという考えはなかった。
「うっ…はあ…はっ…う」
「イッたんじゃない?」
ぐったりと上半身をベッドに身を預けると、ミアラシは俺の腹の下をまさぐる。
「ははっ、出てる!初めての穴イキおめでとう!癖になるらしいぜえ」
そう言うと、ミアラシは俺の顔の前に自身の手を置いて見せる。彼の手のひらにはべったりと白い液体がついていた。



出した所為なのか、ショックを受けたのか自身でもわからないが、その光景を目に背筋が冷えるような感覚を覚える。
ただこの出来事を、置かれた環境を認めなくないと目を閉じる。
「俺のじゃ…ない…」
「へえ?じゃあ今、お前の腹の中に入ったままのこれはなんだろうな?」
ミアラシがそう言いながら腰を引くと、今までずっと中を圧迫していたものがズルリと抜けるのが分かった。
「俺とお前しかいないのに、俺が外に出せるわけないよな?」
ミアラシは俺の顔に手のひらを擦り付けた。顔に粘着質な液体が糸を引きながら付着する。カルキのような匂いが鼻をついた。
不快な匂いに目を開ける。目の前に広がる光景も、今の自分の状態も、もう何も考えたくなかった。
「あれ?もしもし?聞いてる?」
ミアラシは自分の服を整えると俺の目の前に屈んで顔を覗き込んでくる。考えることを放棄して黙り続ける俺の頬を彼はぺちぺちと軽く叩いた。
「あー疲れちゃったやつだ?頑張ったもんな」
そう言いながら彼はベッドの端から軽やかに飛び降りる。何時間も行為をしていたとは思えないほど元気な足取りで部屋に置いてある机から何かを取り出す。
彼の手に握られているのは筒状のもので、先端に黒い毛束の付いた何かだった。
「また締まりきっちゃうとヤるとき大変だし、当分いれとこ。黒髪の犬にはやっぱり黒い尻尾だよね!」
そう言うとミアラシはまた俺の背後に腰掛け、俺の下半身に触れる。また腹の中に何かが入ってくる感触がした。
「じゃ、開通式はおしまいだけど、お仕置はこれで終わらないから」
ミアラシは俺の身体を軽々と持ち上げると、部屋の隅に設置された檻の扉を足で開ける。檻の中にしゃがんで俺をゆっくりと床におろし、ミアラシはベッドから適当に毛布をとって俺の身体の上にかけた。
「トイレ、その部屋にないからそのへんでしていいよ。一応ペットシーツも置いとくから。あ、おしっことか吸収するやつね。人間が使うもんじゃねえんだけどさ」
檻の扉を閉めると、ミアラシはポケットから鍵束を取り出す。そのうちの1つで扉の鍵を閉めると、ミアラシは鉄格子の向こうでかがんで俺の頭を撫でた。
「ちゃんと明日は犬らしく言葉喋らないようにしないとな?」
ミアラシの言葉が何一つ理解出来ない。ただ放心して床に横たわる俺に、彼はちょっと困ったように笑った。
「あとで絆創膏持ってくっから、口の傷早く治せよ」
そう言うとミアラシは立ち上がって部屋を出ていく。その姿を見送り、俺は再び目を閉じる。
これが全部夢ならいい。酷い悪夢だったと暖かいベッドの上で目覚める朝が来たらいい。
そう願いながら俺は深い眠りに落ちていった。
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