目を合わせないでキスをして。

第4話✢ニーナ視点

「おい、ニーナ。今日は上玉揃いらしいぜ？」

「そうか。」

「興味無いのかよ。」

「ないという訳では無いが…売られる子供たちの顔が苦手なんだ。」

「俺はお前のそんな顔が好きだけどな！」

「冗談はよせ。今日は賭けに負けたから着いてきてやっただけだ。」

俺はジナとの賭けに負け、仕方なくオークションに参加した。

「お待ちしておりました。」

ジナはここのオーナーに土地を貸しており、そのオーナーが上玉が入る事に
ジナに連絡してくるらしい。
それに釣られて来るこいつも大概だとは思う。

「なぁ、ニーナ。今日は獣人と人のΩが売りに出されるらしいぜ？」

「へぇ。珍しいな。この辺で獣人のオメガなんて滅多に捕まえられないだろ。」

都会に住んでいる奴らはそれぞれ自分の区画に住んでいる。
学校も、会社も、それぞれ自分の所属する所に居て出会いを求めて田舎に
越すやつも居ると聞く。
この国のトップが緩い政治を行っているせいで抜け道があってガバガバ…。
性被害も減らないしな…、

「ニーナ、難しい顔してまた考え事してたろ。」

「あぁ、すまない。」

「ま、今回は緩く見てれば良いさ。俺も今日は見る専門かな。」

ゆっくりと会場の電気が消え舞台のみに明かりが照らされた。

「さぁ、皆様おまたせ致しました。
今回は全てオメガの商品となっております。人は5000万から獣人は8000万
からとなっております。ご了承ください。
では、早速オークションを開始致します。」

ーー

「悪くない揃いだったけど…人は見飽きたなぁ。」

「…次が獣人だろ。」
そうして獣人が舞台に姿を現すとガラッと雰囲気が変わった。
全員が狙っている。獣人はバラすより生きて売る方が高い。

「良いねあの子。犬だ。」

「…欲しいのか？」

「やっぱり目の当たりにすると欲しくなるなぁ。」


「おっ！あれは…うさぎだ。」

「！…。」
会場に姿を現したそいつは垂れた耳に栗毛のうさぎだった。

「ニーナ。お前、あぁいう子好きだろ」

「あぁ。好みだ。」

「…趣味悪ぃ。そうゆう所も好きだぜ。ニーナ。」

数々と高額な値が飛び交う中、2億の声で会場が静かになった。

「おっと！ここで声がストップしました。2億で決まりでしょうか」

「5。」

「っ！？」

「5億。」

「お前、やべぇな。」

ジナの驚きの声と会場の声がごちゃごちゃになって耳に入ってきた。
舞台にいる獣人は目を丸くし戸惑っていた。

「で、では、5億で落札です！」

会場は段々元の雰囲気に戻り次の商品を待った。

「やるなぁ。ニーナ。」

「…もしかしたらと思っただけだ。」

「もしかしたらって…」


「続いての商品は猫の獣人でございます。」


「猫かぁ…生憎俺は甘々な子が好きなんだよな」

「でも、見ろ。あれもなかなかだと思うぞ。」


「ま～お～。」

声の主が声を上げた瞬間、司会に何かが伝えられた用ですぐに猫の獣人は
取り下げられた。

「なんだったんだ？」

声の主は猫の獣人が取り下げられるのと同時に、カツカツと音を立てながら
裏へと消えていった。

「漢服に、キツネか…。」

「あれ、林杏リンシンじゃないか？」

「林杏って領主のか？」

「うん。前にアジアに行った時に少しだけだったが見たことがある。」

「珍しいもんが見れたな。」


林杏か…。あの猫の獣人も気になる。今後のために少し調べておくかな。